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のど自慢
1998年日本 監督井筒和幸 出演室井滋/大友康平/尾藤イサオ ●112分 東宝=シネカノン配給 |
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SHIMIZU★★☆「あの人、新婚の時、瞳は100万ボルトだったんだから」。焼鳥屋で研修中の夫のことを、妻がこうのろけてみせる。思わずズッコケちゃう、笑うに笑えないヒドいセリフの連続。これなら、いまのテレビドラマのほうが数倍素晴らしいセリフがあふれているよ。そんな拙いセリフの連続で、庶民の哀感を点描するスケッチも、ただただモン切り型。自閉症の孫とおじいちゃん、妻ある男の子をはらみ出産を決意して家をでた姉とそれを心配する高校生の妹など、どのシーンもありきたり。唯一の救い(?)が売れない演歌手とマネージャーとの「営業」の世界。室井滋と尾藤イサオの関係がこの映画で一番、個性があり、この部分をもっと拡大したかたちでみせてくともっと面白くなるとおもった。地元の「ハブ・センター」での「営業」の話が来て、室井が「わたし、は虫類の前で歌うのはだめよ」というセリフがおかしい。 それなのに、なんでそんなに★をつけたか。それはひとえにダサイ日常描写を、「音楽」という情感で補う「のど自慢」をクライマッスにもってきたプレゼンテーション。高校生の歌う「花」もいいし、北村和夫の「上を向いて歩こう」もいい(劇中の平成版の替え歌は、脚本のひどさにあきれながらも、実際永六輔がひきうけたそう)。カラオケ大嫌いのSHIMIZUめですが、「のど自慢」の自体の選考から本番にいたる描写はかなり面白くできていると思う。竹中直人が相変わらずの濃い演技で、歌い姿もサイコーにおかしい。でも、これって、コメディーじゃなく、庶民感動映画なんだね。ジャンジャン。(98/11/26 東宝第一試写室) YAZAKI★★「おもしろい」という評判を聞きつけて出かけた試写だけど、「それでこのレベル?」というのが正直な感想。いちばんの不満は、登場人物の葛藤の薄さ。たとえばプロ歌手の室井滋にとって、素人の「のど自慢」に出場するのは、『フル・モンティ』の男たちがスッポンポンになるのと同じくらいイチかバチかの大勝負であるはず。が、ドラマの彼女には、そういう悲壮感をパワーに転じる人物としての迫力が足りない。「焼き鳥ピーコちゃん」の試験と「のど自慢」のカケモチにアタフタする大友康平のお父チャンにしても同様。家族がみんなダメなお父チャンの味方で、そこに何の葛藤も生じないのが弱いと思った(大友君の好演は光るけどね)。このテの映画は、不況時代を反映した哀愁が根底にあって、それを「のど自慢」で陽気にハネ返すという仕組みがあってこそ成立するはず。そもそも、鐘3つ鳴ってオシマイという「のど自慢」にはカタルシスがないのだから、キャラクターの人生を描く部分できちんとオトシマエをつけてほしかったです。「この人はこういう背景を背負って歌ってます、オシマイ」じゃ、小学生の作文と同じだよ!(98/09/30 東宝第一試写室) |
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パパラッチ
PAPARAZZI 1998年フランス 監督アラン・ベルベリアン 出演パトリック・ティムシット/ヴァンサン・ランドン/カトリーヌ・フロ ●111分 K2エンタテインメント配給 |
