朝松健

この名前を聞いて分かる人は、あんまりいないと思うけど、本職は、ホラー作家です。しかし、私が好んで読んだ本は、『私闘学園』(全8巻)(ソノラマ文庫)なのです。
内容は、いわゆるジュブナイルもので、表紙などのイラストは島本和彦(逆境ナインなど)でいかにもという感じで、まぁ、いわゆる3流の高校の人たちが、どたばたとした騒動を起こすという、いかにもな設定なのですが、
(しかも、プロレスを主題にした格闘ギャグ)ものすごく、テンションが高いのです。文体も多彩で、描写も細かく、前編、コアな笑いに包まれていています。
いわゆるナンセンス小説の中では、かなりのレベルにあると思います。ホラータッチもギャグに、権威もギャグに、特撮的描写もあり、活劇的なギャグもあり、でも、全編に活気あふれる学園生活が流れていて。
何度読んでもすれない笑いと味のある小説であると思います。いま、あまり置いていない書店が多いと思いますが、探せば、結構転がっています。出版されてから、
かれこれ、10年以上たっているのですが、未だに、置いてあるというのは、ジュブナイル小説にあって、かなりヒットしている証拠ではないでしょうか。
作者には不本意なことかもしれませんが、この作品をもって、名前が残っていくような気がします。
古本などで見つけて、読んでみてください。はまる人ははまります。

朝松健は、このごろは、時代劇的なホラーものを中心に執筆をしていて、(廣済堂文庫)の「異形コレクションシリーズ;井上雅彦監修」などに載せていたりしています。
時代考証の凝った、ホラー(あり得ない世界)の構築が、不思議な世界で読者を誘います。ホラーというと、あまりいい印象を持たない人や食わず嫌いな感じの人がいると思いますが、
ある程度の年齢になると、現実と空想の分別がついてしまい、残念ながら、怖いという感じはなくなり、ホラーや怪奇という世界を楽しむというスタンスに重きが置かれるのではないかと思います。
だから、その構築された世界を楽しむという意味で、冒険も恋愛小説もあらゆる小説のその世界は同一であるということがいえると思います。
よって、ホラー小説の優れた部分は、その幻想さであると思います。決して明るくはないのですが、その暗さが読者を怪しい世界に誘ってくれるのです。
・・・話がそれてしまいましたが、
最近では、早川文庫から『邪神帝国』が出ています。ナチズムとクトゥルー神話の融合というコアな組み合わせの小説です。
クトゥルー神話は、ラグクラフトが書き起こした怪奇小説の世界ですが、その世界があまりに豊かなものであるが故に、いろんな人が援用しています。
ラグクラフトの全集は創元社文庫として出されたものがわりあいに手に入れ安いと思います。
菊池秀行(メフィストシリーズや新宿ものが有名)などが日本では有名ですが、様々なホラー、伝奇作家はラグクラフトの影響を受けているといって過言ではないのでしょうか。
実際、なにも知らない人がラグクラフトの小説を読むとなるとかなり骨の折れる作業であると思います。が、
ホラー小説に興味を持っている人は、一度読んでみる価値はあると思います。
ラグクラフトの神話についての概説は様々出ていますが、その雰囲気を知ってもらうには、『秘神〜闇の祝祭者たち』(アスペクトノベル)での、解説から読んでみるのもいいかもしれません。
この本の内容自体もなかなかおもしろいのですが・・・。

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