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試写状 踊れトスカーナ!

IL CICLONE

1996年イタリア 監督レオナルド・ピエラッチョーニ 出演レオナルド・ピエラッチョーニ/ロレーナ・フォルテーザ/バルバラ・エンリーキ ●93分 ブエナビスタ配給
1999年5月よりシャンテ・シネにて公開予定

イタリア、トスカーナ地方の片田舎。ある夏の日、クァリーニ家の農場に一台のバスが迷い込んでくる。バスから降り立ったのは、スペインからやって来たフラメンコ・ダンサーたち。クァリーニ家の長男で実直な会計士のレバンテ(ピエラッチョーニ)は、一座のカテリーナ(フォルテーゼ)にひと目惚れ。フィレンツェに旅立った彼女のあとを追って行くが……。運命の恋の行方を、ユーモラスに描いたイタリア製ロマンチック・コメディ。
SHIMIZU★★“事件”が起こるまで映画の出足が異常に鈍い。要はイタリア・トスカーナの田舎町に住む一家がある夜、農場に迷いこんできたスペインのフラメンコ・ダンサーの一団に宿を提供し、会計士の長男レバンテがそのダンサーのひとりカテリーナに一目惚れをしてしまう恋のお話。脇役にレズの妹がいたり、お棺に入るのが好きな画家志望の弟がいたり。家族スケッチの可笑しさはあるけど、どうもテンポがイマイチ。中盤からフラメンコ・ダンス(カテリーナ役のフォルテーゼが結構セクシー!)の趣向も絡んでの、恋のから騒ぎ状態。でも、僕はあまりノレませんでした。いつも声だけで姿が見えない別宅住まいのおじいちゃんが死んだあとも主人公に「オーレ」と声をかける図なんぞは、イタリア映画らしいゆったりした家族の味わいで、好ましいと思いましたが、全体に物語が散漫な印象であります。(99/02/26 ブエナビスタ試写室)

YAZAKI★★主人公一家が暮らしている農場は、テレビがまともに映らなかったり、携帯電話が通じなかったりという魔の地帯。そこにフラメンコ・ダンサーの一団がやって来たとたん、TVも電話も受信OKになるというマジカルな味付けが、いかにもイタリア映画らしいおおらかさ。ただし、主人公のレバンテが、レズの妹に勇気づけられてフィレンツェへ出向いていく後半のエピソードが、安手のドタバタ・コメディっぽくなっていくのは残念。レバンテが思いを寄せるカテリーナには婚約者がいて、彼を交えたディナーの席には、レバンテに猛アタック中の薬局の娘や、レズの妹のお相手も乱入。どんどん収拾のつかない事態になっていくのだけど、そのストレートすぎる描写に、いまいちこっちの体力が追い付いていかない感じ。セックスの合図「ピリピー」を連発する薬局の娘の、ねちっこいパワーには圧倒されましたが……。主人公が、ひまわり畑の向こう側に住んでいるおじいちゃんと会話するとき、おじいちゃんの姿が見えないため、まるでひまわりが話しているように見える演出は好き。(99/02/26 ブエナビスタ試写室)

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試写状 サイモン・バーチ

SIMON BIRCH

1998年アメリカ 監督マーク・スティーヴン・ジョンソン 出演ジョゼフ・マッゼロ/イアン・マイケル・スミス/アシュレイ・ジャッド ●113分 ブエナビスタ配給
1999年5月下旬よりシネセゾン渋谷ほかにて公開予定

