社会病理学
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有斐閣:大橋 薫の古典です。
批判的にも、基盤としても使われることがある本です。
概論
群集心理理論
自殺の社会的原因
婚姻の病理家族
家族構造の変化
生活の病理
地域の病理
労働の病理
職業における病理
経営の病理
官僚制の病理
概論
社会病理学とは社会生活上の困った事柄を研究したもので、社会問題と混同される。例えば、犯罪・非行や失業・貧困などは社会病理であり又社会問題であるが、労働問題・人口問題・住宅問題・青年問題は社会問題とされても社会病理にはあてはまらない。つまり、物の視点からの捕え方からの違いで社会病理と言われたり、社会問題ととらわれたりするのです。しかし、非行や犯罪などは現象形態が違っていても基本的には関連がある。社会病理学は生活関係の障害の根本や関連を追及する学問である。
まず二つの理論に大別される。
1・特殊的な方針社会病理の一面を表す。
- 社会不適応論社会の構成要素間に−人的・物的・制度的−不適応状態が生じて、個人や集団の目的や欲求の充足が著しく阻害される状態。
- 社会参加論様々なハンディキャップ−身体的・精神的・社会的・経済的−のために、人々の社会参加が阻害される状況。社会参加とは、人が生活欲求を満たすために様々な集団・制度を利用すること。
- 社会緊張論性・愛情・安定性などの基本的欲求の不充足専制的・権威主義的雰囲気経済的な不安定又は不平等社会的偏見や階級的対立文化様式や価値観の不一致自然的又は社会的災害
- 社会無規範論行為を規制する共通の価値観や道徳基準が失われた混沌とした状態。社会的 文化的目標と制度的手段のずれ心理的個人の道徳観念の衰退
- 社会疎外論資本主義の資本への隷属による人間性の喪失個人の社会参加からの脱落とそれに伴う失意・無力感
2・包括的な方針社会病理の全体に枠組を設ける。
a・社会包括論
- 「人間と制度との間の不調和にあり、この状態では一般的秩序と規律とコミニケーションとが欠如する。」
- 「現存の社会的行動基準の影響が減退し、反社会的態度が発達すること。」
- 「集団成員間の機能的関係が崩壊して集団の所与の目的の遂行が阻害されること。」
- 「社会の様々の要素が調和的に作用せず、その結果は既存の行動様式がもはや効果的に作用しない状態。」
b・社会偏奇論社会病理の規定ある標準状態からのずれからの、その基準からの意識や行動のずれ。- 平均的基準
- 理想的、規範的基準(普遍的で制度的なもの)
1、2からの過多のずれが変奇であると言う。それは、相対的な要素を含む。つまり、偏倚行動とは普遍的、制度的な行動基準から許容量を越えてずれた行動のことである。
c・総合理論個人や社会の生活機能の障害に拘わる事象その過程
- 生活機能の障害の発生条件
- 生活機能の障害の実相(病理の真の姿、原因)
- 生活機能の障害の結果現象(外部的兆候)
(1)・個人的、個別的(個人病理)
(2)・社会的、集団的(社会病理)
d・個人病理の理論構造
- 生活解体生活構造の解体や生活意識の偏倚。つまり、社会参加のための生活行動のシステム(健康、教育、経済、家庭、文化娯楽)などの歪みによる偏倚
- 人格解体・・・病的な精神状態欲求体系、価値体系、行動様式の体系の異常をきたしたとき。
e・社会ないし集団病理の論理構造社会構造(目標、資源、役割、行動様式)これらすべてが満たされるように努力するのが・・・集団組織化である。集団病理とは、その集団機能が十分に働くことを阻害することである。「集団の構造要件の偏倚、それらに対する価値観や態度の不一致などにより引き起こされる社会緊張の発生など、集団目標の実現が阻害されることである。」
社会変動は、反動と発展があり、反動が主に社会解体のカテゴリーに属する。
f・社会病理の発生条件
- 現場の状況・・・自然的、物的、社会的な条件の異常、欠陥
- 病理発生の個人の条件・・・精神的、身体的、社会的、人種的、経済的なハンディキャップ
- 集団の内部条件
- 環境・・・家庭とか、学校とか。
- 社会制度の不備、欠陥
(a)・制度が古く現実に合わない
(b)・制度に欠陥があり、生活欲求が満たされない
(c)・必要性、欲求が存在しているのに制度が制定されていない。
- 偏倚した社会風潮性的、道徳退廃、享楽主義、虚飾文化、学歴、学閥主義等。
- 社会力としての都市化、近代化、産業化、大衆化生活構造の多元化による価値観の対立、人間疎外現象
- 体制の矛盾、欠陥富の偏在、階級的搾取により享楽主義、貧困、倒産、失業、人間疎外、が起こる。社会病理が強く作用するのは、急激な変動過程、文化、社会のテンポのずれによる。
人格の病理人格の病理は社会の病理に対してどのような関係をもつか。
- 人格の病理は社会の病理が成立するための一条件に過ぎない。(犯罪者の人格とか)
- 人格のは、社会が産出した結果の一部である。(生活水準の低さ、知能の劣化など)
- 人格のは、社会の病理を構成する様々な要素の一要素であり、社会の病理の概念を包括する。
精神分析理論の場合フロイト・正常とは病理が希薄化されたものに外ならない。人格:「エス」本能的な欲求の充足を求める。「自我」エスの分化、現実を認識し、行動する。「超自我」良心や、道徳的禁止など。
- 「超自我」と、現実による奉仕と危険が「自我」を脅かす。
- 現実は「エス」を許さないので中間の「自我」が脅え、現実不安になる。
- 「エス」は、現実や「超自我」と対立し、衝動の充足を求める。そして、中間の「自我」が衝動に脅かされて「神経的不安」に脅かされる。
- 「超自我」は、厳格さにおいて「自我」を許さない。そして、良心の不安になる。自我は不安のすみかである。そして、人格は複数の力が対立葛藤を繰り返し、調停により成り立つ。
