諸星大二郎
小説家ではなく、漫画家です。そして、私的には、「北斗の拳」「リングにかけろ」(リング〜は2になってスーパージャンプより連載開始!)などと同列な意味で、いや、それ以上の意味で「マッドメン」(中央公論社)は衝撃的でした。
北斗の拳などは、子供の頃のイメージが強くて、今になって読み返してみても、それなりにノスタルジーはあっても作品的にはそんなに感動をすることはないのですが、
大人になって、諸星大二郎の作品群を読み、その漫画の持つフィクション性の多様性に驚かされました。
諸星作品にみられる一つの特徴に人としてのマクロな彷徨うという根元的な感情を表現しているところでしょうか。人は、日常の中で地道に生きているわけですが、それでも、心のどっかにどこかに行きたいとか、冒険をしている人などにいいなぁ〜とかそういう感情を持つことがあるとしたら、そうした日常の中の自分と無意識的にそれに反逆している自分の中で、格闘しているのではないのかと思っています。そして、諸星大二郎の作品は、そうした、日常から時代から解き放たれて、ときには宇宙的な視点で人を彷徨わせるのです。
諸星大二郎は、SF的な物語から中国ものと現代社会のもの、あるいは、仏教などをテーマにしたものなど多彩ですが、「マッドメン」は最初は、アフリカなどの民族を舞台に、様々な要因が絡み、(資本化、精神と物質、知と感情などなど)あっと驚く結末に至ります。その物語の壮大さは、小説にも書けないような漫画だから書けるフィクションが読む人を圧倒するリアルさで迫ってきます。
中央公論社は、一冊にまとめているので、話の筋が通っていて、読みやすくなっています。
他には、わりあい流通している作品として「西遊妖猿伝」(連載)(潮出版社)、「暗黒神話」「暗黒孔子伝」(集英社)があります。「西遊〜」は西遊記を時代に照らし合わせて、もっともらしく、人間の骨肉の争いを描いているものです。
「暗黒〜」は一つの輪となっていて、どっちから読んでも一つの物語になります。少々、こじつけがありますが、結末を読むとその茫々とした広大な感じがすごいです。これが、少年ジャンプで連載されていたなんてという感じです。
日本物の名作には「不安の立像」(集英社)があります。もっとも、完成度の高いものとして私は評価をしています。もし、諸星作品に興味を持った方にはおすすめしたいと思っています。
そのほか、様々なたくさんの作品がありますし、同業者にも評価の高いこの諸星ワールドは、知らないと損です(笑)。
そのほかの作品については、諸星大二郎のページが詳しいです。


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