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試写状

ピンク・フラミンゴ特別篇

PINK FLAMINGOS

1997年アメリカ 監督・脚本ジョン・ウォーターズ 撮影ジョン・ウォーターズ(1972年)/デビッド・インスレイ(1997年) 出演ディバイン/デビッド・ロカリー/ビビアン・ピアース/ミンク・ストール/ダニー・ミルズ/イディス・マッセイ ●108分 日本ヘラルド映画配給 1998年8月1日よりシネヴィヴァン六本木にて公開予定

オリジナル誕生25周年を記念して公開される伝説のトラッシュ・ムービー。ウォーターズ監督宅の屋根裏から発見されたという未公開カットに、監督自身の解説のオマケ付き。

STORY

 メリーランド州ボルチモア郊外。「世界一お下劣な人間」の称号を持つ女優のディバイン(ディバイン)は、いまバブス・ジョンソンと名前を変えて隠遁生活を送っていた。彼女と同じトレーラーハウスに住むのは、卵好きのママ、イーディ(マッセイ)、変態プレイに目のない息子クラッカー(ミルズ)、のぞきが趣味の金髪娘コットン(ピアース)。血のつながりこそないが、彼らはれっきとした家族だった。
 ディバインが誕生パーティの買い物にダウンタウンへ繰り出したころ――。街の一軒家に住むコニー(ストール)とレイモンド(ロカリー)のマーブル夫妻は、自分たちこそ「世界一お下劣な人間」であると世間に認めさせるべく、着々と作戦を練っていた。彼らは若い娘を誘拐し、執事のチャニングを使って妊娠させてはレズのカップルに赤ん坊を売り飛ばすという商売を営んでいたのだった。それだけでは飽き足らない夫妻は、スパイを使ってディバインの居所をつきとめ、1年間熟成させたウンコを送りつけて称号争いの宣戦を布告。さらに、誕生パーティの乱交を警察に通報し、トレーラーハウスに焼き討ちをかける。
 もちろんディバインの一家も黙っちゃいない。お下劣度を極めた両者の復讐合戦は、とどまるところを知らずエスカレートしていく。

SHIMIZU ★★★(98/05/14 ヘラルド映画試写室)

「これをアップしようか!」と言う僕に「エッ!」と気乗り薄だった相棒のYAZAKI。けど、わざわざ、このアップのため試写会にでかけてくれたことに、まず深く感謝。

これはたった1万2000ドルの製作費で作り、深夜映画で爆発的な人気を呼び、当時700万ドルのヒットになった、ジョン・ウォーターズ監督の、'70年代の超カルト作です。映画業界にいるならトーゼン、見ていなければならない1作でありますが、実は、長年見よう見ようと思い、なかなか見る機会がなく、今回初めて見た次第です。だから、私めにとっては新作も同然。しかも「特別篇」というオマケまでついている有り難さ。

当時「史上最もお下劣な映画」として売った作品ですが、本当、全編お下劣のオン・パレード。登場人物がいちいち、強烈な反道徳・反社会のキャラクターばかり。主人公は「filthiest person in the world(世界で最も不浄なヤツ)」と呼ばれる妖気漂うディバイン。娼婦で殺人鬼のアウトローでもある彼女はボルチモアの郊外で、卵が異常に好きなママ・イーディとトレーラーに住んでいる。そんなディバインの宿敵が彼女の行動に嫉妬するマーブル夫婦。女たちを誘拐し自宅の地下に軟禁、彼女たちに精液を注入して生産した赤ん坊を売り払う悪逆非道の連中であります。

お話はディバインとマーブル夫婦との復讐合戦という無邪気でシンプルな設定ですが、濃厚で妖しい人間描写が、形容しがたいほど強烈な臭気を感じさせる。凄く変態的な形容で恐縮しちゃうけど、思わずウンチやおなら、あるいは車の排気ガスでもいいや、それらの臭いをかいで、その快感につい引きずり込まれた子供の頃を思い出す、といったらよいでしょうか。もう、妖しい刺激に満ちた世界なのですよ。

ディバインやママ・イーディなど、異形なものへの偏愛もひときわ輝いているし、ときにわい雑、ときにブラック、ときに高笑哄笑。とりとめもなくお下劣なんだけど、1度見たら、もう忘れられなくなるわけですね。そのエネルギーの源は、ディバインでありましょう。ここではドラッグクインという設定ではなく、女という設定です。彼女は巨体をぶるぶるいわせながら動き、喋る図だけで、画面が占領され、目が釘付け状態になってしまう。恐らく、映画史上のお下劣ヒーローとしてトップにランクされること確実です。

