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試写状

シューティング・フィッシュ

SHOOTING FISH

1997年イギリス 監督ステファン・シュワルツ 脚本ステファン・シュワルツ/リチャード・ホルムズ 撮影ヘンリー・ブラハム 出演ダン・フッターマン/スチュアート・タウンゼンド/ケイト・ベッキンセイル/ニコラス・グレース ●114分 日本ヘラルド映画配給 1998年4月下旬よりシネスイッチ銀座にて公開予定

念願の豪邸の獲得に、200万ポンドを貯めこんだ孤児院育ちの詐欺師コンビ。夢の実現一歩手前でご用になった2人の運命やいかに? デビュー作『SOFT TOP,HARD SHOULDER』でロンドン映画祭最優秀作品賞を受賞した監督&脚本家チームが、ロマンスとサウンドのスパイスを効かせて描く青春コメディ。


STORY

 口八丁のアメリカ人ディラン(フッターマン)と、テクノオタクのロンドン子ジェズ(タウンゼンド)。共に孤児院育ちのふたりは、幼い頃から夢見ていた豪邸暮らしを目標に、日々詐欺活動に精を出していた。今回、彼らが考え出したのは、おしゃべりコンピュータの販売。ディランの巧みなセールス・トークに合わせ、別室に隠れたジェズが応答する。それで、あたかもコンピュータがおしゃべりしているように見せかけようという筋書きだ。カモは次々ひっかかるが、最後の客に回路図を見せろと言われ、ディランは大慌て。が、タイピストとして雇われた医学生ジョージー(ベッキンセイル)の機転で、ふたりはどうにかピンチを切り抜ける。
 その後も、断熱材の使いまわしや、インチキ携帯ライトの売り込みで、着々と金を貯めこむふたり。住処にしているガスタンクの金庫の額は、ついに目標の200万ポンドに達した。だが、いいことばかりは続かない。カモった相手に正体を見破られ、あわれ懲役3ヵ月の刑務所暮らしに。しかも、女王のワガママから50ポンド紙幣のデザインが変わることになり、彼らの貯めこんだ200万ポンドは紙屑同然となることが判明した。旧紙幣の有効期限は、出所の前日。青くなったディランとジェズは、ジョージーに助けを求めるのだが……。

SHIMIZU ★★★(98/03/02 ヘラルド試写室)

冒頭は、孤児院。ひとりの孤児が工作で家の模型を製作します。先生もびっくりするほど精巧。もうひとりの孤児は将来、大豪邸を作ることを夢見ています。成長した孤児院出身の青年ディランとジェズが、あの手この手で詐欺行為を働き、集めた200万ポンドで「夢の豪邸」を手に入れようとする、現代版のディケンズふうの世界。

たわいないお話だけど、笑いのポイントがなかなかチャーミング。とくに前半の「コン・ゲーム(詐欺行為)」が笑わせます。まず音声認識をする画期的なコンピュータ(実は別の部屋に待機した仲間が音声で答え、もうひとりのバイトの女のこが文字入力する仕掛け)の売り込みからして愉快。口のうまい米国出身のディランと、口下手な(とくに女のことはうまく口がきけない)メカおたくのジェズ。

ふたりのコンビぶり、ライフスタイルなどのディテールがなかなか新鮮です。たとえば、彼らが住んでいるガスタンクの下にある地下室の佇まい。そこに温室のシャワー室があったり、なにか全体が隠れ家的な雰囲気。そこにバカラックのヒット曲「世界は愛を求めてる」なんぞが流れる(ドライブのシーンでは「サンホセへの道」も流れたりしてね)。しかも彼らがいつも懸賞広告に応募しては、なにか手にしているという生活も面白い(『電波少年』の「なすび」みたいな感じなのだ、見ている人は分かると思うけど、さ)。

彼らの「コン・ゲーム」で一番おかしかったのは、コンテストで当たった断熱材を1組バンに積み、他人に家を訪れ「ご主人に頼まれた」と嘘をいい、屋根裏に断熱材を張るわけ。この英国の家は長屋ふうで、屋根裏が何軒も通しになっているのね。で、ふたりは1組の断熱材を次々に使いまわして、金を巻き上げちゃう。

そう、『ペーパー・ムーン』みたいな詐欺行為なんだよね。だからって、いうわけじゃないけど、小洒落た笑いのセンス(決して新しくないけど)など、この英国の新人監督はどこか、ボグダノビッチ監督ふうの味があるのね。僕は早速「英国版ボグダノビッチ」と命名しちゃいました。

刑務所で服役中のふたりが、入手した「お金」が新札に切り替わると知り、あわてて以前タイプのバイトをしてもらった「女のこ」に助けをもとめ、彼女が彼らの仲間になっていくあたりの感じも、ボグダノビッチの『おかしなおかしな大追跡』あたりに通じるものがある。彼女が200万ポンドを馬に換え、ひと勝負に出る展開もハラハラさせられる。

ヒロイン役のケイト・ベッキンセイルがとってもキュートです。彼女を最初、単なるバイト女と思わせておいて、実は彼女は医学生で、さらにレディ(貴族のお嬢様)だったと進化させる意外なキャラ設定も、お話を上手に化けさせるスパイス。

