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試写状

ジャッカル

THE JACKAL

1997年アメリカ 監督マイケル・ケイトン=ジョーンズ 脚本チャック・ファーラー 撮影カール・ウォルター・リンデンロウヴ 出演ブルース・ウィリス/リチャード・ギア/シドニー・ポワチエ/ダイアン・ヴェノーラ/マチルダ・メイ ●125分 東宝東和配給 1998年6月より東宝洋画系にて公開予定

正体不明の暗殺者ジャッカルと、彼を追い詰めるべくFBIに駆り出された元IRA幹部の暗殺者。首都ワシントンを舞台に、因縁の対決が繰り広げられる。『ボーイズ・ライフ』のマイケル・ケイトン=ジョーンズ監督によるサスペンス・アクション。

STORY

 世界で猛威をふるうチェチェン・マフィアを壊滅させようと、ロシア情報局とFBIが手を結び、モスクワで合同作戦が決行された。指揮を取るのは、ロシア側のコスロヴァ少佐(ヴェノーラ)とFBIのプレストン副長官(ポワチエ)。彼らは、マフィアのボス、テレクの弟を射殺するが、これによってテレクの恨みを買う。
 弟の死の報告を受けたテレクは、大規模な報復計画を企て、暗殺者ジャッカル(ウィリス)を雇った。7千万ドルの報酬でこの大仕事を引き受けたジャッカルは、偽造パスポートと変装を駆使してヘルシンキからイギリス、カナダへと飛び、着々と殺しのお膳立てを整える。
 その動きを察知したコスロヴァとプレストンは、刑務所に服役中の元IRA幹部デクラン・マルクィーン(ギア)を訪ねた。デクランを通じて、ジャッカルの素顔を知る唯一の女イザベラ(メイ)に接触するのが、彼らの目的だった。が、自分もジャッカルの顔を知っていると主張するデクランは、捜査に協力する代わりに刑務所から出してくれと取り引きを持ち掛ける。プレストンはこれを承諾し、デクランはジャッカル追跡に加わった。
 カナダで武器を入手したジャッカルが、ヨット・レースにまぎれてアメリカに入国するのではないかというデクランの推察を頼りに、捜査陣はシカゴのハーバーに飛ぶ。ついに桟橋で対面するジャッカルとデクラン。だが、武器の携帯を許されないデクランに、ジャッカルが仕留められるはずもない。そして浮かび上がる捜査陣内部の裏切り者の存在。イザベラの身に危険が迫っていると気づいたデクランは、彼女の隠れ家に急行するが……。

SHIMIZU ★☆(98/01/30 日劇東宝)

このタイトルを聞いただけで、映画ファンなら『ジャッカルの日』を想像するはず。僕もこれはなにがしか『ジャッカルの日』と関係がある「リメイクなのか?」と思ったら、時代も設定も違う。伝説の殺し屋の名がジャッカルというだけ。映画の最後で「彼は何者だったのだろう」なんてセリフが聴こえて、「えええっ?! なにそれ」であります。

ジャッカル役は、ブルース・ウィリス。彼がチェチェン・マフィアのボスからアメリカの要人を暗殺する密命を受ける。『ジャッカルの日』ではドゴール大統領だったが、劇中示された写真は観客には見えず、すぐにシュレッダーにかけられる。標的はFBI長官をにおわせるが、実は終幕で別の人物が標的だったとわかる趣向であります。

ジャッカルの顔を知っているというので捜査に協力するはめになった男がリチャード・ギア演じる元IRAのスナイパー、デクラン・マルクイーン。

物語はデクラン対ジャッカルという構図。映画的にもブルース対ギアという興行関係者が喜びそうな並びです。その期待に背かないよう2大スターの見せ場が十全に仕組まれています。まず、ブルースは徹底した変装演技。いろんなタイプの人間になりすます『セイント』状態。でも、ゲイの男の家を訪れた変装したジャッカルが、TVのニュースで手配写真がでただけで(これは別な変装顔のはずなのに)本人にとばれる程度の変装ってのが、間が抜けているわけです。彼が動き回る行程も、いまいちわかりにくく、そのため彼の行動自体がサスペンスのはずが、そうなっていかない。なんともバタバタした演出。

片やギアは慣れないアイルランド訛りで四苦八苦の演技。ジャッカルとの因縁があるのかと思うと、別に大したことがあるわけじゃない。ヨット置き場や、地下鉄の構内と、ふたりのSHOWDONWが用意されていますが、なんの確執もない顔合わせ状態で、盛り下がる一方というのが情けない。『フェイス/オフ』の爪の垢でも煎じて飲んでもらいたいものです。