人一倍小さな身体に生まれついたことを、「神様に特別な使命を与えられたからだ」と信じるサイモン(マイケル・スミス)。そんな彼の宿命のドラマと、親友ジョー(マッゼロ)の父親探しのエピソードをとおして、人生の価値をみつめたヒューマン・ドラマ。原作は、『ガープの世界』のジョン・アービング。成長したジョーの役どころで、ジム・キャリーも出演。
SHIMIZU★★★アメリカでは年間のワーストに挙げる雑誌もあったので、どうなのかと思って見た。ジョン・アービングの原案にしては確かに全体に甘い仕上がりで終盤はちょっとセンチすぎる嫌いもある。でも、その志は十分に伝わってくる。★をおまけしても持ち上げたい愛すべき映画だ。
 主人公のサイモン・バーチは成長がとまった12歳の少年。異形の人なのだが、そんなハンディをふきとばすくらい元気。湖での潜水挑戦も、女のこへの興味も人一倍で、心はどこまでも前向き。とにかく、サイモン役のイアン・マイケル・スミスが映画のなかで、発散する存在感は実にLIKEABLE。本当、屈託ない演技は拍手ものだよ。映画が自然と彼の目線になって動いていく感じが心地いいのだ。へんな虐めがないのも気持ちいい。でも、サイモンの周りには不幸が訪れる。野球で打ったボールが彼の理解者だった親友のママの頭にあたり死んじゃう(ママ役が我が愛しのアシュレー・ジャド!)。不幸にもめげずサイモンは「自分は英雄になるとために神から遣わされた」と信じているところが、なにか「人生はお伽噺」のアービングの世界の住人らしい展開だ。親友のジョーの本当の父親探しに、サイモンが奔走したり。サイモンのちょこまかしたエネルギッシュな活躍が、周囲のネガティブな反応を圧倒しちゃう。その痛快な感じが僕は好き。
 終盤の英雄的な行為はちょっとお涙頂戴がはいっているけど、全体が60年代の回想で、ロジャー・エバート先生が指摘している如くノーマン・ロックウェルの絵画を思わす、どこまでも心優しい世界。冒頭と最後で、成長したジョーが生き方を示したくれたサイモンを偲ぶ設定で、ある種の「お伽噺」的な寓話に仕立てている。この成長したジョー役がジム・ギャリー(ちゃんとビリングもされ、ゲスト扱いじゃないのだ)とは意外な驚きでした。(99/02/26 ブエナビスタ試写室)

YAZAKI★★☆去年、アメリカのいろんな雑誌でワースト1にあげられていた作品だけど、作りはちゃんとしています。もっとも、冒頭のシーンで、サイモンの墓にたたずむ成人ジョー(ジム・キャリー)の口から「彼が私に信仰を教えてくれた」というセリフが飛び出したときは、抹香臭いモンを連想して一瞬ギョッとなったけどね。ここで描かれる信仰とは、主人公サイモンが抱く信念みたいなもの。「どんな人間も、この世に生まれてきたからには、何かそれなりの意味がある」というのが、人一倍小さな身体に生まれついたサイモンの信念。そして彼は、そのとおりの人生をまっとうし、父親のいないジョーに「育ての父」を発見させるという奇跡を起こす。基本的に、「信じる者は救われる」系の話なので、鼻白む人も多いかもしれないけど、己の存在を意味あるものと考えたい人にとっては、一抹の救いを与えてくれる映画だと思う――ってところは、やっぱり抹香臭い?
 私自身は、自分は世の中に対してな〜んの価値も持たない人間であるというリッパな自負(!?)を持って生きておりますので、映画のテーマに感慨をかきたてられるようなことはありませんでしたが、サイモンの本質を理解しているジョーの母親のエピソードには涙を誘われた部分も。演じるアシュレイ・ジャッドが、聖母の神々しさをたたえた美しさ。(99/02/26 ブエナビスタ試写室)

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試写状 デッドマンズ・カーブ

DEAD MAN'S CURVE

1998年アメリカ 監督・脚本ダン・ローゼン 出演マシュー・リラード/マイケル・ヴァルタン/ランダル・ベイティンコフ ●90分 ポニーキャニオン配給
1999年4月24日よりシネ・アミューズにて公開予定

