星界の戦旗

『星界の紋章・戦旗』
(森岡浩之,ハヤカワ文庫)
【入手可能】

この小説は、いわゆる富士見ファンタジア文庫とか角川電撃文庫のようなジュブナイル小説群でなく、早川書房の本格SFとして発売された小説である。(といっても、ジュブナイル小説を卑下するつもりはないことは、さんざん書いてきたので省略!)
で、光瀬龍や夢枕獏、などと同列な所から出発できた新人作家による、何とも苦しい立場が見え隠れする小説である。
なにが苦しいかというと、まず、世界設定や言語設定が凝りすぎているということである。SFにはよくありがちなんだろうけど、外国では特に顕著で、世界設定や社会構成や経済、そこの生活様式や権力の所在なんかを丁寧に書いて、それで、1冊終わるような類を、このシリーズは随所に散らばらせて、追加、追加でややこしくなっている。
特に、言語はすごく読んでいて、顔ををしかめてしまう混乱ぶりである。地名なども耳慣れないものばかりであった。混乱ぶりというのは、たとえば、特定の言葉、艦隊→ビユール、提督→フローデなどと改めてルビを振っている文章と、それ以外の一般語のルビを振っていない文章がある。文章の占める量が圧倒的に一般語が多いにも関わらず、ぽっと、ルビを振っていて、しかも意味の書き換え(コメント→グチと言い訳など)とかでなく、純粋な言葉遊び(しかも、脈略を感じさせない−その架空の国の設定言語)が混じると、せっかく目で追ってきたストーリーが中断してしまうのである。
しかも、宇宙空間の設定やワープの概念、対立する国の設定など国の歴史などの叙述も長い。まぁ、そういうのをちゃんと読んで、そうした世界観にはまるのがSFの前提なのだろうけど。そんなにSFを読まない私としては、少々うんざりをした。
もともと、ジュブナイル的な話の筋で、何かを表現する(サーガや国の興亡)というよりもエンターテイメント(あるいは、萠え)で、いかに読ませるのかという物語であり、であれば、表記の混乱を避けるために新しい言語を設定したり、詳しく宇宙空間の設定を設ける必要はなかった。しかし、早川SF文庫という銘柄(本格SFが好きな読者層にも配慮して・・・と)の狭間で苦しんでいるのが見え隠れした。

ここまで、酷評して、なんでお薦めなのか。それは、主人公のジントとラフィールの萌なのだ!
ジントはある小さな国の領主の息子として18とかそんな高校生レベルで、友人とかに囲まれて普通に暮らしていた。一方、ラフィールは第6感を外部器官として発達させたメタ人類の強大な皇国の姫である(当然、美形で高慢)。
で、ジントの国をラフィールの皇国が支配して、ジント自身は、皇国の末席(属国としての領主扱い)に序列にする。
で、ジントは様々な場面でラフィールと交流をすることになるが、その中で、メタ人類のラフィールが、猿以下のように扱っている人類であるジントに対して、愛情を育んでいくという。しかも、その表現が、不器用で、時には直情的で、素直なラフィールに、「もえ」ですね。Y(^^)ピース!
設定が、ややこしいのですが、話の筋(物語性)は、すごく古典的で、本当にジュブナイル小説を地でいくような展開で、読みやすいのです。
また、ジントとラフィールのみならず、メタ人類の他のキャラクターや国の内情やら葛藤やらは、エンターティメンとしていて、ツボを押さえています。

まぁ、アンバランスな作品ですが、まぁ、一時期よく読んだし、面白かったところもあったので紹介しました。

ちなみに、この本は発売されると、すぐに売り切れるというブームの時期がありました。どこに行ってもなくて、隠れファンが多い本です。(そろそろ、続編を出してくれ〜2001.5.21)
後日談:実はもうでていて、「家族の食卓」という題名でありました。ただ単に確認をしていないだけでした。まだ、中身を詳しく呼んでいないのですが、いちおう、ジントが自分の惑星を本格的に離れる内容のようです。〜じつは、今はもうあんまり読まなくなったんだけどね。

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