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遠い空の向こうにOCTOBER SKY 1999年アメリカ 監督ジョー・ジョンストン 脚本ルイス・コリック 撮影フレッド・マーフィ 出演ジェイク・ギレンホール/クリス・クーパー/ローラ・ダーン ●108分 UIP配給 2000年2月中旬よりシャンテ・シネほかにて公開予定 NASAのエンジニアになったホーマー・ヒッカム・ジュニアの少年時代の実話を、『ミクロキッズ』のジョー・ジョンストン監督が映画化。炭坑町で生まれ育ったホーマーが、スプートニクの打ち上げに触発されてロケット作りに夢をはせていく姿を、父との確執のドラマをからめて描く感動作。 |
STORY1957年10月4日、ソ連が初の人工衛星の打ち上げに成功。このニュースに人一倍心を動かされたのが、ウェストヴァージニア州の炭坑町コールウッドに住む高校生のホーマー(ジェイク・グレンホール)だった。兄のように、アメフトの奨学金を得て町を出る望みが持てない彼は、自分の手でロケットを打ち上げたいという夢を持ち、悪友のロイ・リー(ウィリアム・スコット・リー)、オデル(チャド・リンドバーグ)を誘ってさっそく実験を始める。が、花火を改造しただけのロケットが飛ぶはずもなく、フェンスを壊して母(ナタリー・キャナディ)の大目玉をくらう結果に。そこでホーマーは、クラスの嫌われ者だった数学オタクのクエンティン(クリス・オーウェン)を仲間に入れることにした。そんな彼らを応援する物理の教師ミス・ライリー(ローラ・ダーン)は、専門書をプレゼントし、全米科学コンテストへの出場をすすめてくれた。いっぽう、根っから炭坑の男であるホーマーの父ジョン(クリス・クーパー)は、息子の夢が理解しきれず、炭坑の敷地内での実験を禁じる。 そんなとき、ジョンが炭坑で事故にあい、代わりにホーマーが働かざるをえない事態が発生した。ホーマーは、ロケット作りの夢をあきらめかけるのだが……。 |
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SHIMIZU ★★★(99/10/18 UIP試写室) 冒頭、ユニバーサルのトレードマークの「地球」がそのまま使われ、史上初の人工衛星スプートニクのニュースが世界を駆けめぐる。そんなニュースを聞いた、米国のある炭坑町が物語の舞台だ。 炭坑の街では、学問とは無縁。炭坑夫の子は炭坑夫になるのが当然の世界。が、スプートニクの空の軌道を追った、高校生のホーマーは「ロケットを作る。スプートニクに負けない」と突然決意する。少女たちはどうか知らないけど、我々少年たちは「空」を見上げる瞬間、思いは「夢」となり限りなく浮遊しちゃうわけよね。「空」は少年にとって宗教かもね。 主人公が仲間を募り彼のロケットに賭け、ロケットがちゃんと空に一直線に岐立していく光景をみるまでの実験の数々が、彼らの情熱の発露。彼らの熱い眼差しを見ているだけで、心動かされる。さらに、彼らのため影ひなたになり、部品を作ってやる職人たち、生徒に未来の道を付けてやろうと心を砕く病弱な女教師(ローラ・ダン)ら、人情の輪が泣かせる。そう言いながらナニだが、決して斬新な青春じゃない。地道と言えば地道。主人公をめぐる本命の子とダークホースの恋模様、確執から和解へと進む父子関係など、いままでどこかの映画で見た情景が埋め込まれているのも確か。古くさいとも言えるが、かといって捨ててはおけない。ジワリと懐かしさもこみ上げてくる青春の佇まいなのです。 とりわけ、僕は父と子の関係にこの映画の芯があると思いました。先にも述べた炭坑夫の子は炭坑夫というクラスの価値観は、石切工の子弟を描いた傑作『ヤング・ゼネレーション』でも描かれていますが、ここでは父と子の確執は道が違うけど、分かり合える関係。古い父の時代と新しい子の時代の融合の上に昇華される心地よさがあります。彼らの心の合わせ方はロケットの上昇というメタファーによって、より高みの「未来」に向かう力を秘めているといってたら持ち上げすぎかな。『アメリカン・ビューティ』でも、引き裂かれる「体制派」を演じた薄眉毛も妖しい個性派クリス・クーパーが、ここでも頑固な体制派の父親像を好演しています。いまではすっかり見ることが出来なくなった、実のある父親像かも、ね。 これはのちにNASAの技術屋として活躍した人物の「実話」の映画化で、この映画の設えは90年代の『アメリカン・グラフィティ』といってもいいかも。冒頭のラジオから流れる「監獄ロック」といい、時代設定といい、パラダイスロードでのロードレースの興奮にも似た、街中の人が見守るロケット打ち上げのイベントといい、登場人物のその後を伝える最後の記述といい。これは、『アメリカン・グラフィティ』が先陣を切った「最後の50年代」の青春ものの一角に入る愛すべき佳作です。『ミクロ・キッズ』で知られるジョー・ジョンストン監督が、と意外に思ったけど、彼って元々はILMでルーカス一派だったんだものね。今年はこの映画に青春を見つける人、たくさんでそう。 |