結論
- 人格の病理を社会の病理へ反映させる。
- 人格の正常さを人格の病理(異常さの希薄化)へ結び付け、全体社会の規模で生じる人格の病理への接近を可能にする。
- 人格の病理の一部に対する治療技術を連結される。
群集心理理論の場合ルボン・感情と思考について感情・「種族の根本的性質」「凶暴な破壊本能」「厳格な道徳原則」思考・「一時的な思想」「根本的な思想」感情
- 衝動性、動揺性−−−単純な形式
- 暗示性、軽信性−−−論理的矛盾を認識できない
- 誇張性、単純性−−−特殊な事例から一般的原則を引き出す。
- 偏狭性、権威性−−−推理力が低下し、睡眠中の思考ににている
- 道徳性
- 信念「優越者と目される人物に対する崇拝心、その人物が有すると思われる権力に対する畏敬の念、彼の命令に対する盲目的服従、彼の説く教義を論議することが不可能なこと、その教義を流布しようとする欲望、その許容を拒むものをすべて敵対者と見なす傾向」
人格の病理は群集心理学においても社会的条件の産物である。
「間接原因」種族性、伝統、時、制度、教育による誤飃
「直接原因」イマージュ、言葉、標語、幻想、経験、道徳による見せかけ群衆と集団非組織的群衆と集合体、一時な集団と安定した集団。どちらも後者が群集心理を免れない。人格の病理への接近上記の2つ以外の概念
- 態度概念による人格理論習慣的行為から始めて、態度や特性を抽出し、それらの組み合わせとして人格の構造を理解する。
- マルクス主義人格理論人格の概念は、労働の概念との関連において規定する。人格の病理は一定の社会関係の下で阻害された労働との関連で基本的に説明される。
行動の逸脱
- 行動の逸脱性社会病理学において、これまで問題にされてきた逸脱行動は、犯罪、非行、売春、浮浪、麻薬、アルコール中毒などで、逸脱に対する社会的反応には、承認、無関心、非難などがあり、問題になるのは、社会的に顕在化して、社会の許容量を越え、有効に非難される逸脱行為である。今日の多元化した社会、思想にとって逸脱とは何かと問われても答えるのは難しくなっている。
- 逸脱行為論のアプローチ逸脱行為論とは、犯罪、自殺などの各問題の行動相互の関連性を共通の発生基盤である社会構造や文化の観点から究明すること。
- 逸脱行動
- ・社会病態の結果の現象少年非行の環境など
- ・必ずしもそうでないもの汚職とか発現の形態の違いはあるが、基本的に見れば1、2とも異常な今日に対する「正常な」適応結果である。つまり、社会病理が各個人の次元で現れた外的徴候であるのが行動の逸脱であるというわけである。そして、逸脱行動は社会病態の認識をするための手段的意義をもつ。
- 犯罪理論逸脱行動の特殊面を深く研究したもの。かなり発達した理論であり、実際面で効果を収めている。
- 逸脱への傾向を含む社会環境の病態:ある地位部類(都市の貧困層とか)
- ある集団状況(スラム、ギャングなど)
- アノミーと逸脱行動アノミー
- ・幸福や快楽の配分及び職務への市民への配分に関する伝統的基準がもはやその権威を保ち得なくなり、欲求の社会的限界が見失われた状態。
- ・文化的に動機づけられた志望目標とそれの達成手段を規則的規範との調整関係が破綻した状態。
- 分類:
- ・改変(ホワイトカラー犯罪、非行)目標に対する執着が強すぎるため、許容された手段の規制を跳躙してまでも目標達成を狙う型。
- ・儀礼主義(官僚制機構)文化目標の断念若しくは水準以下を行い、安定した常軌に過渡の適合を図ってパーソナリティの緊張を緩和する反応形式
- 敗北主義(精神病者、無頼漢など)文化目標を放棄すると共に、規律の順守に対しても消極的な型
- 反抗既存の価値秩序を拒否し、新たな価値設定を試みる変革的な逸脱行動である。しかし、必ずしも病理的ではない。
- 犯罪、非行の理論低年齢化、凶悪化、中流居住地の人々による非行、不良交友、分化的同一化。人は法律違反を利益とする観念が法律違反を不利益とする観念を凌駕する場合に犯罪人になる。
文化伝達論:都市の中心の商業地区周辺のスラムでの犯罪の発生率が最高で、都心から距離が遠くなるほど放物線上に減少する。非行的下位文化論:少年が非行を行うのは、生計の手段ではなく仲間におだてられ腕前を誇示するためであり、非功利的である。そのほかに、意地悪、否定性、気まぐれ性、短絡的、快楽主義、非行集団盲従性がある。もろもろの特性が正常な社会の文化とは逆転的な非行下位文化論を形成する。それは中産階級の価値観の支配する社会で下層階級の少年が陥る地位的欲求不満から発した一種の反動形式である。日本においては:
・生活遊興費に困ってから、
・好奇心、無動機に移りつつある。犯罪性向は習得され、相互作用の中で補強される。防止−家族の役割が大いに大切である。
自殺の社会的原因
日本では、青年、老人、女、低階層:農村では心中が多い。青年は、「厭世」、「将来の苦慮」−アノミー的自殺:進学や就職の失敗者、喪失者、日本経済の二重構造の底辺層にある不安定な小零細企業に働く勤労青年など。女は、失恋、家庭不和、「家」の干渉、女性の弱者的立場による自殺で、これらは戦前には少なかったが、戦後女性の自覚により増加。近代の自殺では、抗議死や諌死である自殺の動機付に具体的な他者が関与し、又死が重要視される。日本ではその他に自殺を罪悪視なく、生命を手段に選ぶことがない。日本の文化に問題もある。死んでお詫びするとか、恥を注ぐとか。心中も結局は個人としての子供の人格を無視して子を所有物として見なしているからである。感想人格の病理は、まず社会が病理でありその次に人格が犯されるという感じであった。又は、人格的な社会への適合が苦手であったり、若しくは歪んだ形で接触をもったために人格が病理になったケースであろう。しかし、やはり底辺階級による社会的な虐待による病理は哀れなものである。最初に社会の病理から人格の病理が形成されると言ったが、そう言うのとは別にもともと社会と接触して生きて行かなければならない人間はいろいろな不条理を感じつつもまっとうに生きて行かなければならない。そういう意味では人格の病理は、自分の責任でもある訳である。時代にどう対応し、何がまっとうな生き方なのかは難しいことであるが、人格の病理に見たような生き方はやはりしてはいけない行為であることは確かである。
