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モノクロスチール 永遠と一日

MIA EONIOTITA KE MIA MERA

1998年ギリシャ=フランス=イタリア 監督・脚本テオ・アンゲロプロス 出演ブルーノ・ガンツ/イザベル・ルノー/アキレアス・スケヴィス ●134分 フランス映画社配給
1999年4月上旬よりシャンテ・シネ2にて公開予定

photo:フランス映画社提供
1998年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞したテオ・アンゲロプロス監督(『ユリシーズの瞳』『霧の中の風景』)の大作。死を意識した詩人が、アルバニア難民の少年と繰り広げる短い旅のエピソードを、回想と幻想を織り交ぜながら描く。主演は『ベルリン天使の詩』のブルーノ・ガンツ。
YAZAKI★★★☆独特の長まわし映像で知られるアンゲロプロス監督の作品は、体調が悪いときに見るとまったく映画について行けなくなっちゃう。別に眠くなりはしないんだけど、ポイントがつかめないまま、ただ漫然とスクリーンを見ている状態になる恐れがあるのね。ゆえに試写の当日も「大丈夫だろうか?」と、かなり不安になりながら見たのですが、あにはからんや、最近のアンゲロプロス作品のなかでは最もわかりやすく、情感を揺さぶられる映画になっていました。
 主人公は、明日入院を控えた詩人のアレクサンドレ。一度病院に入ってしまえば生きては出られないだろうと予感している彼は、自分に残された「最後の1日」を、短い旅に出て過ごします。その間に去来する過去の記憶。人生の至福の瞬間を振り返りながら、彼はいまの孤独をかみしめる。この日、アレクサンドレの道連れになるのは、人買いに売られそうになったところを偶然救ってやったアルバニア難民の少年。丸一日を一緒に過ごすうち、アレクサンドレは少年に離れがたい思いを抱くけど、さりとて少年をどうしてやることもできない。しょせんは一期一会の運命。
 人間は、結局ひとりで来て、ひとりで去る。つねに自分が、「よそ者」だという感覚を抱きながら。決して完結などしない人生に、歯がゆい思いを抱きながら。と、そんなことをシミジミと感じさせてくれる映画です。アルバニアの国境に向かったアレクサンドルと少年の前に、霧のなかにたたずむ難民たちの姿がボーッと浮かびあがる場面など、この監督ならではの美意識にあふれた映像も魅力。(99/02/24 メディアボックス試写室)

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試写状 キャメロット・ガーデンの少女

LAWN DOGS

1997年イギリス=アメリカ 監督ジョン・ダイガン 出演サム・ロックウェル/ミーシャ・バートン/キャスリーン・クィンラン ●101分 アミューズ配給
1999年4月よりシネ・アミューズにて公開予定

ケンタッキー州の郊外住宅に住む10歳の少女デヴォン(バートン)は、空想の世界に生きる孤独な少女。彼女は、労働者の青年(ロックウェル)と親しくなるが、周囲の反感を買った彼は人々から袋叩きの目にあう。そんな彼をデヴォンが救おうとしたとき、ある奇跡が起こる……。監督は、『泉のセイレーン』『妻の恋人、夫の愛人』のジョン・ダイガン。
SHIMIZU★★☆豪州出身のダイガン監督の『君といた丘』が大好きだっただけに、期待した1作。前半はキャメロット(あのアーサー王伝説と関係があるやなしや)と称する一見クリーンな理想の街。が、そこでは密かに邪悪な地獄が進行している。浮気をするママに差別意識まるだしの成金のパパ。そんな両親を見透かしている10歳の少女が主人公。彼女は「森に住むバビヤカなる魔女が子供を喰い殺す」とい寓話の世界に遊ぶ不気味少女。僕は大人の世界に反旗を掲げる少女を描いた寓話的な豪州映画『セリア』をちょっと思いおこしました。前半のタッチは住人の怪しさといい『ステプフォードの妻たち』の無機的世界を思いながら見てしまいました。少女は両親の反動から(?)、ワーキングクラスの芝刈り男と心を通わせようとします。全裸で川にダイビングする奇妙な性癖を持つトレーラー暮らしのエキセントリックな男との関係は『シベールの日曜日』を思わせますが、そんないいもんじゃないと徐々にわかる展開。少女が次第に「魔女」化していく感じで、映画の行く先が見えない。と、思ったら、あっと驚く『乙女の祈り』状態の自然モーフィングの世界。なんじゃ、こりゃ、と思いつつも、とにかく、いろんなイメージを喚起する点では豪州監督ならではの、ちょっとカルトな作品かも。(99/02/09 映画美学校試写室)

