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試写状

ジャガー

LE JAGUAR

1996年フランス 監督・脚本フランシス・ヴェベール 撮影ルチアーノ・トヴォリ 出演ジャン・レノ/パトリック・ブリュエル/ハリソン・ロウ/パトリシア・ベラスケス/ダニー・トレホ ●100分 アートキャップ配給 1997年12月27日より銀座シネパトスほかにて公開予定

アマゾンの霊媒師から「運命の男」に指名されたパリジャンが、霊媒師の盗まれた魂を取り戻す使命を帯びてジャングルへ。『Mr.レディ、Mr.マダム』の脚本家フランシス・ヴェベール監督ならではのコミカルな味付けが効いたヒューマン・アドベンチャー。

STORY

 ワヌ(ロウ)は、アマゾンの環境保護を訴えるため世界各国を歴訪中の霊媒師(ロウ)。通訳のカンパナ(レノ)と共にパリへやって来た彼は、ホテル・クリヨンのエレベーターの中で、ペラン(ブリュエル)というフランス人男性と運命の出会いを果たす。ペランは、詐欺師まがいの商売で日銭を稼ぐヨタ者で、いまはギャンブルのツケで首が回らない状態だった。クリヨンにも、元恋人に借金を申し込むつもりで来たのだが、それはアッサリ断られ、代わりにホテルを抜け出したワヌを拾って帰ることになる。
 ペラン宅で、ワヌは、寝ているペランに「精霊の術」を施した。翌日、心臓発作で倒れるワヌ。危篤状態に陥った彼の頼みでペランを迎えに行ったカンパナは、何者かに盗まれたワヌの魂を取り戻せるのは、ワヌと「精霊の術」で結ばれたペランしかいないと告げる。折りしも借金取りのヤクザに追われていたペランは、逃亡のチャンスとばかりアマゾン行きを承諾。しかし、ワヌの頼みをかなえるつもりはさらさらなく、隙あらば逃げようと目論んでいた。そんな彼を叱咤激励し、どうにかワヌの村に連れて行こうとするカンパナ。やがて彼らは、アマゾンに環境破壊をもたらしたクマレ(トレホ)こそ、ワヌの魂を盗んだ張本人だと知る。

SHIMIZU ★★★(97/12/05 TCC試写室)

ジャン・レノに、このタイトル。なんかB級アクション映画のイメージ。ところが、中身はヒューマンな味を込めた現代の冒険ファンタジーという趣なのです。

まず、ロールスロイスがパリの超高級ホテルクリオンに横付けされる。車のドアが開き、カメラは足元を捉える。裸足の男がひとり。インディオの霊媒師ワヌであります。そう、ロック歌手スティングがインディオを連れて熱帯雨林を守ろうとキャンペーンしたことあったでしょ。監督はあれをヒントに、このインディオ・キャラを思いついたんだって。

で、ね。このインデイオのおじさんがクリオンのロビーを裸足で歩く姿からして、一見奇異な感じ。一瞬、『ジャングル2ジャングル』のいやったらしいインディオ・ミーツ・パリの図を想像したのですが、ワヌがエレベーターで逢った青年を「選ばれた運命の男」と感じて、徹底的につきまとうあたりから妙に憎めないわけですよ。ひとつは、ワヌ役のおじさんが愛嬌がある。おじさんが青年に首飾りをあげ、代わりにカシミアのコートを頂戴したり、敬愛の印として相手の鼻を指でつまんだり、無垢で愛すべき野蛮人ぶりが嫌みなくハマっているわけです。演じたのは、ネイティブ・アメリカンの俳優ハリソン・ロウ。飄々として、いい味だしてます。

さらに、僕が好ましく思ったのは、青年役のブリュエル(フランスの人気歌手なのだそう)が借金を背負ったいい加減な奴という設定なのだけど、彼の凄くナイーブな眼差しや柔らかな物腰、これがまた嫌みがないのです。

そのふたりの間に立つのが通訳カンパナ役のレノ。これじゃ、彼の存在感は薄いんじゃないのと思っていると、だんだんとタフガイぶりが発揮されて、彼の存在感は輝きはじめます。

お話は、パリに着いたワヌが「魂を奪われる予知夢」を見て、アマゾンが悪者によって破壊される危機を感じます。それを救うのがペランという青年なわけね。物語は前段のパリから、アマゾンへ。借金取りに追われているペランはカンパナにせき立てられ、渋々、アマゾンの悪者退治にでかけます。

