01/03/14

「餓狼伝」という小説がある。夢枕獏の作品でかれこれ、かなり長くから連載している。内容は、格闘技モノで、何が、誰が強いのか、素手で闘うこと、相手をぶちのめすとは何か、とても深いところまで踏み込んで考察されている、一つの哲学のような小説である。夢枕獏自身、各闘技の観戦や取材を通して、現役のアスリート達から、自分独自の考察を通して書かれているので、凄く懐も深く、そして、リアルである。しかも、エンターテイメントにも徹しているというサービス満点である。

その小説を読みながら・・・
現在は、グレーシー柔術のような今まで日本になかった技術、何でもアリというルール(実は、なんでもありではないが)の中で、日本が培ってきた格闘技の体系が通用しなくなり、立ち技(空手)の一撃必殺の幻想も崩れようともしている。実際、プライドシリーズやオクタゴンでも一流の日本の格闘技者(プロレスラー)がそうした新しい技術や外国のパワーの前にやられている状況が多く目に付く。
しかし、そうした、何でもアリというルールでかつ選手が他のルールでやる人たちよりも強いとかそういうのとは別であると考える。何でもありといっても、後頭部への打撃やかみつき、目や金的への攻撃が禁止されていたり、スペースが金網やロープで区切られている以上、そうしたものを利用して闘う以上、「自由」ではない。そして、そのルールに長けているかどうか利用できるか出来ないかでは、勝敗が全然違う。
また、プライドやオクタゴンを見ると、怪獣同士の喧嘩にしか見えないときがある。これが、技術とか戦略とかそういうものの楽しみを見る方からすれば分からないことの方が多いのではないか。
また、スポーツでなく、格闘技と主張しても、観る側からすれば、スポーツ的な要素を見いだそうとするし、格闘技という幻想を求める以上、ゲームの組立や相手を倒すという選手の美学をどっかに求めるモノだし、それが体感できたときにそれは、昇華されるのではないだろうか。
以上のように、観る方からすれば、ボクシングはスポーツとしても、格闘技としてもメジャーであり、ルールが乱立している(分かりにくい)様々な格闘技はそのルールを好む、あるいは強さの幻想を求める人によって分かれているということである。
だから、立ち技が優れている人がレスリングもアリのルールで負けることは、仕方のないことである。(出るその個人が了承しているし、そこに自分の強さを求めようとする結果であり、観る側は、興味本位の範疇を出ないものである。)

01.10.11 ラグクラフトの遺産
創元社から出ている、ラグクラフト全集のアンソロジーというか、生誕110周年ということで編まれた本であった。解説が朝松健ということで思わず食指が動いて買って読んでみたが、久しぶりの怪奇幻想小説に思わず、一気に読んでしまった。
ラグクラフトは、クトルフ神話を編み出した人で、地球外の宇宙に古代神や旧文明からいる神々が、現代に復活あるいは飛来する機会をうかがっているというもので、異形の神々が人々に狂気をもたらすという設定である。ラグクラフト自身の小説は要するに、ゴシックで古くさい文体であるが、その古くささが得も知れない雰囲気を編み出している。中学の時にむさぼるように読んでいたジャンルであるが、今、手にとって読み出しても、なかなかそれなりに新鮮であった。
『ラグクラフトの遺産』は、その神話のオマージュというか、まぁ、敬意を込めて、ラグクラフト的な小説を集めたもので、コズミックホラーから正統的なものまで、中には、パロディもあったが…多彩な執筆陣と小説で楽しませてもらった。
ラグクラフトは、結構、日本でも影響をもっていて、解説の朝松健、菊池秀行、一部、夢枕獏など、伝奇物の題材となっている。まぁ、ホラーの位置ジャンルを気づいたといっても過言でないし、もし、ラグクラフトがいなかったらコズミックや異世界との遭遇における狂気なんかなかったかも知れないと言ってもいいと思う。そういう意味でも、ホラー好きには、是非「クトルフの呼び声」なんかを読んでほしいものである。

01.9.1 ハリー・ポッターを読んでいる
ちょっとブームから遠ざかりつつあると思っている、「ハリー・ポッター」シリーズを読んでいる。ずっと、前に買ってはいたが、読んでいなく、積んでいただけであったが、まとまった時間がとれているので、さくさくと読む。いったん、読み出すとこの手の物語はすいすいと読めていける。児童文学は、最初の人物の紹介やとりまく環境に凝っていることも多く、外国のものだと、ファーストネームで読んでいたり、ミドルやニックネームがカタカナなので、人物を思い浮かべるのが時には戸惑うことがあるので、とっかかりに引っかかることがある。ハリーでは、ウィーズリー家というのがあって、パーシー、ロン、ジョージ、ジニーなど5人兄弟がいる。時々、パーシーは、ウィーズリー家なのか、監督生なのかロンのお兄さんなのか分からないように書かれているときもあるし、やたらと、人物が出てくるので、ゴチャゴチャになって、誰がどんな関係なのかとかサクサクと読めなくなるときがある。しかし、慣れてくると、物語の展開で読んでいくので、そんなに気にはならないが…
しかし、児童文学なので、優しい文体で、さすがに売れるだけのことのある面白い物語である。魔法の学校をとりまく、ハリーという少年を中心に、問題やら事件が起こり、それを解決していきながら、ハリーの生い立ちの秘密やら成長を描いたものである。今のところ、翻訳は3巻まで出ているが、一応7巻が最終巻(予定)で、海外でも4巻までしか出ていない、現在進行形の物語である。
似たような物語に、「ゲド戦記」があるが、こちらは、やや重たいテーマとなっていて、ハリーほどのエンターテイメントはない。しかし、成長ものとして、ゲド戦記は見事に物語は成功をした。今後は、ハリーは魔法学校を卒業して、青年編と突入するらしいから、大人になったハリーがどのようなテーマで、物語を紡ぐのか楽しみなところ。
私は、現在、2巻を読み終わって、3巻をちょこっと読んでいるが、いまのところ緊張感は持続している。そして、微妙に、そして本質的に、じっくりとハリーのとりまく環境やら自身が変わってきているのが分かる絶妙なストーリー構築に成功していると思われる。(イマジネーションも豊かで、新世紀にふさわしいファンタジーである)今後、エンターテイメント性を失わずに、けれども読み応えのある物語を紡ぎ出すことを希望する。(^o^)

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