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試写状

交渉人

THE NEGOTIATOR

1998年アメリカ 監督F・ゲイリー・グレイ 脚本ジェイムズ・デ・モナコ/ケビン・フォックス 撮影ラッセル・カーペンター 出演サミュエル・L・ジャクソン/ケビン・スペイシー/デイビッド・モース/ロン・リフキン/ジョン・スペンサー ●139分 ワーナー・ブラザース映画配給 1999年5月より丸の内ピカデリー2ほか松竹洋画系にて公開予定

犯罪者との交渉にあたるネゴシエーターが、冤罪をはらすために警察を占拠。彼が交渉相手に選んだのは、ライバルのネゴシエーターだった。『評決のとき』で顔を合わせたS・L・ジャクソン&K・スペイシーが、演技の火花を散らしあうサスペンス。

STORY

 ダニー・ローマン(ジャクソン)は、シカゴ警察でもナンバー1の実力を誇る人質交渉人。今日も無事事件を解決に導いた彼は、部署の仲間たちとのパーティに上機嫌で出席する。だが、その最中に、ローマンは相棒のネイサンから意外な事実を知らされた。警察の年金基金が内部関係者に盗まれ、内務捜査局の人間も犯行にかかわっているというのだ。深夜、さらに詳しい事実を知らせたいというネイサンと公園でおちあったローマンが目にしたのは、ネイサンの死体だった。その後の家宅捜索で、海外の貯金口座を発見されたローマンは、殺人と横領の容疑で逮捕される身となった。
 いったい誰が自分を罠にかけたのか? 怒りと疑問にかられたローマンは、自分の手で真犯人をあげようと決意。ネイサンが名前をあげていた内務局のニーバウム(ウォルシュ)のオフィスに乗り込んで行く。が、ニーバウムはシラを切るばかり。業を煮やしたローマンは、その場に居合わせたタレコミ屋と秘書、フロスト本部長補佐も人質に、ニーバウムのオフィスに篭城するというイチかバチかの作戦に出た。
 事件を聞いて、騒然となる警察関係者たち。署長やSWAT隊長(モース)らが打開策を講じるなか、ローマンは、交渉相手に、西地区のナンバー1交渉人クリス・セイビアン(スペイシー)を指名する。

SHIMIZU ★★★(98/10/29 丸の内ピカデリー)

元々はスタローン主演のプロジェクトからスタートした大型アクション作。ところが、スターロンは降りて、主演はサミュエル・L・ジャクソンとケビン・スペイシーという当代屈指の2大キャラクター・アクターのキャストに落ちつき、「スター映画」から「アクター映画」に変身したメジャー作であります。まさに、この映画の醍醐味は2人の演技合戦につきる、といってもいいでしょう。

主人公は、人質をとった凶悪犯に言葉巧みに接近し人質解放をめざす「交渉人(ネゴシエーター)」なる警察内部のスペシャリスト。冒頭、ジャクソン演じるローマンが家族を人質にとった男と交渉、丸腰で男に接近していく。相手が犬好きというデータを元に接近したところ、男は犬嫌いとわかるが、すごに機転をきかせて男の話にあわせる。男を狙っている狙撃手に指で合図を送り、間一髪で男を射殺するあたり。現場を仕切る熟練のプロぶりが小気味いい。とにかく、ローマンはカリスマ性を持ったピカイチの「交渉人」である、という前提からスタート。そんなローマンが警察内部の年金横領事件にからむ刑事殺しの容疑で逮捕され、身の潔白を証明するため、連邦ビルで刑事らを人質にとり篭城するはめになる。裏も表も分かった男がどんな闘いを見せるか。

ローマンが同僚の「交渉人」に説得されると、逆に相手をいいまかしていく。たとえば、説得する場合、「牧師の話はダメ」。相手を暗くしていまい、死を考えさせてしまう。「NOと答えるのもダメ」。ジャクソンが同僚の交渉人に「NO」を連発させるような話術に持ち込む、スピーディーでクールなトークが絶妙。で、彼は別の地区で名を馳せているセイビアンを交渉人として指名する。友人同士なのか、と思ってい見ていると、まったく面識のない関係。「身内」が信用できない、いま、ローマンには「他人」のほうが自分の言い分を通せると考えての策である。つまりはピカイチの「交渉人同士」が温情抜きで、ガチンコの交渉レースをしようという、いままでのアクション映画にないパターン。

アクション映画とくれば、銃だ爆弾だ、と武器がすべてみたくなっているけれど、ここでの武器は相手の心理を読む「知能」というのがミソ。ジャクソンが電話をする。すぐにはでないでじらすスペイシー。お互い1歩も引かないスリリングなやりとりは、見ているだけで惚れ惚れしちゃう。人質を助けるためには犯人に手出しをしないこと。現場の鉄則を主張し、全権を掌握しようとするスペイシーの「交渉人魂」。それををちゃんとジャクソンも見抜いている。ふたりには「フェアな関係」がちゃんと見えていて、やがてふたりが力を合わせて「悪」に立ち向かう構図へとなだれ込むあたり、実に清々しい正義感が漂う寸法だ。

