オリジナル・ラブ
オリジナル・ラブ

このバンドは、結局今は、田島のブランドとなっているのだけど、むかしは、ジャズのようなバンド形態で、固定のメンバーが存在していました。しかし、しばらくしてどういうわけか、田島1人になり、彼の実験作の強い曲調のアルバムが、どんどんと発売されるようになりました。私の予想では、実質リーダーである田島の理想の音作りから、オリジナルラブとしての期待されている音楽〜ジャズ調の大人の雰囲気のある、渋谷ミュージックとしてのギャップがあったのではないだろうか?

はじめに、オリジナルラブを聞いたのは、「結晶」であった。そこにある、当時としては音楽性が高い作品、トータルでアルバムを聴かせる完成度に、何回も聞き込んではオリジナルラブはやっぱり、すごいナァと思っていた。そして、98年に発売された「L」を試聴して、その音楽の変遷のすごさに、それまで買い控えていた、オリジナルラブのアルバムを、中古などでそろえ、やっぱり、オリジナルラブはすごいと確信して、はまっていったのであった。

同じ渋谷サウンドとして、カテゴライズされてしまっている、コーネリアスもその延長線上に知ったというべきか。どうやら、私は、少し、今はやりのJ-ポップやJ-ロックからはずれているし、いいナァと思う音は、その流行っていた時期からずれているようである。

オリジナルラブの良さは、その音楽に対する並ならぬ情熱とアルバムの最後まで聞かせる作品の高さである。生半可、ヒットしたりすると、そればっかりを聞いてしまい、他の曲がだれた感じになってしまう。または、明らかに手を抜いていて、とりあえずヒットしたモノを聞かせればよいというアルバムを目にするし、そういうのは大半である。(もちろん、そんなモノは私は買わないようにしている)しかし、オリジナルラブのアルバムには手抜きがない。あるいは、ないように見せているのかも知れないけれど、それでも面白い音や曲が随所にちりばめられている。

もともと、田島は、パンクを歌っていた。そして、ピチカートにいたこともある、長いキャリアを持っている。しかし、オリジナルラブを聞く人は、その洗練された、メローな、そしておしゃれな音楽というイメージしか持っていないかも知れない。実際、カラオケなんかにあるモノはそんなモノばかりであるし、そういうのがヒットした。しかし、アルバムの中には宝珠のポップソングや骨太なロックやテクノサウンドまである。もちろん、最初の3枚くらいのアルバムまでは、これがオリジナルラブだよという音楽があるが、ソロになっていく過程で、その音楽性は変わっていき、最後にはちょっと「いっちゃっているんじゃないか」といった感じになっている。そうした、1枚目からの流れを聞いていってもかなり面白いアーティストである。

そのなかでも、お薦めなのが、やっぱり「結晶」だろうか。「風の歌を聴け」「ディザイヤー」なんかもすごく完成度が高いし、「ELEVEN GRAFFITI」なんかもすごく面白いのだけど、なんだかんだ言って、何回も聴いたアルバムだし、もっとも、商業的にも輝いていた頃のある独特の迫力もあるということで、「結晶」をとりあえず聴くことをお薦めします。そして、これは、始まりに過ぎないということを、田島がいかに音に関わっているか、それは、とても興味のあることであることは間違いないと思いますよ。中古でも出回っているので、買ってみるのもいいかと思います。あくまでも、興味があったらということで。

関連HP
夜をぶっ飛ばせ〜アルバム紹介など

追記
「L」のあと、「ビックブランチ」(2000)「ムーンストーン」(2002)「踊る太陽」(2003)と結構コンスタントにアルバムを発売。私が思うに、「L」から「ムーンストーン」までが壮大な彼の中での壮大な音楽の実験だったのではないかと考える。「踊る太陽」で一つの大きな完成を見るのだけど、それまでのアルバムで、しっかりと自分の音楽性を高めようと言うイノベーションがはっきりと感じられる。Lでは電子音を主体にした、退廃的でリリカルな雰囲気が漂い、ビックブランチでは、音の凶暴さとエロスを巻き舌で歌い、荒々しさを表現し、ムーンストーンでは、全編がピアノを基調にしながら、なんだかんだ言って、ストーリー性があり、曲と曲の間に切れ目をあまり意識させない美しい音の調べといったところである。そして、踊る太陽では、その集大成、再び田島がポップスの王道を歩み、そのクオリティもそれまでの実験で培った物の上にしっかりとどっしりと立って歌っているという印象。オリラブから離れていった人も、この「踊る太陽」はかっこいい!すごい!一時期のプリンスと並んで一つの平野を開いたアルバムだと思う。(2004.4.26)

追記2
間隔を開けずに2004年もアルバムをリリース。「街男、街女」というのがタイトル。田島、シャウトしているんだけど、ちょっと無理があるんじゃないかとも思わないでもないけど、NHKの音楽番組にでていたとき、…変わり続けてきたオリラブがたどり着いたのが大人のロックだ!…とかいわれていて、そういわれてみれば、多分そうなんだろうと思うしかないわけで。田島のことだからあっさりと裏切ったものを作りそうである。完成度の方は、好みもあるけど「踊る太陽」の方にあるナァと思った。わざと荒削りにして、その行間を楽しむのが目的ならば、評価できるけど…(2004.12.12)

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