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試写状 いちげんさん

ICHIGENSAN

1999年日本 監督森本功 出演エドワード・アタートン/鈴木保奈美/中田喜子 ●122分 メディアボックス配給
2000年1月下旬よりシネマスクエアとうきゅうにて公開予定

京都で日本文学を専攻するスイス人留学生の「僕」と、母親とふたり暮らしの盲目の女性・京子との愛と性を描く。「指で感じる愛」を銘打った官能ドラマ。すばる文学賞を受賞し芥川賞候補にもなったデヴィッド・ゾペティの同名小説を、劇中大学教授としても出演している俳優の塩屋俊が企画・共同製作した。
SHIMIZU★☆主人公は京都の大学で日本文学を専攻するスイス人の留学生の僕。僕はバイトで対面朗読(ミュウミュウの『読書する女』みたいな)のバイトを始める。その相手は目不自由な京子という、母親と二人暮らしの日本女性。

 まず、僕役のエドワード・アタートンという英国俳優が随分、流暢に日本語を話すことに感心。とくに彼のモノローグといい、読書での難解な語彙も含めた朗読といい(森鴎外の『舞姫』)。どれもよどみがない。そんなことに興味を引かれるのも、この映画は「僕」の心象による世界を軸に動いていくからだ。

 京都の雰囲気を語るモノローグでは「鴨川にいるカップルが物差しで測ったように等間隔で並んでいる」といった描写の面白さがある。が、それはどうやら原作の持ち味をそのまま引き写した印象。見ている方が次第に居心地がわるくなるのは、京都の名所や自然を背景にした「日本的な美」を意識した写生の世界。なにか、ガイジン向けの日本案内を見ているような気分が少々。

 さて、物語の核は僕と盲目のヒロインとのケミストリー(関係)だが、どうにもこれが新鮮味を感じさせない。谷崎の『春琴抄』の異人種愛版か、と思うくらい古くさい。その一因は鈴木保奈美の演技。例の「カンチ」でおなじみの「東京ラブストーリー」のキャラと大差なし。表面は勝ち気で実は強がり女という恐怖のワンパターン演技。しかも、映画の眼目とも言うべき、彼女の「官能」がどうにもあふれてこない(言いがかりを承知でいえば、彼女の異常にデカくて黒い乳首に思いっきり腰がひけちゃいました)。

 途中からは「僕」の事情が駆け足で紹介される。表題の漢字を間違っているから「日本文学」なんてムリと断定する大学の担当教授に絶望する図、フランスのTVクルーに「僕」が同行したヤクザ世界の取材など、ガイジンが見たら大いに興味がそそられるカルチャーギャップポイントもある。

 でも、日本人から見ると、全体に昔から見ているジャパネスク。美しい映像(豪州の撮影監督ピーター・ボロッシュが担当)など、きっちりしたスタッフの仕事は大いに認めますが、情感部分で心が動きません出した。申し訳ない。英語のできる、ポスト・マコの塩屋くん、ごめんね。(99/11/12 メディアボックス試写室)

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試写状 嘘の心

AU COEUR DU MENSONGE

1999年フランス 監督クロード・シャブロル 出演サンドリーヌ・ボネール/ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ/ジャック・ガンブラン ●113分 セテラ配給
2000年1月下旬よりキネカ大森にて公開予定

ブルターニュのある田舎町で10歳の少女エロルディがレイプされ絞殺された。その事件から彼女に絵を教えていた画家ルネが容疑者として浮上。彼の、看護婦の妻ヴィヴィアンヌは地元のスターである作家デモと浮気寸前。ウソから照らしだせる深層心理の闇。ヌーベルバーグの異才クロード・シャブロル監督が絵画のようなタッチで描く心理サスペンス。
SHIMIZU★★☆フランスのヒッチことシャブロルの心理サスペンス作です。まず、海を臨むブルターニュの町で事件が起きます。それは「少女」へのレイプ殺人。容疑者として彼女に絵を教えていた内省的な画家ルネが浮上します。見ている方も彼が犯人なのか、と思わせる。その彼の、看護婦をしている妻ヴィヴィアンヌが地元に帰ってきた作家デモと浮気をしようとします。ここから「ウソ」の連鎖のはじまり。夫が、妻が、お互いの心を意識しながら「ウソ」をつきはじめ心理葛藤がうまれる展開です。

 少女の事件と同時に、もうひとつの事件が起きる。それは調子のいい作家の死です。それにおいては、それなりの経過があるですが、それは見て頂くとして。この映画は、なにか教訓もので名をなしたエリック・ロメールの、残像を感じました。まず映像のマチスと称されるロメールに対し、ここでのシャブロルは「点描法を見つけたスーラの気分」というルネの言葉を介し、この映画全体を「ブルー」を基調にした絵画的な世界にしよとします。