婚姻の病理家族とは、衣食住を共にし、半ば永続的に営みをする生活共同体である。家庭内においては、融和し、それが強いほど外部に対し排他的になる。
家族の葛藤家族の不和、葛藤は、生物的感情をもった人々が互いに隠し事のない生活をした後に現れる問題で、理屈で相手を理解していても感情的に理解できないという特性がある。
結婚集団における葛藤
- 人間の欲求の強さ、それに対する充足の程度。特に、性的、安定を求める要求の程度。
- 夫婦間における自由運動の空間が小さい時。
- 外部の障壁と内部の束縛のため、不愉快な状態から離脱する自由がかけている時。
- 集団内における各成員の目的が互いに衝突し、他人の立場を考える心構えがない時。
円満な夫婦とは、たとえ争いが生じてもお互いに相手を理解し、緊張を取り除く適応力がある。
不和、葛藤は個人が生活している社会の文化、形式、社会体制の型によって違う。
不和、葛藤の一般要因
- 生理的要因−−病気、不妊など
- 経済的要因−−経済変動、失業など
- 社会的要因−−社会地位、近所・職場関係など
- 夫婦間の要因−結婚に対する期待と錯誤など
- 性格的要因−−性格の偏倚、生活信条の違いなど
離婚原因夫婦の敵対、離反力が統合、適合力を凌駕して強力となり、離反した方が結婚を持続するより価値があると考えられた結果のこと。また、法律的にも夫婦共同体を将来に向かって断絶することを社会宣言する行為である。
見解
- 神により定められた結婚は、離反してはならない。
- 離婚は不幸な結果の副産物であり、回避することのできない必要悪である。
- 離婚は明らかに善でないが、悪に対する救済である。
- 法律上、民事契約の一種であるから合わせるものは、離れものであり得る。これらの見解を統括しても、離婚は社会的にも安定を危ぶませる。
性格の相違・夫婦の基本的パーソナリティの特性と、その組み合わせにより結婚の幸不孝が決まる。
経済生活・・生産のオートメーション化に基づく消費財の量産と、変化、回転の早さによる家の消費文化の追求に翻弄される。共働きは、子供の性格を不安定にする。また、家庭内の不和が起こり易い。
不貞・・・・当然、配偶者以外のものとの性的関係は、厳禁であると言った社会的抑制、期待を破るという意味において、配偶者、当事者の所属している社会集団の人々から非難を受ける。また、社会から排斥される危険をもつ。男性の不貞は、社会的風潮、習俗により女性の不貞より寛大である。それゆえに離婚が起こったりする。
離婚の影響結婚によって生じた苦悩、精神的葛藤から解放されるが、それによって生じる社会的、心理的影響は習俗、宗教などによって非難される。職業柄による離婚も又地位を危ぶませる。指導的、宗教、法律方面など経済的、年齢的にも困窮を余儀なくされる。子供の養育の問題とか。
家族構造の変化
現代の都市化、産業化により現代の家族の構造の中心は親子関係から夫婦関係へと移行する。例・核家族、老人の人口の増加家族機能の変化家族は、自然発生的で、基礎的な性質をもっており、機能は多方面にわたって複合的である。また、地位や立場は不明確で役割も厳密に決められられたものでない。それらの機能が段々と縮小、明確化されていき、公共、又はその他の単一の機能の施設が定められて行く。
家族の基本的な機能
- 男女の性関係する生殖の機能
- 親子関係から来る扶養、社会的パーソナリティ形成の機能
- 共食、共住という消費を共同にする経済的機能家族の標準態両親と未婚の子供2〜3人
すべての家族は標準態であるかどうかに拘わりなく、原則として家族の危機的状況を幾度か経験しながら家族の解体と再組織のダイナミックな運動を展開する。
逸脱した家族では危機を乗り越えるのがより困難で多くの障害がある。
- 家族の危機的状況は成員相互の構成上の変化(死、病気、出生)や、機能上の変化によって招来する。
- また、戦争や経済変動など全体社会の危機的状況によって起こる。
家族構造の病理
- 母子家庭最も多く見られる形態で、生産能力(父)の喪失により貧困という病理状況におかれ易い。子供の世話と社会で働くという重複した役割の負担過重から危機的状況におかれ易い。長期の父の単身赴任またそうである。
- 父子家庭母による子女の情緒的な安定を望めないために、子供のパーソナリティに問題が生じ易い。特に、女の子は同一化の対象を失い女の役割を習得する機会を失う。
- 子供だけの世帯両親が死亡しており、ことに子女が未成年であればもはや解体した家族である。子供の正常な社会化や情報的発達は望めない。公共の保護にゆだねざるをえない。
- 多子家庭欠損家庭ではない。しかし、貧困家庭となり易い。教育などの社会化の機会を均等に与えることが困難である。多子のため親の愛情が十分細部に行きわたらない。
- 一人っ子の世帯兄弟という同胞関係が無く、外部の競争的な人間関係が無く、競争・協力したりする同輩関係を経験しないで、独立性、積極性、協調性などを欠き易い。
- 老人世帯老人だけ、老人を含む子供夫婦世帯、老人が子供、又は孫を扶養している世帯。老齢による生産能力の喪失により貧困の危機にさらされ易い。孤独化する恐れもある。
