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菊次郎の夏
1998年オフィス北野ほか 監督北野武 出演ビートたけし/関口雄介/岸本加代子 ●121分 日本ヘラルド映画=オフィス北野配給 |
| SHIMIZU★★☆たけしが従来の松竹・東宝系にかかりそうなプログラム・ピクチャーを作ったという感じ。きっと1連のたけし映画を見ている人からは総スカンをくらいそう。でも、一般の人はたけし版の「寅さん」を楽しめるかも。僕は結構、お気軽に楽しんだ。 手垢のついた定形ものをどう見せるか、というのが彼の狙いだろうけど、随所に大家の下手な座興を、近所の店子が見せられるような落語感覚ね。ガキをだしにして競輪で一儲けしようとするくだりとか、ガキを襲った麿赤児の変態おやじを脅すとか(麿赤児が夢に登場するシーンは大駱駝艦時代を偲ばせて、おかしい。ちょっと黒澤の夢もはいっているかも)たけし一流のワルガキ・ギャグを連発する。旅の途中、バス停で野宿するあたりの描写が僕には楽しかった。ビートきよしが登場しての漫才ふうの掛け合いもお手の物のおかしさ。 ただし、母を訪ねて何千里のパターンは完全に消滅して尻すぼみ状態。母親への想いを達成できないガキを見ながら「この子も俺と同じか」というセリフを独りでつぶやくたけしの姿には驚いた。こんなダサくてクサいセリフを1番嫌っていたはずなのにね。 終盤はほとんどたけしのプライベート映画の趣で、らっきょとグレート義大夫の弟子を適度にいらいながらの童心ワールド。元愛人(?)のフーミンのお手玉芸まで見せちゃう。「だるまさんころんだ」の遊びは日本人なら、シラケルかもね。でも、正式出品が決まったカンヌ映画祭では案外、「だるま」=禅なんて、過大な評価を受けたりするかも(苦笑)。ヨーロッパのキタニストがどう判断する興味深いところ。全体を「絵日記」仕立てにしたり、天使のイメージを使ったり、定形の可愛いもの好きってのも、天童よしみの「魔よけキーホルダー」みたいなイメージ戦略だよね。ジャンジャン。(99/03/08 ヘラルド映画試写室) YAZAKI★★たけし版の寅さん、だね。洋画系初のロードショー作品ってことを意識したのか、万人にわかりやすい映画になっている。自分を捨てた母を慕う少年の心情に、自らの生い立ちを重ねあわせる菊次郎の心境を、言葉や場面で説明しちゃうのは、これまでの北野作品になかった展開。で、たけし軍団の井手らっきょやグレート義太夫が、菊次郎&正男の遊び相手をつとめる後半(旅の帰り道)は、ほとんど内輪受けTVバラエティの世界になっている。撮影現場の即興的なノリを遊びのシーンにいかそうという演出だけど、私にはどう転んでも悪フザケにしか見えず、「はやく映画が終わってくれないかな」と、ジリジリしてしまった。 とはいえ、笑えるギャグもけっこうある。いちばんおかしかったのは、菊次郎がヒッチハイクの車を停めようとして道路の真ん中に釘を仕掛けたところ、それを踏んでしまった車が崖から転落、ビックリした菊次郎と正男が大あわてで逃げ出す場面。あと、バス停のベンチにいた男(ビートきよし)からおにぎりを奪った菊次郎が、正男に全部あげたフリをして自分も隠れて食べているうち、田んぼに墜落しちゃうという、スラップスティックなギャグもおかしかった。 ただ、こういう菊次郎の人となりをさり気なく伝える描写が、その場のギャグというだけで完結してしまっているのが、この映画の弱さだと思う。ホテルのプールで溺れかけた菊次郎が、その後、部屋のお膳の上でいっしょうけんめい泳ぎの練習をしたり、車に乗せてくれた女(細川ふみえ)のマネをしてみかんのお手玉にチャレンジしたり……と、エピソードのなかには菊次郎のひたむきさをうかがわせる描写もあれば、さっきのおにぎりのエピソードみたいにセコさを感じさせるもの、無邪気さ、善良さ、だらしなさを伝えるものも用意されている。にもかかわらず、それら全部をひっくるめた菊次郎の人となり――ひたむきなくせに負け犬人生を歩む彼の忸怩たる思いが、こっちにちゃんと伝わってこないの。一言で言うと、菊次郎が、観客にとって「気にかけたくなる存在」にならないんだよね。 それは多分、メガフォンを握りながら菊次郎を演じているたけしに、テレがあるからだと思うけど。そんな彼の照れ屋さんぶりを微笑ましく感じつつも、突っ込みの足りないキャラクターが、何かを発見したり成長したりしないロードムービーは、やっぱり退屈だなと思った。主人公が、少年との触れ合いを通じて己の人生を振り返るという趣向は、『セントラル・ステーション』と似ていなくもないんですけどね。(99/04/12 ヘラルド映画試写室) | |
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天井桟敷のみだらな人々
