社会福祉援助技術

目次
用語
概念
歴史
文化的視点
援助技術の過程と共通課題


ホームインデックス




社会福祉士について

社会福祉士は「第28条の登録を受け、社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術を持って、は身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障があるものの福祉に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うことを業とするものを言う。」

介護福祉士「第42条第1項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術を持って、身体上もしくはは精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障があるものにつき入植、排泄、食事その他の介護を行い、並びにその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする。」

ノーマライゼーション

1960年代に北欧の発達障害者の福祉の向上との関連で主張される。
アドヴァカシーによるソーシャクアクションを意味する。

マルチカルチャリズム

多様文化主義
多様な文化的遺産の理解と共存

専門対人援助関係と逆感情転移

無意識に福祉専門職が利用者との関係の中で自己の個人的欲求を充足させたりすると、福祉専門職は自由さを失ってしまい、援助関係を維持して行くことができなくなるからである。このように、福祉専門職が利用者との関係の中で無意識的に個人的欲求を充足することを逆感情転移という。

ネットワーク化

小規模地域を対象にネットワークセンターを作り、その問題なりニーズを複眼的に見ることによって多様な援助活動をする

自由面接と客観性と科学性

基本的に援助者の自由裁量に任されていることが多い。
社会的な枠組みに規定されているものの、その具体的な進め方については面接者に委ねられている。
同一の問題に対する援助の過程で全く異なるアプローチと結果を招く恐れがある。

構成面接法

専門分野や機関若しくは施設の機能や役割によってその内容は異なるものの、それぞれのジャンルにおいて基本的な質問項目をあらかじめ設定し、それにしたがって面接を進めて行くというもの。

実践の科学化
岡村重夫
1-臨床体験を科学的手法に基づいて体系的に蓄積・集積する
2-体系的なものから一般的かつ高頻度に見られる所見や法則を抽出
3-抽出されたものの妥当性の検討。既存の応用科学との対比・精査
4-経験総則を仮説として、現場に応用し、検証、実証する。
5-実証されたものが新たな援助技術として創造される。


ホームインデックス目次





社会福祉の概念

ハード福祉
「人々の社会生活を廻る福祉の達成と維持向上を国家・社会が援助する理念であり、それを具体化した政策・制度のシステムである」

ソフト福祉
「専門性を伴った人間の援助行為によって可能になり、社会福祉援助技術を伴う援助活動によって、初めて制度が本来的に機能することを意味している。」

社会福祉援助活動
「社会福祉援助活動とは、利用者固有の生活状況を起点に、より豊かな社会生活の回復と実現を目指し、制度としての社会福祉諸サービスの提供を通じ、利用者による課題解決を可能にする援助活動の展開と、他方では、社会の発展に対応した社会福祉の維持と、その諸条件の改善・向上を目標にした専門的実践活動システムの過程である。」
特徴


ホームインデックス目次





社会福祉援助技術の歴史的展開


近代的社会福祉以前

相互扶助
地縁や血縁といった、同質性を下にした共同体の救済。
広くその範囲を超えた社会的対応となり得なかった。

慈善・博愛
援助者の個人的な宗教的あるいは倫理的動機から出発するため、援助が社会制度として保障されていない。

近代的社会福祉への示唆
1:社会保障が確立していない以上、家族や親族を中心とした生活全般の問題への対応。
共同体は、産業化の過程の中で分散と崩壊の危機にさらされ、従来の相互扶助機能をもはや発揮できない状況になり、それを補填する形で社会制度が発展した。
援助関係の相互性及び社会制度の補充的・代替的機能に特徴があり、それはまさに今日言われるインフォーマルなサポート・ネットワークの特徴と、その社会的必要性を示している。

2:相互扶助の変化(その後)
1960年代以降の相互扶助は単に社会制度を補充・代替する機能に終わらず、当事者の連帯によってニーズの実体を明らかにし、必要な社会制度の開発に向けて共同体の外に働きかけて行く運動として社会活動法(ソーシャル・アクション)の核になる。

3:共通性の範囲を超えて社会福祉援助の対象が広がって行った背景に、慈善・博愛思想がる。
しかし、「与える人」と「与えられる人」の上下関係が生じたため、今日に至っても「権利としての社会福祉」を生み出す社会福祉の主体形成を困難にしている。

