2018.8
地域における権利擁護-成年後見にみるこれからの展開
成年後見制度利用促進法と基本計画のポイント
- 成年後見人制度は認知症などによって十分な判断能力が無い中での権利擁護の仕組みであるが,現在十分に活用されているとは言えない.そうした中,成年後見制度利用促進法ができる.その上で,利用促進基本計画を作ることになった.
- 成年後見人制度の理念…ノーマライゼーションとか自己決定の尊重などの重視や地域の需要に対応した利用促進,また利用に関する体制の整備を計画として位置づけている.
- 実際には,500万人はいるといわれる認知症の患者のうち,成年後見制度を使っているのは21万人強であり,利用形態としては預貯金の解約などが最も多い.また,後見による本人の財産の不正使用を防ぐという観点から,親族よりも法律専門家などの第三者がなるケースが多いが,本人の意思決定支援や身上保護などの福祉的な視点に乏しい運用が為され,本人がメリットを感じることができないことがあるとの指摘がある.
- その意味でも,計画では理念に立ち返った,あるいは身上の保護の重視の観点での運用が求められている.
- 連携では,福祉などの関係者と後見人などがチームになって本人を見守る体制,協議会などを設置して個別のチームを支援する仕組み,地域連携ネットワークの整備,運営の中核機関の設置などを提示している.
- 「地域における成年後見制度利用促進に向けた体制整備のための手引き」なるモノがある.
- 地域連携を行う中核機関の運営に関するネットワークのコーディネートに要する費用については2018年度より市町村に対して地方交付税措置が為された.
地域における権利擁護の取り組みと今後の展望(中島修)
- 利用促進法の背景には,成年後見制度の利用が進んでいない…他に,障害者権利条約とか権利擁護支援全体の見直しがされていたからである.また世界的にも後見制度はあまり活用されていない.そして,日本においては,成年後見開始においては,本人の権利制限という側面があるにもかかわらず,本人面接と鑑定があまりされていないが,それはするべきであるとする指摘を行っている.
- 後見類型ではなく,本人が判断能力を有する任意後見や補助などの段階から利用していく,権利擁護支援の地域連携のネットワークの構築が求められている.しかし,家裁による後見監督責任は後見人の数が増えるに従ってキツイ状況にある.
- 「成年後見の事務の円滑化を図るための民法および家事事件手続法の一部を改正する法律」が2016年に成立している.死後事務の内容の明確化などもされている.
- 今後爆発的に増える孤立(単独世帯)高齢者,認知症の高齢者などへの権利擁護支援として現在の成年後見制度の利用者数では到底できない話である.また大都市では,社会福祉士や司法書士,弁護士などがたくさんいて受任できるが,小規模の地方では弁護士がいなかったり,専門職の確保がかなり難しい.市民後見とか法人後見の利用率も低いし.その上,専門職が少ないところほど高齢化とか必要とする状況にある.その体制整備はかなり急務である.
- 市民後見人養成は社協を主体として行うべきであり,地域福祉の観点からも市民がこうした権利擁護に関わることは非常に有意義である.また社協は日常生活自立支援事業にも取り組んでいるが,現場では利用者ニーズの急増に対応した財源面での限界を迎えている.
- 成年後見制度利用促進における社協の取り組みと地域における権利擁護体制の構築に向けた基本的な方策