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試写状

トゥー・デイズ

2 DAYS IN THE VALLEY

1996年アメリカ 監督・脚本ジョン・ハーツフェルド 撮影オリバー・ウッド 出演ジェームズ・スペイダー/ダニー・アイエロ/エリック・ストルツ/ジェフ・ダニエルズ/テリー・ハッチャー/マーシャ・メイスン/ポール・マザースキー ●104分 ギャガ配給 1998年1月下旬よりスバル座ほか東宝洋画系にて公開予定

10人の男女の運命が交錯する2日間の出来事を、ロスのヴァレー地区を背景に描いた『ショート・カッツ』ふうのヒューマン・コメディ。

STORY

 深夜のロサンゼルス、サン・フェルナンド・ヴァレー。殺し屋のリー(スペイダー)と、彼に雇われた元殺し屋のダズモ(アイエロ)は、スキー選手ベッキー(ハッチャー)の家に忍び込み、彼女を麻酔注射で眠らせたのち、一緒のベッドで寝ていた元夫(ホートン)に銃弾をぶちこむ。そのころ、同じヴァレー地区では、おちぶれた監督テディ(マザースキー)が自殺を思案中。さらにアートディーラーのアラン(クラットウェル)は、腎臓結石で苦しんでいるところを通行人の手で病院にかつぎこまれた。
 翌朝、母の墓の前で自殺しようとしたテディは、通り掛かりの看護婦オードリー(メイスン)に、愛犬の飼い主を探してもらえないかとたずねる。「義理の弟が飼ってくれるはず」と、オードリー。結局ふたりは「義理の弟」の家に向かうが、その人物とは、アランのことだった。そのころアランの家には、リーに消されかけたダズモが転がりこんでいた。ダズモは、アランに邪険に扱われている秘書のスーザン(ヘドリー)に同情。スーザンも、ダズモの優しさにまんざらでもない様子。いっぽう、死体の隣で目をさましたベッキーは、パニックして通りに飛び出す。それを発見したのが、売春捜査課の刑事アルヴィン(ダニエルズ)とウェス(ストルツ)だった。はたまた近くのモーテルでは、リーと愛人ヘルガ(セロン)がお楽しみの真っ最中。やがて彼らの運命が、ひとつに結びつく時がやって来る……。

SHIMIZU ★★☆(97/10/30 ギャガ試写室)

見終わって、イマイチ食い足りない。★2つと決めたのだけど、小学館の山川さんとあって「あれ、予備知識なしで見たら、結構面白かったですよ」という声に答えて、素直というか主体性がないというか、ま、★1/2おまけしても罰があたらないか、と思った次第。

舞台はロス。ことの発端は、殺人謀議。まず殺し屋が2人。銃をつきつけ、生きたいか死にたいか「1分間」に決断しろ、とストップウォツチ片手に迫るクールな殺し屋スペイダー。もうひとりは、落ちぶれた殺し屋のアイエロ。彼らは、離婚中の夫婦がベットインしているところを襲い、男を殺害してしまいます。

アイエロが相棒に殺されかけながら命びろい、へんな現代美術のディーラーの家にころがりこみ、イヌ嫌いの彼が飼い犬にびくついたり、自慢のイタリア料理を作ったりする図からして愉快。しかも、彼がことあるごとに、かつらを落とすルティーン・ギャグがわびしさを醸す笑いであります。

映画は都合、10人の人間が入り乱れる展開ですが、映画ファンなら唸っていまう渋いキャスティング。フェロモン女優テリー・ハッチャーがいるかと思うと、殺人課にあこがれる警官にエリック・ストルツ、家庭破綻の相棒警官にジェフ・ダニエルズ、かと思うと、あら懐かし『グッバイ・ガール』のマーシャ・メイスン、彼の弟が『ネイキッド』で注目の英国俳優、さらにワンポイントの管理人のおばさんがルイズ・フレッチャー。

なかでも、僕が老獪と思ったのが、ポール・マザースキー監督。彼は性格俳優といってもいい味。ここでは売れなくなったテレビのディレクター役。もう、人生に未練なし。自殺が最大の目的になった男。彼が人生の最良の友である愛犬のため、命を長らえるペーソスあふれるシークエンスは、彼の監督作『ビバリーヒルズ・バム』で、イヌをうまく使ったことを思いだし、わんわんと唸りたくなりました。もうひとり、僕が「ええでっ〜」と唾をつけたくなったのが、殺し屋の愛人。見事なバンプ役で目をみはった、キャメロン・デイアス系のブロンド美人チャーリーズ・セロン嬢です。股間にびんびん来ましたです。彼女は化けますぜ。実はこのデビュー演技が、新作『デアボリス』でキアヌ・リーブスの妻役に抜てきされるきっかけになったんだって。彼女がナイスなおっぱいをスペイダーに揉まれる愛欲シーンは、彼女の最初で最後(?)の贈り物(!?)になるでありましょう。

