2017.8
住まうことを支える

「住宅確保要配慮者」の現状と問題の解き方(岡田真理子)
住宅確保要配慮者とは,低額所得者,被災者,高齢者,障害者,18歳未満の子どもを養育しているもの,その他となり,その他にはホームレス,引き揚げ者,犯罪被害者,DV被害者などとなっている.生活困窮者はそれまで経済的な困窮だけを主眼にしていたが,困窮に至るまでのルートは多様にあり,経済的困窮に陥るまでにはさまざまな要因がある.その一方で,住宅が大量に余りだしている.居住に困窮している配慮者が増えているが,実際には住宅は余っている.高齢者の単身者には貸したがらないとか,身元保証人がいないと困るなどの理由から余っていても貸していないという現状がある.
大量に遊休化している空き家をどうにか活用することができないか.借主の信用や生活力を補完するための生活支援を行うことである.困窮者支援を行ってきたNPOなどが居住支援法人になることが期待される.住宅扶助に関しては,本人を経由せずに家主に直接支払われる代理納付も推進されることになっている.しかし,困窮者支援を行ってきたNPOなどに,日常的な見守りや支援,あるいは家賃滞納のリスクをしょわせるのは酷である.制度的にも縦割りで,生活保護受給者には住宅の安定確保支援事業,介護保険では地域支援事業,障害者には地域生活支援事業となっている.これらを統合あるいは柔軟に組み替えるサービスを作る必要がある.
こうした生活支援の仕組みが整った後に最後に残されるのが,人生最後の看取りをどうするかである.社会的孤立や排除状態にある人たちが安心して住み慣れた場所で生活できるようになった後,その人らしい終末をどう過ごすのかのライフデザインが構想されるべきである.その一つに空き家を改造して,シェアし合うとか地域でそうした大きな空き家を見守りの場所にするとか方法あると思う.

座談会

消費・生産・参加(祐成保士)
1920年代には,救護法から住宅組合法ができ,持ち家こそが合理的な消費を可能にするという考えの下政策設計された.敗戦後間もない頃は,住む場所を作ることで,休養,社交,事務,生産,慰楽がリズムを持って繰り返されることに着眼する.中でも主婦が行う家事労働は生産として見なしていた.持ち家率が高いと社会保障費は少なくても済むなど小さい政府志向であるが,集合住宅中心だと所得保障や年金制度の拡充を重視する.アパートなどは共同設備などで代用することで女性たちの時間の一部を開放し,男性と同様に市民として民主主義の家庭に参加できるようにすることができる.参加として住むことができる.
「住まう」とは一時的な滞在や通過では無く,ある程度長期にわたってある場所にとどまりながら,住宅単位に限定されない空間的な広がりの中で,他の領域に従属するものとしてでは無く,カケが家の無い価値を持った場所としての住まいを獲得・維持することであり,住まい方とはそこに至るまでの多様な経路を指している.

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