ILLUMINATA 1998年アメリカ 監督ジョン・タトゥーロ 出演ジョン・タトゥーロ/キャサリン・ボロウィッツ/スーザン・サランドン ●120分 日本ヘラルド映画配給 |
| SHIMIZU★★あの演技派タトゥーロの監督によるバッックステージもの。3部構成で一見凝った作りだけど、「みだらな男女関係」をとっかえひっかえ見せる趣向のみで、結局それがなんだ、という想いで、心地よいカタルシスを感じなかった。大女優役のスーザン・サランドンのセックスシーンは妙に濃かったけど、ね。(99/03/19 ヘラルド映画試写室) YAZAKI★★1本の新作芝居が上演にこぎつけるまでに、劇作家とスター女優、ゲイの評論家と新人俳優、一座の道化とオーナー夫人、オーナーと劇団の中年女優などの愛欲模様が進行。それを、人間喜劇的に見せようという趣向の作品だけど、どのエピソードもただガチャガチャしているだけで、トンと見る側の興味をそそらない。タトゥーロ演じる劇作家の書く芝居「イルミナータ」が、頭でっかちの芸術作品であるところも、マイナスの要素。それを差し引いても、何かこう、芝居のメイキングにつきまとうワクワクした感じが欠けているんだよね。芝居のバックステージ映画は大好きで、『ブロードウェイと銃弾』や『恋におちたシェイクスピア』には迷わず★★★★をつけちゃうYAZAKIですが、正直、この映画にはノレませんでした。クリストファー・ウォーケンに迫られる役者の役で、お気に入りのビル・アーウィンも出てるんですけど、ね。(99/02/24 徳間ホール) | |
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25年目のキス
NEVER BEEN KISSED 1998年アメリカ 監督ラジャ・ゴズネル 出演ドリュー・バリモア/デイビッド・アークェット/ミッシェル・バルタン ●107分 20世紀フォックス配給 |
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SHIMIZU★★ヒロインは今まで涙がでるくらいロマンチックな「本当のキス」をしたことがないという25歳の新聞記者見習(新聞社がロジャー・エバート先生の映画評でおなじめのシカゴ・サン・タイムス)のジョジー。その25歳のジョージーが高校生になりすまし潜伏取材をする。そのヒロインの設定に違和感を感じて、凄く居心地が悪い、というのが第1印象。偽高校生のバリモアちゃんが連発するドジぶりも愛嬌も妙な雰囲気。そこに高校時代の回想がインサートされ、凄いブスだった彼女が好きな男にプロムに誘われたが、実はイジメだったという苦い思い出。そう、『キャリー』をフックにしたイジメ撲滅映画という感じ。 取材の模様を隠しカメラで中継し、新聞社の連中がテレビで見ている図がおかしいのと、終盤プロム・クイーンに選ばれた偽高校生のバリモアちゃんが、昔と変わらぬいまどきの高校生にお説教をする図がちょっと心動かされる程度。最後の「本当のキス」をめぐるエピソードも気恥ずかしかった。服の上から爆乳ぶりが伺えるバリモアちゃんのフェークぽい可愛いさより、僕は現代の高校生で登場するリーリー・ソビエスキーの美しさに注目。彼女はキューブリックの遺作『アイズ・ワイド・シャット』にも出ているというから楽しみ。(99/04/21 20世紀フォックス試写室) YAZAKI★★『ウェディング・シンガー』に好感を抱いたYAZAKIも、この映画のノーテンキなアナクロぶりには少々ウンザリ。ここに登場する新聞社や高校は、御伽噺と言っても差し支えないほどリアリティのない世界(乱射事件の起こるご時世なんて、まるで関係ないって感じなの)。そんななかで、「25歳にしてキスの経験もないバージン」のバリモアちゃんが、自分自身の情けない高校時代の思い出を振り返りながら、人気者グループの仲間入りをしようと奮闘する姿を、おもしろおかしく見せるのが身上という作品。 バリモアちゃんが高校に潜入した初日、「人間は仮装することで自由になれる」というシェイクスピアの解釈が、国語の授業のテーマになる。で、これがバリモアちゃんの「仮装」をめぐる伏線になるのかと思いきや、ほとんどプロットには関係ナシ。これじゃ、シェイクスピアも浮かばれない? 収穫は、ガリ勉タイプのバリモアちゃんの友を演じるリーリー・ソビエスキーの好演。『ジャングル2ジャングル』や『ディープ・インパクト』でも美少女ぶりにバッチリ注目していたYAZAKIだけど、この映画の彼女はまたいちだんと美しく成長してて、将来が楽しみ。あと、プロムの場面でバリモアちゃんが自分の正体を暴露したとき、「『キャリー』みたいに皆殺しになるかと思った」と、弟役のデイビッド・アークェットが言うところがおかしかったです。(99/04/16 ヤマハホール) |
