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試写状

ビッグ・ヒット

THE BIGHIT

1998年アメリカ 監督カーク・ウォン 脚本ベン・ラムジィ 撮影ダニー・ノワク 出演マーク・ウォールバーグ/ルー・ダイヤモンド・フィリップス/クリスティナ・アップルゲイト/エイヴリィ・ブルックス/サブ・シモノ/チャイナ・チャウ ●91分 ソニー・ピクチャーズ配給 1999年1月よりニュー東宝シネマ1ほか東宝洋画系にて公開予定

フェミニストの殺し屋が、日本人実業家の娘の誘拐に手を出したことから、トンだ騒ぎが勃発。『新ポリス・ストーリー』のカーク・ウォン監督が、ハリウッド・デビューを飾った痛快アクション・コメディ。ヒロインを演じるチャイナ・チャウは、日本でも人気の高かったモデル、ティナ・ラッツの娘。

STORY

 メル(ウォールバーグ)は、超一流の腕を持つ殺し屋。彼の唯一の弱点は、女に優しすぎること。愛人と婚約者にたかられっぱなしのメルに、仲間は「金目当ての女は捨てろ」と忠告するが、誰からも嫌われたくないメルはどこまでも“みつぐ君”街道を歩んでいた。
 そんなメルに、仲間のシスコ(フィリップス)が誘拐計画を持ちかける。組織以外の仕事に抵抗を感じるメルだったが、愛人へ渡す金ほしさに、つい話に乗ってしまう。ターゲットは、日本の電器メーカー社長ニシ(シモノ)の娘、ケイコ(チャウ)。リムジンの運転手に化け、大学から帰宅する途中のケイコをさらったメルは、彼女をトランクに押し込めたまま、婚約者の両親とのご対面の場へ直行する。
 そのころ、ボスに呼び出されたシスコは、ケイコの名づけ親がボスと知ってビックリ! ボスから誘拐犯を探せと命じられた彼は、自分は関係ないフリを装ってメルの追跡を始めるのだが……。

SHIMIZU ★★★(98/10/30 ソニー・ピクチャーズ試写室)

冒頭からして、凄くDEADPAN。若いアンちゃんが袋を降ろし風呂場まで運ぶ。風呂場でゴソゴソやるアンちゃんのところに彼女のガールフレンド(あとで男がいるとわかる)が訪れ、ローンのお金が必要だから用意してと、金の無心をしたあと、風呂場に眼をやり、「この坊やだれ?」。目線の先に足。死体であります。いつものコトという感じの無表情ぶりがブラックなおかしさ。

アンちゃんは殺し屋稼業のメル。演じるは『ブギー・ナイツ』のウォールバーグで、彼の純なパーソナリティと殺し屋の非情さとのミスマッチが笑わせる。たとえば、平気で人の家を破壊したり殺したりするくせに、レンタル期限がすぎたビデオ(『キング・コング2』)を必死で返そうとする姿。あるいは、婚約者の両親が家に来るというので、必死で料理をしたりする姿。なんか、いつもビデオの返却日を忘れるという強迫観念がある僕などにとっては、この手の小市民的ギャグは、わかるわかるという感じ。

遊びの効いたアクション・コメディーのノリは、ハリウッドに進出した香港監督ならではの味かも。メルが所属する(?)4人組の殺し屋軍団のディテールもいちいちヘン。彼らはまずロッカールームで尻丸だしで「マスターベーション」談義で盛り上がり、仕事前の身繕い。これから工事現場にでもでかけるような、ワーキングクラスのたたづまいなのだ。彼らが目指す仕事場は、3人の女を最近買い付けたギャングのアジト。

で、まずは名刺代わりのおとぼけアクションが展開。銃弾雨あられ。そのさなか、ちゃっかりコーヒブレイクまでするオフビートなノリ。階段の縁でローリングしてのアクションがあるかと思えば、最後はビル爆破からバンジージャンプ・アクションからプールへ落下と釣瓶おとし状態。仕事を終えたら、またロッカールームに集合し、おつかれさん感覚。

物語自体は純な殺し屋メルと彼らが誘拐した日系の令嬢ケイコとの恋模様を軸にした展開。ケイコ役は昔、資生堂のモデルでのちにエイズで入ったティナ・ラッツの娘チャイナ・チョウ。最初は冴えない感じだけど、結構キュートだよ。劇中、彼女の親父は不況期に映画製作に手を出して破産した設定で、その映画が『黄金のしぶき』。物語の終幕で「金」で作ったPOP看板がビデオ屋の店内に置いていてあり、これが意外な効果をもたらすオチも笑えます。

殺し屋のリーダー格シスコ役、ルー・ダイアモンド・フィリップが金歯姿で怪演。ケイコに読ませようとする脅迫文がいちいち間違いだらけだったり、このあたりの間抜けぶりは出色。脇役で意外なお方がひとり。『バグジー』以来かな、主人公の婚約者の父を演じるエリオット・グールド。とにかく、酒が入ると人間が代わるキャラ(映画『招かれざる客』を引用しながらの差別発言も笑える)。

