2024.5

真に子どもの声を聴く，その先にある社会

「こどもまんなか」社会は「子どもの権利」を真ん中に置いた社会（大谷美紀子）

1989年に国連で子どもの権利条約について採択されたが，日本が条約に批准したのは4年後，世界で158番目であった．また当初，この条約は乳幼児の栄養失調とか感染症など途上国や紛争国のこどものためというイメージが強かった．また子どもの権利に対して，子どもの自己主張を増長するという特に学校現場における懸念が，条約の批准に時間がかかったと言われる．実際の教科書でも権利よりも途上国の子どもたちのものであるかのように記述されている．
それから30年，日本は権利委員会への報告書をすでに4回行っている．日本では，過度に競争的な学校教育，虐待，体罰，いじめ，自殺など条約の実施が不十分であるとして多数の勧告を行ってきている．
日本では今でも子どもの権利条約を知らない子どもや大人も多い．そもそも日本では権利と言う言葉に対して拒否反応を示す人が少なくない．権利という言葉を使うと，自己主張が強いとか，面倒な議論を持ち出す人という見方をされやすい．
むしろ日本の条約批准から30年，子ども基本法が2023年に施行され，子ども家庭庁が発足した今だからこそ，子どもの権利に基づいて正確な理解を広めることがこどもまんなか社会を実現するために必要なことであると考える．
子どもの権利を守るのは国の義務である．子どもの権利から子どもに関する課題を扱うことは，子どもは一人の人間であり，権利の主体であると認めることである．また子どもに権利を教えることは，自分に権利があり時分は大切な存在なんだ，幸せになる権利があるんだということを知ることになる．それを大人も知ることで他者を尊重し，社会の一員として育てていくことになる．
社会にはびこるネットでの言葉の暴力，いじめが放置されている現状など，子どもの権利のみならず権利が守られている社会とは何かが問われている．子どもの声・意見を聞き，反映していくことが求められる．

子どもの主体的な活動を育む保育・教育とは(無藤隆）

子どもが主体的であろうとすることを大事にし，その主体的であろうとするその動きを尊重し，引き出し，拡大していくこと．それが子どもの権利の本源であり，保育所などでその権利を子ども自ら発揮できるように援助することである．
ウェルビーングとは幸せで充実していること．学び成長することも含まれている．それは過去を受け，現在を生き，未来へと希望を持っていく存在として，そのポテンシャリティを少しでも実現して生きようとする．ウェルビーングはその実現を少しでも社会として助けようとすることかなうものである．
保育のこととか子どもの発達段階などの説明．
子どもの遊びの中で声にならない声をいかに拾っていくか．

座談会子どもの声を聴くことで見えてきたこと

月刊福祉でしばらく（元）被虐待児に対するインタビューをして，当事者の声を届けていたことについて．虐待の世代間連鎖という言葉によって，被虐待児が結婚すれば自分も虐待してしまうと思い込んでしまうことについて言及．言葉の使い方である．
インタビューの中で当事者から一番批判を受けていたのが一時保護所であった．施設等への批判も多かったが，学校もかなり放置している印象を受けた．
また施設出身者と言うことで就職を拒否されたり，養護施設の職員が忙しすぎて声をかけづらいなど今もあまり変わっていないと思った．その一方で信頼できる大人に出会って変化した人はたくさんいる．
自分の思いを言語化できない子どもの背景も多様で，非常に逆境的な環境で育ったが故に言語化する習慣がない子どももいる．そういった子どもたちの意見形成支援をどうするかは永遠の課題と言える．

レポート

学校現場で求められる子どもの声を聴くこと（SSW)

2023年，不登校児童生徒数が増加し続けていることなどの状況を受け，文科省は「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策（COCOLOプラン）」をとりまとめている．多様化な学びを通じてキャリアを途切れさせないようにすることだが，果たしてそれが可能なのかどうかなど．
子どもの声を聴き，どう措置し，支援するのか(児童相談所）

2024年改正児童福祉法において子どもの権利擁護のための新たな仕組みとして，児童相談所が行う措置等の決定時における子どもの「意見聴取など措置」が規定されたこと．
声を聴くことが難しい子ども(障害児)の思いをどうくみ取るか(多機能型拠点施設）
瞋恚自分の思いを言えるように伴走する（NPO）

参考文献