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ザ・ブレイクA FURTHER GESTURE 1996年イギリス=スペイン 監督ロバート・ドーンヘルム 脚本ロナン・ベネット 撮影アンジェイ・セクラ 出演スティーブン・レイ/アルフレッド・モリーナ/ロサナ・パストール/ブレンダン・グリーソン/ホルヘ・サンス ●102分 エース・ピクチャーズ配給 1998年7月上旬よりシネスイッチ銀座ほかにて公開予定 脱獄してニューヨークに逃れたIRAのテロリストを、『クライング・ゲーム』のスティーブン・レイが演じるサスペンス。『バラの刻印』『チキンハート・ブルース』のロバート・ドーンヘルム監督。 |
STORYダウド(レイ)は、IRAの活動家。ベルファストの刑務所に服役していた彼は、仲間の脱獄計画に便乗。逃走に成功し、ニューヨークに亡命して新生活を始める。安ホテルに暮らし、レストランの皿洗いで糊口をしのぐ日々。惨めで孤独なダウドの生活に変化が訪れたのは、ホテルの住人の痴話喧嘩に首を突っ込み、脇腹に刺し傷を負ったことがきっかけだった。心配したレストランの同僚トゥーリオ(モリーナ)のアパートに引き取られ、彼の妹モニカ(パストール)の看病を受けることになったダウド。やがて彼は、グアテマラ人のトゥーリオとモニカが、ニューヨークに滞在している故郷の独裁者の暗殺計画を立てていることを知る。 いつしかモニカを愛するようになったダウドは、暗殺計画をやめさせようとするが、彼らの意志は固かった。このままではモニカが命を落とすのは目に見えている。ダウドは自ら作戦の指揮を勝って出て、実行部隊に加わる。IRAの残党を追跡するFBIの手が、すぐそこまで迫っていることも知らず……。 |
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SHIMIZU ★★(98/06/08 メディアボックス試写室) 眉をひそめ、口元をすぼめ、顔全体に侘びしさを醸し出す。人の良さを忍ばせた孤独な表情。それを見るだけで、値千金を思わせる俳優が、スティーブン・レイです。僕にとって、この10年のベスト作の1本『クライング・ゲーム』での彼の演技は、その白眉といえましょう。 映画は『クライング・ゲーム』のラストを想わせる、刑務所の面会シーンからはじまります。レイが演じるはIRAのテロリスト、ダウド。彼は面会に来た女性をこれ以上不幸にできないと、別れを告げます。いつもの侘びしげな表情はここでも健在! ググッと彼の気持ちに引き込まれる感じ。面会は男女の愛の交歓の場という感じで、テロリストたちが女とキスを交わし、手を女の股間に忍ばせます。と、股間から静かにナイフなどの武器が手渡される。ここからブレイク・アウトの予感で、刑務所破りのサスペンスへと畳み掛ける出だし。結構快調であります。レイも急きょ、脱走計画に加わり、辛くも友人と2人が脱走に成功します。 これは、NYに逃れた孤独なテロリストの物語です。彼は安アパートに住み、皿洗いをしながら生計をたてる。が、ここでも人の良さがつい出てしまうのが、レイの持ち味なんだよね。アパートで夫婦喧嘩の仲裁に入り、暴力夫を殴って、その場を収めたが、なんと腹いせに妻からナイフで脇腹を刺される始末。病院にも行けず、ベッドで耐えるのみ。そんな彼にレストランの同僚である、グアテマラ移民の仕事仲間トゥーリオ(アルフレッド・モリーナ)が手をさしのべ介護してくれる。NYの吹き溜まりで、心を通わすエトランゼ同士の友愛。それに彼の妹モニカとの恋がからむ。 馴染みのないNYでの生活のなかで、彼は人生をどう再生していくのだろうか。なんて思い入れも、次第に薄れていく話の展開。IRAテロリスト、NYへ行くという感じで、ダウドのテロリスト・モードが強調されるテロサスペンスのノリに一気にギアチェンジ。厄介になったトゥーリオらが立てた、グアテマラからNYに来ていた非道な大佐の暗殺計画をかぎつけ、持ち前のテロリスト技を披露していくわけであります。暗殺は「素人衆にはまかしちゃおけない、私にまかせなさい!」というダウドの手慣れた態度。 FBIの手がまわっているダウドが追い込まれていくあたり、もっとなにかお話や演出に綾があってもいいものを、ただずるずると結末を急いだ感じ。なにか、尻すぼみの印象が拭えませんね。せっかく孤独なテロリストの心象を持ち出したのだから、もっと重みがあってもいいと思うけどな。レイ・ファンとしては残念な主演作と思ったけど、これが彼の原案ということで、もっと残念。もう、彼もベルファースト出身のテロリストだけじゃなく、違うキャラも編み出してもらいたいもんです。これじゃ、ベルファースト時代のライバル、リーアム・ニーソンに遅れを取っちゃうぞ。 |
