2018.10
社会福祉法人制度改革後の姿をみる
鼎談(ていだん) 社会福祉法人制度改革後の状況と展望
- もとはといえば,介護や保育分野に新たに参入する民間事業者が既存の事業者と対等で公平な競争を行えるよう,社会福祉法人制度のあり方の見直しが求められたのがきっかけだった.社会福祉法人の内部留保の問題や一部の法人における経理上の不正,会計情報の不透明さが指摘され,公益性の高いはずの社会福祉法人のガバナンスはどうなっているのだという.
- ある意味官の下請け機関のようになっていたが,どれだけ自立して行えるのかが問われている.
- 評議員は必置となり定款の変更が行われた.しかし小規模の法人ではなかなかなり手がいなくて困っているというケースもある.
- 会計監査人の設置は,現在は30億または負債60億を越える法人が対象であるが,2019年からは20億または負債40億,2021年移行は,10億または負債20億に広がる予定である.しかし,社会福祉法人は粉飾決算などをする必要がなく,また監査法人のコストを考えると,必要なのかどうか.元々は行政が税金を適正に使っているのかどうかをチェックすれば良いのであって,会計監査がジャッジするのではなく,補助金の交付要綱や根拠法を知っている人がコーチすれば良いのではないか.
- 情報公表については,株式会社では株を買ってもらうために情報提供をするが,社会福祉法人は地域に理解してもらうために行う.しかし,財務諸表を出せば事足りるとか,財務諸表をちゃんと読まれるとあまり活動していないことなどが分かるなど光と影がある.
- 公益的な取り組みは何をしていいのか分からないとする法人がある.生活困窮者を地域共生社会の中で捉えるためには社会福祉法人の活動が欠かせない.2018年の社会福祉法人による地域おける公益的な取り組みの推進についてという通知があり,地域住民に場所を提供したり,ボランティアの育成も公益的な取り組みとして位置づけられ,かなり緩和されている.
- 一法人一施設だけだと地域への公益的な活動は難しい.よって,他法人が関わったり連携したりすることも良いのではないか.2018年に小規模法人のネットワーク化による協働推進事業を創設している.
- 社会福祉法人が行政の下請け機関になってしまった結果,失われたのが新しいニーズに応えていく変革性,総合性である.目の前の利用者を大事にしながらも地域住民や地域の課題とも向き合っていく視点が必要である.
- 社協との連携では,社協は住民を見ていること,計画を作成していること.行政との連携が図られていること.社会福祉法人を社協が束ねて活動を行うのも良いのかも知れない.