家族が病理的であるかどうかは家族の構造上の欠損や逸脱によるというより、むしろこのような構造上の逸脱からくる機能の障害を克服できる状況に家族の生活の生活資力や家族本来の機能を円滑にかつ十分に遂行できない状況におかれたときに家族構造の病理が現れると見るべきである。家族機能の病理家族解体・家族の相互作用が不均等であったり、緊張を伴っていたりして家族的機能が十分に行われていない状況。
特徴
- 価値体系の混乱家族に関する価値観や態度(欲求、関心を含む)が家族員相互で一致しない状況。戦前の長男偏重主義と戦後の平等主義などの対立。
- 役割葛藤家族員が各自の地位(父、母、子など)に応じて割り当てられ、期待された役割が重複したり対立したりして十分に果されていない状況。例・共働き女性に家事と職業の役割が重複する。
- 資力の欠乏家族生活に必要な経済力、物的、人的資源が欠乏している危機的状況。
- 家族的緊張家族員のパーソナリティが病的であったり、性的に破綻していたりしている。また、アルコール、カケなど特殊な習癖をもっていたりする家族で、そのために人間関係が不調整で、絶えず緊張関係にある状況。家族員の相互の感情の対立、人生観の違い、性的愛情の不一致、性格の相違により緊張関係を招くこともある。
1〜4のような特徴がなくても、家族員に目標や関心に共通性がなく、家族全体が集団的な統合性に欠けると、解体を引き起こしかねない。また、家族の病理は全体社会の病理と極めて密接な相関性をもっている。
家族病理と個人の逸脱行為
- 自殺と家族病理家族は自殺傾向をパーソナリティのうちに形成するだけでなく、自殺行為を直接誘発する状況として意味をもっている。年少者は、学業に対する親の過剰な期待、兄弟の差別等。老人は、慢性の病気などの生理的原因、疎外、肩身が狭いなど。
- 家出と家族病理家では自分の直面している情緒的葛藤を解決したり、自分の理想としている生活目標を達成するために家庭という日常生活という場から離れて匿名の場所を求めようとする逸脱行為である。家族の構造や機能に病理的状況がある場合、家では繰り返され、長期化し、やがて家出人と家族のとの関係は解体する。
- FROM型・家庭からの逃避を目的とする所に行動上の特徴がある。
- TO型・自分の生活目標を達成するために、都市へ出たりする行為。混合型・家族内に高い緊張度をもち、しかも当人が家族外の人間関係への積極的な志向をもつことから解体し易い。
- 非行と家族病理原則としては9才以下で、片親を失った場合が一番非行に走り易い。そして、男子よりも女子にその傾向がある。欠損や貧困という事実と関連して、機能上の障害が生じるときに病理は非行かの要因として左右することになる。非行が常に集団行動を取る傾向にあるので、その要因は地域社会の同輩集団の影響にあるといっていい。
- 家族病理と社会病理自殺など個人の逸脱行為は地域社会や全体社会の影響を家族というフィルターを通じて受けることが多い。地域社会や全体社会の仕組みや働きが社会変動に即して、家族の危機的状況を克服し易い生活の資源を備えているかどうかということが家族病理から来る個人の逸脱行為の発生を状況的に決定する。
まとめ
家族とは、社会の一要因である。それは、最も大事で、重要なものである。それは国や政治よりも身近かで、尊重するものである。また、社会の一つの結合体である家族は又、国や政治、とりわけ、経済に結び付き、左右される。家族が健全であるためには、国の安定と、経済的保障が十分になされていないといけない。そして、人格の安定、これはよほど逸脱していなければ、上記のような状況においては家族の解体はそう簡単に起こらないものと思われる。家族の病理は、人の理性の及ばない所で大きく左右される。経済の変動、国際間の緊張、小さいものでは、理性を曇らせる憎悪、敵対的な緊張の長期化によるストレス又はフラストレーションン等である。それは、学問的には、論評に値しないように見えて、重要な要因である。我が家では、万年家族的緊張が絶えなかった。しかしながら、幸いにして、父が怒れば、母が仲介に入り、その逆もあった。また、妹が癇癪を起こせばだれかが止めに入ったりするといった調整的な癒着力が強かった。また、性格的な逸脱もなく、愛情が欠如している訳でもなかったし、いまでも変わらない。家族的な病理は、本当に行き着いた不幸である。そして、性格も又大きな原因である。さかのぼって、その問題になる性格も又、家族によって形成されて来たことも明記されたし。地域構造の解体地域社会の構造要素が偏倚したり、相互の不適応状態にあって、地域社会の生活機能の遂行が阻害され、その結果、様々な偏倚行動が派生することである。
生活の病理
構成要素とは、地域社会の生活目標、生活資源、住民組織、生活文化、行政機構などによったものである。
- 生活目標・教育、職業、衣食住など基本的にして、普遍的な生活欲求に拘わるもの。
- 生活資源・河川、地形、社会施設など、自然的、物的な条件、産業、経済的条件。
- 生活文化・条例、法などを含む、普遍、特殊などの文化体系を内包する。
- 住民組織・各種の公共や民間の地域団体。
相互に適応なら、円滑に機能は働く。そして、これらを効果的に関連付けようという努力が地域組織化なのである。もし、これらの機能が阻害されると、失業、貧困、文盲、犯罪、公害など様々な社会病理が起こる。また、地域解体が集中すると、解体地域が形成され、ドヤ街などが出来上がる。
解体地域の形成と存続形成:「社会的落伍者が一定の立地条件の元に凝集した場合に見られる」存続:「一度そうした地域が生じると、そこには彼らの居住に便利な生活上の仕組みができる。そして、新たな落伍者は好んで集まり、内外の条件の変化がない限りその地域は存続し、発展する。」
社会的落伍者
- 失業、仕事の失敗・・・経済的失敗者
- 家出、離婚、売春など・偏倚行動者
第1次的落伍
広域社会の社会、経済的な仕組みに解体状況が発生し、倒産などの失業を余儀なくされる。
