救護施設−現状とその将来


社会福祉研究77号pp86-92
丸木憲雄
救護施設育心寮施設長pp86-92

メモ

救護施設で様々な検索サイトであたっていたら、偶然、「社会福祉研究」に寄稿されていたのが分かる。「社会福祉研究」は親切で寄稿された論文からなにから1号から丁寧にレジメを組んでサイトに掲載されていた。やっぱり、こうでなくちゃね。
中身は、う〜ん、まぁ、さわりとしては書かれている方かな。でも、もっと突っ込んだ内容にしてほしかった。たとえば、救護施設は、他法施設とは異なる歴史と実態を持っているという記述で、どんな風に異なるのか詳しく書いてほしかったナァ。

以下、論文より抜粋
他の保護施設は減少傾向にあるが、救護施設は現在も微増の傾向を持ち、その数は178施設となっている。これは日本の福祉法体系の問題に起因する。
新しい社会ニーズに対して新しい施設の創設が必須になり、現在80種類以上の福祉施設がある。しかし、福祉サービスを必要としている全ての人をカバーできない。膨れ上がった施設の数は、効率性を阻害し、重度、重複障害は在宅で補完されないといったことが起きる。日本の障害の定義は機能不全であり、世界的に能力不全を持つひとに対する福祉サービスという現状から遅れているといわざるを得ない。

現在救護施設を利用している障害者の2割は生活障害である。緊急救護施設が昭和30年代に設立され、のちに一般救護施設として一体化される。昭和50年代には、精神病院の人権問題から移管され、増加していく傾向にあり、現在も続いている。

救護施設は専門施設とは違い、多様な障害者が雑居している。これを肯定的に捉えるならば、効率的な訓練では劣るかも知れないが、互いに助け合いながら暮らす生活施設としては優れている。

P88
救護施設固有の問題
新生活保護法は、経済的な生活困窮者に対して経済援助を目的としながら、福祉法としての性格を持つものとなる。
生活保護法には、法の適用において他方優先の原則があるため、理論的には問題はない。しかし、現実的には、他法施設の不足により、保護施設である救護施設に利用者が措置される。
現実として、同じ障害を持つ者でありながら、異なる基準による福祉サービスを受けることが起こった。保護施設である救護施設は、最低生活の保障という生活保護法の原理により、常に同等の機能を求められる他法施設と比較し、施設建設にあたっての面積基準、職員のは市来順など多くの基準において低い基準が設定された。利用者の立場からいえば、救護施設への措置は不当であると言える。現実的にはダブルスタンダードが存在する社会福祉体系は、不公正体系といえる。救護施設は、国に対し一貫して格差是正を主張してきたが、生活保護法の原理の壁に阻まれ、未だこの問題は解決されていない。

以下、育心寮のとり組みが述べられている。精神保健の現状と流れの中でどのような取り組みが良いのか検討してきており、今後の参考になると思われる。

P92
救護施設全体の将来予想と課題
増加している精神障害者も精神障害者保健福祉法の施設が整備されるに従い激減することが予想される。他福祉法の改革により重度障害者、重複障害者の他法施設利用も増え、生活保護法との併用も認められるとなると、その傾向が加速されることが予想される。しかも、すでに被保護世帯の4割5分は高齢者世帯である。救護施設の市場が拡大する要因はほとんど見あたらない。ホームレス、外国人などの新しい社会問題もあるが、地域性が強く、全国救護施設の市場とはなりにくい。しかも今までの障害者サービスを中心としてきた救護施設の経験や技術を活かせる方向の問題とは言い難い。福祉法によるサービスと、生活保護法によるサービスに置ける格差を生みだしているダブルスタンダードは解消される見通しもない。施設の面積基準、職員の配置基準のみならず利用者個人の資産、資金に対する制限などの格差から生ずる不利は、一方的に救護施設にのしかかる。成人後見人制度が成立すると、本人はもとより家族、後見人が救護施設を積極的に選択する条件は少ない。他施設の空き待ちのための施設になりかねない。セイフティネットの役目を果たすには、要保護規定の廃止が必要条件となる。プラス思考をもって職員が必死に努力しても、じり貧化を止めることは難しい。
措置制度と措置費制度が継続するのも大きな問題である。緊急時に置ける措置を否定するものではない。救護施設の全利用者に対する措置は利用者の意思を尊重し、利用者の選択権を保障するものではない。その必然性はない。一歩引いても、措置は措置費以外の利用料支払制度と並立できる。精神障害者保健福祉法においてすでに並立している。措置費制度の継続により使途制限が継続すれば、救護施設は経営する事業体の負担となりかねない。福祉施設供給不足の現状では、救護施設が直ちに緊急事態に陥る可能性は小さいが、その将来はきわめて厳しい。救護施設は、他法施設と異なり、それぞれ異なる歴史と実態を持っている。これが救護施設全体として一律に変化することを困難にしている。救護施設の将来を拓く課題は大きくまた多い。

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