 「ブルー」とはすなわち「孤独」。そんな格言はないけれど、僕流に言えば、この映画は「ウソは孤独の始まり」。それぞれが寄り添う孤独な関係が、「点描法」のごとく細やかな心のウソの点描によって全体像を現す。彼らの「ウソ」が騙し絵(ルネが自宅の壁に描く、福田繁雄のようなだまし絵)に象徴されるスタイリッシュな演出もこの映画の「謎」解きのひとつかも。

 それらをシャブロルは老練な手さばきで遊んでいるようにも見えます。その遊びの最たるものが「女刑事」の登場です。独特の直感を使い、彼らの「心理」にはいりこもうとする、ちょっとウザッタイ存在。女シャーロック・ホームズみたいな感じです。演じる馬面のヴァレリア・ブルーニ=テデスキが悠々たるペースで、タバコをくゆらせながらの演技。うまい。ヴィヴィアンヌ演じるサンドリーヌ・ボネールもこれまたうまい。夫のジャック・ガンブランもさらにうまい。フランスの、どうだ、うまいだろうのてんこ盛りで、当日少々眠気がはっていた僕には濃い世界となりました。ま、好きな人は凄い好きかも。僕にとってシャブロルは『二重の鍵』以来のモノクロの人なので、ここでのカラー映像をキャンバスに見立てた演出には、ちょっと老境の趣味人という感じがしました。(99/11/16 シネカノン試写室)

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試写状 狂っちゃいないぜ!

PUSHING TIN

1999年アメリカ 監督マイク・ニューウェル 出演ジョン・キューザック/ビリー・ボブ・ソーントン/ケイト・ブランシェット ●124分 20世紀フォックス配給
2000年1月下旬よりスバル座ほかにて公開予定

『フェイク』のニューウェル監督によるアンサンブル・コメディ。ニック(キューザック)は、NYでピカイチの腕を誇る航空交通管制官。飛行機の離着陸を誘導し、空の安全を管理するのが、彼の仕事だ。その職場に、各地を渡り歩いている変わり者の管制官、ラッセル(ソーントン)が転任してきた。彼とニックは、たちまちライバル同士に。さらに、はずみでニックがラッセルの妻とベッドインしたことから、事態は混乱をきわめていく。
●オフィシャル・サイト●http://www.foxmovies.com
SHIMIZU★★僕の大好きなマイク・ニューウエル監督の新作。TVの台本で認められたグレン&レスのチャールズ兄弟がNYタイムズに出ていた記事に注目し脚本化したのが、「管制官」の世界。題材は確かに新しい。伊丹十三が生きていたら、「世間噺体系」でもとりあげられそう。お気軽な感じでレシーバーを耳に当てレーダー越しに飛行機の離発着を誘導する管制官の図は、なにかテレフォン・ショッピングの受付のおねんちゃんみたいにお軽い感じ。でも、よく見ると緊張が走る。レーダーを頼りに、空路図に飛行機の位置を確認するピンを刺す。その先には何百人もの乗客の命を預かる冷や汗ものの、リアルな世界が広がるのだ。その一挙一動にストレスを感じるはず。ストレスに負け職場を放棄した同僚が、職場復帰しようとするシーンも出てくる。入口までクリアーしたが、それ以上は先にすすめない。可笑しくも哀しい職業病。

 さて、主人公は飛行機を冷静にコントロールするニック(ジョン・キューザック)。彼は名うてのカードくばりのようなクールさが自慢だ。そんな彼の座を脅かす新しい管制官のラッセルがはいってきて、彼の心が揺れ動く展開。その最大の要因がラッセルの、とろけるような若妻メリー・ベル。かくして、メリー・ベルのフェロモンに負け寝てしまったニックが次第に平常心を失っていく。ダッチロールです。

 「管制」を人の心のフライトに照らしあわせ、メタファーとして使おうとしている。その脚本がかなり気流にのりきれず、もたもたしたままの航行で、どこに着陸したいのか予測不能。お話のトーンは「不倫ドラマ」の様相で、浮気したニックに続き、彼の妻コニーがラッセルと浮気の気配。このキャラがどうもふわふわして焦点がない。小市民的な浮気亭主キャラのニックに対し、ラッセルは一見、精神的に病気持ちかと思わせる危ないキャラ。それが段々と超然とした男像となっいく。