| SHIMIZU−ビデオで鑑賞となりましたが、僕は結構楽しめた。ダイアナで悪評を高めた「特写カメラマン」の姿を描くもので、タイソンみたいな強姦癖のあるボクサーに囮の女を近づけて盗写しようとしたり、その手口がなかなかリアルでおかしい。お話の設定が盗写現場で偶然写真に収まった男が仕事をさぼっていることがばれで首になり、それを撮ったパパラッチの助手になる。その助手が次第に師匠顔負けのやり手カメラマンになり、挙げ句、師匠と女優のスキャンダルまであばく展開。被害者が加害者に、加害者が被害者にと逆転する構図が風刺の味。でも、そこはフランス映画。改心したと思いきや、どっこいこの稼業から足をあらえないという図がまたよろしい。餌食になる有名人役でJ・アリディなど実際の俳優たちが多数カメオ出演。大物の女優アジャーニまで登場しますが、どこに出てくるかは見てのお楽しみ。(98/11/11 ビデオ) YAZAKI★★タブロイド紙の編集長が、訴訟の費用を計算しながら表紙の写真を決めるエピソードなど、生き馬の目をぬくギョーカイの舞台裏が見られる点が興味をそそる作品。アメリカからやって来たボクサーのスキャンダルをモノにしようと、パパラッチが女を雇って情事のお膳立てをする場面も、「さもありなん」という感じで面白かった。後半、ランドンがモラルの葛藤にさいなまれるくだりは月並みな感じがしたけど、世間から忌み嫌われるパパラッチのことを、「金と同時に冒険に魅せられた男」という視点から描いたところは新鮮に感じられました。(98/10/16 TCC試写室試写室) | |
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フェイス
FACE 1997年イギリス 監督アントニア・バード 出演ロバート・カーライル/レイ・ウィンストン/スティーブン・ウォディントン ●106分 東北新社配給 |
| YAZAKI★★☆謎解きのサスペンスよりも、キャラクター・ドラマとしての見所が大きい作品。カーライル演じる主人公は、政治運動に挫折した男で、コミュニティ・センターに勤める恋人がいる。彼に強盗の手ほどきをしたレイ・ウィンストンは、悪徳警官とつきあう不良娘に手をやくオヤジの顔を持っている。そして、仲間から「ジュリー」と女名前で呼ばれてバカにされているジュリアンは、赤ん坊を抱えて生活苦にあえぐ身の上。と、強盗一味の生活描写にワーキングクラス・ムービーの匂いがプンプン漂っているところが、いかにもイギリス映画してます。私がいちばん面白いと感じたのは、カーライルと、彼に金魚のフンみたいにくっついている弟分との関係。「オレから離れろ」と言いつづけてきたカーライルが、弟分なしでは生きられない自分を知るという、オチの仕掛けにグッと来た。(98/08/06 徳間ホール) | |
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ラブゴーゴー
LOVE GOGO 1997年台湾 監督・脚本チェン・ユーシュン 出演タン・ナ/シー・イーナン/チェン・ジンシン ●113分 アジア映画社=扇町ミュージアムスクエア=オフィスサンマルサン配給 |
| SHIMIZU★★☆見る前に、帽子の映画ライター、中野亨君に出会ったら「どーも、この映画のテイストが僕の趣味じゃななかった」と。へー、どんなテイストなのか、と興味津々。映画は都会で人と人とが微妙に交錯してかたち作られる「人の地図」というコンセプト。同じ町を背景に、3つのお話が展開するオムニバス調という、最近ならタランティーノふうの構成。僕はその第1話が断然面白いと思った。見るからに不細工な菓子職人が幼なじみだった女性の客を見つけ、昔、「透明人間はいる」と、ふたりで秘密を信じたことを思い出す。で、彼が彼女への思いをケーキであらわし、のど自慢にでて歌で愛を告白しようと悪銭苦闘する姿が、おかしくも切ないわけね。最後、妻子ある男にふられたヒロインが職人のドヘタな歌を聞き泣き笑いするシーンで、わたしゃ、本当にヒロインと同じ境地になりました。この強烈な個性はただ者じゃない、と思ったら、なんと本職は映画の裏方で俳優じゃないとか。凄い、凄すぎる。もうひとりダイエット挑戦するデブの女の悲哀を淡々と描いたエピソードもおもしろいが、このデブの女の子も素人とか。この不細工モードが中野君のおきに召さないテイストだったと後で知ったが、それほどの迫力ってこと。とにかく、最後でブ男君が彼女に捧げるケーキが、とってもキュートだよ。