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ハーフ・ア・チャンス1 CHANCE SUR 2 1998年フランス 監督パトリス・ルコント 脚本パトリック・ドヴォルフ/パトリス・ルコント 撮影スティーヴン・ポスター 出演ジャン=ポール・ベルモンド/アラン・ドロン/ヴァネッサ・パラディ/エリック・デフォス ●109分 シネマパリジャン配給 1998年10月より銀座テアトル西友にて公開予定 『ボルサリーノ』から28年ぶりに、アラン・ドロンとJ=P・ベルモンドの顔合わせが実現。ヴァネッサ・パラディを交えたトリオが、ロシア・マフィア相手に復讐ゲームを仕掛けるアクション・コメディ。監督は、『髪結の亭主』のパトリス・ルコント。 |
STORY20歳のアリス(パラディ)は、高級車窃盗の常習犯。その罪で服役し、ようやく出所の日を迎えた彼女は、判事から亡き母の遺言が吹き込まれたテープを渡される。「20年前、ママはふたりの男性を同時に愛したの。そのどちらかが、あなたのパパよ」 これを聞いたアリスは、さっそく父親候補のひとりレオ・ブラサック(ベルモンド)のもとへ。さらにもうひとりのジュリアン・ヴィニャル(ドロン)にも会いに行く。中古高級車の販売業を営む外人部隊あがりのレオと、表向きは高級レストランのオーナー、その正体は大泥棒というジュリアン。ふたりは、たちまちアリスをめぐってライバル意識を燃やす。が、結局どちらが父親かという結論は、週末明けのDNA鑑定を待つことになった。 その晩、ひとりディスコに出かけたアリスは、トイレでヤクザと思しき男にからまれてしまった。必死に逃れたガソリンスタンドで給油中のプジョーを拝借し、やっとの思いでジュリアンの家に逃げ帰るアリス。だが、そのプジョーはロシア・マフィアのもので、トランクの中には大金が隠されていた。すぐさま居所をつきとめられ、財産を破壊されるジュリアンとレオ。こうなったら黙っちゃいられない。トリオを組んだ父と娘の反撃が始まる! |
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YAZAKI ★★(98/06/05 朝日生命ホール) 「この映画の撮影中、いちばん面白かったのは、ドロンとベルモンドが、それぞれパラディに気に入られようとして張り合っていたことだった」と、来日したルコント監督が言ってました。いい年こいたオヤジがコノォ……と思うけど、これは、そのいい年こいたオヤジのいまだ衰えない稚気を楽しむ映画。62歳のドロンと、65歳のベルモンド。とっくに枯れてておかしくないふたりが、本気でオレさま度を競いあうという、ね。そこんとこを面白がるのが正解の映画なのであります。 ゆえに、「ドロンって誰? ベルモンドって何者?」という人には、ちーっとも面白くない映画かもしれない。そういう人は、『太陽がいっぱい』とか『勝手にしやがれ』をビデオで予習し、全盛期の彼らを知ってから挑むように(ベルモンドの場合は、ホントは『リオの男』を代表とする男シリーズがいいんですけど、ビデオで出てないと思うから)。 ついでに言うなら、ルコントの『髪結の亭主』や『仕立て屋の恋』における完成度の高い世界を期待している人も、「いったいこの監督はどうしちゃったんだ?」という気になるかも。ただ、私が思うには、ルコントという作家は、『髪結の亭主』にしろ『タンゴ』にしろ『パトリス・ルコントの大喝采』にしろ、一貫して「オヤジの稚気」をネタにしてきた人だと思うので、そういう意味では、この『ハーフ・ア・チャンス』は、『リディキュール』なんかよりも正統派のルコント映画だと思えるわけよ。 『髪結の亭主』のジャン・ロシュフォールがアラブ踊りに熱中したがごとく、『タンゴ』のリシャール・ボーランジェが女房殺しにアツくなったがごとく、そして『大喝采』の3人組が女優のケツを追っかけまわしたがごとく。いくつになっても色即是空の境地に達せず、己の煩悩に振り回されて生きるオヤジたちのオチャメな部分――お釈迦様の掌の上でダンスを踊る孫悟空の部分を、「かわいいじゃないの」というスタンスで描く。そこんところにルコントの真価を見出している人なら、今回、彼がドロンとベルモンドという御大を担ぎ出して、ふたりの稚気を闘わせたっていう試みも、素直に納得がいくはず。