ルームメイトが自殺すると、無条件でオールAの成績が与えられる。このルールを悪用し、ハーバード大学院進学を目論むティム(リーランド)。彼に引きずり込まれる形で苦学生のクリス(ヴァルタン)も加わり、ルームメイトのランド(ベイティンコフ)の殺害計画が実行に移される。が、ランドの死体が行方不明になり、彼の恋人が後追い自殺をするアクシデントも発生。事態は思わぬ方向へ転がっていく。『最後の晩餐』の脚本家ダン・ローゼンが監督デビューを飾った青春サスペンス。
YAZAKI★★「大学で自殺者が出た場合、ルームメイトは、心理的なショックを考慮してオールAが与えられる」という決まり事に着目した2人の青年が、ルームメイトを自殺に見せかけた殺害を計画。前もってカウンセラーから聞き出した自殺の兆候(スザンヌ・ヴェガやキュアーの音楽を好む、北欧映画や初監督の作品を好む、などなど)を、殺す相手の周辺に用意する――という話のお膳立ては、興味をひく作り。だが、いかんせん、後の展開が尻すぼみ。「ドンデン返しに次ぐドンデン返し」を狙いに行った脚本の意図はわかるけど、『ワイルド・シングス』と違い、「あのときコイツがこういう行動をとったのは、こういうワケだったのね」という仕掛けが、この映画には欠けているんだよね。結果、見る側は「まんまといっぱいくわされた」という境地にはいたらず、ただただ作り手のあざとさに後味の悪さを覚えるばかり。禁煙に四苦八苦するカウンセラーを探偵役に仕立てるとか、何か観客をドラマに引き込む工夫があれば、また印象も違ったことと思いますが。(99/01/28 メディアボックス試写室)

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試写状 ブレイド

BLADE

1998年アメリカ 監督スティーブン・ノリントン 出演ウェズリー・スナイプス/スティーブン・ドーフ/クリス・クリストファーソン ●121分 日本ヘラルド映画配給
1999年5月よりニュー東宝シネマほか東宝洋画系にて公開予定

人間とヴァンパイアの混血として生まれたヴァンパイア・ハンターのブレイド(スナイプス)と、世界制覇の野望を持つヴァンパイア(ドーフ)の戦いを描くホラー・アクション。
SHIMIZU★★☆冒頭は精肉工場の奥のクラブでダンス。「シャワータイム」という声にあわせ天井から血がしたたり落ちる。そこはバンアイアのたまり場。そこに背中に剣、手には銃。そしてブーメラン状の手裏剣も武器に使うバンパイア・ハンター、ブレイドの登場であります。サムライ(はたまた忍者か)+カンフーアクションの東洋趣味を加味した近未来都市を背景にしたバンパイアの異色作です。タイトルをもじればウエズリー・スナイプス版の「ブレイド・ランナー」ともいえるかも。元々ブレイドはコミックスの人気キャラなんでって。たしかに漫画ノリで、ブレイドがビルをひとっ飛びする図など、ガンガンぶっとばすハード・アクションはその手のものが好きな人にはお楽しみかも。ブレイドの半人半吸血鬼ぶり、バンパイアになっていた母親の登場、バンパイアにならないための血清の存在、そして世界制覇を狙うフロスト(S・ドーフ、私はこの小男が苦手)の征服儀式までの理屈などなど。この映画が編み出した約束事が結構、凝った作り。それが途中で混乱しちゃうのは、私めが疲れていたせいでありましょうか。ま、話の混乱はあるけど、とにかく最後の最後まで疲れるくらい賑やか。続編ができそうな感じの終わり。と思ったら、もう、続編が準備されている模様であります。(99/03/15 ヘラルド映画試写室)

YAZAKI★ウェズリー・スナイプスが演じるヴァンパイア・ハンターは、人間と吸血鬼の混血。かたや、スティーブン・ドーフが演じるフロストは、もともと吸血鬼として生まれた純血種ではなく、人間から吸血鬼に変身した「外道」のヴァンパイア。ふたりは、人間の世界でも吸血鬼の世界でも、アイデンティティを確立できない者同士。そういうキャラクターがうまく描けていたら、もう少し面白味が感じられたかもね。ただ、私自身は、『スポーン』にしろこの映画にしろ、CG屋さんが作ったゲーム趣向の強い映画は、超苦手。映像は、『ドーベルマン』のヤン・クーネンを逆輸入したみたいな雰囲気です。(99/02/10 ヤマハホール)