産業革命後の社会改良運動

慈善組織協会(C.O.S.)
1867年ロンドンで設立、1877年にアメリカに移入された。

青少年団体の運動
YMCA、YWCA、1855年に代表される青少年団体の運動は、その後のグループ活動の源流

セツルメント運動
1884年:英国;トレンビーホールの大学セツルメント
S.バーネットの呼びかけ、C.ブーズのロンドン市民の貧困調査への参加、「煙草会議」労働者の集団討議、移民たちの生活と労働を支える語学教育、母親協同の保育所の運営、など多岐にわたる。

1889年:米国;ハルハウス
J.アダムス、移民立ち同氏の生活技術の教え合など、「与える人」と「与えられる人」の壁を取り払う方法を試みている。

後のグループワークに残した原則;S.ブライヤー

限界

社会福祉援助技術の専門化の兆し(1800年代末〜1910年代)
専門化の兆し
1860年代;医療ソーシャルワーク
1907年;精神医学ソーシャルワーカー
1917年;全米社会事業会議
1919年;全米ソーシャルワーカー協会;組織化、ネットワーク

リッチモンド
1917年『社会診断』:
主として貧困問題に現れる利用者の社会的困難と社会的要求を把握するために、利用者のおかれている社会的状況とパーソナリティをできるだけ正確にとらえて行く方法を指している。
1922年『ソーシャルケースワークとは何か』
「人間と社会環境との間を、個別に意識的に調整することを通して、パーソナリティを発達させる諸過程からなっている。」

限界
基礎としていた当時の科学が未熟であった。

社会福祉援助技術の基礎確立期
2つの側面
1-実践分野
2-援助技術
実践分野の文化によって、ケースワーク、グループワーク、コミュニティオーガナイゼーションといういわゆる、伝統的な3方法の違いが明らかになる。
コミュニティオーガナイゼーションは、1912年にR.ボードウィンが用いる。

診断主義
利用者の問題の心理的側面
Gハミルトン『ケースワークの理論と実際』
1960年代にFホリスによって、「心理-社会的モデル」として体系化
貧困を中心にした生活困難の範囲を超えて、心理的問題や家族関係の問題に向けられるにつれて、利用者が次第に増えてきた

機能主義
Vロビンソン『ケースワーク心理学の変遷』
利用者の主体的な問題解決を援助者がそれぞれの機関の機能を代表して援助するという点を明確にした。

診断主義-機能主義論争の歴史的意義
折衷主義:Hパールマン「問題解決モデル」
Rモーレ:現代の「機能主義モデル」
Cロジャース:利用者中心のカウンセリングと結び付いた「利用者中心主義、実存主義個別援助技術」
集団援助を含めた「相互作用モデル」
長い目で見たとき、「医学モデル」から「生活モデル」へと視点の転換を図る発端として、重要な歴史的意義があった。

地域援助技術の基礎作り

1939年に始まる大恐慌
ニューデール政策の中での「社会保障法」の制定で、連邦政府の社会保障の責任を明確にし、公的社会福祉機関が発達する契機になった。
地域援助活動の理論化に大きく貢献したのが、「レイン報告書」であった。
地域援助技術の概念と方法、活動と分野、資格と教育訓練など、体系化を図る。

集団援助技術

Wニューステッター
「自発的なグループ参加を通して、個人の成長と社会適応を図る教育的課程である」

ジェネリックとスペシフィック

1922年「ミルフォード会議」
個別援助技術のジェネリックな側面とは、各分野に共通な概念、知識、方法、社会資源の体系であり、スペシフィックな部分とは、ジェネリックな要素を広範囲に及ぶさまざまな場面の特定の脈絡に応じて適用することを意味する。
さらにこれらは相互依存関係で、全体として把握するには、いずれも書くことができない。
この概念は、多様な分野の社会福祉援助者のまとまりを助け、一つの専門職としての個別援助技術の知識と教育に概念的基礎を与えるものとなった。

社会福祉援助技術の統合化に向けて(1950年代〜1960年代)

1955年に全米ソーシャルワーカー協会設立(NASW)
5つの専門職団体と地域援助と社会福祉調査に関する2つの研究団体を合併。

心理的側面から社会的環境の重視へ
Hパールマン『ソーシャル・ケースワーク・問題解決の過程』(1954)
教育学におけるJデューイの問題解決学習法、社会学における役割論などを取り入れた。

権利擁護運動
Mハーリントン『もう一つのアメリカ』
NASWは新しい役割としてアドヴァカシー(権利擁護)の役割を打ち出す。

社会福祉援助技術教育の統合化
1952年ソーシャルワーク教育協議会(CSWE)

