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ジャッキー・ブラウンJACKIE BROWN 1997年アメリカ 監督・脚本クエンティン・タランティーノ 撮影ギレルモ・ナヴァロ 出演パム・グリアー/サミュエル・L・ジャクソン/ブリジット・フォンダ/マイケル・キートン/ロバート・デ・ニーロ ●154分 松竹富士配給 1998年4月より丸の内ルーブルほか松竹・東急洋画系にて公開予定 |
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エルモア・レナード原作の「ラム・パンチ」を、クエンティン・タランティーノが監督した4年ぶりの復帰作。 |
STORYジャッキー・ブラウン(グリアー)は、銃の密売人オデール(ジャクソン)の金の運び屋をつとめるスチュワーデス。空港の駐車場で、連邦捜査官のレイ(キートン)につかまった彼女は、オデールを裏切るか、刑務所行きかの選択を迫られる。とりあえず、オデールが雇った保釈金融業者のマックス(ロバート・フォスター)の手で拘置所を出たジャッキーは、オデールと警察の双方に協力すると見せかけながら、大金を横取りする作戦を立てる。作戦に関わるのは、オデールの新しいパートナーのルイス(デ・ニーロ)、オデールの愛人メラニー(フォンダ)、そしてマックスといった面々。メキシコから運んだ50万ドル入りの紙袋を持って、ショッピング・センターに現れたジャッキー。果たして、その大金は誰の手に? |
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SHIMIZU ★★★(98/01/09 ヤマハホール) 『パルプ・フィクション』以来の、タランティーノの長編監督作。期待している人が多いんじゃないかな。『レザボア・ドッグス』が一番、好きな僕も今回、タランティーノはナニをやってくるか、興味津々。 タランティーノの前2作はオリジナル脚本だったけど、今回はエレモア・レナードの原作(この人の原作を映画化した『ゲット・ショーティ』もメチャクチャ面白かった!)で初の脚色に挑戦した。タランティーノは原作を彼流に置き換えて脚色している。その変更部分を拾っていくと、彼の描きたいことがちょっと見えてきそうだ。 まず、タイトルはヒロインの名。原作はジャッキー・バークで白人の女の設定だが、ここではジャッキー・ブラウンという黒人女性に変えた。演じるは、70年代のblaxploitation(際物的なブラック・シネマ)で活躍したパム・グリアーで、彼女の主演作『FOXY BROWN』へのトリビュートになっている(TRIVIAをひとつ:劇中のメラニーのアパートの表札がS.HAIG and J.HILLとなっているが、S.HAIGは『FOXY BROWN』の出演俳優の名で、『J・B』では判事役でカメオ出演。JACK HILLのほうは『FOXY BROWN』の監督の名)。サブカルチャー好きなタランティーノらしい映画趣味ムンムンの作品というのが隠し味。 さらに、舞台は原作のマイアミから自分が育った勝手知ったるサウス・ロサンゼルスに選んだのも彼流。ここの土地は『テキーラ・サンライズ』にちらっと出てきた場所で、あまり手垢のついていない場所なのだそう。 てわけで、タランティーノ先生は、レナードの原作のストーリーテリングをそのままいかし、細部は彼流の味付けで仕上げていく。彼の脚本プランは3段階で進行していく。その1は前提となるキャラの紹介、その2はそのキャラたちが動き出す「計画進行」、その3はそれぞれのキャラがばらけていく「顛末」。 僕はその1のキャラ紹介がイマイチ冗漫に思えた。室内での設定が多い演出で、とくに武器商人のS・ジャクソンの「ニガー」連発のトークにはなかなか食いついていけない状態。でも、どのキャラも個性的で、その2に入って、それぞれの持ち場ではじける感じはさすがにうまいと思った。 ジャクソンを小馬鹿にしている小悪魔的な情婦のB・フォンダと、ジャクソンの仲間になった鈍な感じの元銀行強盗犯のデ・ニーロとの関係がおかしい。終幕で2人が現金受け渡しのモールに出かけ、駐車場で車の止めた場所がわからないデ・ニーロが「方向音痴」とフォンダにあざ笑われ、ついに切れて銃をぶっ放す図は爆笑ものだ。そのデ・ニーロがジャクソンに車のなかで現金を受け渡ししながらやりあうシーンも印象的で、喋っているデ・ニーロが背中しか見えないというショットも妙に新鮮。 さて、この映画の核になるコンビは、44歳のヒロイン、ジャッキーと密かに彼女に思いをよせる50代後半の保釈屋のマックス。ふたりの静かな愛情関係が、なんともいい感じ。ともに年齢を意識して距離を置いた関係。そのなかに成熟した大人の信頼関係が築かれていく。最後で、ジャッキーに一緒に旅にでないかと誘われたマックスが、恋の気分を押し殺す。「私が怖いの?」というジャッキーに、「少しだけ」と答えるマックス。