YAZAKI−欺瞞に満ちたオトナの世界を、俯瞰から超越して眺めているような主人公の少女のキャラが独特。彼女は、芝刈りで日銭を稼ぐトレーラー暮らしの青年に、なぜか憧れを抱く。で、そこんところの少女の心理描写がきちんとされていないために、ドラマ全体もわかったようでわからないムードに流れている印象。少女の無想する世界(森に住む魔女が、子供を食い殺す)と、青年への気持ちの接点がいったいどこにあるのか……と、思いっきり悩んでしまった。ビデオとはいえ、中産階級の住宅地を箱庭みたいに捉えた映像は、美しいと思いましたが。(99/03/06 ビデオ)

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試写状 8mm

8 MILLIMETER

1999年アメリカ 監督ジョエル・シューマーカー 出演ニコラス・ケイジ/ホアキン・フェニックス/ジェームズ・ガンドルフィーニ ●123分 ソニー・ピクチャーズ配給
1999年5月より日比谷映画ほか東宝洋画系にて公開予定

ペンシルバニアに住む私立探偵のトム(ケイジ)は、富豪の未亡人から、夫の金庫で発見されたスナッフ・フィルムの調査を依頼される。フィルムがホンモノかどうかを確かめるために、ハリウッドのポルノ・マーケットに足を踏み入れるトム。そんな彼の前に思わぬ落とし穴が……。『セブン』のアンドリュー・ケビン・ウォーカーが脚本を手がけたハードボイルド&コア・サスペンス。
SHIMIZU★★『浴槽の花嫁』など牧逸馬先生の「世界怪奇事件」ものを愛してやまない猟奇殺人事件マニアのSHIMIZUめ。『セブン』の脚本家というので食指が動きましたが、結果はちょっと消化不良のニューアメリカン・ゴシックという印象でした。似たよう映画なら、『ハードコアの夜』のほうがはるかにモチベーションが高いカルトな作品です。スナッフ映画という扇情的なモチーフから現代のダークサイドを覗くあたりは、ま、興味津々。でも、主人公の私立探偵の心持ちがイマイチ、理解できなかった。社会の病理に迫るキャラとしてはバックボーンが弱く、単なる深刻ぶった正義純情バカの印象。やはり、ここでは職人シューマッカーのバランス感覚だけが、ハナについた感じで、こういうテーマを描くならデビット・リンチ級の暗いイマジネーションがないと、無理な世界。肝心なスナッフ場面の描写も、ケイジが顔を背ける顔技じゃどうしようもないのでは。『レザボア・ドックス』のあの拷問演出を垢でも煎じて飲んだほうがよいでしょう。(99/03/03 ヤマハホール)

YAZAKI☆「スナッフ」や「児童ポルノ」という禁断の領域に手を出しておきながら、よくもまあ、これほど中身のない映画が作れたものよ、と、あきれるやら驚くやら。生まれたばかりの娘を持つファミリー・マンの探偵が、富豪の金庫にあったスナッフ映画がホンモノかどうかを調査するため、裏ポルノ業界に首を突っ込むうち、彼自身の倫理コードが揺らいで行く……という話なのだが、何の発見も意外性もないままストーリーがダラダラ進むばかり。おまけに、「目には目を」の復讐が、スナッフの被害者の母の手紙によって報われてしまうというトンでもないオチ。主演のケイジを筆頭に、ホアキン・フェニックスやジェームズ・ガンドルフィーニなど、当代のクセモノ役者が顔をそろえているけれど、はっきり言って、これは彼らにとってキャリアの汚点にしかならないでしょう。素材のスキャンダル性のみを売りにしたような志の低い映画には、★もあげられませんです。(99/03/03 ヤマハホール)

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試写状 ホームドラマ

SITCOM

1998年フランス 監督・脚本フランソワ・オゾン 出演エヴリーヌ・ダンドリイ/フランソワ・マルトゥレ/マリナ・ド・ヴァン ●80分 ユーロスペース配給
1999年3月下旬よりユーロスペースにて公開予定

父親が一匹のネズミを家に持ち帰った日から、何かがハジけてしまった家族たち。SMに走る長女、ゲイを宣言する長男、そんな彼とベッドを共にする母。ファミリーの歪んだ肖像を、新鋭オゾン監督が描きとるブラック・コメディ。
YAZAKI★★主人公は、ごくごく平凡な中流家庭のファミリー。ある日、父がペットの白いネズミを持ち帰ったことから、このファミリーに異変が起こる。夕食の席で、突然、ゲイだとカミング・アウトする長男。自殺未遂をおかして車椅子の身となり、婚約者を相手にSMごっこに走る長女。家政婦はまったく仕事をしなくなり、その夫の体育教師も同性愛の道へまっしぐら。それぞれの本性がむきだしになり、家の中がひっちゃかめっちゃかになっていく様子を描く前半は、けっこう笑えます。で、この事態をどうやって収拾つけるのかと思っていたら、いきなりネズミが怪物化して登場。私は、ここんとこで大いにズルこけたが、グレッグ・アラキの映画が好きな人は「このテもありか」と、笑って許せるかも。この作品と似たように、普通の家族の後ろ暗い部分がボロボロ暴かれていく映画には、トッド・ソロンゾ監督の『ハッピネス』がある。こちらはネズミみたいな仕掛けを使っていない分、『ホームドラマ』よりも数段洗練されている。日本に配給される日を心待ちにしておるのですが……。(99/02/04 映画美学校試写室)

