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試写状

友情の翼

THE BRYLCREEM BOYS

1996年イギリス 監督テレンス・ライアン 脚本テレンス・ライアン/ジャミー・ブラウン 撮影ジェリー・ライヴリー 出演ガブリエル・バーン/ビル・キャンベル/アンガス・マクファーデン/ジーン・バトラー/ウィリアム・マクナマラ ●107分 日本ヘラルド映画配給 1998年10月10日よりシネマカリテにて公開予定

第二次世界大戦中、中立国アイルランドの捕虜収容所には、連合軍とドイツ軍捕虜が同居していた……。史実をベースに、敵同士の将校のあいだに友情が芽生えていく過程を描いた戦争ドラマ。

STORY

 1941年9月、カナダから連合軍に参戦したパイロットのマイルス・キオウ中隊長(キャンベル)は、ドイツ機と激しい撃ち合いを演じたすえ、パラシュートで脱出した。彼は、そこをてっきりフランスだと思い込んでいたが、実はアイルランドだった。中立国アイルランドでは、兵士は全員捕虜になる。キオウも仲間と共に捕虜収容所へ移送されたが、そこは鉄条網で仕切られた同じ敷地内にドイツ軍捕虜が同居している場所だった。
 ジョーク好きのサム・ガン(マクナマラ)と同室になったキオウは、収容所の責任者でアイルランド軍司令官のオブライエン(バーン)が、捕虜たちに自由に外出を許可しているのを知って驚く。国から支給される小遣いをもらい、競馬に興じる捕虜たちは、兵士に課せられた脱走の使命を忘れて呑気に遊び暮らしているように見えた。
 そんななか、仲間のルイスとバイクで脱走する計画を練るキオウ。彼は、牧場農家の娘マティ(バトラー)に恋心を抱くが、彼女はドイツ軍捕虜のルドルフ・シュテーゲンベック(マクファーデン)とも仲がいい。ライバル意識むき出しのふたりは、ダンス・パーティの晩、ついに殴り合いの喧嘩を演じ、独房に入れられる。そこで互いのことを語り合ううち、彼らは不思議と通い合うものを感じるのだった。
 外出許可の仕組みを逆手に利用して巧みに脱走を計ったサムが、英国軍側の裁量で再び収容所に連れ戻されたのは、それからまもなくのことだった。爆撃で新婚の妻を亡くしたサムは、捕虜仲間たちに、「英空軍のパイロットは少年ばかり」と窮状を訴える。その言葉に動かされたキオウたちは、集団脱走計画を立てるのだが……。

SHIMIZU ★★★(98/06/12 ヘラルド映画試写室)

チンプなタイトルで、戦争中の戦闘パイロットの友情もの程度にしか、期待していなかったが、これが清々しい余韻をもった意外な拾いもの。

設定は第2次大戦下の捕虜収容所。とくれば『第17捕虜収容所』『大脱走』などで描かれたドイツの捕虜収容所を思い出すが、ここではアイルランドの捕虜収容所というのがミソ。当時、アイルランドは隣国の英国と違い、独自の中立路線をとっていた。そこでアイルランドの領土を侵犯した兵士たちは彼らの管理下に置かれたといわけで、ここには連合軍の兵士とドイツ軍の兵士が同じ捕虜収容所で、呉越同舟状態。金網を挟んで、連合軍側が歌を歌い行進してくるかと思えば、ドイツ軍捕虜側が毎朝、連合軍の戦死者などの戦果をボードに書き込み、挑発してくる。

主人公は収容所にいれられたカナダの戦闘パイロット。彼は戦友を撃墜したドイツ将校と一緒になり反発しあうが、地元のアイルランド女をはさんで友情が芽生えていく展開です。