第2次的落伍
平行移動に止まるものが大半だが、没落して下降するものもある。直接的落伍身体、精神、経済などもろもろのハンディキャップのため、最初からそうした状態におかれたもの。
立地条件
- 都市の発達が急激に停滞すると、荒廃化現象が生じそれがさらに深刻化すると、スラムになる。
- かつてある種の機能が存在した地区はその後、事情の変化があってもそうした機能が残存する。
- 第2次世界大戦後は住宅復興が遅々として進まないため、1・2のようなスラム形成の前提条件を充足する範囲内において公有、私有の空き地が一時的に占拠されて、スラム街を形成する。存続古着屋、一杯飲屋、インフォーマルな関係、相互不干渉主義
解体地域の特質
- 地域の物的荒廃
- 住民の人格解体
- 地域の社会的、文化的構造の偏倚
(1)・・・生活施設の不備、環境衛生の劣悪
(2)・・・精神異常者、疎外された人、この種の地区はガラが悪い。住民の生活解体、内縁関係や家族病理、単純労働者、ヤクザ
(3)・・・定着する人が少ない。30〜40代の男子が多い。全体として連帯性が少なく、地元生活に対して無関心なものが多い。しかし、地元生活の中には町内会など地域団体組織がある。解体地域にはアノミー的人間ないし、無法者が多いだけに価値基準、行動基準も偏倚している面が少なくない。物的荒廃の面では、一番ひどいのは、借り小屋密集地区であり、世帯持ちも多い。解体地域の社会的機能スラムは、現代都市社会の重要な目的を果している。スラムは単に社会的無秩序の厄介な兆候と片付けてしまわないで、それがこれまでの果して来た役割を明確に認識してやらないといけない。スラムは、常に社会移動の上昇と下降の二方向にたいして一時的な停留所たる役割を果して来た。つまり、都市への新参者に対しは一時的な寄り場を提供し、上層階級にその経済的立場を失った市民たちを包容した。また、一時的とは限らず、沈殿層、停滞層、移動層に分けられる。
未解放部落とマイノリティグループ
- 統合された共同社会
- 住民相互は血縁関係
- 住民の定住意識が強い
- 地縁的結合が強く、文化も同質的物的荒廃と生活解体を除けばスラムと一線を画する。しかしながら、閉鎖的なため後進的にならざるを得ない。
感想
地域の解体とは何であるのか、自分は経験したことがないがよく映画のモチーフとして昔の映画に使われて来たのではないだろうか。それは主に戦争の終わった後の映画の初期に見られるもので、時代を象徴したものであった。あのギタギタしたむさ苦しい人々が、家と呼べないような住宅に住み、そこでの喜怒哀楽を真剣に描写されている。そこで自分はそのスラムに住む人々を客観的にそしてそこで幸福を見いだしている人々に暖かいものを感じていた。スラムは、隠されていない人間の情感であり、重苦しくも真剣なものである。今の世の中では彼らに栄光はないかも知れない。それは当然なことであり残酷なことである。
地域の病理
サバービアにおける地域機能と病理地域の機能要件
- 特定の住民の生活する場であって、何らかの地理的範域をもつ。
- 住民の社会的諸属性に有機的なつながりが認められる。
- 地域の諸資源の共同の利用が可能である。
- 地域共属の感情が存在する。こうした要件に支えられるコミニティの機能的状況の病理的側面をサバービアとスラムという典型について述べる。
サバービア郊外という意味であり、
- 一種の生活様式として住民の生活する場としての認識はサバービアへの住まいの心理的動機一つにおいても明瞭である。
- 住民の社会的諸属性、白人でアングロサクソン系でプロテスタントの人々を典型的住民としている。
- 極めて同調性が高く、住民参加に積極性が見られる。
- 同質的(経済、社会的役割、信仰など)であれば、(我々の感情)という形成は容易である。しかし、出生、在住年数と言った要因は含まれず現時点での住民個人の心理的、社会的嗜好を充足する限りにおいてである。また、排他主義的傾向が見られる。そして、計画的地域としての色彩が濃い。
欠点
- 黒人の侵入に伴う経済的な敗退による中産階級の白人のつまるところ敗残者であること。
- 中心都市での失望から、郊外出築いたサバービアが多分に中産階級な神話を幻想の域から出ることがないこと。
- 同質であるが故に生活様式や価値観の極度の画一主義、同調、標準主義による疎外が起こり易い。
- 緑と太陽・・・等の環境及び理想は、その中産階級には「安定」を意味するものだが、若い世代に人々には「社会的不適応者」の養成機関に成りかねない。
スラムサバービアと対照をなし、
- 貧困
- 老朽的住居
- 過密
- 下層住民の集中
- マイノリティグループが集中
- 低学歴住民の集中
- 社会保障手当者
- 地域内移動
- 犯罪
- 家族解体
- 立ち退き問題
- 生活サービスの劣悪
- 騒乱
- 孤独、疎外
- 不潔
- 災害
- 言語問題
- スラム的雰囲気
発展として、定住化が進み地縁的連帯性が緊密に保たれる。また、サバービアと違った住民参加は主に相互扶助の生活防衛機能が支配している。
郊外化過程における地域機能の変貌と問題郊外的悲哀黒人侵入に伴う白人の郊外部への逃避無関心層の問題日本において顕著なのが無関心層の避難所としての郊外生活は、定住の根を下ろすという心構えを有していないため、地域社会に対する帰属意識が極めて希薄である。住民間の緊張生活環境の相対的な劣悪さが既存の地域社会に新設の団地が積み合わさるという重層的構造を示している。この構造が住民間の緊張、軋轢、葛藤などの問題にも移し替えられる。
公害の問題現段階地域生活を不快、不安なものとし、その程度が悪化すれば急性又は慢性の健康障害を引き起こし、また、災害事件の要因ともなる。初期工場公害として、当然その被害者も工場労働者に限られていた。郊外への無計画な工場なり、住宅のスプロール化がこの公害を生活妨害問題として拡大再生産する方途につながっている。
