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試写状 アデュー、ぼくたちの入り江

MARIE, BAIE DES ANGES

1997年フランス 監督マニュエル・プラダル 出演フレデリック・マルグラ/ヴァヒナ・ジョカンテ/ニコラス・ウェルベール ●90分 シネマテン配給
2000年3月11日よりシネマスクエアとうきゅうにて公開予定

15歳の入江の少女マリーとロマ(ジプシー)の少年ゴランが美しいコート・ダジュールの伝説の「天使の入江」を背景に、次第に愛に目覚めていく、おとぎ話的な思春期映像詩。ドキュメンタリー出身のフランスの新人マニュエル・プラダルの監督デビュー作。
SHIMIZU★(99/12/06 シネカノン試写室)

「ここは天使の入江です。天使とは、かつて地中海にいた鮫の呼び名です。沖に見えるふたつの岩はまるで泳ぐ鮫のようです。伝説では、この鮫が入江の守り神です。岩を見て逃げ出した侵略者もいたほどです。おかげで入江は平和のうちに繁栄しこの地が誕生したのです。恋人だった天使と鮫がふたつの岩の浜辺に逃げ込んで愛し合い、“天使”と呼ばれる鮫が生まれたと言われています」

舞台はフランスで最も美しいといわれる、ニース近くのコートダジュールにある伝説の鮫の名を持つ「天使の入江」。なにかメルヘンチックなムードで始まります。主人公は別荘などに盗みに入っては金をせしめるロマ(ジプシー)の少年オルソ。彼はその金を別の少年ゴランに渡し、銃を手に入れようとします(結局、それがなぜかよくわからない)。彼の視線の先には入江の少女・マリーがいる。彼女は15歳で、地元に駐屯する米兵を挑発しては彼らと関係している(具体的なセックスシーンはないけれど)。少年と少女。その関係がどう展開していくのか。リゾート地の放浪する少年とくれば、『モンド』を想起させるわけで、僕もそのようなメルヘンを期待したのだけど。

たしかに、ひとつひとつのショットはそれなりに光と影を感じさせる繊細なタッチ(少女がひとり入江で踊るシーンなんぞも悪くはないけど)。でも、かといって、それがなんだという感じ。少年と少女の気持ちがこちらの気持ちに語りかけてこない。米兵との関係も『アメリカの贈り物』ほどのディテールもないし、ね。すべてがあるようで、ない世界。よく言えば、夢幻的な気分少々。わるく言えば焦点ぼけ。すごく退屈なひとりよがりの映像詩という印象です。監督の弁によれば、この美しい南仏が主役のようで、この場所は「エデンの楽園」のような場所であること。もうひとつこの場所は「犯罪的な楽園」であること。そこにロマ(ジプシー)の少年を放つことで、現代のおとぎ話を紡ぎだそうとしたよう。ま、「楽園感覚」だけが先走り、少年・少女が借り物みたい。監督の操り人形状態って感じがしたな。絵空事っぽさは、ディカプリオの『ザ・ビーチ』の「楽園感覚」に似ているかも。お好きな人はドーゾ。

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チラシ スクリーム3

SCREAM3

2000年アメリカ 監督ウェス・クレイブン 出演ネーヴ・キャンベル/デイヴィッド・アークェット/コートニー・コックス・アークェット ●117分 アスミック・エース配給
2000年4月1日より丸の内ルーブルほか松竹・東急洋画系にて公開予定

山奥に隠れて暮らすシドニー(キャンベル)の居所をつきとめようと、かつての友人たちを次々と毒牙にかける「叫びマスク」の殺人鬼。やがてその魔の手は、シドニーたちの事件を題材にした映画『スタブ3』のセットにまで及ぶ。シリーズ完結編。
SHIMIZU★★(00/03/22 アスミック・エース試写室)

今回はオリジナル脚本を手掛けたウィリアムソンがはずれての、3作目。今回の主眼は3部作を生き抜くための3つのルールを前提にしたところだが、彼の「遺産」をなぞった程度で低調。その1は「犯人が不死身のスーパーヒューマンであること」、その2は「主役でさえも死んでしまう可能性があること」、その3は「過去にさかのぼり驚くべき事実が明かされること」。前2作がホラー映画のパロディ精神をいかなく発揮し、その上で物語のツボを心得た作りだったのに対し、3作目はやはり、展開のしようがない苦しさがありあり。「過去」の材料をもとめるあたりは『スター・ウォーズ』のパターンで、なんでもありの様相。ほかのルールも、なんでもありを補完するためのいいわけに見えたりしてね。

