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NY検事局NIGHT FALLS ON MANHATTAN 1997年アメリカ 監督・脚本シドニー・ルメット 撮影デビッド・ワトキン 出演アンディ・ガルシア/リチャード・ドレイファス/イアン・ホルム/レナ・オリン/ロン・リーブマン/ジェームズ・ガンドルフィーニ ●113分 ギャガ=ヒューマックス配給 1997年11月より丸の内ピカデリー2ほか松竹・東急洋画系にて公開予定 『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』の原作者ロバート・デイリーのベストセラー『堕ちた証拠』を、『セルピコ』『評決』の社会派シドニー・ルメット監督が映画化したリーガル・サスペンス。今年73歳になるルメットにとっては、本作が40本目の監督作となる。 |
STORY警官をしながら夜学に通い、司法試験の難関を突破したショーン・ケイシー(ガルシア)。刑事の父リアム(ホルム)から譲り受けた正義感を胸に、地元ニューヨークで検事補の職についた彼は、ジャンキーやチンピラが起こす雑多な事件の後始末に追われる日々を送っていた。そんなときに起きた父の事件。大物ドラッグディーラーの逮捕に向かったリアムが、銃弾に倒れて瀕死の重傷を負ったのだ。混乱した現場では、3人の警官も犠牲になった。それからまもなく、犯人のジョーダンが、弁護士ビゴダ(ドレイファス)を通じて自首を申し出た。なんとしても勝訴に持ち込みたい検事局長(リーブマン)は、リアムに対する同情票を期待してショーンを担当に任命する。やがて訪れた公判では、リアムも証言台に立った。冷静な喚問で得点をあげるショーン。いっぽうビゴダは、ジョーダンが3つの分署の警官たちに多額の保護料を支払っていたこと、その値上げを拒んだジョーダンが警官から命を狙われていたことが、事件の背後にあったと指摘する。ビゴダがジョーダンの弁護を引き受けたのは、とりもなおさず、この警察内部の腐敗を摘発するためだったのだ。 裁判はショーンの圧倒的勝利に終わったが、彼の胸には疑念が残った。検事局の刑事部が調査したところによれば、父の相棒ジョーイ(ガンドルフィーニ)にも、汚職の疑惑がかかっているという。「真実こそ正義」と信じてきたショーンは、いま灰色の領域に足を踏み入れようとしていた。 |
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SHIMIZU ★★★☆(97/09/25 ギャガ試写室) 実はこの日、先に『コップランド』を見てから、この映画に突入。ルメット御大得意の「正義の相克」。『12人の怒れる男』から『セルピコ』『プリンス・オブ・シティ』『Q&A』など、いわゆる警察権力ものは彼の定番で、手垢のついたと思うかもしれませんが、どうしてどうして。彼の「正義」に賭ける思いは、昔も今も熱いです。 警官だった前歴をもつ新米の検事補から、とんとん拍子で検事になった男が主人公。彼は「正義」を守り抜こうとする男。そんな彼が警察内部の腐敗に容赦なく取り組む展開です。ガルシアは派手さのない俳優で損をしているけど、彼の抑えた演技は映画に緊張感を生み出すのに十分です。ここでも、次第に他を寄せ付けない鬼検事となり、警官の父親のパートナーである警官が、リベートをもらった一件で罪に問われないように便宜を図ってもらおうとやってきても決然とはねつける。『ゴットファーザー』のアル・パチーノみたいな憂いが、ガルシアにも潜んでいます。 話は警察内部の腐敗が、自分の父にも及んでいるのでは、と思いはじめた時、父は冒頭の凶悪犯逮捕の折り、判事の逮捕令状の日時を自らねつ造した、と息子に告白するあたりから、映画はどっと深い親子の情を軸にした、葛藤のドラマとなっていきます。その語り口の見事さ、畳み掛けていく心理のうねり。見事です。僕が感心したのは、ガルシアの、ひとつの決断がなされるクライマックス。細部の説明は差し控えますが、同じころ、判事のもとを訪れた父親とガルシアとの、各々の決断が、緊張感満点に演出されています。判事の部屋で、音楽もなく、時計の音だけがカチカチいっているシーンが人の運命を刻む鼓動のようで、印象的です。正義を貫こうするあまり、人を見失っていたという思い。「人間は完璧じゃない」と新米の検事補たちに、自戒をこめて語る最後も、いい余韻。法律や権力という巨大なシステム、それをうまく運用するのは人である。まず、人ありき、というルメット御大の成熟した視点も、また一興。 役者の持ち味を存分にいかした演出も見事で、とくにユダヤ系の検事役を演じたNYの舞台で有名なリーブマンが前半、アクの強い検事役で画面をさらいます。後半はガルシアの父親役のイアン・ホルム、ガルシアを先導する弁護士役のドレイファスと、どれも人間臭い演技を見せてくれます。 ルメット御大はアメリカ映画の不滅の「良心」であります。 |
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YAZAKI ★★★(97/09/08 ギャガ試写室) 三つ子の魂百まで。立派すぎるほど立派な「ルメット印」の作品です。『12人の怒れる男』に始まり、『NY検事局』に至る。道程には『セルピコ』『ネットワーク』『プリンス・オブ・シティ』『評決』『Q&A』などがあり、それらを通じてずっと正義の行方なるものをみつめて来た巨匠ルメット。筋の通り具合はパンパじゃありません。ビシッと襟を正して見に行きましょう。 警官をしながら苦学して法律を学んだ主人公が、念願かなって検事補になる。法の下では誰もが平等をモットーに、真実の追求に理想を燃やす彼。でも、その大元のところが、父親がらみの事件によって揺らいでいきます。 自分自身のモラルに沿った道を行けば、父を窮地に追いやることになる。さらに、社会に対する責任をまっとうしたいという己の志ともそぐわなくなる。自分の中の何かを曲げなければ身動きのとれない状態に追い込まれた主人公の葛藤が、ここでは謎解きの趣向も交えてじっくりと描かれていきます。 正義と真実、父と子。硬派な縦糸のエピソードに加え、検事局内の政治闘争や、主人公と弁護士助手(レナ・オリン)の色恋沙汰といったスキャンダラス系の横糸も張り巡らされ、ドラマは盛りだくさん。それを縦横無尽に語りあげていくルメットの熟練したタッチには、惚れ惚れせずにはいられません。ただし、まだ駆け出しの主人公が、時の勢いに乗ったとはいえ検事選に勝利してしまう展開はやや強引。また、オリンのキャラも、「とりあえず花を添えとくか」みたいな扱いをされているところに、ちょっと不満が残ります。 とはいえ、もう縦糸の部分だけで、この映画は1800円分の見ごたえ十分。役者陣の演技も素晴らしく、とくにイアン・ホルムは「ブラボー!」のひとこと。どこでどんな芝居をするか説明しちゃうとサスペンスのネタをバラすことになるので言えないのですが、リアクションの微妙な表情がウマイったらないのよ。オスカー助演賞あげたいな。もうひとりの助演賞候補(と勝手に決めている)は、ユダヤ人の検事に扮したロン・リーブマン。彼の圧倒的な“場面さらい”の演技を見て、パブリック・シアターで彼が主演する芝居をむしょうに見たくなってしまいました。なかなかチケットが取れないんだけど。 |