劇中彼女のお下劣シーンで、とりわけ笑いながら感心したのは、宿敵のマーブル夫婦の家に潜入したディバインが夫婦の皮のソファーをべろべろナメまわし仕返しする図。なんともフェチ的でナンセンスの極み。こんなシーンを考えたウォーターズの、非凡なコメディセンスにただただ脱帽という感じでした。

ウォーターズとディバインにはお下劣でありながら、どこかウンコを弄ぶ子供のような稚気あふれる感覚があって、ね。そこがどうにも憎めないってところがあると思った。

最後にディバインが本物の「ウンコ」を食べ微笑むシーンで、文字通り「filthiest person in the world(世界で最も不浄なヤツ)」になったディバイン。彼のサービス精神にゲゲゲとなる人もいっぱいいそうだけど、これは彼が即興で演じたそう。彼って、カメラの前なら、ナンでも演じる陶酔の人だったのかもね。

特別篇では最後にウォーターズが登場し、こんなシーンも撮った、あんなシーンも撮ったとカットされた場面を採録して紹介してくれるのも、楽しいよ。それにしてもママ・イーディという素人おばさんの存在感も、子供大人みたいで忘れられないね。

YAZAKI (98/06/08 ヘラルド映画試写室)

ビデオではなく試写室で見た映画ですが、あえて★の評価は控えさせてもらいました。理由は、2つ。ひとつは、この映画に対する気持ちが、以前見たときと変わらなかったこと。もうひとつは、「伝説のトラッシュ・ムービー」という枠を取っ払って考えた場合、この映画に対する評価の基準となるものが、私のなかには存在しないからです。

「ああ、あんなシーンもあったけ」などと振り返りながら見た今回のリバイバル版。上映中、私は、『サイド・ショウ』というミュージカルに対して、自分が抱いた感覚を思い起こしていました。『サイド・ショウ』は、映画『フリークス』に登場するシャム双生児の姉妹を主人公にしたミュージカルで、興行成績がふるわず、1年たらずでクローズとなったショウであります。ミュージカル・ナンバーのメロディがバツグンに美しく、題材も演出も意欲的。シャム・ツイン姉妹がそれぞれの愛に傷つきながら「私は私」というアイデンティティに目覚めていくドラマは、女の自立モノとしても大変によくできたものでした。

が、しかし。これを見ながら、私は、劇中のミュージカル・ナンバーとして繰り広げられるフリークス・ショウの部分を、素直に楽しめない自分を感じてしまったのです。早い話、そのテのものは娯楽として見たくないという。

『ピンク・フラミンゴ』に対する気持ちも同様で、見たいか見たくないかと問われれば、見たくない。犬のウンコ食い、精液注射、歌う肛門、ニワトリ3P。これら生理的な嫌悪感をかきたてる醜悪のオンパレードを、あえて見て何かを感じようという気が、私にはどうしても起こらないわけです。

なのになぜ、試写に行ったかと申しますと、先に見たSHIMIZU氏にNGカットのことを聞かされたから。3Pに参加したニワトリをディバインが料理する場面とか、スパイの女をクラッカーとコットンが殺しに行く場面とか、本編でカットされた部分が、映画の最後にウォーターズ監督の解説付きで紹介されるわけですが。なかでも、3Pのニワトリを食っちゃうくだりはカニバリズムを連想させ、もし本編に残っていたらいちばんショッキングなシーンになっていたんじゃないかと思います。

つまりですね、ホームムービー調の素人くさい映像で、醜悪の数々を描き出すこの映画には、多分にフィクションとドキュメンタリーがないまぜになったノリがあり、これをつきつめるとスナッフ映画になるんじゃないかってことを感じさせるわけですよ。スナッフの一歩手前、人殺しにいたるギリギリのところに、犬のウンコ食いがあるという感じ。エロ・グロ・ナンセンスを、笑って許せる範囲まで追求するとこうなりますという、そのヤバさが、この映画のカルトたる所以なんでしょうがね。

もうひとつ、先に言った『サイド・ショウ』を思い出した理由は、ディバイン、ママ、クラッカー、コットンという疑似家族が、フリークス・ショウの集団を思わせるノリだったから。ドラッグ・クィーンの元祖とも言うべきディバインのメイクが、サーカスのピエロから来てるなと思ったのは、今回の発見でした。

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