感想
この病理も又、自分に無関係の物であり、その対象も外国に向けられており日本に絡めているのは限りなく少なく、漠然としか理解をすることしかできなかった。詰まるところが、その地域の病理というのはそうした病理を有した人々が群れをなし、地域機能がまず病理に陥り、それが地域広範を犯し、地域そのものが病理に包まれるという仕組みになっているようである。元を正せば、人にその責任があるということになる。そしてそれは、そうした経済的立場や社会的立場に追い込んだ国にも責任がなきにしろあらずと言ったところか。だがこの病理を国に求めるのは些か無理がある。まず、国においてあぶれものの出ない国というのは皆無に等しく、それは必然と言っても過言でない。しかし、そうした人々を少なくすることも可能である。よって、国としては、そうした人々をできるだけ少なくするというのがその責任である。よって、こうした人々の責任は当人にのみ責任があることになる。しかし、こうした人々を責めることはできない。そして、軽蔑や攻撃的な感情をもつことは避けるべきである。差別はそうした人々を脅かすだけでなく、増やすだけでなく、彼らにおける暴動、そして病理の悪化に加速度を付ける契機となる。そして、この知識から得られる物は単に病理の形態にのみらず、そこに生きる人々への理解であり、救済であることである。それにはさらなる理解と知識が必要である。職業と労働の病理一般に労働や職業生活を通じ、それにかにょするひとが主観的に苦痛や不満を感じたり、また、その結果客観的に見てその生活が破壊され、不満に陥ったりするならば大きな問題である。
労働の病理
- 現代社会において、文化的最低限度の生活をも保障できないのに生活手段としての労働や職業を存続できないような経済組織や体制
- 貧しい生活維持のための労働と職業
1が最も本質的な原因としての病理であり、階層においても貧困を再生産する。貧困は量的な側面から完全失業者や低所得の職業層を見るだけでなく、その尺度はもっと質的な所へ向かなければならない。それは、「生活危機の深浅」や「生活の不安」である。
職業における病理
1・社会的、機能的、職能的偏倚露天商人など社会的に多少とも役だつ職業であり、人々が嫌々ながらしかたなしに従事するもの。
2・反社会的、逆機能的、職能的偏倚社会的に役立たないだけでなく、逆に有害でしかも人々が最初から喜んで従事しない職業。
基本的にその職業を通じて、生活の維持やそこにおける人間に文化的な関心が満たされていないとするならばその状態は明らかに職業生活における病理である。職業はその生計の維持を目指す人間の活動であると共に他の社会的、文化的諸要素を内包する。
- 人間がその能力と境遇に応じて、
- その社会的役割を分担、遂行し、
- 社会敵地位や権力を確保することによって、満足を求め、
- 更には、その社会的な参加を得ることを通じて、自分自身の欲求の充足を得られるものである。
- 又同時に、威光、名誉を追及する。
疎外された労働労働から得られる満足度について、それは現在の社会組織内のほかの労働によって得られる満足度を相対的に比較できるだけである。賃金労働者は、職人気質の人々と異なり労働における主体性、価値の創造、技能の発展や楽しみを積極的に見いだせず、客観的には人間の自己疎外及び社会疎外が極端にまで達しているかのようである。
疎外された労働の形態について
- 対象の疎外労働は労働者によって「外的なもの」であり、人間の「本質に属するものでない」事から疎外となる。
- 労働の疎外労働がその日とにとって外的なものであれば、人は自分を否定し、不幸を感じ、心身共に荒廃させる。そして、自己犠牲であり、強制労働でしかないといつしか思い自己の疎外を見いだす。
- 類的疎外人は意識、又は、施行というお陰で欲求から自由な活動を行い生存のための行動と区別できる。しかし、それが労働によって自由な活動が抑えられ、本質が疎外を見いだす。
- 社会的疎外1〜3の帰結として、「人間から人間が疎外される」それは、3の自由行動−類的本質が疎外されることであり、機械的であること。
疎外の側面
- 労働に参与する人の主観的側面
- 疎外された労働を生む客観的条件
病理としての失業、労災、疾病失業は個人的な動機や怠慢あるいは心身上の障害によるのでなく、資本の有機的構成の変化と増大に対する相対的な過剰人口−流動、停滞、潜在的過剰人口−として成立する。失業は明らかに対象−生活手段からの労働における疎外の一面を示す。また、失業における生活の危機は就労における欲求不満の堆積と共に、その解決方法をもたず、その結果、生活目標を失い社会的にも孤立するという「アノミックな状態」をもたらす。そして、低所得者や日雇い賃金労働者はたえず、水平移動のみであり、そして社会上昇の機会もない。また、失業原因として疾病、傷害などが上げられる。これは工業化の進展に応じて拡大の傾向になる。あと、職務場の労災、職業病の現状やその結果の精神的、肉体的荒廃化の過程や状況についても留意すべき点がある。
感想
職業の病理について実際言えることはアルバイトのことくらいしか自分では言えない。なぜなら、職業はもっていないからである。正確に言うならば、学生という職業になるのだがそれはここには当て嵌まらない。とにかく、アルバイトは一つの病理を映しだしているしているのかは分からないが、とにかくそのとき、強制されていたと思ったし、何とも非生産的であると感じ、いらだちを堪えることもままならなかった。つまり、ささやかな職業の病理を味わったというべきであろう。だから、職業とは避けてとおれないものである故にその病理は深刻なものとならざるを得ない。また、それを病理と取るか、取らないかはその人の意志次第ということで、極めて相対的なものであると考える。
