2022.3
ジェンダーの今と福祉に出来ること
日本のジェンダー格差の現状と課題(大沢真知子)
- 日本はジェンダーギャップ指数が156国中120位と最低レベルらしい.日本は男は仕事,女は家庭という性別役割分業がいまだに根強いからかも知れない.そのため,意識の上でも働き方にしても,ワークライフバランスが取りにくい状態になっている.
- またいまだに配偶者控除制度なども残り続けており,また年金制度においても年収130万以下であれば基礎年金がもらえる仕組みがあり,この制度が助成の働き方に影響を与えていると言うこと.これらをいわゆるジェンダー格差という.
- しかし,共稼ぎで無ければ家計が回らない社会になっている.若い世代の男性正職員の所得が伸びていない.しかし教育費などは上昇しているからである.そして性別分業やジェンダー格差によってシングルマザーは貧困状態に置かれている.性別役割分業(ジェンダー構造)によって男性の雇用を守るため,女性たちが安い賃金で働き,雇用調整の安全弁として真っ先に解雇されるという日本的雇用システムが原因.
- この日本的雇用システムは男性の正規雇用,非正規雇用でも起こっており社会の分断が生じている.
- しかし,そうした改善が進まないのは,労組が正規雇用中心であり,経団連などの既得権を持つ人々が男性優位の思想にあるからである.
- 女性が子育てなどで離職する傾向にあることは言説として流布されているが,確かにアメリカよりも女性の離職率は高いが,その理由は子育てとかではなく,仕事への不満やキャリアの先が見えないなど社会のあり方に由来するという調査結果がある.キャリア形成も男性よりも劣位に置かれている.
- また中核労働者を守るために存在する非正規労働者の広がりなども格差を助長していると言える.
参考文献
インタビュー ジェンダー規範がもたらす生きづらさ
- NHKではーとねっとTV などに出ているアナウンサーが司会をしている.その方も30年からジェンダー格差を感じてはいるけれど変わる気配が無い.上野千鶴子はこの格差を日本における永久凍土と表現していた.
- 福祉職は男性職員は現場に少ないが,意思決定する経営者や管理職は男性が多く,セクハラ,パワハラなどジェンダーに基づいた問題が絶えず起きている.特にカスハラが問題であるが,現場に女性しかいない場合もあり変更が利かない.もしくは,カスハラされるのもそういうことを含めての仕事という規範を働く人にも内面化されている.
- ジェンダー問題に詳しい弁護士から話を聞いている.その弁護士の興味は,性暴力の問題であったため,その需要あるのがDVによる離婚問題に多く関わり,そうした事件を通じて性差別構造について問題意識を深めていくようになったとのこと.
- 離婚問題は社会全体のマクロレベルでの性差構造が一組のカップルのミクロ単位に凝縮する事件である.
- 弁護士さんは女性の経済力を奪うケア労働を体感している.
- 先進国では1970年からジェンダー格差解消の取り組みが行われているが,日本では社会的弱者に対する平等の推進や地位向上などに反発する動きーバッククラッシュがとても強い.その一因に日本の高度経済成長期にジェンダー不平等な方法で経済的な成功を収めたという体験がある.
- 現在のジェンダー不平等の状態でよしとするような社会はもうオワコンである.経済的な合理性も無い.既得権を握っている一部の男性が手放さないというのが一番の問題.
- 今の世代は表面的にジェンダー平等を理解していてもふに落ちていない人が多いので,社会を変えていくのは,これからの世代だと思う.それは今の世代は染みついたジェンダー格差の意識をアンインストールしないといけないからである.
- 人権問題に関わる人でも時々ミソジニー(女性蔑視)をしてしまう人がいる.それだけ根深い問題でもある.
- 福祉の仕事はケア労働として低く抑えられている.もっと声を上げて良いとのこと.
参考文献
+ [これからの男の子たちへ](http://www.otsukishoten.co.jp/book/b516466.html) - 株式会社 大月書店 憲法と同い年
男性の育児に関する困難から見えるジェンダー(安藤哲也)
- コロナ禍で在宅勤務になった男性が家事や育児への関与度が増えた結果,ワークライフバランスが取りやすくなったと言われるが,やる男とやらない男,#ワンオペ育児,#取るだけ育休とするやゆもある.
- 2021年に育児介護休業法改正されている.ケア休暇の取得促進されるようになったが,そもそも2010年頃にもイクメンなど言葉があるように改正があった.しかし,それから10年経ち,取得可能期間や給付金額など世界でも最高水準であるも,定着していない.
- なぜ取れないのか…それは先にまとめたようなジェンダーバイアスの逆バージョンである.職場に迷惑がかかるとかキャリアに傷が付くなど….
- この論者はそうした育児休暇を取ることのメリットについて啓蒙している団体.また組織への啓蒙活動も兼ねており,企業側にも積極的に育児休暇を促進することもメリットがあることを伝えている.
- そのためには休暇を取りづらい雰囲気を作っている管理職の意識改革が必要である.
- 男性が育休を希望することは単なる個人のわがままやぜいたくでは無い.男性の家庭進出は,働き方改革,ジェンダー平等,児童虐待,DV予防など社会が解決しないといけない問題を改善していくきっかけになる.
参考サイト
+ [Fathering Japan](https://fathering.jp/about/massage.html)〜論者が主催する会社のサイト
+ [平成30年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための 調査研究事業 報告書](https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000534372.pdf)
その他,育休を取りやすくするための組織の取り組みと自身がLGBTQの方が介護でジェンダー差別を受けたことがあることについてのレポートがある.