2019.10
子ども・子育て支援の今を探る
座談会 子ども・子育て支援制度から5年目を迎え「保育」を考える
- 5年目の見直しについて.新制度では,保育・教育・地域の子育て支援についての需給計画をしめした子ども・子育て支援事業計画の策定を全ての市町村に義務づけている.
- 優先順位や事業の洗い出しやあり方などを含めて見直しをしている.
- 現在,場所によっては例えば未就学児童などは減少しているところもあり,定員割れをおこしている.そうしたところも見直していかないといけない.その逆に人口急増地帯もあるわけで,また小規模保育をすすめるところとできないところもある.
- とはいえ,待機児童や子育て家庭による社会的孤立などの問題はまだまだ解決してはいない.支援計画とはいえ,親子のためでは無く,保育所をいくつ作るかとか供給側主体の議論に陥りがちである.
- 保育士の確保,幼保一体化,キャリアパス制度,処遇改善,企業主導型保育事業の創設など,保育の量の拡大と質の確保,向上などの取り組みがさまざまされてきた.その中でも箱は増えたし,保育者の囲い込みなども行われたが,やはり給与の高さから都市部に保育士が流れ,人員の確保が難しい.集団離職なども起きたりと事業の継続が難しい場合がある.
- そうした中,看護師が巡回して指導するとか事業者同士で集まって情報交換をするとか,連絡会を作るなどで質の向上を図っている取り組みが紹介される.
- 質より量が優先された結果,園庭の無い保育園があったり,離職が多かったりといろいろと問題が出ている.また,モデル事業でも現状保育所が増えているのに幼稚園教育の枠組みとしてアドバイスをしたり,虐待が増えているのに保育士の養成からソーシャルワークの科目が削除されたりと整合性がとれていない.
- こうしたさまざまな課題について,政策に反映されるように下から上に意見を出していかないといけないが,ボトムアップの流れがない.自治体主体であっても,多様な問題をどう集約するのかの機能が無い.
- 幼児教育,保育の無償化が10月から始まり,新制度は新たなステージに入ってくる.
- ベビーブーマーが一斉に定年退職を迎え,後期高齢者になろうかという状況の中で,地域でクレームが増えてきているというのは地域共生に向けた課題である.
- 無償化に関連して,3歳児の保育料の問題や公定価格の算定方式の検討,食材寮費の取り扱いへの対応がある.また,無償化はどうして行われたのか.本来はこの政策を決めた政府が発信しないといけないはず.保育を見ていくことも大事だが,それを取り巻く社会のありようもしっかりと見ていかないといけない.第二期計画も保育中心になっていくが,第一期の混乱を整理しながら,新しい時代の流れを見極めていく先見性も必要.