サブの女たちも、ロシア情報局のヴァレンチーナ役のダイアン・ヴェノーラ(彼女は結構いい味だしてます)がギアと唐突に心を通わせたり、昔のギアの恋人マチルダ・メイ(随分、老け込んだな)を都合よく最後の切り札にしたり、なにか甘いキャラ設定がここでも見られる。最悪はFBI副長官のシドニー・ポワチエで、彼はなんのためにいるのか、と首をかしげたくなるくらい邪魔。せいぜい、最後のギアとの腹芸で「いいひと」ぶるのが関の山。

と、ま、これはジャッカルの名をかたった羊頭狗肉のスリラー作でありますよ。終幕のサスペンスのかけらもないコンピュータによるリモコン操作を駆使した重火器攻撃の暗殺場面を見るにつけ、『ジャッカルの日』の松葉杖に仕込んだ銃なんて小技が実にサスペンスフルで効いていたな、と改めて思いますね。

YAZAKI (98/02/20 東宝東和試写室)

フレデリック・フォーサイスの原作を映画化した名作『ジャッカルの日』にインスパイアされた映画ってことらしいんですけど……。キャラクターもストーリーも、えらいとっ散らかりよう。「冷徹なプロの暗殺者」というより「サイコの入った変装名人」って感じのブルース・ウィリス、刑務所を出たとたんいきなりFBIを仕切り出す善玉気取りのリチャード・ギア。肉付けのほどこされていない安易なキャラを、やる気なさそうにダラダラ演じる主演のふたりには、最初から最後まで苦笑させられっぱなし。緊迫感がまるで感じられないサスペンスを、果たしてサスペンスと呼べるんだろうか? と、そんな素朴な疑問がわきあがってくる映画でございました。

『ジャッカルの日』とはまったくベツモノとわかりつつ、どうしても比べてみたくなるのが人情ってもの。で、いちおう原典のおさらい。ドゴール大統領暗殺に雇われたジャッカルが、いかにしてターゲットに近づいていくか。その足取りと、彼の正体をつきとめんとする警察側の動きに、サスペンスのツボを求めたのが『ジャッカルの日』という映画。こちら『ジャッカル』も、いちおうバックリとこの筋書きをなぞっているんですが、殺しのターゲットがコロコロ変わるように仕立てた分、緊張の焦点も定まらなくなっちゃった印象です。

ストーリーを混乱させているのは、マチルダ・メイ演じるイザベラという女の存在。彼女は、デクランの元恋人で、ジャッカルがらみの戦闘で重傷を負ったとき、お腹にいたデクランの子を失ったという設定。デクランは、そのことに恨みを抱き、FBIの捜査に協力するわけですが。だからって、なぜジャッカルまでが、イザベラやデクランに怨恨の感情を抱くのかがさっぱりわからない。彼が、本来の暗殺計画から寄り道してイザベラ宅を襲撃したのは、顔を知られているという脅威を排除するためだったのか? と、このあたりの人間関係と筋書きの混乱ぶりは、私にはお手上げ。さらに、ジャッカルのターゲットが、捜査陣の予想外の人物だったってのも、ひじょうに唐突に感じられます。

が、なんといってもいちばんオマヌケ度が高いのは、クライマックスの暗殺シーンです。ジャッカルの武器は、超巨大マシンガンに台座をつけたもの。これをミニバンの荷台に隠し、ノートPCから通信を利用したリモコン操作で狙撃するのがジャッカルの手口。で、警官に扮装してターゲットの演説会場に潜り込んだ彼は、後方のベンチに腰掛けてこのPC操作を行うわけです。これはホントに笑っちゃいます。だって、いくら警官の格好をしてたって、シークレットサービスの人間が、こんなアブナイ男を見逃すはずないもの。第一、通信回線を利用して銃を操作するなら、ジャッカルが現場にいる必要はまったくないじゃありませんの。『ジャッカルの日』の暗殺の小道具が、分解すると松葉杖になる秀逸なものだった(これなら国境越えもラクラクOK)だけに、余計、今回の小道具のアイデアのお粗末さが目立っちゃうのよね。

という映画のなかにあって、見所と言えるのはブルース・ウィリスの変装テクニック。釣りマニアのブロンド男、チリチリの赤毛のオッサン、黒髪のラテン男、シルバー・ブロンドのパンク野郎、七三分けのエグゼクティブなんてふうに次々と姿を変えるわけですが、なかでも太鼓腹の赤毛のオッサンの扮装は最高にお上手。そうそう、ゲイのたまり場のクラブでナンパするときの色目の使い方も、なかなかのもんでありました。ちなみに、ここでナンパされるスティーブン・スピネラは、私の大好きな『LOVE! VALOUR! COMPASSION!』の舞台版と映画版でペリーを演じていた役者。彼に再会できたことが、この映画の最大の収穫だったかな。

蛇足:試写のあいだ気になったことが、ひとつ。「イザベラ」の名前が、字幕で「イザベル」「イザベラ」とコロコロ変わり、うっとおしいったらない。公開まで間があるから直したほうがいいと思うよ、余計なお世話かもしれないけど。

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