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十二夜TWELFTH NIGHT 1995年イギリス 監督・脚本トレバー・ナン 撮影クライヴ・ティクナー 出演ヘレナ・ボナム=カーター/イモジェン・スタッブス/ベン・キングズレー/リチャード・E・グラント/ナイジェル・ホーソーン/ベン・キングズレー/メル・スミス ●134分 エース・ピクチャーズ配給 1998年4月より恵比寿ガーデンシネマにて公開予定 『レ・ミゼラブル』や『キャッツ』で知られる英国の売れっ子演出家、トレバー・ナンがメガフォンをとったシェークスピア喜劇の映画化。海難事故で生き残ったヒロインが、男装したことから巻き起こる騒動を描くロマンチック・コメディ。 |
STORYセバスチャン(スティーブン・マッキントッシュ)とヴァイオラ(スタッブス)は、美しい双子の兄妹。両親亡き後、ふたりは船で余興を見せながら、肩を寄せ合って暮らしている。その航海の最中、嵐に襲われた船が難破。海に投げ出された兄妹は、離れ離れになってしまった。ヴァイオラがたどり着いたのは、故郷メサーリンと敵対関係にあるイリリアの浜辺。セバスチャンを亡くしたと思い、失意の彼女は、そこで同じく兄を亡くしたばかりのオリヴィア(カーター)を見かけ、同情を寄せる。オリヴィアに仕えたいと願うヴァイオラ。だがそれが叶わないと知り、オリヴィアの求婚者オーシーノ侯爵(トビー・スティーブンス)のもとで働くことにした。ただしセザリオと名前を偽り、男装のページボーイとして。 音楽が得意なことから、たちまちオーシーノに気に入られたヴァイオラは、オリヴィアのもとへ「愛の使い」として派遣される。ところがそこで困ったことが発生。なんとオリヴィアが、ヴァイオラにひと目惚れしてしまったのだ。かたやヴァイオラは、オーシーノにかなわぬ恋心をつのらせる。 なんとも奇妙な三角関係が出来上がったところで、オリヴィアの屋敷では、また新たな恋の勘違い劇が演じられようとしていた。かねてから、尊大な執事マルヴォーリオ(ホーソーン)と折り合いの悪いオリヴィアの叔父サー・トビー(スミス)が、侍女マライア(イメルダ・スタウトン)や、オリヴィアのもうひとりの求婚者サー・アンドルー(グラント)、と結託。オリヴァイの筆跡をマネた偽のラブレターを使って、マルヴォーリオに恥をかかせようと画策したのだ。陰謀には、道化のフェステ(キングズレー)も一枚荷担。見事罠にひっかかったマルヴォーリオは、オリヴィアとの結婚を思い描いて大ハシャギする。と、そんなときに生き延びたセバスチャンもイリリアへやって来て、事態はますますややこしいことに。はてさて大混戦の恋模様は、いかなる決着を見ることやら。 |
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SHIMIZU ★★★☆(98/01/22 シネセゾン試写室) シェクスピア劇に馴染みのない、トホホなわたしめでも凄く楽しめた。実は、知っていたのはタイトルのみで、「へーッ! こんな話なんだ。俺でもわかるくらいだから、これ初心者向けに分かりやすくしてるのかな?」とバカまるだしのわたしめに、YAZAKIが「こんなものだよ」とピシャリ! トレバー・ナン監督はロイヤルシェイクスピア・カンパニーのもと演出家で、わたしめがロンドンで2回見て感涙にむせんだ『レ・ミゼラブル』(これを言うとミュージカル通のYAZAKIにせせら笑われる)の演出でも知られるお方。彼によれば、この27番目の戯曲はあまりなじみがない。タイトルは“十二番目の夜”(冒頭、兄と妹の双子が船で遭難したクリスマスのころと解説されるが)だが、アメリカでは“12日間の夜”のお話と思われているとか。「この題では映画『ナインハーフ(9週間半)』をもっとセクシーにした内容と思われるかも知れない」というナン監督のコメントがおかしい。そうか、わたしが無知でも許されそうだと、俄然勇気がでる。 わたしめは舞台との比較がどうたらという引き出しをもっていないのでありますが、なんか舞台臭さを消して、うまく映画に移し代えたという印象です。かのロジャー・エバート先生の受け売りで恐縮ですが、セリフも適度に簡略化したものとか。それで、俺にも分かるんだ。 さて、物語は船の難破で生き残った双子の片割れである妹(実は兄も生き延びた)が男になりすまし侯爵に仕えたことを発端にした、ジェンダー(性別)の取り違えのテーマが映画の芯です。映画の世界なら『お熱いのがお好き』『バードケージ』に似たテーマといえば、馴染みやすいかもね。 ナン監督の工夫がもうひとつ。時代設定を18世紀にかえたこと。18世紀のほうが見た目に男女の違いを現しやすいからだそうで、軍服に口ヒゲという宝塚っぽい男装であります。 僕が面白く感じたポイントは、やはりキャスティングの妙。髪を切り、口ひげをつけ、そして股間に詰め物をして男に変身、侯爵に仕える小姓役のスタッブスの新鮮な男装ぶりに心うきうき。侯爵が恋焦がれている伯爵令嬢役のボナム・カーターが小姓のスタッブスに恋をする姿も可愛い。