マックス役のロバート・フォスターが初老の男の諦観と哀感を忍ばせた絶妙の演技を見せる。なんとも泣かせる名ラストシーンだ。 全体に『パルプ』ほ奇をてらった派手派手しい趣向はないけど(現金受け渡しのモールの現場で、3人の違った視点で再現した『羅生門』ふうの演出など、「時制」をコントロールする語り口は彼の独壇場)、フォスター、グリアーと一度盛りが終わったような人にスポットライトをあてて、人間的な味に高めるあたり、タランティーノは野村監督ばりの映画界の「再生工場」とでもいいましょうか。ジワーッと愛すべき情感が心に残る佳作です。 あと、70年代のソウル・ヒット(とくにデルフォニックスの楽曲が泣かせる)を網羅した音楽が、情感をくすぐる小道具として生きていることにも、ひとこと触れておきます。蛇足ながら、今回の製作プロの名は「マイティ・マイティ・アフロディーテ」、監督の恋人のミラのオスカー受賞作をもじったもの。 |
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YAZAKI ★★★★(98/01/09 ヤマハホール) 2時間34分もあっという間。とことん、楽しませてもらいました。エルモア・レナードの映画化作は、タラちゃん→ダニー・デビート→バリー・ゾネンフェルドへと企画が流れていった『ゲット・ショーティ』も★★★★モノだったけど、これも負けず劣らずのケッサク。タラちゃんの健在ぶりに大拍手であります。 前作の『パルプ・フィクション』で章立ての時間操作というオオワザをやってのけたタランティーノ。今度は、きわめて饒舌な話の運びに冴えたテクニックを見せます。劇の前半で描かれるのは、サミュエル・L・ジャクソン演じる銃の密売人が、刑務所仲間のロバート・デ・ニーロとコンビを組むまでのエピソード。続いて、ヒロインのパム・グリアーが、警察にとっつかまるエピソードが挿入されます。その間、グリアーとジャクソンの関係に触れた説明はいっさいナシ。なんだけど、観客には、グリアーがジャクソンの金の運び屋をやっていることが、暗黙の了解事項のようにわかってしまうんですね。説明部分をバッサリ削ぎ落とし、それでいて観客を迷子にさせないタラちゃんのストーリー・テリング。これはもはや名人芸と言ってよろしいでしょう。 と、基本的には「中略」スタイルを使ってガンガン話をすすめていくタラちゃんの演出、これがショッピングセンターを舞台にした大詰めに来てガラリと調子を変えます。メキシコから運び出したジャクソンの金50万ドルを持って、ショッピングセンターにやって来たグリアー。彼女が、いかにして警察とジャクソンをあざむき、金を手中にするかという成り行きが、グリアーと、金を受け取りに来たブリジット・フォンダ&デ・ニーロのコンビ、そしてグリアーの相棒ロバート・フォスターという3者の視点から、リプレイの手法を使って描かれます。 ここんとこの粘り腰のキメ方は、まさにタラちゃんの独壇場。グリアーがフォンダに渡した「見せ金」はどうなったか、グリアーが試着室に置き去りにした残りの大金はどうなるのか。そういうクライム・ノベルのいちばんの醍醐味部分を、ひとつの出来事を3通りに描き分けるという、映画ならではの文法を駆使して表現したタラちゃんのセンスには、惚れ惚れせずにはいられません。映画全体では、この場面がアクセントになって、再びたたみかけるスタイルに戻る感じ。緩急の流れの作り方が、実に堂に入ってるんだよね。 警察にはジャクソンの逮捕に協力すると言い、ジャクソンには警察を手玉に取って金を運んでやると言う。本心がどこにあるのか見えないグリアーを筆頭に、登場人物全員がだましあいを演じているような雰囲気も、魅力のツボ。何より、グリアーの計画が、いったいどんな形で完成を見るのか、最後まで予測のつかない展開がハラハラさせます。そんななかで、グリアーとフォスターのパートナー関係が熟していく図も、シビレさせずにはおかないポイント。ふたりのあいだに漂う哀愁の入り具合が、たまらなくいい感じなの。 もうひとつ、俳優たちがイキイキしているのも、この映画の特筆すべき点。刑事役のマイケル・キートンなど、「タラの映画に出られてオレは嬉しいぜ」って感じが、全身にみなぎっているもの。俳優にこんなふうに思わせることができる監督って、やっぱり私は一流だと思うな。 タラちゃんファンに急告!なんとタラちゃんがブロードウェイの舞台(オンだぜ、オン)に出演します。演目は、オードリー・ヘップバーンの映画でおなじみの『暗くなるまで待って』。タラちゃんは、アラン・アーキンが演じた悪役で、ヒロインは『いとこのビニー』のマリサ・トメイ。日程は、3/27からプレビュー、4/5から正式オープンの16週間公演の予定。劇場はブルックス・アトキンズです。GWにNY行きを計画している人、見逃すテはないぜ。YAZAKIは4月に見る予定。リクエストがあれば観劇レポートをやりたいと思いますので、メールでお知らせください。 |