職場緊張職場には、
公式構造・・・分業的構造、職業段階
非公式構造・・インフォーマルな小集団、その相互関係
職場の機能経済的、コミュニケーション、リーダーシップ、成員維持・補充、福祉的、文化的機能、構造及び機能に支障や歪みが生じたとき、職場に争いや緊張が生まれる。
労働者意識
- 経営者の対する意識親経営者意識・・・帰属意識など反経営者意識・・・反感、敵意
- 労働者相互意識
職場緊張の一般形態
1・個人的原因から起こる職場緊張
- 不適応行動・・・職場規律に反したり、よく欠勤したり、協同ができないとか。身体障害や虚弱は対象に入らない。
- 個人的ミス・・・悪意はないが、時々犯すミスのために職場に非常な緊張をもたらす。(例)不注意で機械が壊れたとか上役の叱責、同僚の軽蔑などの反作用がある。
- 傷害、暴行、犯罪・・・司法の手により、取り調べを受けるために刺々しい雰囲気が生じ、気まずい関係ができる。
2・集団間に起こる職場緊張
- 職場に起こるいざこざ・・グループ内での対立、他人の中傷、誤解意見の対立、勢力争いなどの様々な原因により成立する。
- 年齢階層間における葛藤・職場集団では賃金、経営体に対する態度、争議行為などを巡って、年齢層の異なる人々の間に意見の対立や緊張が見られる。年齢差による思想の違い。
- 小集団としてのクリーク(朋友)形成の要因には利害、打算、縁故、出身地、趣味、思想、信仰など様々のものがある。それは、文化の浸透、コミュニケーション組織の維持、社会的統制、社会機能をもつ。そして、そのクリークと外のクリークとの対立は相互の緊張の大きな要因となる。
- 勤務年数の相違・古株と新顔との間に見られる緊張現象。力試しとかそういうことで、新顔に緊張を強いる。・永年勤務して職に精通したものと、その日とよりも学歴が高いという理由で、その人の上司になっているが、勤務年数が短いものとの間の緊張。
- 組織部門の対立経営と事務の対立とか、大きい組織をもった職場ではしばしば見られる所であるが、上層経営者の調整がうまく行かない所に時々緊張が見られる。
- 組合員と非組合員との対立労働争議のとき、組合員は争議に参加し、非組合員は参加できない。そして、組合員によって平常の勤務体勢が崩れて、予定が立たず、非組合員の勤務に負担がかかる。よって、労働争議が終わった後も、非組合員と組合員に緊張が生まれる。
職場緊張の特殊な形態労使関係の緊張
- 団体交渉・・労働組合の認知、賃金その他の労働条件、解雇、不利益、処分などの労使の間に団体交渉が行われる。それは、平和内に交渉が行われるときよりも、交渉がこじれて、緊張状態を呈する場合が多い。
- 解雇及び配置転換両者の性質は全く違うが、職場を動くということでは同じである。会社の必要という名の下や、経営の合理化とかなど、社会的、又は強制的解雇、又は配置転換は紛争を起こす。
- 手段には、ストライキ、サボタージュ、ピケッティング(囲い込み)工場占拠、ロックアウト(占めだし)など様々な労働争議が行われるが、これがこじれて来るとストライキ破りが出たり、暴力団が介入したり、組合が分裂したりして、収集困難になる。
- 産業事故など大規模な事故のことで、そうなれば経営者に対する不信感が生じ、安全に仕事ができるため、就労拒否や傷害補償などで労使関係がこじれ、非常に緊張する。
- 技術の変化職場をオート化して、人員を縮小すると老齢者、女子職員、不適応者などが整理の対象とされ、このような動きを巡って、また、労使間の緊張が起こって来る。
感想
職場緊張は、大人になってから起こるものとは限らない。それは、人が集団を作って生きて行く段階にもう起こり得ることである。幼稚園の中で、小学校の中で、その職場緊張は既に知見している。いじめ、先生の叱責、受験等は、職場緊張とは言えないのだろうか。あるルールの中で人間は生きて行くことを強要させられる。感受性の強い小さいときほど、余りにそのルールは脅威なこととして、少なからず脅えることがある。職場緊張は上記のような単純で簡単なものではない。そこには、小さいときからの集団として生きて来た術の凝集されたもので有り、職場緊張はその悪しきめんとして根強い問題として残っている。
経営の病理
経営の病理原因資本主義体制にある利潤追求、私有財産制、自由競争からくる様々の社会病理の弊害である。
1・制度にあった健全な経営無くしては資本社会に生き残れない。
2・技術革新に応じた経営の改善が必要である。1・2・を果し得ないところに病理が発生する。
- 不健全な経営:赤字経営、給料の遅配、欠配、粉飾決算など支給に支障が起こり、従業員の不満が増大し、労働争議が起こる。無理をして金を絞り出そうとする。
- 倒産:不健全な経営の行き着くところは、倒産である。多くの従業員が被害を受け、解雇され、路頭に迷うものが出たり、下請け会社、関連産業に被害が及ぶ。
- 婦人労働:低劣な労働条件、低賃金、男子との賃金格差、男子の補助的労働、など婦人の能力への偏見を被っている。女子は男子よりも仕事の能力が劣り、まじめに仕事をやらず、職場の花にすぎないという偏見が今なお生きている。
- 児童労働:昼間の中学に行けず、夜間の中学で教育を受けている者が、小・零細企業で努め、その労働に依存する経営は、病理である。今だ長時間労働、悪い労働条件などが有る。
- 苦汗労働:この類の労働は著しく減ったが、家内工業、港湾荷役作業など今でもそれは生き続けている。
- 産業公害:営利に走って、土地の住民やその他の事務所にまでも迷惑や打撃を与えて顧みない経営の在り方は、正に現代的意味の経営の病理である。
経営体の病理
- 労働移動移動(退職、転職、欠員の補充)が激しいのは拙劣な労務管理や経営体内の派閥争いなどのように経営体の病理が伏在している。
