ネバーランドのリンゴ

関連
『ニフルハイムのユリ』


『ネバーランドのリンゴ』
(林友彦,創元推理文庫)
【入手困難】

ゲームブックといえば、外国のものが多く、翻訳された本格的なファンタジーの世界で遊ぶのが主流でした。そうしたなかから日本人による、わりと積極的に、そして、良質でオリジナルなゲームブックを生産していたのが、創元社の「スーパーアドベンチャーゲーム」シリーズでした。
そのなかでも、オリジナル、かつ、長いストーリー性を持たせていたのが、この『ネバーランドのリンゴ』でした。どうしても、日本のゲームでは、ファンタジーの土壌があまり肥沃でないせいか、その世界観はどうしても、テレビゲーム類のRPGの世界観、ストーリー性やシステムに依存しがちで、その影響からどうしても拭いきれないのですが(3回まで死ねるとか、経験点が3人まで維持されるとか、リセットとか)それでも、当時は、そのシステムを充分に応用した奥深いゲームブックであったと思います。

このゲームブックの特徴は、「キー」というシステムを使って、物語のあちこちに起きた出来事を記録する番号が1〜36あり、関連するイベントが発生すると、その記述されている番号を足したりしてパラグラフに飛ぶと、違うイベントが発生するというものです。中には、同じキーの番号に違う数字が入ることがあり、発生するイベントもまた違ってくるというものです。
たとえば、あるアイテムを拾ったときに、その番号をキーの1番に記載するような指示があると、違う場面で、もしそのアイテムを使うような場面に遭遇した場合、キー1番に100を足したパラグラフに飛ぶような指示があるというわけです。
また、呪文を覚えたときやキーに記載しないアイテムでも番号が振られていたり、その時々に出てくる論理的なパズルなどが、ストーリーに密接に結びつき、遊ぶ心を刺激する1000パラグラフとなっています。
また、進行方向も可逆的で、東に進んだ後に西に行くという番号があり、行ったり来たりできるので、ねっとりと遊ぶことができます。しかし、フラグメントが立ち上がると、戻れない場合もあります。(その辺は、テレビゲームの影響がすごく影響しています)
(めくるめくパラレルワールドというべきか)

第1部は、悪の魔法使い「バンパー」の城を見つけるために、探索をすること。2部は、「バンパー」を倒すためにいろいろな手だてを探すこと。に別れています。誘拐されやすいエスメレーを見つけ、魔法使いを倒し、ネバーランドのリンゴを取り戻すのが使命となります。
背景になるのは、アーサー伝説あるいは、ケルト神話に伝わるリンゴですが、主人公がブーカ(猫の妖精)であり(指輪物語の影響もあるのか?)、ファンシーでほのぼのとした、感じになっています。
続編というべき『ニフルハイムのユリ』は、雪に埋もれた都市の雰囲気がすごく出ていて、雪国に生まれ、育った私としては、とてもイメージしやすい世界として面白かったです。

ただ、残念なのが、このシリーズが絶版になっていて、入手が困難な点です。古本屋やネットオークションでは、ちらほらとあるので、探すしか手だてがないのが残念です。


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