2016.12
ともに生き認め合う社会 障害者差別解消法を活かそう

座談会 障害者差別解消法で変わったこと，変えなければいけないこと

• 差別解消法と障害者雇用促進法の改正を受けて，差別禁止と合理的配慮の義務という新しい考えが入って企業や行政機関，大学では対応しないと行けないという機運になっている．
• 障害者のグループホームなどを建設するといつも住民の反対運動が起こる．いくら地域に根ざした活動をしたりしてもなくなることは無い．相模原市の殺傷事件では，改めて特定の人たちが有用では無いという理由で殺される歴史的なもののように思える．また殺された重度の障害者を自分とは遠い存在であるかのように社会が扱っていることに，その負の歴史的なものを感じた．社会の一員として認知される障害者とそうではない障害者の線引きがあると思う．その一方で，施設入所が本人の意志では無く，親の安心のためではないか．それで良いのだろうかという疑問も呈されている．施設入所に関しては否定論もあるが，一方で施設に来ることで仲間と出会える喜びは非常に大きいのではないか．それまで社会とのかかわりを持たずに暮らしてきた人が仲間と出会い，電動車いすで外出をするなど楽しみを見いだす人もいる．施設は単に親の重荷を代替するのでは無く，この人たちの生きがいを見つけていく努力をする必要がある．
• JRでは障害者のある人が利用するに当たって相談に乗って欲しいなどの話があり，差別解消に向けて，企業が考えはじめている．行政も公共トイレのあり方など．組織としてはそうでも個人としてはまだ浸透していないと思う．
• 心のバリアフリーにしても，お手伝いしましょうというスタンスが主流で，差別解消までには至っていないケースもある．
• 合理的配慮については，障害者の意思表示があった場合は検討されないと行けないとされるが，重度の場合はその支援者が代弁していくことが必要である．
• 差別解消法を具体的にするには，新たな相談機関や紛争解決機関をちゃんと作ることである．虐待防止協議会の構成メンバーには警察や弁護士，医師会，教育委員会などが入りしっかりとした組織作りを進めるべきである．
• 差別禁止法は，障害者だけでは無く，範囲を広げると女性の就労やセクシャルマイノリティなどにも解釈を広げることができるのではないか．また福祉施設が一般住民への意識改革や啓蒙運動をすることも大事．
• 多様性の尊重の一方で，役に立つ／立たないという価値基準の中で判断されがちな世の中であり，障害者でも認められる／認められないという判断も入り込むことがある．

知的障害のある人たちとのフレンドシップ（志村健一）
グループホームや家族と一緒に暮らす年頃の障害者は，それなりに趣味があり職員か家族とのコミュニケーションがとれており，決して孤立はしていない．しかし，健常の年頃の人たちは友人との関係性があるが，障害者にはそれがないことが調査で分かった．大学ではそのうした余暇活動の充実を図るために取り組みをしたとのこと．アメリカの比較でも日本の障害者は友人関係の形成は非常に低いことが明らかになっていた．地域の受け皿や文化活動のサポーターが必要である．
スペシャルオリンピックスでは知的障害者のためのスポーツの祭典である，日本でも取り組まれている．パラリンピックとの違いは，スペシャルは知的に限定していることである．ユニファイドスポーツは，知的障害と健常者がチームを作りともに練習に励み，試合を行いスポーツを通じて一人一人の個性を理解し合い，支え合う関係を築くことである．
学生のボランティア活動の奨励は2002年の中央教育審議会の青少年の奉仕活動／体験活動の推進方策等についてという答申に基づく．大学でも社会貢献センターなどを設置して活動している．この論文では，東洋大学におけるユニファイドスポーツの取り組みについて紹介している．

障害者雇用における合理的配慮（小西啓文）
小難しく書いていて良く分かりませんでした．ただ，障害者雇用を積極的に行うことが大事であること．合理的配慮を進めることが社会的包摂を進めるために必要なキー概念であることがよく分かった．

これからの障害者の権利保障（小澤温）
2006年国連総会で，障害の権利に関する条約が採択され，2014年に国内で条約が発効し，さまざまな障害者への法制度が整ってきた．差別解消施行や合理的配慮はその一環である．
この差別解消法は2016年，同時期に障害者雇用促進法が改正されている．差別相談窓口では，福祉サービスに関すること，雇用と就労に関すること，教育に関することがかなりの割合を占めている．
こうしてみると，権利条約を軸に各種の障害者に関する法律をからっと並べて，何が便利になっているのか，あるいはどのような取り組みがされているのかを俯瞰することが大事だなと思う．