ま、前2作がなければ、そこそこ普通のホラーの域かも。前作を映画化しているスタジオには1作目のヒロインの家のセットが登場、そこを訪れたヒロインのネーブ・キャンベルがセットの家で犯人を追われるあたりの現実と夢の交錯は、いかにも『エルム街の悪夢』のクレイブン監督らしい演出。パロディが弱い分、カメオ出演の「賑やか師」が少々。『スター・ウォーズ』のレイア姫ことキャリー・フィッシャー、『チェイシング・エイミー』に登場するサイレント・ボブことケビン・スミス監督と彼の相棒(キャスターのコートニー・コックスに「あ、コニー・チャン(有名な中国系のキャスター)」とからかう)が登場するのが、パート3のプレゼントか。
YAZAKI★(00/03/09 渋谷東急)

脚本が、ケヴィン・ウィリアムソンから『隣人は静かに笑う』のアーレン・クルーガーに交代。それに伴って、「人生が無意識のうちにホラー映画を模倣することを、恐怖にさらされる人々が怖がりながらも面白がる」という、このシリーズ最大の魅力(と私が思っているもの)は、完全に失われました。

まず、シドニーを知る昔の仲間たちが次々に殺され、さらにシドニー事件をネタにした映画の関係者たちが次々に殺されていく。さて死んだのは何人でしょう? みたいな展開は、『13金』のパターンなのだけど、今回の登場人物は誰もそのことに気づかない(笑)。映画の撮影現場で殺人の起こる設定が、「『ダーティハリー5』みたいじゃない?」と、指摘するヤツもいない。つまり、前2作にあったパロディ感覚が、まったく失われてしまっているのです。

唯一、パロディの要素として用意されているのは「トリロジー(三部作)のスーパー・ルール」。すなわち、(1)敵が人間を超えた存在のスーパー・ヒューマンに設定されている(2)メイン・キャストでさえ死んでしまう可能性がある(3)過去に遡り、驚くべき事実が明かされる、というもの。でも、これすらも、ドラマにWORKしているとは言いがたい。せいぜい、ルール(3)をひねくりまわすのが精一杯。前2作のファンだったYAZAKIは、この脚本の出来には、ものすごくガッカリしました。

で、ホラーのパスティーシュという魅力が欠けた分、キャラの行動をつかさどる動機や殺しの手口など、ディテールのアラが目立ちまくり状態になっている。とくに笑っちゃうのは「犯人」に関する描写。ソイツは、シドニー関係者の声色をマネる変声マシンを使い、巧みに獲物をおびき出すんだけど、その変声マシンの仕掛けがどうなってるのか、ソイツはなぜそんなものを手に入れられたのか、そして、なぜ自分に被害をもたらす方向に殺人のターゲットを持っていったのはなぜかなど、わからないこと&矛盾することが多すぎる。

ま、わからなくてもソコソコ怖きゃいいって人はかまいませんが、先に私の言ったようなポイントでこのシリーズを面白がっていた人は、やっぱりガッカリ度は高いと思うよ。1&2作目でいい味出してたデビッド・アークェットも、今回は、いいところがひとつもなく、ただの肥満オヤジという印象。

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試写状 ヒマラヤ杉に降る雪

SNOW FALLING ON CEDARS

1999年アメリカ 監督スコット・ヒックス 出演イーサン・ホーク/工藤夕貴/リック・ユーン ●128分 UIP配給
2000年4月1日よりみゆき座ほか東宝洋画系にて公開予定

デビッド・グターソンのベストセラー「殺人容疑」を、『シャイン』のスコット・ヒックス監督が映画化。50年代半ば、ワシントン州の小さな島を舞台に、殺人容疑に問われた日本人漁師の妻ハツエ(工藤)と、彼女への思いをたちきれない新聞記者イシュマエル(ホーク)の織り成す葛藤を、抒情詩ふうに構成された回想シーンを交えて描く。
SHIMIZU★★☆(00/02/07 UIP試写室)