統合化のための理論形成に向けて
1-方法の統合
2-共通基盤と準拠枠の明確化;社会福祉固有の焦点と視点を明らかにし、社会福祉実践の全体的枠組みの中に援助技術を位置付けることによって、統合化を図ることを指している。
Hバーレット『社会福祉実践の共通基盤』(1970)
3-ジェネリックソーシャルワークの理論形成による統合;包括的でシステムマティックな実践のための理論を一般システム論を用いて体系化しようとするもの。

新たなモデルの登場(1970〜)
個別援助技術の新しい理論化
「心理社会的モデル」F.ホリス『ケースワーク・・・心理社会療法』
「機能主義的モデル」
「問題解決モデル」
「行動主義モデル」Eトーマス
「危機介入モデル」Lラポポート
「課題中心モデル」W.Jライド、L.エプスタイン
「生活モデル」C.ジャーメイン
利用者の環境を欠くことのできない焦点として見直すこと
ターゲットになる問題と援助目標を明確にした比較的短期間の実践方法を形成する方向が顕著である。

集団援助技術の初期モデル

C.コノプカ
「ソーシャルワークの1つの方法であり、意図的なグループ経験を通して、個人の社会的に機能する力を高め、また、個人、集団、地域社会の諸問題により効果的に対処し得るよう人々を援助するものである」
「成長志向グループ」
「社会活動志向グループ」

C.パペル、J.ロスマン
「社会的目標モデル」;市民参加、指導者など社会活動志向
「治療的モデル」;Eトロップらの発達的アプローチ、R.サリーの行動主義モデルなどへ発展
「相互作用モデル;方法論統合の立場に立つ。Wシュワルツが提唱。個人と社会の有機的な相互援助システムの「媒介者」として援助者の役割が強調

地域援助技術理論の発達

Wニューステッター「インターグループワーク論」
地域内の各種組織、団体及び機関の代表者の討議の場を設定し、グループ間の関係調整によって各集団の協同を促進する援助技術
Mロス『コミュニティーオーガナイゼーション』

Bロスマン

社会的な側面を基盤にする実践で、社会福祉援助技術全体に重要なインパクトを与える。

1970年中頃以後の変化

福祉の対人社会サービス化
社会福祉援助技術のミクロとマクロの発展

ソーシャル・サポート・ネットワーク論
C.フローランド
「専門職による援助は、一般に訓練と経験によって習得した基準に基づいており、提供されるイン序が信頼されるには、知識と実践能力が重要である。それに対し、インフォーマルな人間関係、経験の共有と利他主義の考え方に基づいており、その信頼性は特定のネットワーク内での相互関係の規範に決まってくる。

J.ウィタカー
援助の責任と権限が公式に認められているかどうかという点で専門者による援助はフォーマルな援助であり、家族や友人、隣人、その他非専門職による援助はインフォーマルな援助ということができよう。

ソーシャルサポート

広義にはフォーマルとインフォーマルな援助の両方を含み、狭義に用いる場合には、インフォーマルな援助に限定すると考えられる。

G.カプラン
ソーシャルサポートには客観的-主観的、物的-心理的の2つの次元があり、実際にはそれらが組み合わされている。

サポートの種類
ハウス

藤井達也;精神障害者の社会復帰システムとして

方法

ネットワーキング

金子『ネットワーキングへの招待』
「統制型ネットワークとは、全体の目的をまず設定し、その達成のためにメンバーの役割分担を決め、メンバーがその役割を果たすために規則を作ることでメンバーの統制をすることを基盤とする。一方、参加型のネットワークは、各自が固有の意志と主体性を持って参加することを原則としたまとまりである。ネットワーキングとは、単にネットワークが形成される過程を意味するだけでなく、その背後にある個と個の関係、組織の作り方などに関する思想を表現する言葉であると言う。
つまり、主体的なネットワークの運動論である。

ケースマネージメント
機能

過程

課題

サービス利用者の参加や個人情報提供に関する承諾、ケア計画に関する承諾などがすべて文書化され利用者のサインを求めている点など、「契約」の概念が明確に具体化されている。

社会福祉の官僚主義化と福祉の切り捨てを強める危険性があるのかという懸念もある。



ホームインデックス目次




文化的視点

社会のシステム化と文化
「個人とシステムの関係は、理念的には、個人がそうしたシステムを内在化することでシステムに順応するか、現にあるシステムを変革ないし新たに創造するか、システムそのものの価値を認めず、システム的思考を拒否するかのいずれかである。」
「社会福祉のシステム化やネットワーク化を進めて行く上で最も重要になるのが価値の問題である。システム化はいかなる価値をも実現する仕組みともなり得るのだとすれば、価値に関わる理想と現実、及びその矛盾を正面から問題にすることは極めて重要である。

