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試写状

ジャンヌ・ダルク

JOAN OF ARC

1999年アメリカ 監督リュック・ベッソン 脚本アンドリュー・バーキン 撮影ティエリー・アルボガスト 出演ミラ・ジョヴォヴィッチ/ジョン・マルコヴィッチ/フェイ・ダナウェイ/ダスティン・ホフマン ●157分 ソニー・ピクチャーズ配給 1999年12月11日より丸の内ピカデリー1ほか松竹・東急洋画系にて公開予定

神の御告げを聞き、フランス救国のために戦ったジャンヌ・ダルク。百年戦争に奇跡をもたらした少女の物語を、リュック・ベッソンが映画化した超大作。
●オフィシャル・サイト● http://www.spe.co.jp

STORY

 1420年、百年戦争の真っ只中にあったフランス。8歳のジャンヌ・ダルクが住む村を、イギリス軍が急襲。姉が殺される現場を目撃したジャンヌは、「自分が生き残ったのはなぜか?」を問い、神への帰依を心に誓う。
 9年後、17歳になったジャンヌ(ジョヴォヴィッチ)は、神の啓示を受けてシノンに住む王太子シャルル(ジョン・マルコヴィッチ)に謁見。王太子の軍を率いてイギリス軍と戦い、シャルルを正式にフランス王の座につかせると約束する。このジャンヌの言葉を、シャルルの側近たちはブルゴーニュ派の罠ではないかと疑うが、政略に長けた義母のヨランド(ダナウェイ)は、これがフランス統一の足がかりになると考え、ジャンヌに2つのテストを受けさせることにする。これに合格して軍隊を与えられたジャンヌは、シャルルからお守り役を命じられたジャン・ドーロン(デズモンド・ハリントン)、ジル・ド・レ(ヴァンサン・カッセル)やアランソン公(パスカル・グレゴリー)といった騎士たちと共にオルレアンへ向かう。
 オルレアンの前線では、デュノワ伯(チェッキー・カリョ)とラ・イール(リチャード・ライディングス)が、一行の到着を待ちうけていた。自分を仲間はずれにして作戦会議を開く男たちに、イライラをつのらせるジャンヌ。小娘とバカにされたことに怒って髪を切った彼女は、イギリス軍の砦の奇襲に失敗した兵士たちを鼓舞し、自ら突撃の先頭に立って大手柄をあげる。続く戦いで胸に矢を受け、ジャンヌは瀕死の重傷を負うが、翌日には前線に復帰。その勇敢な活躍に心動かされた騎士たちは、ジャンヌの起こす奇跡の力を信じはじめる。
 それから3ヵ月後、ランスの大聖堂で戴冠式が行われ、王太子は正式にフランス国王シャルル七世の座についた。これを機に、シャルルはイギリス側と停戦交渉を開始。そんな彼らにとって、あくまでもイギリス軍の全面撤退を主張するジャンヌは、次第に邪魔者になっていく。やがて王の軍隊は解散。孤立無援の状態でブルゴーニュ派に捕らえられたジャンヌは、イギリス軍に売り渡され、宗教裁判にかけられることになった。そんな彼女の独房に、幼い日からたびたび幻影のなかに登場した「彼」(ダスティン・ホフマン)が姿を現す。

SHIMIZU ★★☆(99/11/01 丸の内ピカデリー1)

ジャック・リベット版に死ぬほど退屈したし、そもそもジャンヌものに興味のない身としては、この映画は違った意味で結構、楽しんだ。まるごとリュック・ベッソンらしい映画といっていいかも。冒頭、ジャンヌは姉が英国の兵士に串刺しにされた後、強姦される姿を目撃する。ちょっと『ニキータ』や『レオン』の少女の姿にダブる感じ。ベッソン映画のヒロイン像は、「一途で熱にうかされたような存在」というのが僕の認識なのだけど、このジャンヌもそれらを踏襲したヒロインとして見ました。

ジャンヌが髪を切り男装のメッセンジャーとしてフランス軍を鼓舞しようとするあたりは、ヒロインから強烈な「熱」が発散される感じで、一種のトランス状態が感じられました。演じるミラ自体の、生の少女の粗い息づかい。そんな実感をベッソンが生理的な演出で見せてくれる。とくに戦闘シーンでの馬上のミラ。彼女があえぐような感じで、一途に敵陣突破を目指すあたりの、トランス状態の演技が僕は結構、好きですね。最初、ジャンヌの言葉に耳をかさない騎士たちが、彼女のもとに集結してくるあたりは、女の子を放っておけない「レオン集団」という印象。ここはちょっと心躍ります。その戦闘シーンは引きのスペクタクルを狙うより、カメラをグイッと接写し「戦闘」のなかのカオスを描くようなタッチ(ベッソンは遠く離れたビデオモニターを見ながら演出するのではなく、自らカメラのそばにたち、ミラの表情を直に実感しながら演出したそう)。この戦闘シーンは、ベッソンの『最後の戦い』に通じる力感あふれるリアリティです。