さてさて最後は予定通り、ビデオ店でのメルとシスコの対決。漫画的というか、香港的というか、ま、そんな感じのお遊びが最後まで。エピローグはメルとケイコが車で道行。「僕と一緒になるのなら、僕が殺し屋だってこと理解しなくちゃだめだよ。僕は生活のために人を殺す。ま、ほとんどは悪い奴だけどさ。でも、たまには…」「わー、かっこいい」。ふたりの先行きが窺えるところ。「さて、どこへ行こうか」というメルにケイコが「YOU ARE THE MAN」(『アルマゲドン』のところでも指摘した最近の流行語)。ロジャー・エバート先生は、銃弾を無数に受けても話が終わらんうちは誰も死なない、脳天気なこいつらはきっとトワイライト・ゾーンから来たに違いないといっていて立腹しておりますが、it's just movieてことでお楽しみを。

YAZAKI ★★★(98/10/01 ガスホール)

『新ポリス・ストーリー』とか『野獣特捜隊』とか、香港時代は陰気な映画ばっかり撮っていたカーク・ウォンのハリウッド・デビュー作。が、これが意外や意外、めちゃくちゃ新鮮なオフビート感覚のアクション・コメディになっている。あたしゃ、最初から最後まで笑いっぱなしでしたわい。

ユニークさの決め手は、なんといっても主人公メルのキャラクター。人を消すのが仕事の殺し屋が、人から好かれたいと願う八方美人な性格の持ち主である。そのパラドックスが、なんともおかしいの。

そこんとこをとってもうまく描いたのが、メルと仲間たちがギャングのアジトを襲撃する場面。仲間のシスコらが適当にサボリを決め込んでいるあいだ、メルはバリバリとターゲットを始末していく。その仕事ぶりだけ見ると、彼はものすごく非情な男に思えるのね。ところが、同じ現場に居合わせた女たちには、「君たち、大丈夫?」と優しく声をかける。メルの目には、殺しの標的は“物”、標的以外の女たちは“人間”として映っているわけ。で、こと人間に接するときは、「スウィートなジェントルマンであれ」という信条を持っているのが、メルという男なのです。

このキャラクターは、香港ノワールや日本のヤクザ映画に登場する仁義や美学を重んじるヤクザ者とは、ひと味違う。ある意味で、もっとクール。人殺しの仕事をする自分と、それ以外の場面の自分とのあいだに、きっちり線引きがなされていて、ごく自然に両者を切り替えることができるというタイプ。あえて死語を使わせてもらうなら、新人類の殺し屋なのであります。

そんな彼が、誘拐に手を出したらどうなるか? というのが、ストーリーのポイント。誘拐は、殺しとは違う。相手にするのは、“物”ではなく“人間”。ましてやターゲットは、チャーミングな女の子。というわけで、ついつい人質に対しても「スウィートなジェントルマン」たらんとするメルが、婚約者にも愛人にも八方美人ぶりを発揮していくうち、どんどんピンチにはまりこんで行く――その様子が、めっぽうノリのいいテンポで綴られていきます。

メルが誘拐する女子大生は、日本の電器企業の社長の娘。オヤジの社長が、映画製作に手を出して大失敗。破産に追い込まれるという設定からして、配給元のソニーをおちょくったジョークが盛り込まれている。これを筆頭に、全編、笑えるギャグがてんこもり。そのどれもが、すこぶるスマートに料理されてます。

日本人の社長が「蝶々夫人」をバックにハラキリしようとしたり、ユダヤ人の婚約者ファミリーとメルの『招かれざる客』状態のご対面など、エスニックなギャグのかまし方も気が利いているし、社長がハイテク企業の意地を賭けて持ち出す「逆探知バスター、バスター、バスター」なる小道具の使い方にも大笑い。さらに、婚約者一家が礼拝に行っているあいだ、メルと人質がユダヤ料理を作り、チキンの詰め物をこねくりまわしているうちにケミストリーが芽生えるという、ロマンスの展開も実にキュートです。

シチュエーションのおかしさ、タイミングのおかしさ、パロディ的なおかしさ――ここにはいろんな笑いの要素が詰め込まれているんだけど、それがいちいちツボにはまってる。これは脚本家ベン・ラムジィのセンスなのか、それとも監督の腕なのか? どっちも今後を注目していきたい感じ。

命の危険にさらされているくせに「延滞ビデオを返さなくちゃ」と律義なメルが、ビデオ屋でシスコと一戦を交えるクライマックスも、笑ったのなんの。このシーンと、最初のギャング襲撃シーンでは、香港仕込みのアクションも存分に堪能できます。ブレイクダンスみたいに背中でクルクル回りながら、銃をぶっぱなすマーク・ウォールバーグのスタントが最高にカッコイイ! さすが、元ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック。芝居もイケるし、アクションもできるし、おまけに歌って踊れる彼って、もしかしたら10年にひとり系の逸材かも!? 器用すぎてダメになるケースもありえるけど、とりあえずYAZAKIは、いまイチオシのスターとして行く末を見守って行くつもり。

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