 4人の演技アンサンブルがどこまでもすれ違いで、こちらの心にヒットしてこない。ディテールのつまらなさが致命的。結局、ニューウェル先生はこの脚本家コンビにのせられ、雇われ仕事の悲哀を感じたんじゃないか、という失敗作。

 ただし、僕はバラけたとはいえ個々の演技は楽しんだ。とりわけ、メリー・ベル役のアンジェリーナ・ジョリーの、退廃度満点のセクシーさにダウン。あの唇はジーナ・ガーショウと並ぶ、男泣かせの唇になりそう。彼女がビリー・ボブ演じるラッセルに犬のようにひざまずきながら、クンクン言いながら(そいうはいわないけど、僕の感性ではそう聞こえる)、すりよる姿は彼女しかできない「名演」じゃないか。今年は『Girl、Interrupted』でオスカー候補も夢じゃない彼女、注目してまっせ。(99/12/07 20世紀フォックス試写室)

YAZAKI★『ファイト・クラブ』と2本立てにしたせいか、2時間強の上映時間がまるで拷問に感じられてしもうた。パイロットと早口でやりとりしながら、ゲーム感覚で飛行機を誘導していくニックの仕事ぶりや、仲間の管制官たちの風変わりな人間模様を描く前半はわりと楽しめたけど、いかんせん話の運びが緩すぎ。ジョン・キューザックがこんなに早口でしゃべってるのに、なぜ映画のテンポがこれほど重っ苦しいのかと、思わずにはいられませなんだ。

 見どころの要素は、ふたつ。ひとつは、顔も性格もめちゃめちゃ濃い流れ者管制官のラッセル(ビリー・ボブ・ソーントン)と、主人公のニックが繰り広げるライバル合戦。アメリカ先住民の血をひくラッセルは、自分専用の折り畳み椅子(これがいかにも座り心地が悪そう)を職場に持ち込むようなオレ流人間。妻の浮気を禅の心境で乗り切る超然とした一面と、命がけの乱気流遊びに興じるクレイジーな面を合わせて持っている。早い話、相当な変わり者。その彼と、どっちが有能かで競うことになったニック。ふたりの対決は職場だけにとどまらず、火のついたマッチ棒をどちらが長く持っていられるか、とか、どちらがたくさんフリースローをキメられるか、なんていうお子様レベルにまで広がって行く。

 それは、西部劇でおなじみの好敵手同士の関係を思わせるものだけど、ふたりの関係に変化が乏しいため、いっこうに興味をそそらない。爆弾騒ぎのなかで、彼らが誘導合戦を繰り広げるクライマックスさえもが、スリリングに見えてこないんだよね。

 かくなるライバル合戦と並行して描かれるのが、ニックと、彼の浮気に怒り心頭した妻(ケイト・ブランシェット)がヨリを戻すまでのエピソード。これが見どころ要素のふたつめになるわけだけど、キューザックとブランシェットもケミストリーに乏しく、ニックが職権を乱用して『ウェディング・シンガー』ばりの暴挙に出るオチなぞは、見ているこちらが気恥ずかしくなってしまうほど。

 作劇の意図としては、つねに冷静な判断力が要求されるがゆえに猛烈なストレスにさらされている人間が、仕事と私生活の両方でパニック状態に陥る様を面白おかしく描こうとしたのだろうけど、そういう社会派っぽい目くばりをきかせようとした分、ドラマがどんどん停滞ムードに陥ってしまった印象。『フェイク』のニューウェル監督作と期待していただけに、長所のみつからない出来映えが、悲しかったです。(99/10/12 20世紀フォックス試写室)

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試写状 シュリ

SHURI

1999年韓国 監督・脚本カン・ジェギュ 出演ハン・ソッキュ/キム・ユンジン/チェ・ミンシク ●124分 シネカノン=アミューズ配給
2000年1月下旬よりシネ・アミューズにて公開予定

韓国で600万人を動員する空前のヒットを記録したサスペンス・アクション。主人公は、恋人との結婚を1ヵ月後に控えた情報部員のジュンウォン(ソッキュ)。北朝鮮の女スパイの足取りを追う彼は、液体爆弾の強奪事件に彼女の影を感じる。そのころ、ソウル市内のスタジアムでは、韓国と北朝鮮の両国首脳が列席するサッカーの南北交流試合が行われようとしていた……。
●オフィシャル・サイト● http://www.shuri-movie.com
SHIMIZU−僕の大好きなハン・ソッキュ。彼が出演している韓国で爆発的なヒットになったという、スパイアクションです。北の女スパイと南の諜報員が恋におちる。それが物語の隠し味なのだけど、それがうまく情感を醸すほどには練れていない。それがまず不満。

