塩酸リルマザホン rilmazafone hydrochloride(JAN) ベンゾジアゼピン系睡眠誘
導剤 1129i

【組成】
[錠]:1錠中1 mg,2 mg 塩酸リルマザホンは白色〜微黄白色の結晶性の 粉末
で,においはないか又はわずかに特異なにおいがあり,味は苦い。メタノ−ルに極
めて溶けやすく,水にやや溶けやすく,アセトニトリル,無水エタノ−ル,アセトン
又はクロロホルムに溶けにくく,酢酸エチル又は無水エ−テルにほとんど溶けな
い。融点:約104°

【適応】
不眠症,麻酔前投薬

【用法】
不眠症には1回1〜2 mg就寝前,麻酔前投薬には1回2 mg就寝前又は手術前(増減)。
高齢者には1回2 mgまで


【注意】
(1)一般的注意:本剤の影響が翌朝以後に及び,眠気,注意力・集中力・反射運動
能力等の低下が起こることがあるので,自動車の運転等危険を伴う機械の操作に
従事させないよう注意する(2)禁忌(a)急性狭隅角緑内障のある患者(b)重症筋無
力症のある患者(3)次の患者には投与しないことを原則とするが,特に必要とする
場合は慎重に投与する:肺性心,肺気腫,気管支喘息及び脳血管障害の急性期等で
呼吸機能が高度に低下している場合(炭酸ガスナルコ−シスを起こしやすい)(4)
慎重投与(a)衰弱者(b)高齢者(高齢者への投与の項参照)(c)心障害,肝障害,腎障
害のある患者(d)脳に器質的障害のある患者(作用が強く現れる)(5)相互作用:次
の医薬品との併用又は飲酒によりその作用が増強されることがあるので,このよ
うな場合には投与しないことが望ましいが,やむを得ず投与する場合には慎重に
投与する(フェノチアジン誘導体,バルビツ−ル酸誘導体等の中枢神経抑制剤,モ
ノアミン酸化酵素阻害剤)(6)副作用(a)依存性:まれに薬物依存を生じることが
あるので,観察を十分に行い慎重に投与する。連用する場合には特に注意する。
また,大量投与又は連用中における投与量の急激な減少ないし中止により,まれに
けいれん発作,ときにせん妄,振戦,不眠,不安,幻覚,妄想等の禁断症状が現れるこ
とがあるので,中止する場合には,徐々に減量するなど慎重に行う(b)精神神経系
()精神分裂病等の精神障害者に投与すると逆に刺激興奮,錯乱等が現れることが
ある()眠気,ふらつき,ときに頭痛,頭重感,まれにめまい,頭がぼんやりする,ろれ
つがまわらない,いらいら感,妄想,興奮,ムズムズ感が現れることがある(c)肝臓
:ときにGOT,GPT,LDH,Al-Pの上昇が現れることがある(d)呼吸器系:まれに呼吸
抑制が現れることがある。また,呼吸機能が高度に低下している患者に投与した
場合,炭酸ガスナルコ−シスを起こすことがあるので,このような場合には気道を
確保し,換気をはかるなど適切な処置を行う(e)循環器系:まれに動,不整脈が現
れることがある(f)消化器系:口渇,ときに食欲不振,またまれに悪心,嘔吐,下痢,
便秘が現れることがある(g)過敏症:まれに発疹が現れることがある。発疹等の
過敏症状が現れた場合には中止する(h)骨格筋:倦怠感等の筋緊張低下症状が現
れることがある(i)その他()まれにむくみ,前胸部痛が現れることがある()麻酔前
投薬として用いた場合に,覚せい遅延傾向が現れることがある()まれに発汗が現
れることがある(7)高齢者への投与:高齢者では,運動失調等の副作用が発現しや
すいので少量から開始するなど慎重に投与する(8)妊婦・授乳婦への投与(a)妊娠
中に他のベンゾジアゼピン系化合物の投与を受けた患者の中に,奇形児等の障害
児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査報告があるので,
妊婦(3カ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険
性を上回ると判断される場合にだけ投与する(b)新生児に哺乳困難,筋緊張低下,
嗜眠,黄疸の増強等の症状を起こすことが他のベンゾジアゼピン化合物(ジアゼパ
ム,ニトラゼパム)で報告されているので,妊娠後期の婦人には治療上の有益性が
危険性を上回ると判断される場合にだけ投与する(c)分娩前に連用した場合,喀出
産後新生児に禁断症状(神経過敏,振戦,過緊張等)が現れることが,他のベンゾジ
アゼピン系化合物(ジアゼパム)で報告されている(d)ヒト母乳中へ移行し,新生児
に嗜眠,体重減少等を起こすことが,他のベンゾジアゼピン系化合物(ジアゼパム)
で報告されており,また黄疸を増強する可能性があるので,授乳婦への投与は避け
ることが望ましいが,やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせる。動物実験で
乳汁中に移行することが報告されている(9)乳児・幼児・小児への投与:乳児,幼
児,小児に対する安全性は確立していない(使用経験がない)(10)規制等:習指要