漁師の怪死をめぐり、その漁師から土地を買い取るつもりだった日系米人が殺人容疑で逮捕される。一見、ミステリー仕立てだが、根にあるのは「人種偏見」。『愛と哀しみの旅路』では、真珠湾攻撃以来の日系米人にたいする迫害と、そんな逆境のなかでも人種を超えたヒューマンな愛のかたちを描いていた。この映画でも、日本人を恐縮するほど(?)、実に真摯な視点で描いている感じだ。

物語の主軸は幼い頃から相思相愛だった米国人のイシュマエルと日系のハツエの愛の葛藤。演じるはE・ホークと工藤夕貴。ホークが抑えた演技で示す忍ぶ恋の余韻は、かなり終盤の雪降る街での別れまで、ジーンと心に響く感じだが、一方、工藤夕貴の、眉間に八の字のシワを寄せるワンパターンの感情表現が僕には解せなかった。彼女が英語のセリフまわしで頑張っていることは賞賛に値するけど、その上で、夫がいながらも引き裂かれた元恋人に心動かされるような、ある種の官能を期待したのだけど。すべてはホークが身を引いたところからながめる構図というポイントのせいか、ふたりのケミストリーが思ったより盛り上がらず、もどかしい。

しかも、映像はすごくbleakでdeep。僕はエドワード・ホッパーの絵画にある、靄のかかったような「憂鬱」を想起した。ヒックス監督の前作『シャイン』に心酔した僕だが、今回はヒックス監督の絵画的なこだわりに脱帽しながらも、一瞬一瞬が連動してこないスローな語り口に不満が残った。事件が差別問題を紡ぎだし、過去の異人種愛をひもとき、と話は多様を極め、最終的に主人公のホークが人種を超えた正義、つまりすべての人に施されるべき「フェアな精神」を奏でて幕となる。映画に対する志も映像ビジョンも立派だけれど、今後ヒックス監督は脚本の善し悪しを吟味する眼力が必要かもしれない。
YAZAKI★★☆(00/01/19 UIP試写室)

正確にはかったわけじゃないけど、映画の60%は回想シーンではなかろうか。でもって、その60%が99%くらいに感じられる映画。このノリについていけるかどうかで、多分、評価が分かれると思います。

私の場合は、最初のうち、「おお、今年の『シン・レッド・ライン』か!?」と思わせる回想シーンの絵画的な美しさと、その演出の斬新さ(セリフはほとんどなく、自然をダイナミックに捉えた映像のなかで主人公ふたりの喜びや悲しみのエピソードがドラマチックに綴られていく)に圧倒されながら見ていたけど、途中からこれがものすごくヘビーに感じられ、バックに流れる大仰なメサイア調の音楽も「頼むから鳴り止んでくれ」と思うようになってしまった。たとえるなら、前菜だけでよかったフォアグラのフルコースを食べさせられたって感じでしょうか。

とはいえ、この回想シーンのなかにも、「戦争によって引き裂かれた恋人同士の物語」として心打つ場面が多々あります。たとえば、家族と共に日本人強制収容所に送られたハツエが、母の前でイシュマエルにあてた別れの手紙を読み、これが、戦場で海のなかに放り出されたイシュマエルのもがく姿につながっていくところなど、運命の試練にさらされた恋人たちの激情が、怒涛のごとく伝わってまいります。

回想攻撃が比較的おとなしくなる後半では、法廷ドラマのサスペンスの妙味も感じさせるし。何より感じがいいのは、ハツエにしろ夫のカズオにしろ、ハリウッド映画にしては珍しく、日本人が日本人の目で見ておかしくないように描かれていること。これは、工藤夕貴ちゃんのお手柄か。

ずっとハツエに対する未練を断ち切れなかったイシュマエルが、「彼女は、すでに別の人生を歩き始めている」と気づき、自分の愛とジャーナリストの良心をまっとうする方向へ動き出すあたりも、泣かせるノリ。そんなイシュマエルの気持を母性的な愛で受け止めたハツエが、「優しい心をありがとう」と言うラストは、思いっきり切なさをかきたてます。