さらに、ルコントの前歴はコミックス作家であり、けっこうぶっ飛んだオチャラケも平気でやれる人だという点を頭に入れて劇場に向かえば、もう完璧であります。 さて、肝心の映画の中身。ドロンとベルモンドのどちらかが、ヴァネッサ・パラディ演じる不良娘の父親だというお膳立ては、ロビン・ウィリアムスとビリー・クリスタルが瞼の父の座を争った『ファーザーズ・デイ』に似ていなくもない(『ファーザーズ・デイ』も、もとはフランス映画だったしね)。あちらは息子をめぐるお話だったけど、こっちは年頃の娘をめぐるお話。というわけで、ふたりの「オレがオヤジだ合戦」にも、いっそう熱が入るわけ。 「この娘の車好きなところはオレそっくり」と、自信満々のベルモンド。彼がパラディをサーキットに連れ出したり、クラシック・スポーツ・カーのコレクションを自慢したりして得点を稼げば、ドロンは自家用ヘリにパラディを乗せ、「な、オレのほうがすごいだろ?」と、財力で勝負する。そんなふたりの張り合う姿を微笑ましく眺めるパラディ。オヤジふたりを掌にのせ、無邪気に遊ばせて喜んでいるようなキャラクターが、小生意気なパリジェンヌそのまんまって感じのパラディによく似合ってます。 そのパラディが、ロシア・マフィアの金の入った車を乗り逃げしたことから、3人は危機に巻き込まれていくことになる。パラディたちは奪った車を乗り捨てたんだけど、そこに車を見張っていた刑事が現われ、現金を持っていってしまったので、3人はマフィアの「金返せ攻撃」にさらされることになるのね。で、家屋敷を爆破されたり、車のコレクションを破壊されるにおよび、ドロンもベルモンドも堪忍袋の尾がプッツン。彼らは、外人部隊あがりのベルモンドが隠し持っていた武器弾薬を手に、マフィアへの報復作戦に出ることになる。 このとき、銃を手にしたドロンとベルモンドのバックに、『ボルサリーノ』のテーマが流れるのがご愛敬。オールド・ファンなら、「待ってました! ご両人」と、声をかけたくなるところでありましょう。ほかにも、「オレは演技派だから」というベルモンドのセリフがあったり、縄ばしごを伝ってヘリに上ってくるベルモンドを称して「彼の得意技だ」とドロンが言ったり(男シリーズの有名なスタント)と、御大の昔を知っている人なら思わずニヤリとしてしまう場面も多数あります。 クライマックスでは、マフィアにさらわれたパラディの救出に、ドロン&ベルモンドがマフィアのアジトに乗り込んで行く展開。ドロンは泥棒のテクニックを駆使して内部に潜入し、かたやベルモンドは手製の戦車で撹乱戦法に出る。こういうところのアクションは、いまどきのアクション映画じゃなくて、ロベール・アンリコとかフィリップ・ドブロカとかアンドレ・ユヌベルなんぞのタッチを思わせる60年代のフレンチ娯楽映画のノリ。そこにルコントのコミックス感覚がプラスされた味わいは、どこまでも荒唐無稽。かつ、御大ふたりが頑張っとるという内輪受けの要素が強いので、洗練されたものを期待すると当てが外れます。が、子供のころ、このテのものが嫌いじゃなかった私めなぞは、半分ノスタルジックな気分に浸りながら楽しめました。 それにしても、アラン・ドロンっちゅうヤツは!……と、ここからはギョーカイの裏話ね。私がこの試写を見たとき、ルコント監督が舞台挨拶をして、「8月にアラン・ドロンがプロモーションで来日するので、そのとき、彼に引退するなとみなさんから言ってください」ってなことを言ったのですよ(そう、ドロンは、この映画を最後に引退すると発表していたのです)。 ところがどっこい、ドロンは来なかった。なぜか? というと、来日が決まった段階で、彼は日本の広告代理店などにファックスを送り、CMやディナー・ショーのお仕事がないかと探したらしんですわ。でも、知ってのとおりの不況で、ドロン様に莫大なギャラを払えるだけのお仕事がなかった。というわけで、日本での引退興行でガッポリ稼ごうと目論んでいたドロンは、その当てが外れたのでプロモーション来日もやめちゃった……ってのが、ウワサの真相のよう。 あと、もうひとつのウワサでは、「日本に行くなら勲章をくれなきゃヤダ」と、言ったという説もある。 まあ、最近は俳優よりもビジネスマンとして生きているドロンですが、最後くらいは損得勘定ぬきでスターらしくふるまえばいいのにね。どこまでもガメツイやっちゃ、と、YAZAKIはあきれもうしたです。 |