映画の間にイメージショットのように無垢な少女時代の情景がインサートされるあたりも、ベッソンらしい心象風景。ソニーが送ってくれた予告編ビデオでは「ひまわり」を色鮮やかに配したイメージ映像だったけど、本編でも花が咲き乱れる丘に体を投げ出すショット、あるいは「不安」を象徴した雷鳴の響き。自然=神の啓示、というポイントで少女の、夾雑物のない世界に「熱=エレルギー」が吹き込まれていく。そんな自然の循環のようななかに、ジャンヌがそそりたつような感覚です。

前半から中盤までに静から動へと動くあたりの「アクション」は内面中心のジャンヌ映画にない快活なタッチで、いまどきの(僕を含め)のジャンヌって何?と予備知識のない人には、新鮮に見られるかも、ね。逆に終盤、カリスマのジャンヌが火刑に処せられるまでの「心理葛藤」はかなり眠気が入るかも。ここでベッソン版ジャンヌは新趣向を見せてくれる。それは「彼女の心」をキャラ化した存在が登場、「告解」という形をとり彼女と問答していくという点。演じるはダスティン・ホフマン。彼女の思い上がりを指摘したり、彼女の心の葛藤を明かにしていく方法。これは心理カウセリングのような感じで、彼女が人間的に浄化されていくプロセスを見る思い。

ベッソンはどこまでもジャンヌを「ひとりの無垢な少女」として描きたかったようだ。

YAZAKI ★★★(99/10/21 ソニー・ピクチャーズ試写室)

13歳で最初に神のお告げを聞き、フランスの救国の士となったジャンヌ・ダルク。ジャック・リベット監督の超ロング・バージョンをはじめ、過去に何度も映画化されてきた題材に、今回、リュック・ベッソンが持ち込んだのは「自分の運命を探す少女の物語」という視点。ジャンヌの戦いを「聖戦」とみなす宗教的な考えを否定し、どこまでも「自分探しのアドベンチャー」として描いていったところが、私にはひじょうに斬新に感じらた。

神のためでも、国のためでもなく、自分自身のために戦った少女。そんな位置づけがされたジャンヌ・ダルクを物語るために、ベッソンは、劇の最初と最後に大胆な工夫を凝らしている。

まず、しょっぱな。8歳のジャンヌ・ダルクが住む村をイギリス軍が襲撃、最愛の姉が兵士になぶり殺しにされるエピソードは、ベッソンの創作だ。この事件が、ジャンヌの「自分探しのアドベンチャー」の発端になる。姉の代わりに、自分が生き残ったのはなぜか? そんな疑問を抱いたジャンヌは、自分と神に激しく問いをつきつけ、自分を生かした神の意向を知りたいという渇望にも似た思いを抱く。その気持が高じたものが、やがて彼女に神の声を聞かせ、フランスの救済のために立ち上がらせる。つまり、ジャンヌに与えられた神の啓示は、存在理由を探し求める彼女自身の「心の声」であることが、ここでは明確に打ち出されているのだ。

その「心の声」が、劇の最後で黒頭巾の男(ダスティン・ホフマン)の姿となって現れ、宗教裁判を待つジャンヌと哲学問答を繰り広げる場面が、ベッソンの盛り込んだもうひとつの大胆な工夫。神はお前を本当に必要としたか? 啓示はホンモノだったのか? 神の名のもとに行われた殺戮は正しかったのか? 「心の声」が投げかけてくる数々の疑念と格闘し続けるジャンヌは、最終的に「自分は神の意志に従ったのではなく、自分の意志に従って行動した」という結論に達し、火刑に処せられていく。

ここでのジャンヌは、「私は何のために生きているのよぉ」という心の叫びに突き動かされ、運命を探す戦いに身を投じ、その落とし前を自らの死をもってあがなっていく人物。神の印として彼女に見えたものが無意識の領域に属するものであったにせよ、基本的にはすべて自分の意志に従って生きた女性。で、そんな一個人の「自分探しのアドベンチャー」が、歴史を左右するほどのパワーを持ってしまうという、ね。そういう歴史のカラクリの不思議さを、グイッと引き出して描いた点が、私にはすこぶる面白く感じられた次第。

ジャンヌと並行して歴史を動かす人物として、王太子シャルルの義母ヨランド(フェイ・ダナウェイ)をクローズアップしたところも、ベッソンの作劇のうまさが光る点。「オレは王家の血筋をひいてないかも……」というコンプレックスにとらわれたシャルルに代わって政治の実権を握るヨランドは、ジャンヌのカリスマ性を巧みに利用し、フランスの主権を取り戻そうと政略をめぐらせる。そんな彼女は、現実的にフランスを救った真の愛国者とも言えるわけで(シャルルの戴冠式で聖油を作ってしまうエピソードがケッサク)。歴史上の奇跡が、ジャンヌとヨランドという女ふたりの力によって生み出されたとする見方も、このベッソン版『ジャンヌ・ダルク』ならではのユニークな視点だと思う。

『レオン』『フィフス・エレメント』の幼稚っぽさが嫌いで、「ベッソン? フン」とバカにしていたYAZAKIだけど、今回、見終わったあとに出てきた感想は「おみそれしました」の一語。『奇跡の海』のエミリー・ワトソンっぽい「キツネつき演技」でせめたミラちゃんの、意外なガンバリにも拍手を贈りたいです。

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