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エアフォース・ワン

AIR FORCE ONE

1997年アメリカ 監督ウォルフガング・ペーターゼン 脚本アンドリュー・W・マーロー 撮影ミヒャエル・バルハウス 出演ハリソン・フォード/ゲイリー・オールドマン/グレン・クローズ/ウェンディ・クルーソン/リーゼル・マシューズ ●124分 ブエナビスタ配給 1997年11月29日より日劇ほか東宝洋画系にて公開予定

ロシアを飛び立った大統領専用機がテロリストにハイジャックされた! 家族と人質を救えるただひとりの人物、それは大統領本人だった。ハリソン・フォード主演による大型エア・アクション。

STORY

 カザフスタンにテロリスト政権を誕生させた独裁者ラデク将軍(ユルゲン・プロホノフ)が、米ロの共同作戦によって逮捕された。その成功を祝う祝賀会に出席したアメリカ合衆国大統領ジェームズ・マーシャル(フォード)は、「これからは政治的な利益よりも人道主義を優先させる」という新しい外交方針を打ち出し、側近たちを驚かせる。
 祝賀会のあと、マーシャルは大統領専用機エアフォース・ワンで帰国の途についた。同乗するのは、愛妻(クルーソン)と12歳の娘(マシューズ)、補佐官をはじめとするスタッフやシークレット・サービスたち。さらに、ロシアのテレビ局のクルー6人が、取材のために乗り込んだ。
 事件が起こったのは、エアフォース・ワンの離陸後まもなくのこと。コルシュノフ(オールドマン)をリーダーとするテレビ・クルーが、裏切り者のシークレット・サービスの手引きで手に入れた銃で、瞬く間に機内を制圧したのだ。彼らの正体は、ラデクの釈放を求める狂信的なテロリストだった。何としても大統領を人質に取られてはならないと、スタッフたちは身を楯にマーシャルを守りながら、彼をパラシュート付きの脱出ポッドに乗せる。しかし、家族やスタッフを見捨てることができないマーシャルは、ポッドで逃れたと見せかけて、機内に残る道を選んだ。
 そのころ、事件の知らせが入ったホワイトハウスでは、副大統領キャサリン・ベネット(クローズ)を中心に緊急会議が開かれていた。大統領のポッドが空だったとの報告に、色めきだつ首脳陣。だが、ベトナム戦争当時、マーシャルが救援ヘリのパイロットだったという事実を知ったキャサリンは、彼が人質救出の唯一の頼みの綱であることに気づく。そこへ、コルシュノフから電話が入った。「ラデクが釈放されるまで、30分に1人ずつ人質を処刑する」――キャサリンは時間稼ぎの作戦をとるが、タイムリミットは刻々と迫る。そして30分が経過したとき……。

SHIMIZU ★★☆(97/10/28 ブエナビスタ試写室)

世界1頑丈な機体(なんせミサイルに狙われてもビクともしないんだからね)、空の要塞とでも呼びたい米国大統領専用機の中での密室サスペンスであります。

監督はドイツのペーターゼン監督で、機内の動きなど『U・ボート』の人らしい密室の緊張感を醸す演出は熟練しています。テロリストが機内をあっという間に制圧し、大統領が機内の脱出ポッドで見事に脱出というあたりは快調なテンポ。が、脱出したと思った大統領が実は機内に残っていて、一人で立ち向かう! これがお話の核であります。すごい強引な設定。相当強引なのだから、これまた相当彼の行動を綿密に組み立てるクレーバーなディテールが望まれます。なんていうと、「あなた、これは映画なんだから堅いことぬきにしましょう」と軽くあしらわれそうだが、やはり、「よ、大統領」と声のひとつもかけたくなるくらい、彼の行動は特別であって欲しいわけね。

ところが、大統領という設定が、行動を窮屈にしている。まず、面が割れているため人質を装い犯人を撹乱する手が使えない。勢い彼は機内の荷物置き場で、敵を引き込んでは一人づつやっつける単調なパターン。彼の行動を立体化する小道具が携帯電話で、機内からホワイトハウスに電話をかけて指令を発する図も、サスペンスの手口としては安易すぎないか(実際、大統領専用機の機内から携帯で交信することは出来ないのだそうだけど)。

見ているうちに、さらに疑問が広がる。大統領はベトナム帰りの強者という設定だが、彼の闘いぶりが全然クレーバーじゃないのだ。途中で、普通の人間なら3度は死んでいるという局面があるのだけれど、そこから逃れる手があまりに原始的で恐れ入っちゃう。テロ集団に捕まり後ろ手に縛られた大統領が「瓶の破片」を拾って手のガムテープを切る図など、昔のアクション映画あたりの定番。脚本が、ちょっと粗っぽすぎるよ、いくらなんでも。大統領が機内脱出パラシュートの落下口から落とされ、クリフハンガー状態なのも吃驚で、どんどん荒唐無稽状態に突入。