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YAZAKI ★★(98/06/01 メディアボックス試写室) しょっぱなの刑務所脱獄までのシークエンスがひじょうに面白いので、そこを中心に書かせてもらいます。 シーンは、IRAの男たちが、恋人や妻と面会するところから始まります。恋人に、別れを告げようとする主人公のレイ。いっぽう、他の男たちは、面会の女たちと熱いキスを繰り広げている。なかには女のスカートに手を突っ込む男もいるけど、看守は見て見ないフリ。だが、ここが盲点。実は女はスカートの下に武器を隠し持っていて、それを男に手渡していたのです。 というわけで、ズボンの前をはちきらせながら監房に戻る脱獄の首謀者ふたり。そのボス格の男に「お前も仲間に加わるか」と問われたレイは、イエスともノーとも決めかねて逡巡する。が、脱獄決行組が看守ともみ合いになり、銃が自分の足元に転がって来たとき、ついにレイは自分も脱獄に加わる覚悟を決める。そのとたん、さっきまでの迷いがウソのように、テキパキと実行を指示するレイ(このあたりの演技がバカウマ)。 かくして看守に変装し、食料の運搬トラックを乗っ取る計画は、まんまと成功。トラックに乗りこんだ囚人たちはゲートめざしてまっしぐらに突き進む。しかし、ここに落とし穴があった。ゲートの手前で看守ともめているうち、看守の交代時間がやって来てしまい、レイは顔見知りの遅番の看守に変装を見破られてしまう。レイは、なんとか看守を傷つけないようにして逃げようとするが、結局、看守はゲートを強行突破したトラックにひかれてしまうことに。 と、このあとも塀の外を舞台にした追跡劇が続くのですが、私が感心したのは、基本はアクションというこの短いシークエンスのなかで、きちんとレイの人となりが描けている点。彼が即座に脱獄チームに加わらないところからは、彼がIRAのテロ活動から身を引こうとしていることがわかるし、その後の行動からは、テロリストとしての彼はかなりのやり手だってこともわかる。 さらに、看守に対する態度からは、彼が基本的に非情になりきれない優しい男だということもわかる。とくに、この最後のポイントから、IRAの政治犯が収容された刑務所の特殊な状況が浮かびあがってくる点が面白い。それは、囚人と看守という立場こそ違え、両者のあいだには祖国をひとつにする同胞として通い合うものがあって、ある種の信頼で結ばれているってこと。その微妙なニュアンスが、通常の刑務所モノとはひと味違ってとても新鮮に感じられました。 さて、こんなふうに苦労して脱獄を果たしたレイが、ニューヨークで潜伏生活を送るうち、暗殺計画に荷担することになるというのが、実はドラマの本題。なんだけど、正直申しまして、このメインの部分は話が単調すぎてつまらない。ホテルで刃傷沙汰に巻き込まれたレイのことをフロントの兄ちゃんが通報し、FBIがレイを見張るようになる。というおいしいフリがあるにもかかわらず、暗殺は暗殺、FBIはFBIと、事件がきっちり分かれて進んで行く作りが、きわめて不自然に感じられてしまうのです。 普通、こういう場合は、FBIの介入で暗殺計画があらぬ方向に行くとか、暗殺に荷担すると見せかけたレイが暗殺を阻止する側にまわるとか、何かしらドラマがふくらみながら進展して行くもんじゃないの? と、中盤から「愛のために頑張るもんねボク」モードに入っちゃったレイを見ながら、思わずにはいられませんでした。サスペンスの妙味を感じさせるヒネリってものが、どうもこのドラマからは欠落している印象。グアテマラ人兄役のアルフレッド・モリーナは、最近のお気に入り俳優のひとりなんですけどね……。 |