2022.2
孤独・孤立につながり続ける
てい談 これからの支援のあり方—つながり続けることの価値
- 当事者が語ることで新しいつながりが生まれる.浦河べてるの家の向谷地氏などの当事者研究についての紹介.地域移行の中で精神障害者が住める場所を作ってきた人.
- シングルマザーによってネグレクトされていたり孤立している子どもへの対応を通じて家族自体のサポートをしている団体の人の話.コロナのおかげで逆に孤立している家庭への介入が出来やすくなっていたとか.また以前にこの団体につながっていた子どもが大人になって,困窮したときに相談しに来たこととか.
- 医療の補完をすることが福祉では無く,その人が暮らしている場に飛び込んで関係性を作り,暮らしを作っていく中にこそ,専門性があるのでは無いのか.人々の生きる現場に留まりつつ,その中にある惨めな現実も含めて否定せず,ソレを乗り越えて生き抜く力の中にこそあると実感している.
- 地域に障害者を理解してもらうというのでは無く,当事者が地域の中で右往左往する姿をあえてさらすことで,そこで生々しい出会いがあると思っている.
- 孤独・孤立の対策を施策化しているところがあるが,環境を整えていくことで当事者が自発的に考えるようになり,自立につながると思う.対象化するよりも地域に当事者の思いが伝わるようなお手伝いをする方が良いのかもしれない.ひとりでいてはいけないということが規範化してスティグマを作って行くような気がする.
- 孤立している家庭の取り組みはきっかけであり,そこから地域のみんなで子育てをする仕組みにつなげて行きたい.
- つながり続けることを前提に,つながりを断ることも当事者に保障することが大事.つながり支援がさらに本人を孤独・孤立に追いやるという副作用も考えておくことが必要.
- 強固なつながりがとても息苦しいものになる危うさもある.
孤独・孤立状態にある人への伴走型支援(空閑浩人)
- コロナによって感染者を差別したり,孤立に追いやるなど,人が生きる基盤となる他者や社会とのつながりがますます失われ,より脆弱化していることを示している.
- 孤独・孤立状態の人々が助けてと言わないのは,助けを求めようにも迷惑だと避けられ,あるいは偏見によって拒まれてきた経験がある.自己責任や自助努力が強いられる社会において,他者からの否定的なまなざしや差別や排除に苦しみ,社会への信頼をなくしているという経緯.
- その一方で,支援の対象として認識されないままに,見守りなどの活動の対象から漏れる人々の存在もある.同居者がいても孤立死する人がいる.
- 人間の生の肯定と豊かさのために他者によって認められること,居場所があること.そのためにソーシャルワーカーなどはそうした場の創出や姿勢が求められる.
- 経済的困窮の深刻化と同時に社会的孤立が進行する現代社会においては,問題解決型支援と伴走型支援は支援の両輪として実施される必要がある.当事者とその状況に対する定義件は常に専門職の側にあったと言う言葉や支援とはどうしても暴力性を孕んでしまうものという指摘を支援者は真摯に受け止めないといけない.
- 人が生きることを諦めないソーシャルワークを目指すこと.とにかく生きる.行き続けられるようにすることは基本的なこと.
社会的孤立の動向と問題の所在(斉藤雅茂)
- 孤立は客観的な状況であり,孤独とは主観的な認識や感情を指す.社会的孤立とはゴミ屋敷や社会的サービスの利用を拒否するという極端な物だけでは無く,ちょっとした孤立でも無視できないことがある.高齢者の人付き合いの少なさが人師匠発症のリスクを上げることなど.
- 孤立死は様々な要因と言うよりも,サービス拒否と孤立しがちな状態のみで起こりやすいことが調査によって明らかにされている.
- 孤立は独居だけでは無く,8050や9060問題のように世帯全体が社会的に孤立したケースも認識されつつある.高齢者だけは無く,若年層や壮年層でも一定数いる.
- 世間のしがらみ(柵)というように人とのつながりは束縛や煩わしさから自発的な孤立と呼ぶ存在がしばしば指摘されている.孤立や孤独を肯定的に評価したように見える格言や啓蒙書も少なくない.しかし,その大半は,時にはひとりでいる時間を作り,内省することの大切さを指摘したものであり,適度な人間関係を有すること否定しているわけでは無い.
- ハイリスクな人々にターゲッテイングする戦略では限界もある.ハイリスク/アプローチがが機能するのはリスクを有する人が比較的少数者に限られるなど一定の条件下に限られる.社会的孤立の発生割合の高さを考慮すると,地域づくり・まちづくりを通じた人々がつながりやすい地域社会を促進するという視点も検討する余地がある.
参考文献
孤立高齢者におけるソーシャルサポートの利用可能性と心理的健康 同居者の有無と性別による差異
社会的孤立の実態・要因等に関する調査分析等研究事業 報告書
社会福祉調査としての高齢者孤立研究の意義と課題