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試写状

Uターン

U-TURN

1997年アメリカ 監督オリバー・ストーン 脚本ジョン・リドリー 撮影ロバート・リチャードソン 出演ショーン・ペン/ビリー・ボブ・ソーントン/ジョン・ボイト/ジェニファー・ロペス/パワーズ・ブース/ニック・ノルティ ●125分 松竹富士配給 1998年6月上旬より東劇ほか松竹・東急洋画系にて公開予定

ジョン・リドリー原作の「ネヴァダの犬たち」を、オリバー・ストーン監督が映画化。異次元のようなアリゾナの町で殺しに手を染めた男の「堕ちてゆく宿命」をたどる犯罪サスペンス。

STORY

 1万3千ドルの借金を期日に返さなかったため、2本の指を失ったボビー(ペン)。いま彼は、その金をラスベガスのマフィアに届けようと、アリゾナの砂漠を走っていった。分かれ道に現われた「Uターン可」の標識。その横を通りすぎたボビーの車は、しばらくしてラジエーター・ホースの故障に見舞われる。
 修理工場を求めてたどり着いたのは、「スペリア」という町。愚鈍そうな修理工ダレル(ソーントン)に車を預けたボビーは、喉の渇きを癒すため町中へ。そこでカーテンを運ぶグレース(ロペス)と出会った彼は、誘われるまま彼女の家に。ふたりは情事におよぼうとするが、タイミング悪くグレースの夫ジェイク(ノルティ)が帰宅。ボビーは、あえなく家を叩き出されてしまう。
 トボトボと町に引き返しはじめたボビー。すると、そのあとをジェイクが追って来た。「町まで送ってやる」と申し出た彼は、助手席のボビーに驚くべき話を切り出した。「保険金目当てにグレースを殺してくれないか」。これを冗談と受け流して車を降りたボビーは、飲み物を買おうとコンビニに立ち寄る。と、そこに2人組の強盗が現われた。強盗に向けてショットガンをぶっぱなすレジの中年女。弾は1万3千ドルが入ったボビーのカバンに当たり、札は粉々に砕け散った。
 いまやボビーに残された全財産は、ポケットの小銭だけ。切羽詰まった彼は、ジェイクの申し出を受けようと、彼のオフィスを訪ねるのだが。

SHIMIZU (98/04/24 松竹第一試写室)

ヘビーな「社会派作」がお好きなストーン旦那が、たまに違う路線をみせておきたいと思ったのか、息抜きのつもりなのか、ま、彼一流のしつこさで放った「ノワール作」であります。

アリゾナの砂漠を'64年のマスタング・コンバーチブルで疾走する男がひとり。わけありの、包帯を巻いた左手。路上ではハゲタカが死んだ犬をついばむ図。主人公の車は猫をひき殺す。主人公はショーン・ペン演じるボビー。UターンOKの標識がある道を選び、ある田舎の町に入っていくが、車のラジエターホースが破裂し車が動かなくなり、この町に関わるはめになる導入。路上で物乞いをする怪しい盲目の傷痍軍人(最近出すぎのJ・ボイト)、修理代をつり上げる狡賢い車の修理工(ビリー・ボブ・ソートン)などストーン好みの濃い演技の、変人キャラがまず配置されている。

で、お話はボビーが町でフェロモン満点の女グレースに引き寄せられ、彼女の家を訪れたところから展開。1発やれる、ラッキーと思ったら、そこに亭主が戻ってきて鼻にパンチ1発。退散するボビーに亭主ジェイクが、女房殺しを持ちかけるが、ボビーは断る。

実はボビーはマフィアに借金返済を迫られ、左の手の指を切断された身体極まった状態。手持ちに返す金を抱えていたが、その紙幣いりのケースがコンビニ強盗との争いで粉々になり一文なし状態へと悲惨な状態に追い込まれて、殺しをひきうけざるを得なくなる設定までのお膳立てが、いかにも作りすぎでもたもたしている。ボビーがマフィアに電話をして居場所を告げて金を無心する図も、この男のまぬけぶりが窺える。

ストーンの演出はクローズアップの多用と細かいカットで、せわしなく彼らをなめまわす感じだが、浅薄な登場人物たちのせわしないやりとりを見るだけで、ストレスがたまる一方。物語が2転3転し、『チャイナタウン』ばりに意外な事実をあかす手口も相変わらずあざとさが先走り、しかも、どれもどこかで見たような感じで、オリジナリティのかけらもなし。

そう、夫から女房殺しを依頼された主人公がファムファタール的な人妻にたらしこまれ、夫殺しを試みる設定のノワール映画では、なんたってジョン・ダール監督、ニコラス・ケイジ主演の傑作『レッド・ロック』が白眉。ストーン旦那のノワール作は、この足元にも及ばないね。