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YAZAKI ★★★(99/10/28 UIP試写室) アメリカが、宇宙開発でライバルのソ連に負けを喫していたころのお話。ソ連が初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功。このニュースは、映画の舞台になる小さな炭坑町でも大事件として報じられる。ソ連にしてやられたりという悔しさ半分、人工衛星ってどんなもの? という興味半分で、我が町の上空を通りすぎるスプートニクの姿を見ようと集まった人々。そのなかに、主人公の少年ホーマーもいた。夜空を流れ星のように移動するスプートニク。その美しさに魅せられた彼は、天啓を受けたように、「自分もロケットを作ろう」と決意。それは、彼にとって、自分の人生を自分の手に取り戻す最初で最後のチャンスでもあった……。 なんて感じで始まっていく『遠い空の向こうに』。炭坑町に生まれ育ち、坑夫として生きることを運命づけられたひとりの少年が、ロケット作りの夢を抱いたことによって未来を切り開いていく姿を、清々しい感動に包み込んで描いたとびきりの良心作です。 ホーマーが住んでいるのは、ちょうど『ブラス!』の舞台に似た炭坑の町。フットボールのスカウトを受けて大学へ進学することだけが町を出る唯一の手段という環境のなか、スポーツマンの兄と違ってそっち方面の才能がないホーマーには、父親と同じ坑夫の人生を歩む以外に選択の余地がない(こうした状況は、『栄光の彼方に』や『バーシティ・ブルース』なんかとよく似た設定)。ところが、スプートニクの打ち上げに触発された彼は、心にでっかいアメリカン・ドリームを抱きます。ロケットを作って科学フェアに出場し、将来はロケット・エンジニアの道に進みたい。このことから、ホーマーは、父親と激しく対立することになります。 ホーマーの父は、過去の落盤事故で仲間たちの命を救ってきた炭坑の英雄。誇り高き職人気質の持ち主です。そんな彼には、雲をつかむようなホーマーの夢が理解できない。坑夫こそ男子一生の仕事なのに、お前は何を言っちょるのか! と。 実はこの時代はエネルギー産業の転換期であり、父の勤める炭鉱もリストラの危機にさらされています。将来性は皆無。でも、炭坑一筋に生きてきた父親には、そのことがまったく見えていない。フットボールで奨学金をもらうか、家族の伝統を継いで坑夫になるか。父の頭のなかには二者択一の価値観しか存在せず、「それ以外の道」に進もうとするホーマーの言うことは、たわごとにしか聞こえないのです。 ここで繰り広げられる父と子のぶつかりあいは、硬直した旧世代と柔軟な新世代の価値観の対立であると同時に、すたれゆく産業と新しいテクノロジー産業のせめぎあいをシンボリックに物語るものでもあります。映画は実話を元にしたものですが、「炭坑」と「ロケット」というモチーフは、まさしく新旧の葛藤を描くのに、最もふさわしいアイテムだったといえるでしょう。 ただ、「大人は判ってくれない」式に新旧世代の葛藤を描いた映画と違い、この映画では、親子間の「リスペクトの気持」も、細やかに描写されていきます。たとえ価値観は異なっても、人望が厚く、きっちり自分の責任を果たす父親のことを、ホーマーは誇らしく感じている。彼にとって父は、つねに「尊敬する人物ナンバー1」の座にあるのです。いっぽうの父親。彼には、どう転んでも息子の考えていることが理解できない。が、さまざまな障害を乗り越えて手製のロケット作りを成功させ、科学フェアに出場を果たしたホーマーのガッツと粘りに、父もだんだんと敬意を払うようになる。そのガッツと粘りは、ホーマーが父の人生から学んだもの。どんなに激しく対立しようと、ふたりのあいだには歴然とした絆がある。お互いにわかりあうことはできなくても、ハートの奥底で感じあうことができる。そういう古き良き親子の情がひたひたと流れているところが、この映画の爽やかさの決め手になっています。 心揺さぶられたシーンが、ふたつ。ひとつは、父が事故にあったことから高校を休学して炭坑で働かねばならなくなったホーマーが、リフトで坑道に降りていく場面。リフトの天井は格子状になっていて、その隙間からは星空が見える。そこにスプートニクの面影を認めたホーマーの寂しげな表情。夢をあきらめざるをえなくなった彼の悔しさと悲しさが、ジーンと伝わってくる名場面です。 もうひとつは、ホーマーの手製ロケットの最後の打ち上げを、父親が初めて見に来るラストシーン。ホーマーが科学フェアに優勝したことによって、父のなかには、息子が自分よりもエラい人間になってしまったという思いが芽生えはじめる。その彼に、「父さんは、いつも僕のヒーローだ」という気持を伝え、打ち上げを見に来てくれと頼むホーマー。父の手にゆだねられた発射ボタンが押されると同時に、一直線に飛び出すロケット。それは、どこまでもどこまでも空高く舞い上がっていく。その姿を見上げる父の肩に、ホーマーがそっと手をかける場面では、涙がドーッとあふれてきます。 この瞬間の映像が物語るのは、ロケットにはせたホーマーの夢が、そのまま父の人生の報いになるということ。炭坑夫として地道に生きてきた父の背中を見て、ホーマーが学び、受け継いできたもの。それがロケットとして結実し、無限の可能性を秘めた大空の彼方に飛んで行く。このとき、息子の未来を照らし出す希望の光は、オヤジの人生をも輝かせるものになるのです。ホーマが父の肩に手をかけた瞬間、旧世界のなかで埋もれゆく運命にあったオヤジの人生がグーッと高みに引き上げられるところ――ここに私はとびきりの感動を覚えました。 父親を演じるクリス・クーパー、ホーマーたちロケット・ボーイズを応援する物理の先生役のローラ・ダーンなど、俳優陣の誠実な役作りも好感度大。ホーマー役のジェイク・ギレンホールは、『シティ・スリッカーズ』でビリー・クリスタルの息子を演じた子役出身の俳優。彼を含めた4人のロケット・ボーイズのなかから、明日のスターが生まれることもあるかもね。 |