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ニュートン・ボーイズ
THE NEWTON BOYS 1998年アメリカ 監督リチャード・リンクレイター 出演マシュー・マコノヒー/イーサン・ホーク/スキート・ウールリッチ ●121分 20世紀フォックス配給 |
| SHIMIZU★★最近「ジャップ」発言で物議を醸した、いかにも野放図で愚鈍な感じのマコノヒーは、『明日に向かって撃て!』のポール・ニューマンをきどったつもりなのかね。とにかく、彼と『ER』のJ・マルグリースとの出会いからして魅力を感じず。その後の銀行強盗4兄弟に軽妙な味を期待したけど、彼らの絆にも心動かされれず。兄弟では唯一、イーサン・ホークの演技が気に入った程度。X世代映画の騎手のひとり、リンクレイター監督というので期待したけど、新鮮味がなく僕には期待はずれ。最後に実際の兄弟の生き残りがジョニー・カースン・ショーに登場する実写映像のほうが、はるかに魅力的。この手の実在の強盗ものでは、僕は『グレイフォックス』が一番人間味があって好きですね。(99/02/23 20世紀フォックス試写室) YAZAKI★★真夜中に銀行の金庫を爆破しても、次の朝にならないと警察がやって来ない。たとえ警官につかまっても、ワイロを渡せば無罪放免になる。というなんともノンビリした時代、ビジネス・ライクに強盗稼業をやってた4人兄弟の実話を、淡々と映画化した作品。『ブリンクス』もそうだったけど、主人公を「気のいいやつら」に据えた犯罪モノの映画化って、いまひとつしまらないんだよね。こういうことがあった、ああいうこともあった、という実話の多彩さに足を引っ張られるあまり、映画としてのドラマチックな面がそがれてしまうという。いちばん面白かったのは、ホンモノのニュートン兄弟の晩年のインタビューが流れるエンド・クレジットの部分。いっそのこと、ドキュメンタリーで見たかったというのが、正直な気分。(99/02/05 20世紀フォックス試写室) | |
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RONIN
RONIN 1998年アメリカ 監督ジョン・フランケンハイマー 出演ロバート・デ・ニーロ/ジャン・レノ/ナターシャ・マケルホーン ●122分 UIP配給 |
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SHIMIZU★★さすが体力のフランケンハイマー。老いても昔とった杵柄。町中の逆走アクションなどカー・アクション自体は新鮮味はないけど、なかなかスリリングで手堅い。でも、主人公をローニン=浪人の精神で描こうとしたのが、ニッポン人には「?」で、ちょっと勘違いが入った東洋趣味。劇中、忠臣蔵の討ち入りの設定のミニチュアを作っているオヤジが登場すけど、これがどう見ても平家物語とかの感じ。テレ朝の『奇妙な果実』の格好のネタになりそうだね。キャラ設定といい、物語といい、緊張感があるようでないような、分かったようでわからない、曖昧な展開。デ・ニーロは仕事のしすぎだね。(99/03/25 UIP試写室)
YAZAKI★★☆ちょっと前、アメリカでDVDのディレクターズ・カット版が出て、話題になった映画。なんか、ラストが全然違うらしいです。やっぱりね。ジャン・レノのとってつけたようなナレーションで説明的に終わる本編のラスト・シーンは、すごく唐突な感じがするもの。 物語は、パリのカフェに、デ・ニーロをはじめとする5人の男たちが集まるところから始まります。彼らは、国家という主人を亡くして浪人になったスパイたち。雇い主の正体も不明なら、盗むトランクの中身も不明という状況のもと、彼らは「金」という目的のためだけに仕事を引き受ける。おたがいのことは、まるで信用していない。そういうピリピリしたムードが漂っているところが、この映画のいちばんの魅力だね(相手も仲間も信用できないシチュエーションで行われる武器の取り引き場面が最高にスリリング)。で、途中には、やっぱり仲間を裏切る者が出てきたり。そのいっぽうでは、デ・ニーロとジャン・レノのあいだに同士的な友情が芽生えていく。彼らふたりが体現する「腐っても武士」な魂、ロイヤリティを重んじるサムライ精神が、ドラマの牽引車。 このふたりが、裏切り者の手におちたトランクの行方を追う後半、度重なる偶然に恵まれて手がかりに行き当たるところは、多分にご都合主義的な展開だけど、往年のフレンチ・ノワールを思わせる映画の雰囲気は悪くない。ニースとパリを舞台にした二度のハデなカーチェイスも楽しませます。クライマックスのスケート・ショーのシーンには、冬の五輪の花カタリーナ・ビットが出演。(99/03/25 UIP試写室) |
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