 それより映画は謎めいた韓国版「ニキータ」で、アクション部分がスピーディなカットワークによって活写されます。そのテンポは濃いだけの韓国映画にはない、ベッソン調というか、ハリウッド調というか。最近の若い監督世代の「世界」を見据えた骨太な演出。終盤の「パニック・イン・スタジアム」みたいなサスペンス・アクションはそれなりに見せます。

 物語には北の女スパイの「謎」が盛り込まれ、それが明かされる顛末がひとつの妙味にしてあるけれど、ちょっとバレバレで、それを決め手にしようとする演出が結果、墓穴を掘る印象なのです。タイトルは韓国特有の「サカナ」のことで、「サカナ」がエモーショナルでスタイリッシュな小道具になるはずだけど、それもアイデア倒れにみえてしまうわけで。最後のベタベタした「その後」は昔の、韓国調の冗漫さ。でも、ハン・ソッキュって、こんな娯楽アクションでも「自然さ」をキープできるんだ、と感心。(99/12/05 ビデオ)

YAZAKI★★冒頭、北朝鮮の工作員の訓練風景が紹介されるんだけど、これがなんたってスゴイ。たとえば銃の組み立て競争があると、負けたほうは勝ったほうに容赦なく殺される。まさに弱肉強食の世界。そうやって生き残った一握りの人間が、エリート工作員として世に出て行く。その精鋭中の精鋭が、ドラマのキー・ウーマンになる北鮮のスナイパー、イ・バンヒです。

 韓国に渡り、数々の要人暗殺事件を起こした彼女を追っているのは、秘密情報員のジュンウォン。バンヒが登場する悪夢にうなされることもある彼は、デパートで密会中の情報屋の狙撃に現れたバンヒを執念で追うが、あと一歩のところで取り逃がしてしまう。そのフット・アクションを、手持ちカメラを駆使して捉えた映像は、なかなかの迫力。

 そうこうしているうち、国防科学研究所から液体爆弾が盗み出される事件が起こる。事件の裏に、バンヒの影を感じ取るジュンウォン。そのとき彼の相棒は、なぜか敵にこちらの動きが筒抜けになっていることに気づく。裏切り者はジュンウォンではないかと疑う彼。いっぽうのジュンウォンも、相棒や上司、あるいは情報部内に敵がいるのではないかと疑い出す。

 というあたりから、話の焦点は「裏切り者の正体」に移っていくわけだけど、それに関しては、ある程度最初から予想がついてしまうため、意外性はあまり感じられない。作る側も、そこにサスペンスの要素を求めようとはせず、むしろメロドラマに持ち込んでいる。で、私としては、その展開に若干無理があるような気がして、当初3つ以上用意していた★の数を減らさざるをえなくなってしまった次第であります。

 この点に関しては、書きすぎるとネタばらしになってしまうため最小限におさえるけど、いちばんの不満のタネはバンヒのキャラの扱い。冷徹非情な殺し屋であるはずの彼女が、どんどん「フツーの女の子」のボロを出していく展開は、いまいち安易すぎないか。このバンヒという女には、最後まで超然とした悪女であってほしかったというのが、私の願い。

 ただし、殺人マシーンから血の通った女に生まれ変わるバンヒの変貌ぶりは、北から南に移り、物質的にも精神的にも「豊かな暮らし」を経験したうえでの変化なのだという点を重視すべきなんだろうな、とも思う。つまり、バンヒが殺人マシーンになったのは、食べ物にも事欠く北の状況が背景にあってのことで、もし彼女が南に生まれていれば、最初から「フツーの女の子」の人生を送っていたのかもしれない。

 ということを痛烈に感じさせる点が、実はこの映画の真のスゴさかも。バンヒの所属する北朝鮮第8特殊部隊は、軍から逸脱した反動分子という設定がなされているものの、「北が生んだテロリスト」であることに変わりはない。そんな彼らが、南北首脳の暗殺を企てる話を、日本に向ってミサイルが飛んでくるご時世に作っちゃうという肝っ玉の太さね。そして、「北は地獄、南は天国」という背景をうかがわせながら、そうした差違が生まれてしまったことを憂う気持を、全面に押し出した姿勢−−それが、この映画の真に評価すべきポイントなのではないかと思うわけです(逆に、南が北に対して抱く優越意識が鼻につくと思う人もいるかもしれないけど)。