(98/11/10 ユニジャパン試写室) YAZAKI★★☆「一度見たら忘れられない顔」とSHIMIZU氏が評した不細工なパン屋のアシェンと、彼の超キュートな初恋エピソード(ともに透明人間の存在を信じる少女と公園で夜明かしした)とのミスマッチな味が、なんともユニーク。透明人間と共に消えたと思った少女が、ある日パン屋の客となって現われ、アシェンの恋心に再び火がつく。その思いはどこまでも純情。なんだけど、顔が不気味なだけに、ちょっとストーカーじみたノリが感じられてしまうのね。それは、アシェンと同じアパートに住むオデブな少女の「ポケベル恋愛」にしてもしかり。デートにそなえてダイエットに励む彼女はものすごくケナゲだが、どこか歪んだ印象がつきまとう。そういうニュアンスを通じて、都会の住人たちの孤独感をジンワリと浮き上がらせた作劇がウマイと思った。彼女への思いを込め、アシェンがテレビの歌番組で熱唱する場面は、『のど自慢』よりもよっぽど感動的だよ。(98/10/20 ユニジャパン試写室) | |
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レッサー・エヴィル
THE LESSER EVIL 1998年アメリカ 監督デヴィッド・マッケイ 出演コーム・フェオーレ/トニー・ゴールドウィン/アーリス・ハワード ●96分 アミューズ=デジタル・メディア・ラボ配給 |
| 青春を謳歌する4人組の青年たち。そのひとりが、拳銃をオモチャにして殺人をおかしてしまう。殺したのは2人組の強盗。彼らはひとりの死体を車ごと湖に沈め、残る瀕死の男を森のなかに放置する。そして22年後、湖から車と銃が発見され、銃の持ち主の男に疑いがかかる。この危機をどう切り抜けるか? 4人は、22年ぶりに山小屋で再会するが……。35歳の新鋭デヴィッド・マッケイ監督によるミステリー趣向のサスペンス。 | |
| SHIMIZU★★☆ひょっとして、これ、『ユージュアル・サスペクツ』狙いの脚本なのかな。よく話の展開を考えると、原題通り「ささいな悪事(本当はささいじゃないけど)」からどんどん、最悪にころがる話。4人の仲間が22年後に山小屋に集結、過去を振り返る。山小屋という「密室」で進行する現在部分と、過去とが交互に描かれ全体像をあらわす構成。面白くなる要素は十分。でも、その手際がどうもスローで、メリハリに欠けるのが欠点。現在部分で仲間割れ状態になるあたりは『デス・トラップ』とか、舞台のテイスト濃厚。意外なオチはあるにはあるが、いまいち「やられた!」という感じがしないのは、やはり演出にキレがないからだろうね。出演者も渋い俳優ばかり。(98/11/09 TCC試写室) YAZAKI★★罪を隠し通して生きてきた男たちが、22年ぶりに山小屋で再会する。4人は、それぞれ、神父、警官、弁護士、会社の経営者として、それなりの地位を築いている。そんな彼らが、過去の犯罪をめぐり、「銃を撃ったのはお前だ」「死体を捨てたのはお前だ」などと、自己保身の論理をふりかざしながら角をつきあわせる模様を、過去の事件のフラッシュバックを交えながら描いたドラマ。現在から過去の謎が浮かび上がってくる展開は、『死と乙女』に通じる舞台劇のノリ。なので、ヘタにフラッシュバックなんか交えず、山小屋で繰り広げられる4人の緊張関係に的を絞ったほうが、もっとシマった作品になったんじゃないかな。デビッド・ペイマー演じる弁護士が、山小屋の会話を録音するセコさを発揮するエピソードなんてけっこういいと思うのに、そこに生じるテンションがフラッシュバックの挿入で分断されちゃう感じなんだよね。いちばんの問題は、回想部分の4人のキャラと、現在の4人のキャラが、うまく結びついて行かないところ。両者の相違、もしくは共通点から、それぞれの22年間の人生が見えてくるってのが、この映画の作劇のポイントだと思うんだけど。「神父がいちばんのモラリスト」というオチも、どうもいまひとつありきたりに思えた。(98/10/09 メディアボックス試写室) | |