2017.11
福祉と「食」の関係性
子どもの育ちを支える「食」のあり方とは(川上栄子)
- 戦後70年間で,欠乏の栄養→過剰の栄養→バランス良く摂るべき栄養に変化している.近年食生活の乱れによる子どもの肥満・痩せが多くみられている.
- 朝ご飯の摂取は全体的には9割を超えているが,親が朝御飯を抜く場合は8割を下回る.また誰かと一緒にご飯を食べることについては2から3歳児の食べこぼしやスローペースが悩みであるという回答であり,子どものペースで食事を取ることを許さない事情がある.
- 世帯収入による格差も気になり,栄養の取り方としては当然,収入に余裕が無い世帯の場合は菓子やカップ麺などの摂取が多くバランスが悪い.食育教育ではこうした世帯収入にも考慮して行う必要がある.
- 保育所は子どもにとって家庭に次ぐ生活の場であり,同時に食育の最前線である.食育の大切さを保育所から発信していくことが求められる.管理栄養士や栄養士の配置基準は児童福祉施設(保育所)にはないが,配置しているところもあるがまだまだである.よって,保育士が栄養の知識を持つことが必要である.保育計画に食育が位置づけられているため…
- 今後は栄養士と保育士の連携などを通じて,食育の重要性を親などに伝えながら子どもを育てていくことが求められる.
子ども食堂の現状とこれからの可能性(室田信一)
- 子どもがひとりで立ち寄り,無料もしくは低額で食事をすることができる子ども食堂の取り組みが全国で爆発的に広がっている.中には老人ホームなどの福祉施設を利用して子ども食堂を開催する取り組みや児童館で開催するなど,裾野も広がっている.
- 背景には,2014年に子ども貧困対策法が施行され,共稼ぎやひとり親世帯が増加し,子どもの孤立や孤食の実態が明るみになったことになる.また,子ども食堂というネーミングが一般に広く受け入れやすく活動しやすかった.またネットワークが早い時期に形成された.その上で,自治体や民間団体が居場所づくりへの助成活動が行われたことにある.
- 同じ釜の飯を食べる.誰かと楽しく食べる.これは幸福なことである.そして食事を提供する側にとっても楽しいことである.
- 筆者は,子ども食堂の役割として,食の支援,子ども支援,地域支援があると考察している.
- 食の支援は,孤食や栄養の偏りの是正,人と食べる(共食の規範)という原体験の提供.
- 子ども支援は,貧困対策の一環として行われている.困窮者自立支援事業としてあるが,間口を広げたい人にとっては,裕福でも親と関係が悪く安心できない人も含めて欲しいとのこと.
- 地域支援は地域活動をしたことが無い人が,この事業をきっかけに始めた場合が多い.イメージや目的が明確であることが決め手のようである.また,新規事業者のバックアップや連携なども行われている.
- こうした活動は草の根となり,たくさんの今まで無かった世界が,ある世界に変わってきた.今後も定着し,かつ組織の基盤強化を進めながら,子ども食堂があたりまえにある世界になって欲しい.
フードバンク活動の現状と今後の可能性(日詰一幸)
- フードバンクは,主に食品を扱う企業や農産物生産者からの食品,さらには家庭における余剰食品などの寄贈を受けて生活困窮者支援を行っている福祉施設・団体へ提供する活動である.少しでも食品ロスを減らそうという発想である.
- 始まりはアメリカで1967年,スーパーマーケットの食品を教会経由でスープとして提供したのが始まる.日本では2000年よりアメリカ人によって東京から始まる.現在,日本では80団体が活動を展開している.NPOが半数以上だが,他生協とか社会福祉法人も存在する.また法人格を持たないものも相当数ある.また東日本大震災を契機にはじめたものが多く,2011年以降急速に数を増やしている.
- 3800トンの取扱量をフードバンクは行い,各団体では10トン以下が4割,100トン以下は4割,100トン以上は2割となっている.
- 提供先は,生活困窮者支援団体,児童養護施設,障害者施設,自治体の福祉関連,個人支援などに多い.
- 運営費は,国などの助成が無いため団体自身で寄付金,自主事業からの収益などで運営費を調達している.ただし,自主事業からの収益はほとんど見込まれていない.中には,公的な助成は難しいが,労働金庫からの助成や生協や社協からの助成などもある.
- 課題としては,安定した食品の確保,食品確保施設の確保,他団体との連携,ボランティアの確保である.
- フードバンクは,社会保険(第一のセーフティーネット)と生活保護(第三のセーフティーネット)の間にある第二のセーフティーネットの一部として認識されるようになっている.