アイルランド人所長役のガブリエル・バーンがいい味。収容所は出入りも自由で、酒も楽しめる戦争を忘れてしまいそうな長閑なところ。国云々というより、人間を見ているヒューマンな眼差しのバーンが、この映画の要。そのうえで、敵対関係を超えた人間の心持ちが伸びやかに描かれています。ちょっとした戦争ファンタジーの趣。カナダ兵と貴族出身のインテリ・ドイツ将校との友愛には、『大いなる幻影』の余韻を感じさせます。

随所にアイルランド気質がうまく反映されたアルランド讃歌のような雰囲気が漂います。まず、カナダ兵と鼻っ柱の強い赤毛のアイルランド人ヒロインとの恋模様も面白い。カナダ兵が競馬で買った金で彼女の持ち馬を買って心をつかむ設定も、アイルランドの風土をいかした展開です。カナダ兵とドイツ兵との3角関係の恋模様を、アイリッシュ・ダンスを踊るシーンと男同士の殴り合いの喧嘩シーンが交錯する演出で見せるあたりは、ジョン・フォード映画へのオマージュを感じさせる素晴らしさ。最後の集団脱走を結構するあたりは『大脱走』ふうの軽いサスペンス調。収容所長バーンが飄々とした対応で人間味あふれ、ほのぼのした余韻です。

脇役で登場した俳優志願の青年の、飄々としたキャラも魅力的。彼がロンドンの恋人と結婚するため、見事収容所を脱走。その後、収容所にもどって、結婚の悲惨な顛末を語るシーンもジーンとくる。彼が往年のリック・ネルソンに似たルックスで、のちにMGM映画の『撃墜王』に出演したという設定も楽しい。僕は、この映画、好きですね。

YAZAKI ★★(98/05/27 ヘラルド映画試写室)

第二次世界大戦中、中立を宣言したアイルランドでは、連合軍とドイツ軍の捕虜が鉄条網ひとつで隔てられた収容所に同居していた。「へえ、そんな史実があったのか」と、またまた映画にお勉強させてもらう気分。まずはこの設定のユニークさに、どんなふうに話が転がっていくんだろうと、興味と期待をかきたてられます。

捕虜収容所といっても、温情あふれる民主主義のガブリエル・バーンが責任者をつとめるそこは、学生寮に近いノリ。脱走は御法度だが、外出は自由。連合軍の捕虜たちは、きわめて呑気に暮らしている。

というお膳立てから、ここは戦時下の桃源郷――つまり『まぼろしの市街戦』っぽい寓話的な展開を見せるのかと思ったら、どんどんクリシェの方角に話が進んで行くのでガッカリ。作りようによっては、きわめて面白い映画になったのに……と、もったいない気がします。

クリシェその1は、ドイツ軍と連合軍の描写。毎日行進を欠かさないクソまじめなドイツ軍と、それをムーニングでからかう連合軍。このイメージの作り方が、ハリウッドの古臭い色に染まっちゃってる。

クリシェその2は、アイルランド女を間に挟んだカナダ人とドイツ人の三角関係。これも、よくあるパターンの恋のさやあて劇をなぞっただけという感じ。

クリシェその3は、アイルランド女のキャラ。気が強く、男に屈しない彼女のキャラは、ジョン・フォード映画におけるモーリン・オハラの踏襲。彼女をめぐってカナダ人とドイツ人が殴り合う図も、どっかで見たパターン以外の何物でもない。

つまり、ぜーんぶのキャラクター&ぜーんぶのエピソードがステレオタイプすぎちゃって、ドラマに対する興味がどんどんそがれていっちゃうのよ。おまけに後半は『大脱走』になっちゃうし。ユニークな捕虜収容所の設定が、このドラマのなかでは惜しいことに死んでしまっているのね。

というなかで、私が「オーッ!」と思ったのは、アイルランド女のヒロインがタップ調のフォークダンスを見せるところ。男4人に彼女が加わってのダンスは、目が釘付けになるほどの迫力。このダンス・シーンの最中に、カナダ人とドイツ人の殴りあいが挿入されるんだけど、私的には「もっとダンス見せてよ!」とリクエストしたくなる気分でありました。

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