ダディ・フェイス

『ダディ・フェイスシリーズ』
(伊達将範,角川電撃文庫)
【入手容易】

文体のノリが、すごく軽い!スピード感がある。しかも、すごく映像を意識したような会話の掛け合い。ジュブナイル小説の見本のような、ホントに読みやすい小説です。
むしろ、この文体を肯定的な意味で捉えたい。もともと、小説は娯楽である。学術書でもはない。むしろ、学術書などは、自分の思考を展開する上で、読ませるということに重点を置いて、もっと読みやすくしてほしい・・・、ということはこの本の紹介とは何も関係ないが。
とにかく、読ませるということを念頭に置いたとき、ジュブナイル小説のダイレクトに映像が浮かび上がる文体は、この小説は群を抜いている。もちろん、設定も面白い。
大学生の主人公は、孤児院出身の貧乏学生である。幼い頃、孤児院で知り合った女の子と「最後」までしてしまったが、消息は不明である。実は、同じ大学でミスキャンパスの高飛車な弓道部の部長で、主人公以外には心を開いていない。そして、その女性は、幼い頃のHが、実は双子を設けていた。そして、その双子は天才で、さらにその女性は、大きな財団の娘であった。双子の1人(男)は、財団のトップに君臨し、1人(女)は、トレジャーハンターの世界的に有名な謎の人物であった。そして、トレジャーハンターのトラブルに主人公が巻き込まれていく。そのトレジャーも普通の金銀財宝ではなく、異世界の未知の超技術の産物であり、敵対者も一筋縄ではない。そして、主人公は、伝説の格闘技の継承者であり・・・。←すごくこう書くと陳腐な設定ですね。
とにかく、まぁ、アニメ的にはまっているということでしょうか。フキフキ "A^^;。
ご都合主義で、感情過多な部分もあるし、おきまりのお色気シーンにはだいたいイラストが挿入されているし、ジュブナイル小説を読まない人にはまったく、頭が痛くなる、あるいは、目が腐るような小説だろうナァと思いながらも、けっこう、胡散臭い史実の展開とか、超秘術の探索の雰囲気とか、ワクワクする部分もたぶんにあり、敵対者との戦闘でも、格闘技ありの最新の軍事技術ありの破壊力満点で、サービス満点なのです。
ジュブナイル小説ならず、普通の小説でもエンターテイメントでサービスすればこんな小説になるのでは、と思うような物語です。
もっとも、そんなのに重点を置かない小説が面白くないというつもりは全然ないけれど。

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