2018.5
ソーシャルワークの新たな展開
ソーシャルワークをめぐる動向と展望(上野谷加代子)
- 社会福祉,保健,看護などのヒューマンサービスに関わる学は,個人が持つ価値観や規範に基づいて専門職を媒介として実践する学だけに.その時々の社会,経済,政治状況の力動的変化に影響を受けやすく,将来にわたって専門職としての基礎知識や方法のありようも変化せざるを得ない.
- ミクロ,メゾ,マクロソーシャルワークへの連続的,循環的関心の減少は,例えば大きな環境災害への対応などの教育の遅れをもたらしている.
- 現状として,一般住民などもナチュラルソーシャルワーカーとして位置づけて広げようとしている傾向があるが,それはむしろ専門職の役割を過小評価し,住民への丸投げにつながり,自治体が住民への責任転嫁を招く恐れがある.
- 地域包括支援センターの地域福祉推進などの努力を見るにつけて,ソーシャルワークの居場所を見つけたという感慨深いものがある.これらの実践の共通点は
- 制度のはざま問題に先駆的に取り組む
- 多職種連携での取り組みである
- 自己資金を集める努力と就労を創りだしている
- 政策への反映を図っている
- 課題を抱える本人を真ん中に置く
- 省察的実践家として信頼関係の構築を大事にしている
- 本人,家族,地域住民と一緒に取り組む
- 福祉教育,ボランティア学習の地域展開
- それぞれ地域特有の資源や強さ,回復力,復元力を重視している.
- 地域に根ざしたソーシャルワークの実践ができる社会福祉士の養成およびカリキュラムの見直し,各団体との連携について述べている.
地域を基盤としたソーシャルワークへの期待(空閑浩人)
- 声なき貧困や社会的孤立になっている人たちへアウトリーチする必要がある.孤立している人たちは自分で声を上げようとしないのだから.
- 8050問題とは,働いていない中年の息子と高齢の親の世帯であり,中年になるまで引きこもっている問題と重なり,親子共々総合的に問題として捉えるアプローチが求められている.
- 制度が対応していないような困難な事例に対して,それでもさまざまな関係者と連携し,断らない支援が行われている.地域を基盤としたソーシャルワークとは,地域割りによる実践へ移行し,個を地域で支える援助と個を支える地域を作るという二つのアプローチを一体的に推進する点にある.個人的なことは社会,地域的なことであり,個人や家族の生活課題は地域の生活課題であるとする見方である.地域生活課題へのアプローチこそがソーシャルワークである.
- 地域力強化検討会最終とりまとめ〜地域共生社会の実現に向けた新しいステージへ〜の中にはソーシャルワークの機能として
- 制度横断的な知識
- アセスメント力
- 支援計画の策定,評価
- 関係者の連携,調整
- 資源開発が上げられている.
- ソーシャルワークはその時代の社会の中で生きる人と共に在り,さまざまな生活困難を抱える当事者が生きて,生活する状況とその現実に寄り添った物で無ければいけない.
- 最近,医療ソーシャルワークやリーガルソーシャルワークなどいわゆる○○ソーシャルワークが増える中でソーシャルワークの細分化やタコつぼ化現象が生じることが懸念される.まずはソーシャルワークの共通基盤がないと行けないし,問い直しが必要でもある.