【作用】
(1)薬効薬理(a)睡眠導入作用(アカゲザルの睡眠-覚せいパタ−ンに及ぼす影響)
:0.3〜1 mg/kgでは徐波深睡眠(SWDS)に至る時間が著しく短縮し,用量依存的にS
WDSの増加と安定した持続を得る。4種の代謝物の効力はM-1>M-2>M-A=M-3(b)筋
弛緩作用(マウスの懸垂,回転棒,傾斜板試験におけるED50,ED10の比較):ジアゼ
パムの1/13〜1/30,ニトラゼパムの1/45〜1/178,エスタゾラムの1/13〜1/29,トリ
アゾラムの1/83〜1/266,フルラゼパムの1/2〜1/9の効力で,協調運動に及ぼす抑
制作用は著しく弱い(c)誘発睡眠(健常成人の計量ポリグラフィ):徐波睡眠量(st
age 3+4)はニトラゼパムより多く,誘発睡眠の用量-作用曲線は0.5〜4 mgで線形
性(d)終夜睡眠ポリグラフィ(健常成人の中期睡眠検査室試験):1及び2 mgの経口
投与で入眠潜時の短縮,全睡眠時間の延長,反復投与でもREM睡眠への影響は極め
て少なく,中止でREM睡眠反跳はない(e)作用機序:後部視床下部の抑制を介し大
脳辺縁系の活動低下により鎮静-催眠作用を発揮すると考えられる(2)体内薬物動
態(a)主要活性代謝物と代謝経H:ヒトで順次活性代謝物(M-1,M-2,M-A,M-3)に代
謝され,M-4になる(b)血中濃度(健常成人)()単回投与:4例に2 mg経口投与時,血
中に未変化体は認められず,総活性代謝物のC max 7.6 ng/ml,T max 3時間,半減
期10.5時間()反復投与:2 mg反復投与後の血中代謝物濃度は,初回投与後の測定
値に基づくsimulation curveと類似の数値,M-3の血中濃度は投与後3日目に定常
状態,中止後3日目には消失(c)排泄:ほとんど大部分がM-4となって尿中に排泄。
単回投与後24時間のM-4排泄62.3%,反復投与で定常状態後の24時間M-4排泄60.1〜
62.9%(d)タンパク結合率:M-1 79.3%,M-2 81.2%,M-A 76.8%,M-3 80.8%,M-4 89.7
% 各々の構造式は添付文書参照(3)臨床適用(a)臨床効果()不眠症:一般臨床試験
の有効率60%(134/224)[やや有効以上90%(203/224)]。長期臨床試験の最終有効率
65%(32/49)で,安定した効果の持続が認められた。また精神科領域及び心療内科
領域で,二重盲検比較試験で有用性が認められた。なお,第3相精神科領域の交差
法による比較試験で,神経症(不安神経症及び心気症)に伴う不眠症の有用度(第1
治療)では,2 mgが1 mgに比べて有意に優れるとの成績が得られているので,神経
症(不安神経症及び心気症)に伴う不眠症には,2 mgを最初から使用するのが適当
な投与法と考えられる()麻酔前投薬:手術前夜及び麻酔前投薬を対象とした二重
盲検比較試験で有用性が認められた(b)副作用及び臨床検査値の異常:副作用は2
5%(319/1,277)に,眠気・残眠感14.3%(182例),倦怠感6.5%(83例),ふらつき5.8%(7
4例)等。臨床検査値異常変動例中,本剤との因果関係が認められた症例はなかっ
た(4)非臨床試験(a)毒性LD50(mg/kg)ICRマウス:経口=♂890♀1000,SDラット:
経口=♂1020♀1000(b)発がん性試験:異常は認められない(c)雄性生殖器系への
影響:認められない(d)生殖に及ぼす影響()妊娠前・妊娠初期:400 mg/kg/日経
口投与群の雌ラット1例に性周期の停止()器官形成期:異常はみられない()周産
期・授乳期:100 mg/kg/日以上経口投与群で母体の体重増加抑制,死産児の増加,
新生児の低体重,M育児の生存性低下(e)薬物依存性:アカゲザルで,身体依存性は
ニトラゼパムやジアゼパムより明らかに弱く,静脈内自己投与試験でも明らかな
強化効果は認められず,精神依存性も極めて弱い(f)一般薬理:麻酔ネコの呼吸運
動に対する抑制作用はジアゼパムやトリアゾラムより有意に弱く,血圧及び心電
図には影響を及ぼなさい

【製品・薬価】
リスミ−錠1mg 塩野義 1mg1錠 32.40
リスミ−錠2mg 塩野義 2mg1錠 50.80

【同効成分】

クロルメザノン
ゾピクロン
トリクロホスナトリウム
パッシフロ−ラエキス
セミコハク酸ブトクタミド
ペルラピン

目次