2018.4
どうなる地域包括ケアシステム-介護・診療報酬改定から考える
(対談)2018年度介護報酬改定から見る地域包括ケアシステムの行方
- 2018年度介護報酬改定では,中重度の要介護者も含めた人たちがどこに住んでいても適切な医療,介護サービスを切れ目無く受けることができる体制の整備を目指すものとされている.診療改定報酬でも地域包括ケアシステムの構築が第一になっている.
- 現在の60歳くらいの人には介護を必要としないように予防してもらうこと,そして現在特養などに入っている中重度の高齢者は介護保険で対応するというスタンスで行うこと.そして団塊の世代の人たちが90歳とかになって,後期高齢者となっても介護保険を利用しないように済むように予防(リハビリを中心とした自立支援,重度化防止:特に生活期リハビリは活動と参加と目的はハッキリしており成果も分かりやすい)をしてもらうこと.
- 地域包括ケアシステムは,まずは医療連携がメインであること.認知症への対応の強化では,ショートステイや特定施設などへの加算がつく対応が取られている.
- リハビリの効果を得るためには,栄養と口腔ケアが伴ってなければいけないとする共通認識もできた.その一方で,ターミナル期の人たちに対して医療提供体制を整備するとより手厚く評価される方向が強化されている.
- 介護医療院の創設について,単に介護療養病床の転換先になる心配があるが,本来は住まいと地域に開かれた生活支援を医療が支えるというもの.
- 介護人材について言及しているが,業務の標準化とか本来の業務以外の仕事(雑用:周辺業務)の量が多すぎるとか.最近は医療系法人が事業社ごとに統合する地域医療連携推進法人といったものができているそうな.また,介護人材もフレキシブルにいろいろな仕事に就かせる工夫が必要だとか.
- 共生型サービスとは,障害福祉サービスを受けていた人が65歳を過ぎると介護保険給付が優先されるために,事業所を移らねばならないという,これまでの仕組みを変える必要があった.その一方で,保育と高齢者の施設を一緒に建てる地域共生の進展もある.しかし,そもそもは障害者福祉事業所と介護保険事業所の指定の基準を標準化しただけ.
- 報酬による評価のでき方としては,まず自分たちでがんばって先取りした活動をしている法人や事業所があり,その事に対して,これは良い仕組みだから報酬をつけようというのが本来の順番である.官僚の仕事は,現場を観察して,汎用性があるかないかを見極めて一般化し,言語化することである.
- 現在は,社会福祉法人が全ての地域福祉や地域に偏在する課題に対応する必要は無い.地域包括支援センターなどいろいろな機関を活用しながら,法人としてどのような貢献ができるのかを考えていけばいい.
- 地域共生社会は目的概念であり,地域包括ケアシステムは,共生社会に至るプログラムであり,工程図に当たる手段に相当する.ケアシステムは深化している.地域ケア会議などを介護保険以外でも活用するなどでより共生社会を目指す手助けになる.
- ケアマネジメントプロセスは,ケアマネだけがプランを立てるのではなくさまざまな職種の人たちがアセスメントに立ち会い,そして意見を出し合うことが重要である.
地域包括ケアシステム推進に向けて(蛯江紀雄)
- いまや我が事まるごと共生社会である.家族ではなく,地域住民が主体的に関わることが求められる.しかし,家族の困りごとを相談機関に持ち込んだりするのは「恥」とする考えを持つ人は結構いて,相談機関に結びつかないケースも少なからずいる.そのため認知症も進んでから相談するなど,予防や早期発見にはなっていない.日本のクライエントは相談すれば全て解決してもらえると思い込んで,全面依存的になりやすい.専門家の力を借りて主体的に問題を解決していこうとする態度が身についていない.→よって我が事まるごととしての社会を目指すのかも知れない.
- 広島県のある市には「五師士会」:URLというものがあり,医師会,薬剤師会,社会福祉士会などの職能団体による相談室のチームがあり,巡回していることの説明.
- 地域包括ケア体制は地域特性に見合って組み立てられないと十分に機能しない.広島県では地域包括ケア推進センターを作り,大都市型,都市型,団地型,中山間地域型,島しょ・沿岸部型に類型化し,先行している地域包括ケア体制整備の取り組みを参考例示し,地域に見合った市町のシステム作りを推進している.
- その他,人材確保のこととか,離職防止との取り組みとか…
医療から見た地域包括ケアシステム推進の課題(川淵孝一)
- 度重なる介護報酬の切り下げなどで軒並み収益は悪化,また病院経営も悪化しており,医療介護現場は迷走を続ける制度(改革)に翻弄され,国に対する普請と疲労感で満ちあふれている.このままいくと無気力感が高じて保険あってサービス無しという事態になりかねない.とても厚生省がもくろむ「インセンティブ制度」「アウトカム評価」の導入という雰囲気ではない.
- その他,全体的な改正のポイントについて述べられているけれど,高齢者福祉分野の現場から離れているので頭にまったく入ってこなかった.