2017.12
ひとり親世帯をどう支えるか
我が国のひとり親世帯の現状と課題(中島尚美)
我が国のひとり親世帯の課題は決して特別な課題では無いこと.母子世帯は75.5万世帯,父子世帯は8.4万世帯である.母子世帯は過去20年で20万世帯増えている.平成23年全国母子世帯等調査を元に解説している.
特に母子世帯は労働に見合った収入を得ていないし,親との同居率は低い傾向にある.そのため生活困窮になりやすく,相対的貧困は40%以上となっている.貯蓄率も夫婦世帯では28%であるが,ひとり親では5.7%となっている.また養育費の受給率はかなり低く,母子家庭では2割にとどまっている.離婚理由ではDVや生活費を渡さないなどがある.就業して働かないといけないため,子どもへのネグレクトなどがおきやすい.またDVなどで離婚した場合,子どもの心のケアが必要である.また学業面への影響もあり世代間での貧困の連鎖を生み出しやすい.社会的不利の解消が必要である.子どもに最も不利に働くのが「不登校」である.母子生活支援施設の積極的な活用やアフターフォローやサポートの充実が望まれる.
座談会
- 母子生活支援施設に来る母親はDVなどで逃げてきた人が多い.また様々な課題や複合的な課題を抱えている人たちが多い.DVは母親が暴力を受けている姿を子どもが見て,子どものトラウマになっている場合もある.または落ち着きの無い子どもだとか.でも母子生活支援施設で安心できる環境が提供されると次第に落ち着くようになる.
- 勉強を教えている団体や食事を提供している団体,母子生活支援施設の職員が話している.母子家庭では低所得だが長時間働いているため家で子どもの勉強を見て挙げることができない.
- 就労プログラムを実施しているが,実際正規雇用に結びつくのは大変である.
- 離婚は自己責任だという世間の評価があり,肩身を狭くしているが,海外でのシングルマザーへの対応…学費が無料であることや,日本では養育費をもらえてないことなどを説明するとびっくりされる.決して安易に離婚しているわけでは無い…
- 母子家庭に対する世間の関心が低いため,母子生活支援施設の活動に予算が付きにくく,児童養護施設のようなバリエーションはない.むしろ母子が一緒にいると言うことは社会的コストが低く,メリットがあるはず.よって母子家庭への支援にはメリットが高いはず.
- 行政の各分野やNPO法人などの支援者が自分の仕事はここまでと線引きをするのでは無く,少しずつみんながのりしろを伸ばすことで,つなぎができる.子育て世代包括支援センターが総合的なサポートとなって必要な支援が受けられるようにすることが理想である.
- 展望として,財源の確保などは子どもの貧困がクローズアップされているため,それをきっかけにひとり親世帯への支援が充実してほしい.早期予防の取り組みを強化してほしい.子育て全般に社会の目が厳しい状況であり,それを改善しないといけないと思う.ひとり親へのネガティブなメッセージにあふれている.またDVなどでパワーレスになっている場合はストレングスの視点でエンパワメントしていくことが必要.