サイボーグを倒せ


『サイボーグを倒せ』
(スティーブ・ジャクソン,社会思想社)
【入手困難】


結構お手軽なサイオニクス(超能力)、ヒーロー、ポップなアメリカといった感じのゲームブック。FFシリーズでは、ファンタジーだけでなく様々なカテゴリーがゲームブックになっているが、「モンスターの誕生」「地獄の館」等に並んで、わりと好きなゲームブックである。
正義の味方になり、4つの超能力−超体力、思念力、超技術、電撃の中から好きな能力を一つ選ぶというもの。そして、その選んだ能力によって「恐怖結社」を捕まえる「手がかり」がそれぞれ違うこと。それによって、ゲームの進行も違った冒険をすることができる。隠された手がかりを探す推理と、微妙に違う能力による効果が良い。しかも、そんなに難しいわけでもなく、能力のどれがふりであるというわけでもなく、どんな道筋を通ってもちゃんと終わることができる。程良く隠された手がかり、ちょっと考えると手がかりが見つかる嬉しさ、いかにもアメリカナイズされたコミックのような展開。放射犬とか、大統領暗殺とかいかにもなものであり、だいたいのアメリカを象徴する所や風景(フットボール場など)を周りながらいかにもな展開で〜映画に出るパニックシーンやホットシーンの断片、最後までアクションシーンで締める。一つの俗悪アメリカアクション映画を見るような感覚である。しかし、それも悪くないと思わせるのは、ゲームブックという形態、自分でそれなりに選択しているというライブ感であろう。

『ゲームブックの楽しみ方』(安田均、教養文庫、1990.8)では、このゲームブックはジャクソン(イギリス)の前作『地獄の館』と対になっているらしく、恐怖点に対して英雄点があり、地獄の館ではすぐに死んでしまうのに対して、なかなか死なないストーリー重視の作りとなっている。また、『さまよえる宇宙船』でのプロットの組み替えも押し進められ、4つのヒーローを選んだ段階で、道筋は多彩になり、しかも論理的に破綻しないように、物語は最後には一つに納まるようになっている。
また、この作品が、ジャクソンの会心の作ではないだろうかと考察している。

なお、2002.7現在、社会思想社が倒産し、このFFシリーズも入手が困難になってしまいました。しかし、イギリスでは、FFシリーズを復刊させようというムーブメントがあるらしく、日本でもゲームブックが復刊している出版社も出てきました。そうした、動きの中で社会思想社が倒産してしまったのは、大いなる後退を余儀なくされそうな気がしてなりません。

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