社会福祉援助技術における文化的視点



ホームインデックス目次




社会福祉援助技術の過程と共通課題

「課題中心ケースワーク」
利用者が把握した課題の設定や、利用者の努力の評価など流動的な判断をする。
1週間の単位で、2〜4カ月で終了をメドにする。
適応される問題領域
前期で設定された課題を実行しやすい現実的なものに分解して、実行のスケジュールを援助者とで立てる。行動様式の強制ないし、型つけを重視

「心理社会診断」
1-
サービス利用者の持つ問題の端緒は幼児期の家族生活にあるとするもの。形成過程にさかのぼり、修正、対処能力の強化など。
6カ月を目安にし、2年に及ぶこともある。
問題の理解と診断、関係者のシンメトリー、阻害要因の検討。治療方針。
診断とは、心理社会調査のデータの中で、現在の問題と生活歴などの間の因果関係を記述したもの。
評価は、本人、関係者の性格、行動特性、社会的役割遂行能力などを分析し、関係性の善し悪しを記述したもの。
治療方針は、評価を現実化させて援助に結び付けること

対人関係の適応の問題
支持的対応


家族療法
家族にとって何が問題であるかを家族間の話し合いでまとめさせるように援助して行く。
サポートとフィードバック

S.ミニューチン;家族構造理論に基づく
家族の非機能的な構造を周囲の状況に柔軟に合わせれるような、しなやかでまとまりのよい構造に改変するのが目的。
家族全体が環境システムに適応障害を起こしているという考え方が基本であり、家族関係が好転するためには、援助者の介入の仕方や家族へのフィードバックの仕方が鍵になる

危機介入
1-個人と問題の事前評価
2-治療的調整活動の計画
3-調整活動
4-危機の解消と予期的計画
事前評価の段階で、自我の判断力の面に働きかける。利用者の感情を開放し、
知覚の歪みを直し、意志を活性化することに全面的に密着して援助する。(自我機能中心)

集団援助技術の受理手続き
1-個別援助技術の過程で、集団体験が社会的横行同学習のために有効であると認められた人々を集団的にまとめて、相互作用の展開の中から学習の機会を作るように企画
2-既に施設の集団の中にある人たちを、趣味やクラブを組織して目的別集団活動をさせる
3-長期間滞在した施設や病院を出て、自立した社会生活を移行させるための準備としての集団生活援助
集団が形成されたら、個人のニーズを考慮し、個人処遇目標と集団全体に対する集団処遇目標を立てる。

プログラムを通して行われる。
集団の目的に沿うように援助者が助言をする。援助者は集団の利器どうと1人1人の参加の度合いをよく観察し、個人記録と全体記録を毎回記録する。

評価は

地域内援助活動の受理手続き
ショートステイなど、サービスの利用に結び付けることを目的としている。

諸過程の循環
システム間の情報伝達によって新しい福祉サービスを創出し、福祉プログラムの種類を豊かにすることがある。
政策策定システムが思考的補助の効果を評価して制度化すれば、今度は制度は多くの行政システムへ伝わり、さらに多くの実践活動システムに伝わり、多数の利用者が問題解決を援助されることになる。

社会福祉援助活動の共通課題

契約
問題解決の過程にある人を組み入れる最初の段階

課題
生起している問題の軽減行動。
いくつもの課題を利用者とともに取り組んで行く場合、外見的には一塊に見える課題を細分化し、どの部分が先に取り組まれるべきかとか、それ以降の取り組みの順序を検討して行くことも戦略的な有効な方法である。

介入
広く問題を解決したり、予防したりするうえでの、あるいは何らかの社会的な改善・増進に関わる目標を達成するためにいろいろな実践様式(心理的・個別的援助、アドヴァカシー、仲裁、社会計画、地域組織化、社会資源の掘り起こし、発展など)
介入は意図的であり、目標や目的に絶えず志向されている。

社会福祉援助技術が適応される場と対象分野

社会福祉援助技術は、社会福祉機関や組織において遂行される実践方法であると言われる。
機関は、援助技術の発展と成長に重要な影響を及ぼし、社会福祉援助者の活動を保障するものである。それと同時に活動や行動に対して制裁や規制、統制の権限を持っているのである。
機関や組織の本来のあり方は、社会的ニーズに柔軟に応え、適切な対応ができるとともに、そこで活動できる援助者は、自己の役割と責任が機関の責任に合わせて、相互に関連しあっていることを認めながら、実践の過程で機関の方針を利用者のニーズに合わせて具体的に説明して行く役割がある。


ホームインデックス目次