なのに、★3つまでいかないのは、すべてが冒頭の話に吸収される作劇。比べるべくもないけど、これはロスを舞台に忍び寄る「不安」を描いたアルトマン先生の『ショート・カッツ』系の映画でありますが、各ピースをよせあっても、こじんまりしたほのぼの世界。それ以下でもそれ以上でもないわけでして、それが見たあと、なんか物足りないとなるわけで。でも、この監督の次の作品は見てみたいという気にはなりました。

YAZAKI ★★☆(97/10/20 徳間ホール)

殺し屋、オリンピック選手、映画監督、画商、看護婦、刑事……と、脈絡のない人たちの運命が、どう絡み合うかに面白さがある映画。にしては、ジェフ・ダニエルズ演じる刑事が途中で消えちゃったり、ちょっとエピソードのツメの甘いところも。でもサスペンスの妙味はあるし、役者陣は達者な演技を見せるしで、オフビートなコメディとしては、わりかしイイ線いってます。

ズラリと居並ぶ10人衆のなかでも、いちばん光ってるキャラだなと思ったのは、ジェームズ・スペイダー扮する殺し屋。テリー・ハッチャー宅に侵入し、彼女の元夫を殺害する冒頭シーン。相手の口に銃を突っ込み、「あと1分で残りの人生を決めな」と、ストップウォッチで時間を計るところから異様な迫力。で、その後、恋人(ポスト・キャメロン・ディアスみたいなチャーリーズ・セロン)とモーテルにしけこむ場面では、この男が「ストップウォッチ・フェチ」だってことが明らかになる。彼にとって、すべての基準になるのが1分という時間。何事も1分で片をつけるスリル――それがたまらなくて殺し屋をやってるみたいなキャラクターが、とっても面白いの。同じモーテルのシーンで、パンツに氷を突っ込むところなんかもね、スタイリッシュなキレっぷりにゾクゾクさせられちゃった。あの演技は、ぜったいスペイダーのアイデアだと思う。最近は比較的キワモノ路線に走ってた彼だけど、この映画でちょっと見直しちゃった。

続いて面白いのが、ポール・マザースキーの盛りを過ぎた映画監督のキャラ。これはもう、80年代で終わってしまった感のあるマザースキー(最近は『フェイスフル』で失敗こいてるし)が演じているだけで冗談キツイわって感じ。彼とダニー・アイエロの演じる元殺し屋が、「燃え尽きちゃったオヤジ」として登場するわけなんだけど、テリー・ハッチャー宅で繰り広げられるクライマックスの修羅場を通じて、ふたりが最後の一花を咲かせるみたいなところが、とってもいいの。見交わす目と目に通いあう、似た者同士の共感。負け犬は負け犬なりに信義を貫くんだと、絡み合った視線に漂う情感に、思わず「男だねぇ」と声をかけたくなりました。

そして、MY FAVORITEのエリック・ストルツ。私は、彼の舞台を二度見ているんだけど(『まじめが肝心』と『三人姉妹』)、この人には、出てくるだけで周囲をホッとなごませるような存在感があるのね。ストルツが舞台にいると、空気が柔らかくなる感じ。で、今回の「マヌケなお人好し熱血漢」系の刑事役には、そういう持ち味がとってもいかされています。かの修羅場シーンで、スペイダーとアイエロが銃撃戦を繰り広げるなか、フラフラ出て行って自分から挟み撃ち状態になるところなんて、まさに本領発揮。緊迫したムードがふっとゆるみ、笑いにつながるのはストルツの功績大であります。前半、手入れの下見に行ったマッサージパーラーで、ベトナム人のマッサージ嬢にエレクトしちゃう純情ぶりもかわいいし。

なんてふうに、もしお気に入りの俳優がひとりでも出ているなら、この映画は買い。人間をパズルの断片に見立て、個々人の人生模様を捉えた手法の作品としては、アルトマンの『ショート・カッツ』にはかなわないものの、ヘタに「神の視点」を気取ってない点では、ルルーシュの『男と女/嘘つきな関係』よりもずっと好感が持てます。

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