ここで面白いのは、『エメラルド・フォレスト』系のインディオのマジックが介在し、物語が冒険からファンタジーに昇華していくところ。ペランがワヌからもらった薬草の入った袋を身につけると、ジャガー(豹)にすら身を変えることができ、悪者と闘えるという点。心臓麻痺状態で寝込んだワヌがパリの病院から「テレパシー」を発し、ペランと一体化している図。僕は思わず、カルロス・カスタネダの著書の世界を夢想しました。

彼が酒場で悪者一派と闘うシーン、彼の眼がジャガー状態になり、鋭い爪で引っかき、悪者を高々と持ち上げぶん投げる。ひ弱な都会の青年が強者にまさに豹変する痛快感。

なんとも痛快であります。

かといって、ペラン青年はフランスっぽく(?)最後までいじいじして、悪者の親玉との決闘も及び腰。そこで、彼に男の心意気を見せるのがジャン・レノ。ちょうどペランに人間としての勇気を教えてくれる師匠。『スターウォーズ』なら、ルークとオビ・ワンの関係でしょうか。そうなると、ワヌはヨーダか。

よくみると、お話の運びはかなりアバウトだと思うけど、この映画がヘンに文明人が未開人の世界に触れて心洗われましたみたいな教訓でないのがいい。ミステリアスなものに引かれていく男たちの冒険、この素直な感性がいいんじゃないかな。あと、僕はインディオの少女マヤ役の新人パトリシア、ドレス姿で河にドボンと飛び込んだり、彼女の「美しい野生美」も気に入っちゃった。音楽は謳いあげるV・コスマ。

YAZAKI ★★☆(97/12/05 TCC試写室)

「男の中で眠っていたジャガーがいま目覚める」なんて宣伝のキャッチコピーから、バリバリのB級アクションだと思い込んでいた。それにしては、監督がコメディ系のヴェベールだしな、ヘンだなぁとは怪しんでいたんですけどね。で、最終日の試写に期待も薄く出かけたわけだけど、これが意外な拾いモノだった。

「財宝など物質的なものを追いかける冒険映画ではなく、あくまでも目に見えないもの、魂を探す冒険映画にしたかった」という監督の言葉どおり、これは、偶然の出会いからインディオの分身にさせられたフランス男が、気のすすまない冒険を通じて自分自身の魂を発見する物語。それを、とってもコミカルな、感じのいい寓話に仕立てた一編です。

まず、フランス男ペランと霊媒師ワヌの出会いがケッサク。ホテル・クリヨンのエレベーターに乗り合わせたペランの耳を、ワヌが引っ張る。次は、鼻をつまむ。ワヌの行為にどんな意味があるのか、彼はいったい何者か、すごく興味をかきたてられる出だし。結局、ジャン・レノの通訳によって、「鼻=生命の印」をつまむのは、相手に好意を抱いた証だってのがわかるんだけどね。で、お返しに、ペランもワヌの鼻をつまむ。故障して動かなくなったエレベーターのなかで、ふたりの男が鼻をつまみあっている図がとってもおかしい。異文化の出会いが無理なく笑いにつながっていくところは、さすが熟練ヴェベール。『ジャングル2ジャングル』など、足元にもおよばないって感じ。この後、「贈り物交換」の儀式が、コートからフトンにまでエスカレートしていく展開にも、私は大笑いしてしまいました。

こんなワヌおじさんのオチャメで予測のつかない行動が招く前半のホノボノした笑いが、中盤からは、ジャン・レノ演じるカンパナとペランによる珍道中モノに引き継がれて行く趣向。タフで毅然としたカンパナと、根は善良だけど狡猾で臆病なペラン。ふたりのコンフリクト具合が、映画をいきいきと弾ませます。

憑依や呪術に環境破壊まで絡む物語は、すごくニューエイジ的なテーマであるわけなんだけど、それにもかかわらず全然抹香臭さを感じさせないのが、この映画のステキなところ。アマゾンへ帰ってきたワヌとペランが、鼻をつまみあって再会を喜びあうラスト・シーンも絶品。魂と魂の純粋な触れ合いの瞬間に出会ったようで、思わずジーンときちゃった。

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