 液体爆弾が仕掛けられたスタジアムを舞台にしたクライマックスでは、「コネ入社のボンクラ」とバカにされていた青年が、思わぬヒーローぶりをみせるユーモラスな場面も。手ばなしで「ウェルメイド」と呼べる映画ではないけれど、ナミのハリウッド製アクションよりは、はるかに上質な出来の作品であることは確か。韓国映画だからと二の足を踏まず、劇場へ出かけてみる価値はあると思うよ。(99/11/01 メディアボックス試写室)

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試写状 ノイズ

THE ASTRONAUT'S WIFE

1999年アメリカ 監督・脚本ランド・ラビッチ 出演ジョニー・デップ/シャーリーズ・セロン/ジョー・モートン ●109分 ギャガ=ヒューマックス配給
2000年1月下旬より渋谷東急ほか松竹・東急洋画系にて公開予定

宇宙空間で船外作業中、2分だけ地上との交信をたったNASAの宇宙飛行士スペンサー(デップ)。奇跡的に地球へ帰還した彼は、民間企業に重役として迎えられるが、妻ジリアン(セロン)には、夫が以前と別人になったと思えてならない。やがて妊娠した彼女は、恐るべき事実を知る……。脚本家出身のラビッチ監督によるSFホラー&サスペンス。
●オフィシャル・サイト● http://www.gaga.co.jp
SHIMIZU★☆敬愛する映画評論家の渡辺祥子さんと話していて。「私、『ノイズ』の邦題を考えたの」「*@#!」「『ツインズ・ローズマリー』」「???」「(反応ないわね、という感じで)最後に双子が出てくるし、映画は『ローズマリーの赤ちゃん』みたいでしょ」「……」。つい、この映画の話をすると、沈黙する僕。

 宇宙でノイズのため通信が遮断された結果生じた、「2分間の沈黙」の謎が惹句になっいるから「沈黙」しちゃうのか。それなら、知らないうちに僕はこの映画に洗脳されていたのかも。なんて、無駄な前降りでご機嫌を伺いたいほど。ジョニー・デップが出演しているけど、彼は脇役。あくまでも主役はシャーリズ・セロンって感じのヒロイン・スリラーです。なんたって原題は「宇宙飛行士の妻」だからね。

 で、妻は宇宙から帰った夫が以前より荒々しいセックスをすることに疑念を抱く。「違う、この人??」。と、夫はある企業にヘッドハンティングされ、NYへ行こう、と。あれれ、セロンが出ていた『ディアボロス・悪魔の扉』まんまのパターン。要は妻が夫の怪しさに気付き「悪魔」いやエイリアンの子を宿す展開。ま、その展開のまどろっこしいこと。かなり眠気はいります。(99/11/16 丸の内ピカデリー2)

YAZAKI★『エイリアン』+『ローズマリーの赤ちゃん』と言っちゃったら、話がバレバレ? でも、宇宙から帰還したジョニー・デップが、ラジオのザーザー音に耳をすませるといったヘンなそぶりを見せるところから、彼が空白の2分間に宇宙人にボディ・スナッチされたことは歴然。さらに、妻シャーリーズ・セロンが御懐妊となるにいたり、そのお腹の子の正体も、おのずと想像がついてくる。

 が、それじゃあまりにも芸がないでしょ、と思ったYAZAKIは、一連の出来事がすべてセロンの妄想で、これは彼女のパラノイア心理にスポットを当てたスリラーだとアタリをつけたわけです(なにせ、原題は『ジ・アストロノーツ・ワイフ』ですから)。

 ところがどっこい、映画のほうは、モロに芸のないボディ・スナッチものに終始。憑依するエイリアンが「目のなかに浮かぶ稲妻」という実態のないものとして描かれる点はやや新鮮味が感じられるものの、それ以外は、何の意外性もないオチも含め、感心すべき点が見当たらない映画でした。ひょっとして、「あなたは愛する人の本当の姿を知らない」みたいな寓意を含んだ映画なのだろうか? とも思ったけど、それほどの観念的な広がりは、私には感じられなかったな。

 『ディアボロス/悪魔の扉』でも、この世ならざる夫を持つという似たような役を演じたセロンちゃん。今回のいちばんの見せ場は、自分のお腹にいる双子の正体に気づいた彼女が、流産の薬を飲むか否かで逡巡するところ。熱演は買いますが、『ディアボロス』のときの錯乱演技のほうがはるかによかった感じ。劇中、いちばん怖かったのは、デップの目玉が、目をつぶったままグリグリ動くところ。あれは、もちろんSFXだよね?(じゃなかったらコワすぎる!)(99/12/24 ギャガ試写室)

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