YAZAKI ★★(98/04/24 松竹第一試写室)

アリ地獄といいましょうか、魔界といいましょうか、ブラックホールといましょうか。アリゾナの砂漠の果てにポツンとあるさびれた町。そこに迷いこんだ男の運命が、悪いほうへ、悪いほうへ転がっていく模様を、保険金殺人の犯罪サスペンスの趣向を交えて描いた映画です。

『ブレーキ・ダウン』の背景に、『アフター・アワーズ』+『ブラッド・シンプル』の展開と言えば話が早いか。あと、つねに大衆ウケを狙ってあざとい玉を投げてくるオリバー・ストーン旦那らしく、デビッド・フィンチャー、タランティーノあたりのテイストも入ってます。

オープニングは、ヤクザに指ツメされた主人公のショーン・ペンが、借金を返しに砂漠の道をひた走る映像。道路脇にコヨーテの死骸をつつくハゲタカがいたり、キャストのクレジットがフィルム傷のように浮かんできたりと、ストーン旦那の演出は、見る側の神経を逆なでするようなタッチ。そうこうしているうちに、ペンは道が二股に分かれた地点までやってくる。右に進むか、左に進むか、それとも「UターンOK」の標識に従って後戻りするか。三択を迫られたペンが右の道を選んだとたん、車が故障。魔界に足を踏み入れてしまったペンの悪夢は、こうして始まっていきます。

彼がたどり着く町の名前は、スペリア(SUPERIOR)。きわめてゴースト・タウン的なこの町は、名前のごとき極上なところはひとつもなく、時間も空気もドヨ〜ンと淀んでいる雰囲気。ここに磁石を持ってくるとクルクル回り出すような、異次元の匂いがプンプン漂っている。愚鈍と狡猾を絵に描いたような修理工(『スリング・ブレイド』のビリー・ボブ・ソーントンがカメレオン演技)、予言者めいた盲目のホームレス(ジョン・ボイト)、後頭部に「ニトロ」の剃りを入れた荒くれ青年(フォアキン・フェニックス)と、住人たちも実に不気味。

そんな彼らと町全体が発散する毒気に、生気を吸い取られて行くかのようなペン。女の誘惑に乗れば亭主が現われる、コンビニに入れば強盗と鉢合わせして有り金全部を吹っ飛ばされる、はやく町からおさらばしようと修理工場に戻ってみれば車を解体されたあげく150ドルを請求される、コーヒーを飲みに行ったダイナーでは若い女(クレア・デーンズ)に小銭をねだられたうえ、その恋人(フェニックス)から袋叩きにされかける……と、もうトコトン不幸な目にあいつづける。

そういう悪夢を積み重ねて行く描写は、ストーン旦那が大嫌いな私にも、けっこう面白く感じられました。とくに、ペンが町を出て行く最後の手段と思って必死で手に入れたバスの切符を、フェニックスに食われてしまう場面などは、悪夢が笑いに絶妙につながっていく感じ。

というわけで、町を出て行く足も、金も運もプライドも何もかも失ってしまったペンは、ジェニファー・ロペスと結託し、ロペスの夫ニック・ノルティを殺して隠し金を奪う計画に乗る。実は最初、「保険金がほしいから妻を殺してくれ」とペンに持ち掛けたのはノルティのほうだった。が、ロペスと愛し合う仲になったペンは、よりでっかい山に己の未来を賭けようとする。

この「愛欲」オチから後の展開が、なんつうかシマらない。ノルティ宅に忍び込んだペンが、ノルティと鉢合わせ。彼の側に寝返ると見せかけたりするくだりにはサスペンスの片鱗が感じられるものの、ノルティとロペスの因果関係も含め、話の成り行きに意外性ってものがないんだよね。

疑心と裏切りのパターンがドンデン返しっぽく繰り返される作劇は、だたもう、くどくいばかり。愛よりも貪欲さが勝り、結果、全員が破滅に追い込まれていく展開のなかで、妖婦の魅力を秘めていたロペスがどんどん普通の女になっていっちゃうのが、とくにいただけない。ま、ストーン旦那としては、この後半で、B級パルプ・フィクションの味を狙ったんだろうけどね。

ただ、さまよえる一匹狼のペンが、エサを求めてうろついたあげく結局はハゲタカにやられてしまう――それを砂漠の町の不気味なシチュエーションのなかで見せて行くという全体的な構図自体は、さすがにしっかりしているし、面白いとも思う。多分、この映画があと30分短く(もちろんカットするのは後半部分)、新人が監督していたら★★★つけていたと思うよ。なんだかんだ言っても、ペンの演技は、やっぱり天才的にウマいしね。

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