- 欠勤欠勤率の多い職場のこと。個人的、公的なものの欠勤、それらを含めて慢性的、又は、常習的欠勤や集団的欠勤は従業員のチームワークを破壊し、モラールを低下させ、ひいては、経営体の活動に支障をきたすことになる。
- 疲労不純な空気、バランスを失った食糧配分、仕事へ固定した注意の困難性、外的影響の狂った効果、単調な職業など。経営体の病理になるのはオートメーションが進み、機械化、職場の整備が進んでいる今日、労働環境の整備を怠っているために疲労を感じるところにある。
- 職業病要因・空気の状態、作業時間、食物・飲酒、貧血症、人種的要因、性的要因、年齢差、個人的感受性。職業病にかかるものが多く出ることは、経営体の衛生管理や作業管理に大きな過失と怠慢がある。
- 単調な労働技術的分業の生み出すものは、単調な労働であり、それは自分の能力に懐疑的になり、作業の死ぬほどの退屈さ、創造性の欠如、年齢差の無視、熟練度の無視、などに苦しみを感じる。管理者は、合理的な配分転換で救済するなど心がけることである。
- 精神衛生上の諸問題個人的な精神的な病理は仕事の能率が阻害され、まとまりが非常に悪くなる。
- 前近代的労務管理現代的な経営管理に比べ、低賃金・長時間労働などはその経営は病理である。
- 労働における人間疎外人間が機械のために阻害されること。かくして、労働者は職場組織、経済組織の一環として組み込まれ、人間の仕事の喜びなどを味わう事なく職場生活を続けて行く。回復のために様々な連帯性が要望される。
まとめ
自由競争の原理を取り上げてみてもそれは最強者の貫徹であり、利潤追求は利潤配分のために争いが起こる。そして、経営の病理は資本主義制度からのみ生じるのでなく、人間の性質や組織体にも根差している。
官僚制の病理
社会学における官僚制とは、組織の大規模な公式組織体に典型的な発達しているところの
- 管理の様式ないしは管理組織の原理
- 管理の機能を遂行する人々組織の大規模化は大掛かりな組織の能力向上と形式化を必要とする。つまり、機能的な集団構造として発達する傾向があるし、リーダーにより計画的に作り出される訳である。
第2の点は官僚制の機能と逆機能である。官僚組織は合理主義という建前に従っているべきであるが、上記の1・による逆機能は、能率の向上と実現に貢献する機能的な過程ばかりでなく、集団目標以外の価値のあるもの・・・人間性などを権柄づくで損なう。
・逆機能過程と官僚的性格公務員を中心に展開される。
- 規則に拘束された運営
- 権限の原則
- 職位と機関のヒエラルヒーの原則
- 専門的知識と熟練
- 職位私有の禁止、公私の区別
- 本職性、定額貨幣給、身分の保障
- 年功または功労による栄進の制度
- 文書中心主義
- 没入閣的、没主観的
*ヒエラルヒー・・・ピラミッド型の身分序列による階層組織
*クライエント・・・国民
公務職は行政上の公的な役割を通して国民全体に奉仕すべきものであることが官僚機構の目標であり、建前である。その逆機能が2つある。
- 民主性の大衆化はその官僚制の構造と機能に変化をもたらす。まずその権力が増大する。そしてそれを執行する公務員は、方の執行者であるのみならず、行政のエキスパートであらねばならない。そしてこれらの機構は、官僚制のトップの意志決定に直接の政治的な影響を与える。つまりトップが官僚制の助けなしに政策決定ができないことや政治屋の進出と相俟って、トップ官僚生徒国民の間の民主的な政治過程の循環に阻害ができる。
- 1・のような官僚制内部の病理的な諸形態は「国民のための行政」を歪め、国民の生活活動を権力によって阻害する。
1・2・は、民主政治が官僚政治に変質する危険がある。行政官僚制は「国民の、国民のための政治」という目標実現に従属し、これに奉仕する行政、手段であるので、官僚政治は手段と目標の倒錯、管理の自己目的かによって、官僚政治の価値体系と利害関心が先行することによって、「官僚の、官僚による、官僚のための政治」になる。それは又、機能的には官僚にとって誠に好都合な、しかしながら「国民のための行政」には不都合な機能を果す。
その逆機能の過程
- 官僚の環境に対する適応は内部者と部外者や民間人、又は上部と下部に対して違ったパターンを示す。
- 活動の遂行においては、メクラ判を含めたハンコ制度やその他の無責任、決定遅延について、国民の側の迷惑などきにしない無関心、税金の浪費などの国損についての無感覚。
- 内部関係については、馴れ合いのほかに、縄張り争いの緊張関係と派閥の結合関係のダイナミックな展開
- 動機付の面では、全般的に低モラール、保身の事なかれ主義など
- 規範維持の面では、同調過剰と儀式主義的な行動、逸脱行動としては、汚職と役得行動など
アノミーとしての汚職汚職は権力から派生する。そして、歴史的には古い。しかし近代の官僚制が法による支配により、汚職の発生を有効に発見できる。しかし、汚職は後を立たない。その不正行為は、会計検査、行政監察によって発見されても「部内」で寛大な行政処分で終わったり、汚職に発展する潜在的可能性をもつ「不当経理」が多数ある。社会病理的なとらえかたとしては、汚職とは官僚制上の公的な職権や行政手段、管理資源の私的な利用ないしは私物化によって、「不正な」報酬を獲得する官僚の行動である。本来は、職務権限と公金などの行政手段を規則に準拠しながら活動のために行使し、その遂行に対する定額の棒給のみである。そして、不正は「不正な」役割行動は「不正な」準拠枠に則り、「不正な」報酬によって動機付けられる。
- つまみぐい−公金や公有物の横領
- 利権(官僚と私的に結託することで得られる排他的な利益)を巡る職権の私的行使による官僚側の収賄行為、贈賄側のクライエントの関係で起こる。