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試写状 隣人は静かに笑う

ARLINGTON ROAD

1998年アメリカ 監督マーク・ペリントン 出演ジェフ・ブリッジス/ティム・ロビンス/ジョーン・キューザック ●119分 日本ヘラルド映画配給
1999年4月より丸の内ピカデリー2ほか松竹洋画系にて公開予定

新しく向かいに越してきたオリバー(ロビンス)が、テロリストではないかと疑いを持った大学教授のマイケル(ブリッジス)。周囲は、そんな彼をパラノイア扱いするが……。MTV出身の新鋭マーク・ペリントン監督によるサスペンス。
SHIMIZU★★★タイトルはクロサワの『悪いヤツほどよく眠る』からの転用かな。ちょっとネタばらし的な、直接すぎるタイトルの気もするけどね。主人公はFBI捜査官だった妻を事件で失った犯罪学の教授。冒頭、火傷を負った隣人の息子が道路でさまよう図、それを助けるブリッジス。謎めいた出だしです。隣人にとって「命の恩人」になったブリッジスが、隣人宛のペン州立大の同窓会案内の誤配から、隣人の経歴詐称に興味を持ち、彼らの素性を調査しはじめる。この人のプライバシーを覗きたいという糸口はヒッチぽくて面白い。妻への思いを抱えながら、子供を育てる彼が隣人の登場から「恐怖」の渦に巻きこまれていく。隣人夫婦役のティム・ロビンスとショーン・キューザックが、宇宙人的なクールな犯罪者像。キューザックがニューっと登場するシーンは結構ドキッとくるかも。
 僕が興味を引かれたのが、隣人が連邦ビルを爆破した、ユナボマーという現代で最も不可解なA級犯罪者像を踏襲し、現代の恐怖を喚起するキャラという点。なにか、彼らが世紀末的なカルト教団信者のような不気味さもある。詳細は物語をスポイルするので避けるけど、最後で主人公がトランクを開けるシーンは「あ!」と驚く意外なオチ。ま、これをどう見るかだね。あんまり深く考えなければ、これはこれでハリウッド映画にあるまじき凄い結末。これは現代版の『サボタージュ』('36年の爆弾絡みのヒッチ作)っていったら誉めすぎ。
 が、結末から逆算すると、ちょっと展開に無理があるんじゃない、これじゃ、なんでもありの世界じゃない、と思われるかもね。途中も、建築家といいはる隣人の家にあった設計図が結局ワークしていないとか、妻の事件がリンクしているようでリンクしていないとか、作劇のつめに甘さもある。でも、ヒッチ先生だって、その手のいい加減さで巻き込まれサスペンスを構築したわけど、ま、僕はこれをよしとしようと思った次第です。脚本にうるさいYAZAKIに甘いといわれそうだけどね。室内のダークなルックとか、目で恐怖を象徴する図とか、恐怖演出もそれなりに。(99/03/01 ヘラルド映画試写室)

YAZAKI★★FBI捜査官だった妻を亡くし、心の傷の癒えない大学教授が主人公。大学でテロについて講義する彼は、さまざまなテロ事件が、誰かをスケープゴートにするようにして解決されてしまうことに疑問と怒りを抱いている。そんな彼が、建築家と名乗る隣人のウソを発見したことから隣人の素性に疑いを抱き、過去の調査をはじめる。これは言ってもネタばらしにならないと思うので書いちゃうけど、隣人はやはり爆弾魔で、その事実をつきとめた教授に脅しをかけてくる。というあたりのふたりの心理戦が、ホントはいちばんの見モノになるはずだと思うのだが、いまいち安手の2時間ドラマみたいで迫力に欠ける。冒頭、ケガを負った少年の「見た目」で主人公の住む地域を描写するくだりなど、どうもこの監督は、本筋とあまり関係のないところで映像に凝るきらいがあり、それがドラマの緊張感を逆に削いでしまっている感じ。主人公の教授が、自ら不条理の罠にハマりこんで行くオチの仕掛けは、とっても楽しめましたが。(99/02/24 ヘラルド映画試写室)

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