ホワイトハウスでは、こういう危機的状況の時は大統領が座を退き副大統領が後がまに座る措置がとられる。という米国の憲法解釈がもっともらしくでてくるけど、グレン・クローズ演じる女副大統領がみすみす史上初の「女性米大統領」の誕生を断念し、大統領の勇気に賭ける姿も、すごく古典的。いくら強い親父を標榜するアメリカでも、大統領がこんなに一人で頑張るってのも考えもの。これは大統領という名の闘い好きな「親父」の物語ってところか。へたするとテロリストより、切れた大統領のほうが怖いという警告として受け取ったほうがいいよ。フォードは、大統領というより、正義を守る西部の保安官という感じ。フォードが悪のリーダー、ゲイリー・オールドマン(ヘビーアクセントの役作りで、人質を容赦なく射殺する冷血ぶりが強烈)を機内から蹴り落とす「処刑シーン」まであって、決めの言葉が「GET OFF MY PLANE!」だって。笑えます。あと、専用機が海に落下するあたりのSFXも漫画的で、笑えます。

それにしても大統領を護衛するシークレット・サービスの1人が、なぜ裏切ってテロの仲間に加わったのか。彼の行動も最後まで不可解だったな。

YAZAKI ★★☆(97/09/26 ブエナビスタ試写室)

テロ政権打倒を祝う晩餐会の場面。ハリソン大統領を紹介するロシア人のスピーチを、ロシア語に英語がかぶる同時通訳で聞かせる演出がウマイ。確かに、この場で英語のスピーチは不自然だし、さりとてハリウッド映画に大量の字幕は御法度だし……というところを、ペーターゼン監督はベリー・スマートにクリアしている。OH! こいつはハナからリアル・モードなノリが期待できるわい、と、胸がふくらむ。けど、悲しいかな、そのふくらみは、実際の胸と同じように萎みの一途をたどっていったのでございます。

私は大変に大雑把な人間なので、実際の大統領専用機に脱出ポッドがあるのか? とか、空中給油ができるのか? とか、飛行中に携帯電話が使えるか? とか、そういうディテールの真偽に関しては、全然こだわりません(これに関しては、ENTERTAINMENT WEEKLYのサイトに面白い特集記事があります)。だって、世の中には、エアフォース・ワンの搭乗経験がある人間より無い人間のほうが圧倒的に多いわけですから。この映画の大統領専用機はこういう作りなんだと主張する、そういう映画のウソはOKだと思うのです。他の航空パニック映画では御法度の機内の銃撃戦、これなんかも、大統領専用機は特別銃弾に強い材質でできているんだ、そういうものなんだと思えば、思えないこともないわけです。

問題は、やはり人のアクション。機内に残ると決めたハリソン大統領が、テロリストにたったひとりで立ち向かう。その『ダイ・ハード』な設定はアリとしてもですね、ライフルを持った相手に素手で飛び掛かっていくという彼の行動パターンは、あまりにも現実離れが激しすぎるのですよ。大統領は、人質を救えるのは自分しかいないと知っている。もちろん、自分の役職がどれほどのものかも知っている。そんな人物が、椅子の背に隠れるような子供だましのトリックを使い、徒手空拳で敵に躍りかかるとは、どうあっても信じがたい。工夫がなさすぎるウソのつきかたに、私はドッとシラけてしまいました。

この大統領には、テロリストに比べ、はるかに有利な点があります。それは、機内を熟知していることと、パイロットの経験があることです。つまり、この2大アドバンテージを駆使した頭脳プレイで敵をやっつけていくのが、まっとうな闘い方だと思うわけでして。少なくとも、私はそういう方向を期待していたのですが、どうもハリソン大統領は、頭より先に身体が動いちゃうタイプ(つまり行動派ってことをアピールしたかった?)のようで、カートンから漏れるミルクを見て燃料を捨てることを思い付く以外は、ただひたすら、ひとり、またひとりと、行き当たりばったりの捨て身攻撃で敵を倒して行くのでありました。

ついでに申し上げますと、電話で外部に状況を知らせる、燃料を捨てるという作戦は、『パッセンジャー57』でウェズリー・スナイプスが使っている手。しかもスナイプスは、これをパッと思い付いてとっとこ実行に移す。比べちゃうと、ハリソン大統領のニブさが目立ちます。燃料を捨てるのにワイヤーを繋ぎかえるとき、国旗の色を基準にヤマカンでカットするワイヤーを決めるところなんぞ、「こんなヤツに国の命運を託して大丈夫なのだろうか」と、心配になったりして。

と、不満のつのる機内アクションに引き換え、面白かったのはホワイトハウス側の動き。副大統領役のグレン・クローズがクールなネゴシエーターぶりを見せるいっぽう、国防長官が大統領解任に向けて動き出すという政治的な駆け引きが進行していく。クローズが解任要請の署名にサインするかしないか、銃撃&爆発&格闘&エア・アクションがてんこ盛り状態であるにもかかわらず、私にはこの場面がいちばんスリリングに感じられました。

娘の頭に銃を突き付けられ、いかなる状況にあってもテロに屈しないという信条を崩してしまう大統領。愛を弱点とする人間味のある主人公は、いかにもハリソン好みのキャラクター。でも、今回は、ちょっとワンマン・ショーが過ぎた感じ。「Get off my plane」の捨てゼリフでオールドマンを蹴り出すタフガイぶりは、『ID4』のビル・プルマンなんぞ足元にも及びませんぞ。ちなみに、ベトナムの勇者だったハリソン大統領と反対に、ベトナム徴兵を拒否したクリントン大統領は、この映画を二度見て「VERRY GOOD MOVIE」とコメントしたそうでありますが。

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