2016.7
地域包括ケアシステムとこれからの地域づくり

これからの地域包括ケアシステム(太田貞司)
システム構築は,費用の抑制と町づくりの二面性を持っている.また新しい総合事業は市区町村が進めることになり,より自治体の役割が求められている.また新しい総合事業は,インフォーマルとフォーマルのハイブリッドとか,住民活動を介護サービスとつなげることが求められている.
その後,地域包括ケアシステムが医療と介護の両面から構築に向けての法的なさまざまな解説やそもそもこのシステムは目新しい物では無く,1990年代からあったことなどを説明している.つまり,このシステムの構築は,医療改革,介護保険制度の政策動向の延長線上にある,医療福祉の総合的な政策として位置づけられている.また,このシステムは高齢者だけではなく,すべての医療,福祉,介護を包括しようとする動きもある.
このシステムの要諦は,住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができる場を日常生活圏域に作り出すことにある.
そして,このシステムを推進するために,医療改革,自治体レベルでの長期ケア再編,社会保障費削減,町づくりの推進という四つの圧力がある.ただ,町づくりの議論はやや弱い傾向にある.また地域づくりについては地域ケア会議を位置づけている.その中に個別課題解決機能,地域包括支援ネットワーク構築機能,…などなどあるが,実際には運営主体の力量によって左右されている.
実際に,退院支援の仕組み作りや医療と介護サービスの連携はかなり進められているが,専門職と地域住民の結びつきは弱い傾向にある.これは営利と重なって,いかに自発性と事業性を持ちながら安定したサロンなどの運営をどう実現するか.また市場化された介護保険サービスと住民活動との協働をどう作り出すのかが問われている.
自治体の力量として,地域ニーズを理解した政策作り,医療も市区町村の政策課題になっており,その自治能力,専門職と地域住民の結びついた支援の仕組み作りが試されている.

地域包括ケアシステムを構築するために必要な視点(筒井孝子)
この時期,マイナス成長だったが,その状況で高齢化の進行により医療費などの社会保障費が増え続けていること.また生活保護では高齢世帯が50%近くを占めている.地域包括ケアシステムは,その意味で効率化と地域への裁量権を委ねる緊縮財政の一環である.その上で社会福祉法人の蓄財問題から金を吐き出させ,地域包括ケアシステムの一翼を担わせると…
地域包括ケアシステムとは,市町村ごとに作られる在宅医療連携拠点と日常生活圏域ごとに作られる地域包括支援センターが連携し,医療や介護を含めたさまざまな生活支援サービスをどこでも受けられるシステムである.効率的な圏域を設定してむだを省くことも狙いとしている.英語で言うところの,Community based integrated care systemであり,市町村などの圏域を基礎とした統合したケアシステムである.
この発祥の地は1980年代の広島県尾道市御調町の公立みつぎ総合病院である.とはいえ,これがモデルになって全てに適応できるかというとそうでもなく,地域ごとに医療と介護の需要と供給量や思想があるからである.
同様に慢性期療養群における在宅医療や在宅移行についても地域による特徴があり,一様ではない.それでも各都道府県の地域医療構想においては当面は病床の整備,削減,機能転換などを進めていく取り組みが中心になると思われるが,病症調整が進む中で今後在宅医療および介護の体制整備としての地域包括支援センターの構築はさらに重要な課題になっていく.とはいえ,急変したり急性増悪した高齢者等はどうするのか.そこに社会福祉法人の役割があると言える.
介護保険サービスはケアマネの登場によってかなりアクセスしやすくなったが,提供主体の連携という意味では良好とは言えず,効率的でもなくむだが多いという指摘.

名張市の地域包括ケアシステムと地域づくり(永田祐)
地域福祉的な視点…提供体制の効率性という観点ではなく,地域での住民をはじめとした多様な人々が主体的に作り出す活動と地域ケアの関係を論じると言うことである.
ということで,あんまり興味がないので割愛.

地域包括ケアシステムを創る(竹端寛)
社協とか自治体とか,地域包括支援センターがうまく機能していないところをどうすればうまく機能できるかについて雑感を述べている.住民を巻き込むときは,地区のことだから文句を言わず空気を読んで同じ方向性に従ってほしいと強要する論理ではだれもついてこないとか.ま,いろいろと.

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