救護施設の現状と課題を考える
コメント
私が救護施設に勤めていたときの、先輩が私にくれた資料です。先輩は、80年代に書いたものであると話されています。よって、中身として、いまは違うのかもしれません。が、救護施設に関する文献が少ない現在、こうしたレポートも貴重ではないのかと思い、掲載をしました。(ちなみに、この救護施設は秋田県にあります。)
はじめに
救護施設がその根幹部分に於て内包する問題点について、当施設の現状も踏まえながら述べたい。
救護施設とは救護施設は生活保護法の適用を受け、38条により「身体上又は精神上著しい欠陥があるために、独立して日常生活の用を弁ずることのできない要保護者を収容して生活扶助を行うことを目的とする施設と規定されている。
救護施設の歩み
救護施設は、戦後多数の戦災孤児や浮浪者、見寄りのない者を抱えた時代の要請により、昭和25年に生活保護法の下に制度化され開設されましたが、当初の救護施設のイメージは名称、規定にある通り生活困窮者、不具廃疾者、精神障害者と思われ、地域住民からは敬遠され蔑視されてきました。そして確かに、施設も住もなく誤解もあり、一般民家から離れた場に隔離するように建設されましたし、入所者の 生活も、毎日が日曜の如く、単に保護という形に閉じ込め、何もしないで過ごさざるを得ない状態でした。
その後昭和35年頃から45年までの10年間には、現在の大 部分の数の施設が他種類施設に先駆け続々と開設されました。そして当時は施設の種類数も少なかった状態から、救護施設は他施設の研修・視察の場であり福祉施設のリーダー的存在でありました。
しかしながら、近年の経済発展による目まぐるしい社会構造の変化に伴い、各種専門福祉施設が開設し、一般社会へ福祉理解も進む中で、救護施設自身も入所者、社会のニーズに的確に対応する必要に迫られ、内容も大きく転換することになりました。それは施設の社会化、解放であり、地域の福祉センターとしての役割を果たすべく各種サービス(ディケア、ショートスティ、福祉講座の開催、福祉相談)の実践、処遇面ではノーマライゼーション理念の導入により処遇内容も入所者個々の能力、障害に応じたプログラム、−般家庭へ近付けた生活スタイルの具体的で質の高いサービスであります。又この間の歩みから他施設との違いは、一つには専門施設として分類収容方式を推し進めてきた点と異なり、救護施設は該当ある全ての入所希望者に門戸を広げて入所を受け入れたことであり、二つには入所者像の比較で救護施設にはあらゆる種類の障害者が混然となり入所している状態で、最後の受け皿として他施設の代替的機能をも果たして来たことであり、「総合福祉施設」とさえ言われ、独自な社会的存在意識を持っていることであります。
現状の課題
- 準拠法の問題点 救護施設が生活保護法に基ずく保護施設として今日に至った経過にはそれなりの意識があり、福祉全体の中での応分の役割を果たしてきたことも事実であるが、生活保護法の基本は最低生活の保証であり、さらに施設ケアに関しては他法優先という考え方が基礎になっており、生活保護法の生活困窮者への扶助を根幹とする措置に違和感を持つものである。
- 生活保護法第28条の定義や最低基準項目についての語句や表現について。救護施設の発足した経緯から「社会に厚生見込みのない廃疾者を社会から隔離収容して終生介護する施設」というイメージが大きな影を落としている。
- 入所者の障害内容の変化。特に精神障害回復途上者の割合が著しく増加して来た(全国の救護施設入所者の45%)し、アルコール依存症(国内に専門施設が4ケ所設置)の者も増えつつあり、処遇に医療との連係と、職員へ専門知識が求められるようになった。また一方では、従来到底考えられなかった施設外就労者が出ており、今後、社会復帰への道を探さなければならなくなった。そしてこうした入所者の能力に合わせ処遇を再考し、これからは実習、地域交流、家庭指導にまで取り組まなければならないと思う。収入認定の厳しい適用に自立への意欲が殺ぐがれ、何らかの柔軟な対策が望まれる。生活保護法の中、秋田県の行政は入所者の累積金所持について42万円を認めているが、入所者の高齢化が進む今日、疾病時の入院費用(付き添い料)や、最悪死亡の場合には葬儀費用もかかること等を考えると不十分で、経済的に不安がある。
総合福祉施設としての位置付けと専門性。
現在、救護施設には身体障害者(肢体不自由者、視聴覚障害者等)、精神薄弱者、精神障害回復途上者、アルコール依存症者、これらの障害の重複者と、ありとあらゆる障害者が入所しており「総合福祉施設」ともっともらしく呼ばれているが、実際の中身は混合収容、ごちやまぜ収容の状態で- 職員の配置基準が低い(5.4人に直接処遇職員1名)
- 施設に介護設備がない〜特に高齢者や重度者を介助するための専門的設備(風呂、トイレ、居室)が用意されておらず
- 職員にも専門的な技術の習得(医療を伴う看護)がなされていない等、入所者への十分な処遇体制の仕組みが出来ているといえるか不安である。
- 5入所者を満たすための施設かない救護施設は利用率100%を超える各施設とも定員オーバーしているのが現状でありまだまだ入所できる施設数か不足しており、自宅・病院での待機者か多い。またショートスティ等(現状では認可されておらない)のサービスも出来るスペースも全くなく、全て居室になっていることから、施設の定員増が必要になっている。当施設の場合は、平成3年に−部増改築され、これに合わせて130名から150名へと定員増を行った。このことにより、5入部屋が解消、新館部分の半数が4入部屋、半数が2入部屋となっている。
当施設の処遇内容
*介護療育を主とした、生活確保の機能〜高齢者・重度者*指導訓練を中心とする、厚生援護の機能〜若年者、軽度者処遇内容・生活指導(生活の自立を目的)・生き甲斐の追求(趣味活動)・機能回復(後退防止)訓練・作業訓練・社会教育指導・地域交流活動・施設外作業の取り組み
おわりに
以上、現状を思いつくまま身勝手に述べてしまいましたが、救護施設は果たして入所者が喜んでくれている施設になっておるのか、成り得るだろうかと、いつも自問し不安に思っております。また、上記のように問題が山積みされており、現状のままでは益々厳しい時代を迎えるにあたって施設の独自な社会使命を遂行するには、ここで改めて救護施設の役割を明らかにし、一般住民の支持の下に問題の解決へ向けて改善すべき点は改善し、将来「入所者に選ばれる施設」を目指し、関係者の積極的な努力が計られなければならないと考えます。