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試写状 レッド・バイオリン

THE RED VIOLIN

1998年カナダ=イタリア 監督フランソワ・ジラール 出演サミュエル・L・ジャクソン/グレタ・スカッキ/ジェイソン・フレミング ●131分 ギャガ配給
1999年5月よりシャンテ・シネにて公開予定

イタリア、1681年。クレモナに工房を構えるバイオリン職人ニコロ・ブッティは臨月を迎えた。彼は子供に贈る生涯最高のバイオリンを製作中だった。だが、妻は子供を死産したあと逝っていまった。残されたニコロは妻への思いを込めて赤い色のバイオリンに仕上げた。以来、レッド・バイオリンは長い旅をしながら、人間の愛憎を奏でていく。4世紀にわたり5つの国を旅した伝説の名器レッド・バイオリンをめぐる、ミステリアスなムードの大河ドラマ。
SHIMIZU★★★ 注目の若手(といっても現在36歳の)カナダ人(ケベック出身)監督シラールの監督3作目。前作は、断片的なエピソードを積み重ね伝説のピアニスト兼指揮者グルードの音楽とその精神に迫った野心的な実験作『グレン・グールドをめぐる32章』(93年)だったが、今回もテーマは音楽と人。ジグゾー・パスルを楽しむみたいに、断片を積み重ね全体の絵を完成させるのが、彼の持ち味なのかも。
 物語のメインの舞台は現代のモントリオールのオークション会場。そこに伝説の名器レッド・バイオリン目当ての人々が集結してくる。その撮り方が実にウマイ。都合4つに時代のエピソードが語られるわけだが、ひとつのエピソードが終わるたび、物語は起点の会場にもどり、各々の視点で会場の模様が描写され、継ぎ合わされていく。タランティーノの『ジャッキー・ブラウン』の終盤の3者3用の視点描写をはるかに凌ぐ腕前だ。
 さて、物語はレッド・バイオリンをめぐる「魂」の旅という趣。冒頭、臨月の職人の妻が家政婦のタロット占いをしてもらい、その予言にそって物語が進行していくというミステリアスな設え。死産して逝った妻に捧げたバイオリンが、18世紀のウィーンで孤児の天才バイオリニストの手にわたる物語のしりとりのような趣向もこっている。プレスの言葉を使えば、物語エピソードは天使と悪魔が交互に囁きかける世界。とりわけ、僕は19世紀のオックスフォードのエピソードが面白かった。領内に野営するジプシーの手にあったレッド・バイオリンに目をとめた貴族階級(?)の野心的なバイオリニスト、フレデリック(『カーテンコール』でエイズのダンサーを演じたジェイソン・フレミング!)が、それを入手しコンサートで驚異の演奏を聴かせる。この演奏シーンでは実際の名バイオリニストのジョン・コリリアーノの手元と俳優との“二人羽織”で撮影したそうで、それを違和感なく見せるマジックが見もの。そんな彼が恋人(グレタ・スカッキのヌードもみられるよ)との愛を楽しみながらも、悪魔的な退廃に身を沈めるあたりは独特のムード。
 総体的にオムニバス的な色彩のため、吸引力が希薄な感じもする。とくに20世紀のパートで65年の中国の文化革命で音楽が芸術が弾圧された様を描く手つきが、ちょっと策を弄しすぎた感じに思えた。最後には鑑定家のサミエル・L・ジャクソンがレッド・バイオリンをめぐる「謎」の解明をして、意外な事実に到達する。面白いといえば面白いけど、それが全体の絵の最後のピースとして、ちょっとあざといといえばあざとい。最後のジャクソンのイージーな手口も狐につままれた余韻。ま、とにかく、監督が自在に映画を「指揮」しているという、自己陶酔的な快感が伝わってくる映画。よくも悪くも。音楽の使い方といい、物語の独創性といい、この監督が非凡であることは認めます、ハイ。(99/03/10 ギャガ試写室)

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