映画のお膳立て自体は連邦ビルという「密室」を中心に展開、窮地に立つ主人公も刑事。と否応なく、『ダイ・ハード』の2番煎じムード。ビルを包囲するFBIや警察のアクション演出は『ダイ・ハード』には遠く及ばないし、密室だけで犯人探しが展開するストーリーテリングにはやや甘い部分もある。でも、クローズアップを多用し心理的なテンションを高め、ひねりをきかせていく語り口に、徐々に引き込まれちゃう。グレイ監督は(『セット・イット・オフ』で犯罪に走った女性たちの事情を巧みに活写)人間を絡ませた群像ドラマは、なかなか達者。人質になったタレコミ屋のルーディ役のポール・ジャマッティ、横領の鍵を握る内務捜査局員役の亡き名バイプレーヤーのJ.T.ウォルシュらのサブキャラも楽しいよ。

最後でふたりが協力して犯人を追い込む図まで、ジャクソン&スペイシーの堂々たる演技はなんとも魅惑的。これだけで、見る価値ありの今年最初のアクションスリラーの快作であります。西部劇の名作『シェーン』にまつわるふたりのやりとりが、最後の捕り物劇のつなぎになっているので、ご注目を。

YAZAKI ★★☆(98/11/24 ワーナー・ブラザース映画試写室)

人質事件が起きた場合、犯人と交渉にあたるのが、ネゴシエーターのお仕事。オープニングは、「浮気した女房を連れてこい」と言って実の娘を人質に家にたてこもった男を、交渉人ローマン(ジャクソン)が説得するシーン。犯人のプロフィールをもとに会話をつないだり、部屋をチェックすると言葉たくみに説き伏せて犯人を狙撃手の待ち構える窓辺に連れ出したり。ここではネゴシエーターのマニュアルが手際よく紹介されていきます(寝取られ男の捕物にしては、ちと大袈裟すぎる気がしなくもないが)。

そんなネゴシエーターのローマンが、自ら人質事件を起こすことになる。理由は、警察内部の何者かに年金汚職と殺人の濡れ衣を着せられたため。なんすけど、このローマンの行動が、あらかじめ計画的されたものなのか、それとも咄嗟に思い付いたものなのか、ってところで第一の疑問が生じてしまった。つまり、どっちにしても、人質事件なんか起こすのは、沈着冷静&頭脳明晰なネゴシエーターらしくない感じがしちゃうのね。

でも、それを言っちゃうとそもそもの話が成立しなくなるので先に進みますが。内務捜査局のオフィスにたてこもったローマンは、居合わせた4人を人質にする。そこで第二の疑問。いったい彼ひとりで、どうやって4人に手錠をかけたんだろうか? すっ飛ばされたディテールが、気になってしょうがない。ローマンが人質を掌握する手口を見せる描写なんてのは、彼の有能さを物語るうえで、欠かせないシーンだと思うのだけどね。

という具合に、けっこう荒っぽい演出と、キャラクター描写の薄さから、いまひとつドラマに入り込めなかったYAZAKI。最初でローマンに肩入れしたい気持が起こらなかったため、サミュエル・L・ジャクソンとケビン・スペイシーの演技合戦を見てやるか、と、かなり引き気味のポジションで先の展開を鑑賞することとなりました。

スペイシーが、ジャクソンからかかってきた電話をわざと無視したり、証人に関してハッタリをかませたり。全編で心理的な駆け引きを繰り広げるふたりの演技は、さすがにウマイです。とくに、持ち前の尊大さをチラチラのぞかせるスペイシーの役作りは、「わかったわかった、アンタはウマいよ」と声をかけたくなるレベル(でも、実際にそんなことをすると、スペちゃんには「フン」と鼻で笑われそうだけど)。

詳細は見てのお楽しみだが、クライマックスには、スペイシーの役者ぶりが存分にモノを言う仕掛けも用意されているので、『ユージュアル・サスペクツ』のラストに「ヒューッ!」とうなったファンの人は、ここだけでも満足しちゃうでしょう。

でもやっぱ、緻密さに欠けた演出には不満が残るわ。キツネとタヌキとして向かい合ったネゴシエーター同士の関係が、電話のやりとりだけで微妙に変わっていくとか。何かこう、もうちょっと深みのある味付けがほしかったところ。きっと、シドニー・ルメットあたりが監督したら、もっとボリューム感のある映画になったんじゃないかな。故J・T・ウォルシュを筆頭に、ロン・リフキン、デビッド・モースなど脇役陣にも達者な顔ぶれがそろっているだけに、この軽い仕上がりは、ちょっと惜しい気がします。

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