地獄の館


『地獄の館』
(スティーブ・ジャクソン,社会思想社)
【入手可能】

社会思想社から出ていたFFシリーズも巻が進むごとによって、ファンタジーやタイタンの世界から少しずついろんなジャンルの物語が発刊されるようになります。最も、4冊目に宇宙船を題材にしたスペースものがありますが。(TRPGの『トラベラー』シリーズの影響があります)
この『地獄の館』は、館のホラーもので、これもTRPGの『クトルフ』の影響が強いです。が、そのころ何も知らないで始めたので、そのホラーな雰囲気はゾクゾクするものがありました。システムでも、恐怖点というものがあり、最低で7点、最高で12点以上の体験をすると、ショック死をしてしまうというのが加えられていて、焦燥感たっぷりです。
TRPGでもそうですが、マスタリングをする場合にプレーヤーに課すのは、時間制限であったり、閉じられた空間からの時間的な制約などどうしようもない状況なのかもしれません。TRPGをするということ自体、ある意味、約束事がありますが、その他の急がないといけないことや解かなければいけない謎も限定的な何かがあったりとシナリオの中での時間的な制約や出来事があれば、結構スリルがあると思っています。特にホラータッチのものは、雰囲気といかにモンスターを背景ともに臨場感を出すのか、そして、焦燥感を煽れるのかにかかっています。
とにかく、『地獄の館』はホラーの題材や雰囲気では、てんこ盛りで、拷問や黒魔術、死体のアクションや幽霊の演出も凝っている。もっとも、謎かけや脱出するためのアイテムを探したりと忙しいし、あんまり、モンスターに遭遇すれば、ショック死をしてしまうし、もともと、ヒーローでないため、強くもなく、武器もナイフだったりするため、切り抜ける知恵も必要です。
・・・暗い嵐の夜、君は人里から何キロも離れたところで立ち往生をした。唯一の望みといえば、遠くに見えるぼろぼろの妙な館だ。
・・・雨がフロントガラスに激しく当たる。君はハンドル越しに前方の路を必死に見るのだが、水気を含んだ薄闇があるだけだ。ワイパーは勇ましく動いているが、その勢いもますます強まる雨に押されがちだ。君はアクセルに乗せた足をゆるめた。ヘッドライトが何とか路を照らそうとする。
・・・危ない!突然、ヘッドライトに浮かび上がった姿を避けようとして、君は必死にハンドルを左に切った。車はぶつかり、ガタガタと揺れて、荒れた側道を乗り越え、溝にドシンと落ちた。
車は動かず、そのとき、君の悩みに応えるように遠くに灯がともった。誰かが寝室の明かりをつけたのだ。なんたる幸運!最後の家並みを過ぎてから20キロは走っていたが、すぐ近くに家があったのだ。
ファミコンでテキスト形式の『弟切り草』の雰囲気そのままで、徐々に狂気が満ちてくる異色のゲームブックでした。

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