この二人の女優の好感度だけで、気持ちが次第に入っていきます。 男どもが、また所を得た個性派、演技派の目白押し。ボナム・カーターと結婚しようと狙う“うらなり”ふうの騎士グラントのアホぶりも笑えるポイントだけど、一番画面をさらう爆笑キャラは執事役のホーソーン。執事と折り合いの悪い令嬢の叔父が、待女を使い令嬢の恋文をねつ造、あたかも令嬢が執事に恋をしているように思わせる。 その文面のなかには、大好きな黄色の靴下をつけてと願う部分があり、執事は黄色の靴下をつけて令嬢の前にでるのだけど、この黄色の靴下は令嬢が一番嫌いなもの。それとは知らぬ執事が令嬢にモーションをかけ、微笑みをふりまく姿がなんともおかしい。しかも、気がふれたと思われ蔵に放り込まれ散々いたぶられる。『英国万歳!』で「どうだ、うまいだろう演技」が嫌だと、英国の演劇界の大御所ホーソーンに生意気な口を叩いてしまったSHIMIZUめも、ここまでの“汚れ”に脱帽。 さて、終幕、死んだと思った兄が出現、同じ姿のふたりが交互に出入りして取り違えがますます激しくなるあたりもテンポよく描かれます。いずれにせよ、伯爵令嬢は生きていた双子の片割れの兄と、侯爵は小姓の妹と、それぞれがおさまるところに収まり、カップルが誕生して、めでたしめでたし。 監督は「秋」を感じさせる映画にしようと晩秋の「コーンウォール地方」でロケを敢行した。嘘みたいなおとぎ話を、心地よく楽しく信じさせてくれる演出。手だれの監督による、新鮮なエンターテイメント映画であります。 |
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YAZAKI ★★☆(98/01/22 シネセゾン試写室) 妖精が登場する『真夏の夜の夢』や『テンペスト』に比べると、普通のシチュエーション・コメディの色合いが強い『十二夜』。女性が男装して女性に惚れられるというシチュエーションの作り方は一見普通じゃなく見えるけど、『お熱いのがお好き』から『トッツィー』『ミセス・ダウト』まで、映画のなかでも幅広く応用されております。役者が全員男だったシェークスピアの時代は、男の役者が女に扮してさらに男のフリをするという、もう一段のカラクリがあったわけですが。 で、今回の映画化。いちばんの魅力は、なんいっても「オッ!」と、腰がひけちゃうくらいゴージャスなキャストの顔ぶれでしょう。男装の麗人ヴァイオラに扮するのは、演出家トレバー・ナン夫人でもある『サマーストーリー』のイモジェン・スタッブス。乙女オリヴィアは、『鳩の翼』でオスカーの呼び声も高いヘレナ・ボナム・カーター。そして脇を固めるのが、『英国万歳!』のナイジェル・ホーソーンに、ベン・『ガンジー』・キングズレー、そして『ビーン』の監督メル・スミス。ケネス・ブラナー版『ハムレット』のホレーシオ役ですごく目立っていたニコラス・ファレルも、セバスチャンにラブラブのアントニオの役で出演しています。 なかでもケッサクな演技を見せるのが、サー・アンドルー役のリチャード・E・グラント。『プレタポルテ』のゲイ・デザイナーもよかったけど、この映画の彼も最高。オリヴィアのバカ求婚者って役どころなんですけどね、「後ろ跳びじゃ誰にも負けない」とエバってみせるところとか、フランス語の受け答えにオツムの悪さ丸出しにするところとか、決闘の準備体操に精を出すところとか。思う存分、笑わせてくれます。 ナンの演出もなかなか好調で、オーシーノ宅とオリヴィア宅の模様を、道化が歌う恋のメロディでつないで見せるところなんか、構成のうまさが光ります。いちばん印象的なのは、男装のヴァイオラがオーシーノ侯爵に、「女の愛も男に負けないほど強い」と語ることで苦しい胸中をあらわにする場面。舞台は、嵐の岸壁。激しく打ち付ける雨と風に負けないくらい、侯爵に強い言葉を投げつけるヴァイオラ。「『十二夜』で中心になっているテーマは性別に関する問題だ」と言うだけあって、ナン監督は、「愛は性別に左右されない」ことを物語るこのシーンを、ドラマのハイライトに据えている感じ。 そこで「あっ」と思ったのが、『クルーシブル』のMY FAVORITEシーンのこと。ダニエル・デイ=ルイスとジョアン・アレンの夫婦愛が処刑を前に蘇るという、映画版で新たに加えられた部分なんだけど、背景に波と風を持ってきたところがソックリなのよ。私はあのニコラス・ハイトナーの演出にえらく感心しておったのですが、どうやら『十二夜』にインスパイアされたもののよう。ま、トレバー・ナンもハイトナーも同じイギリスの舞台演出家だから、嗜好が似ているだけなのかもしれないけど。 と、ベーシックな部分ではけっこうイケてる映画だと思うし、時代背景や衣装の小洒落た味付けも気が利いていて好き。だけど、ただでさえ敷居の高いシェークスピアに演劇ファンじゃないお客さんを呼び込むだけの強烈な印が感じられないのが、弱いところ。★の数が少な目なのは、そのためです。あと、最近ブロードウェイの快速芝居ばっかり見ている身には、モノローグを生かした緩めのテンポも、ちょっと冗長に感じられました。 |