と、書いてるうちにだんだん傑作に思えてきたこの映画。「運命の不条理」「戦争」「人種偏見」「ジャーナリズム」とテーマがてんこもりな上に、例の回想シーンが嵐のごとく押し寄せてくることを覚悟のうえで、くれぐれも体調のいいときに見てください。

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試写状 U.M.A/レイク・プラシッド

LAKEPLACID

1999年アメリカ 監督スティーブ・マイナー 出演ビル・プルマン/ブリジット・フォンダ/オリバー・プラット ●82分 東宝東和配給
2000年4月1日より日比谷映画ほか東宝洋画系にて公開予定

メーン州北部、静かな美しい湖で、ダイビング中の男が胴体をまっぷたつに喰いちぎられて惨殺された。歯形を調べるためにNYから来た考古学者のケリーと、地元の保安官ハンクが謎の解明のため湖に接近、「U.M.A.(未確認生物)」の調査を開始する。『シンプル・プラン』のブリジッド・フォンダと『ID4』のビル・プルマン共演の動物ホラー作。
SHIMIZU★(00/02/21 東宝東和試写室)

そもそも邦題からいかがわしい。UFOまがいの頭文字U.M.Aは「未確認生物」のこととか。お話自体は動物パニックもので、湖底から獲物を狙う視点は『ジョーズ』ふう。この「未確認生物」が巨大なワニとわかるあたりはそこそこの恐怖を醸すが、巨大なワニが陸地にあがり人を襲う特撮は、レイ・ハリーハウゼンのような古くさい代物。ま、それはよしとしても、どうにもしまらないのがいまどきの「動物愛護」のポイント。巨大な人喰いワニも大きく見れば「動物」。これをやたらに殺しちゃいけない。動物パニックの「敵」としては、焦点ぼけの頼りなさ。しかも、その事件を調査するNYから来た考古学者のB・フォンダと地元の保安官B・プルマンがどうにも煮え切らないケミストリー(関係)で最悪。芸達者なはずの、ふたりの共演だが、お金のために出演したのでは、と思うこと暫し。面白ポイントはひとつ。秘かにワニを飼育していた老婆の存在、夫までエサにしていたというあたりは、結構ブラックなおかしさはあります。

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試写状 ニコラ

LA CLASSE DE NEIGE

1998年フランス 監督クロード・ミレール 出演クレモン=ヴァン・デン・ベルグ/ロクマン・ナルカカン/イヴ・ヴェローヴェン ●96分 シネマパリジャン配給
2000年4月1日よりシネスイッチ銀座にて公開予定

過保護な両親を持つ12歳の少年ニコラ(クレモン=ヴァン・デン・ベルグ)。医療器具のセールスマンをする父親から臓器密売の話を聞かされた彼は、スキー合宿で、父をヒーローに仕立てたウソを友人たちに話すのだが……。妄想と現実の見境がつかなくなる少年の心理を、『なまいきシャルロット』のクロード・ミレール監督が細やかに描くサスペンス。
YAZAKI★★(00/01/25 映画美学校試写室)

12歳にしてオネショ癖が直らない少年が、主人公。過保護な父を持つ彼は、集団生活から隔離されるような育てられ方をしている。そのため、友達づきあいのなかでワーッと自分を発散する術を知らない。この年頃の男の子にありがちな残酷なものへの憧れ、性のときめき、死の神秘にひかれる思い。そういったものが、この子のなかでは自己増殖し、やがて現実と見境のつかない妄想へとふくらんでいく。

そんな少年の心理を、透明感のある雪景色とコントラストをなすように描いたところに、妙味を感じさせる作品。スキー合宿へ行く途中、父親から臓器密売の話を聞かされた少年は、「僕のパパは臓器密売人と戦っている」という話をでっちあげてクラスメイトにする。それが、スキー場で起きた子供の殺人事件と結び付けられてしまうあたりは、子供の嘘が真実の重みを帯びていく『噂の二人』を思わせるパターン。

ただし、この映画の場合は、少年の嘘や妄想が、現実を侵食していくような怖さを備えている。劇の中盤、少年の夢遊病が持ち出されるところは「???」と思ったけど、少年心理に興味のある人は、見て損のない映画じゃないかな。

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