ヒロインの弟がダウンちゃんで、彼らを救う設定はちょっとあざとさが残る感じだけど(へたしたらこの監督は将来『マスク』のような作品まで作る人なのかも)、それでも最後はすべてめでたしの「おとぎ話」ふうの上がり。ま、軽くて、いいんじゃないすか。

YAZAKI ★★★★(98/02/17 ガスホール)

ヤッホー! このノリは、大好きなトニー・ケンリック先生のノベルみたいじゃありませんの! ここんとこ★★★★を連発して、我ながら大アマちゃんと思うYAZAKIでありますが、好きなものは好きなんじゃ。生涯のベスト1が『ペーパー・ムーン』という私が、愛してやまないコン・ゲームの醍醐味。これに、ロマンチック・コメディと青春映画、そしてちょっぴりワーキングクラス・ムービーの香りがブレンドされたステキで爽やかな味わいは、モロに好み。どうあっても★★★★を進呈せずにはいられませんのじゃ。

失読症だけど口八丁でハンサムなディランと、ダサくてシャイなハイテク人間のジェズ。「豪邸に住みたい!」という長年の夢に向けて、コツコツと金を貯めこむふたりのケナゲがキャラクターが、まず最高。夢の実現に無駄遣いは無用。と、ガスタンクに不法侵入して自分たちなりの城を築き上げている(ジャンクなインテリアがアトリエふうでオシャレ)彼らのライフスタイルも微笑ましく、もうそれだけで好感が持てちゃう感じ。

家柄とか学歴とか、根っこになる部分を持たない孤児のふたりには、自分たちの創造力だけが頼り。彼らは、それを発揮しまくってタフに世の中を生き抜いている。そういうところがね、実に愛すべきキャラなんでありますよ。

そんなふたりが考え出す詐欺の手口が、これまたアイデア抜群で面白い。おしゃべりコンピュータや携帯ランプのインチキ発明もさることながら、1個の断熱材をクルクル使いまわす手口がとにかくおかしいの。ターゲットになるのは、屋根裏同士がつながっている集合住宅。まず一軒目の屋根裏に断熱材を敷く。「ハイ、仕事が終わりました」と、家主に見せる。「ああ、ご苦労さん」と言って家主がいなくなってから、ふたりは断熱材を隣の家の屋根裏に放り投げる。こうやって、二軒三軒と断熱材を敷いたフリしてお金を巻き上げていくわけ。

もし、こういう手合いにだまされたら、あなたはどう感じる? 私なら笑っちゃうね、怒るより先に。彼らの思い付きに「ヘエッ」と感心し、笑って許しちゃうと思うよ。なんてふうに、やってることは犯罪なんだけど、そのやり口が気が利いていて憎めない。それが、コメディとしてコン・ゲームを描く場合のツボであると思うわけでして。そこんとこをしっかり押さえた映画ってあるようで少ないから、その点でもこの映画が光っちゃうのです。

かくなる詐欺師コンビに絡む女がひとり。彼女はれっきとしたお嬢様なんだけど、相続税が払えずに屋敷を取られようとしている。しかもその屋敷は、ダウン症の子供たちの施設になっているので、彼女としては、金持ちの幼なじみと結婚し、なんとか屋敷を守ろうとするわけね。そういう彼女の心意気も、またケナゲで、思わず味方したくなっちゃう。

だから後半、彼女が詐欺師コンビをだまくらかして200万ドルを横取りしようとする気持ちにも、素直に着いて行けるのです。でも彼女の目論見は大きくはずれ、200万ドルと引き換えに手に入れたのは駄馬一頭。これを使って、詐欺師コンビがどんな逆転劇を演じるか? ネタはバラせないけど、ダッチワイフが大活躍するクライマックスは、まさに抱腹絶倒であります。

ディラン役は、『バードケージ』でロビン・ウィリアムスの息子を演じていたダン・フッターマン。ニューヨーカーのスカした雰囲気を振りまく彼と、アイリッシュの朴訥とした味で攻めるジェズ役スチュアート・タウンゼンドの、対照的なコンビぶりがすごくいい感じ。ふたりは、お互いに持ってないものを補いあうという関係。で、これに絡んでくるショートカットのケイト・ベッキンセイル(『から騒ぎ』)が、これまたすごーく爽やかでいいんだよね。ベッキンセイルに恋心を抱いたタウンゼンドが、彼女をとっておきの場所に誘うデート・シーンの胸キュン(って死語?)感覚も好き。

音楽は、『トレインスポッティング』のチームが担当。ベッキンセイルが詐欺師コンビの家を初めて訪問するシーンに流れる「WHAT THE WORLD NEEDS NOW IS LOVE」、やったねモードのドライブを爽快に彩る「サン・ホセへの道」など、バカラックの曲の使い方が最高にイケてます。

そうそう、エンド・クレジットに遊びがひとつ。「この映画では、動物を傷つけていません」という定番のクレジットの代わりに、「No animals, especially fish, where hurt during the making of this movie」の一文が流れるの。これは、『シューティング・フィッシュ』というタイトルを見て、撮影中にチェックを入れてきた動物保護団体へのお返しみたい。ちなみにこの映画には、お魚ちゃんは登場せず。『シューティング・フィッシュ』とは、「ダマすのはチョロイぞ」という意味のスラングだそうです。

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